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第2章 WWM 〜世界魔法大戦〜

第23話 沖縄からの知らせ

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〈追記:はじめまして、フェンリルという者です。クリムが持っていた手紙に、書かせてもらいました〉


 3つ折りの隠れている部分に、手書き文字を見つけた。ルグア達は戸惑いながら読み進める。


〈ルグア様に、伝えなければならない重要なことがあります。手紙では難しいので〉


「すまん、行ってくる。クリムもだろ?」


 龍は私の肩に乗り、そのまま日本の最南端に向けて出発。加速を使いで急ぐ。

 がしりと掴む鋭爪は、奥深くまで食い込んで、痛みを感じる。そんなことは、気にしない。

 無事到着したのは、沖縄県。昔戦争が起こった地のひとつで、軍基地は今でも目立つ。

 眼下に手を振るエルフの女性。きっとあれがフェンリルだ。高度を落とし地に足をつく。


「あなたが、ルグアさんですね。お初にお目にかかります。突然の呼び出しですみません」


 女性は、頭を下げる。


「問題ねぇよ。クリムゾン・ブレードも強くなったし…………。お前が強化したんだろ?」

「な、なぜそれを……。初見のはずなのに…………」


 いきなりのルグアの言葉。唐突すぎたようで、フェンリルはあたふたしながら、


「合っています……。けれども!!」

「ま、これは勘の結果だ。偶然と言ってもいい。んで、”伝えなければならないこと”ってなんだ?」

「これから、地球規模の、戦争が始まります。それを止めてくれませんか?」


◇◇◇◇◇◇


「…………って、わけなんだ。みたところフェンリルは、争いごとを嫌っている。協力してくれるよな?」


 村に戻り努やガロン、ルクス達に報告。もちろん、みんなは助けあいに慣れている。

 否定する人はおらず、それぞれ武器を見直すために、散らばった。

 フェンリルも招き入れ、私はさらに、強化してもらうため、禁足地へ。

 今にも生けるおぞましい屍が集まって来そうな地下拠点の外れ。でも、私は全て追い払い、逆急襲状態。敵は逃げまわり、アイテムをドロップ。

 ほしいのは、〈汚染外皮〉。屍しか落とさないレア素材だ。最初聞いた時は、毒素が心配だった。

 必要個数は、9000個。敵の密集場所で、クリムゾン・ブレードの感覚を思い出しつつ無双する。

 屍の姿が見えなくなった頃、ストレージには、500万個の〈汚染外皮〉が入っていた。

 村の自宅へ帰宅。フェンリルは、ルグアの家で臨時の鍛冶屋を開き、鋼を叩く音が鳴る。


「帰ったぜ、フェンリル。予定より大量に持ってきてしまった。どれくらいまで強化できるんだ?」


 玄関を開けて早々、尋ねた小柄な少女。鍛冶屋は、ストレージいっぱいの材料を見て、


「おかえりなさい。ほんとにたくさんですね。これなら最大レベル……、限界突破して、10段階までできそうです」


 想像しただけで、最終的な重さが全身を襲う。


「明日の朝には完成するので、当日に渡すことになりますが、大丈夫でしょうか?」


 わかってる。唾をゴクリと飲み込み、覚悟を決めて承諾した。


◇◇◇◇◇◇


  次の日、一晩中精錬の金属音であまり眠れなかったが、それなりに疲れを癒すことができた。

 私の部屋は二階で、階段を降りると、真紅の剣が一層赤が増して、立てかけてある。

 輝きも激しく、眩しさに目をつぶり、すくむ足を無理やり動かす。

 近づくにつれて発せられる、重圧。『我に触れるな!!』、そう言って突き放すような力。

 でも、魔剣はクリムゾン・ブレードを強化するお金として、売ってしまった。

 この剣がなければ、戦えない。1歩、また1歩。圧力に逆らって進み、柄に手を伸ばす。


 ――バチッ!!


 静電気のような痺れ。でも、構わず握りしめる。身体中に流れる強力な電流。

 だけど、問題ない。気にしてたらキリがない。持ち上げると、押しつぶされそうな重量感。

 上手く立ち回れるかわからなくなった。と言っても、私のプレイスタイルに立ち回りはない。

 ストレージにしまい、置き手紙に感謝の言葉を書き残し、素振りをするため、村を離れた。

 選んだ場所は、海を越えた北朝鮮。日本よりも大きく見え、敵の数も比べものにならないほどだ。

 重い剣に振り回されそうな、細いプレイアバターを上手く使い倒していく。


◇◇◇◇◇◇


  北朝鮮のとある場所。そこに、ルグア達を含む、総勢2億人の日本人プレイヤーが集結した。

 プレイヤーだけがというわけではなく、日本人NPCを入れての2億人。

 このゲームには、戦えるNPCと鍛冶や商売に向いている非戦闘NPCがいる。

 そして、フェンリルは両用NPCとのこと。今回は危険なので、補欠として日本で待機。

 精錬してもらった剣は、手には馴染むが重さで負ける。

 全く振れないということではなく、逆に剣に振り回されているような…………。

 広大な戦場に密集するプレイヤー。1時間後、敵陣が出揃った。黒人、白人、黄色。

 相手は、外国人だけで、味方は2億、敵は空中からざっと見て5000億。視界に収まらない人数だ。

 1人の黒人プレイヤーにスポットを当てる。レベルは、0が23個。つまり、1000垓。

 対して、日本人プレイヤーの平均レベルは、2000万。中でもルグアのレベルは、未だ3。

 いくら、初期ステータスが強くても、垓の相手の威力は、尋常ではないだろう。

 EXP必要量も、国民番号分集めなければいけないため、レベリングに時間がかかる。

「んじゃ、代表として、私から一言させてもらうぜ?」


 ○○倶楽部みたいに、どうぞと勧める仲間。気を取り直し、私は前に出た。


「では、これより。WWM世界定期大戦の開幕をここに宣言する。勝ち負け文句なしのバトルを願う」


 運動会で選手宣誓をしているような言葉。でも、生徒じゃなくて校長、教頭側のセリフに近い。

 気づけば、地上が大荒れで日本人プレイヤーの死亡エフェクトである、藤色のポリゴン。

 ポリゴン別に、日本が藤色、アメリカが赤、中・韓が茶色、巴西ブラジルが緑、カナダがオレンジ、オーストラリアが青。

 ロシアイギリスフランス西スペインドイツオーストリア等は、紫。

 その他は、ピンク色の死亡エフェクトになっている。地球規模のゲームで嬉しい機能だ。

 その間に、日本人プレイヤーの人数が急激に減少。私も加勢するがもう遅い。

 敵を倒すと、すぐに次の敵が別方向から攻撃。

 私の噂は海を渡っていたので、私ばかりダメージを与えてくる。


【アンゲームブラスター】という異名。周りの人は、【無敵のプレイヤー】として考えるようだ。


 ジリジリと後ろに下がる私の足。振っても振っても減らない敵。

 重い剣を離さぬよう、自分の近くに引き寄せる。そして、感じた違和感があった。
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