17 / 48
第2章 WWM 〜世界魔法大戦〜
第17話 城攻略
しおりを挟む
暗い空間、薄紫の壁、赤と金の長い絨毯。2人は警戒しながら歩く。
時々現れるスケルトン、稀に攻撃してくるゴーレム。努が、自信満々に剣を振り盾で跳ね返す。
最初はよかったが、難易度は上がっていき、少しずつ押され始めるが、努が制して前に立つ。
(なんだ? この感覚……、初めてだ……。危険な気配が……)
私は、最後に残った大部屋に、意識を集中させる。それは、私たちが、向かっている部屋。階段を登り、扉を開ける。
――ギギギギギィィ……
甲高い、蝶番の軋む音。再び入り口の前に行き、中を見ると、ざっと40体のスケルトン。
真ん中には、明理の身長の50倍はある大きな2体のゴーレムが、待ち構えている。ちなみに、明理の身長はい148cm。
私の鼓動に混じる、仲間の恐怖の叫び。隣の努は手足を縮めて、ひっくり返った。
(動けるのは私だけ……。クリアしなければ、ダンジョンに閉じ込められる)
私は、魔剣を取り出すと、しまっていた羽根を生やし、ホバリングしてから、群れに突っ込む。
1対42、無謀といえば無謀。だが、ルグアには通用しない。宙に舞う、スケルトンの骨棍棒40本を左の魔剣で弾き、ついでに近くの敵を攻撃。
平均で5回当たれば、倒せる。それを確認したあと、ルグアの動きは加速していく。入り口で観戦中の努は、その強さと俊敏さに絶句した。光景を言葉にできないほどの、熱量に。
ものの数10分で、スケルトンが全滅。残るは巨大なゴーレム2体。叩きつけられる大きい岩石を、スレスレで回避すると、すかさず無防備な関節に刃を入れる。
避けては切りつけの攻防が、大迫力のエフェクトで彩られ、私は、集中力をさらに高めた。
もちろん、加速も止まらない。目で追えない空気の波紋が、うっすら見つけるのが限界だ。
そして、突然ルグアの動きが止まり、実物が出現した。1分後。ゴーレムの胴体が崩れる。
つまり、自分達が勝利した。努は緊迫感から解放され、眠りについてしまった。そんな努を担いで、城に別れを告げる、ルグアだった。
◇◇◇◇◇◇
「努ー!! 大丈夫かー!!」
私は、暗闇の城から5kmほど離れた砂漠地帯で、仲間の身体を揺すっていた。
彼は、私の戦いぶりと、恐怖のどん底から解放されたことで、失神したまま目を覚まさない。
努がログインしたとみられる場所は、大体予想がついていた。群馬県太田市、細かい住所まではいかないが、もしかしたらと思いログアウトの項目を探す。
だが、ログアウトの文字が見当たらない。その時、頭の中によぎったのは『デスゲーム』。
あるある設定の1つで、ログアウトできなくなると、死と隣り合わせのバトルが始まるというもの。
次に、浮かんだのは、『鳥籠』。または、『ヒューマンバードハウス』。
最初は、広い世界だったのに、日が経つと狭くなっていく。人口密度が原因で、強制退場がオチ。
最後は『エンドレスバトル』。その名の通り、エンディングが終わるまで、延々と闘いが続く。
私の予想は、3つ目。大戦系のゲームに多いと思うし、リスタート機能で死ぬことはない。
安全性の高いゲームは、激しい戦闘でも、プレイヤーは遊び続ける。これらは確かではないので、私の見解でしかない。
「う、うぅぅぅ…………」
失神状態の努が唸った。どうやら、無事回復したようだ。ゆっくり目を開いて、上体を起こし、
「ルグアさん、ここは、砂漠?」
つぶやく。私は、
「ああ。ボス倒してここまで運んだ私に礼を忘れるなよ? と言いたいが、今回はおまけしてやる」
ブレのない口調で、簡単に説明した。もちろん、敵が0というわけではない。
見張って、敵が出現したら攻撃。努へ危害のないように守っていた。
「ログアウトができなくなった。こっから先も、2人でやっていかないか?」
「喜んで!!」
大きく首を振って頷いた。歩くしか手段のない努を抱き上げ、再びルグアは空を飛ぶ。
次の目的地は、誰も踏み入れたことのない、黄金城。景色は、砂漠からサバンナに変化した。
◇◇◇◇◇◇
日差しが強いサバンナ地帯の上空を、私は努を抱えて移動中。
画面右上のデジタル時計は、お昼の12時で止まっている。エンドレスバトルの特徴の1つだ。
現実世界の時間が止まり、ゲーム世界の時間だけが進むということ。
ちなみに、『デスゲーム』は並行時間。『鳥籠』は倍速時間となっていて、違和感は少ない。
時の流れは変わらず、ただ、現実と差が生まれるだけ。慣れれば、普通の生活に戻れる。
「ルグアさんは、何歳ですか?」
「16。逆におまえは、いくつだ?」
「18歳です。ルグアさんの方が、僕より年下ですね」
そうこうしてる間に、見えてきたのは、全体的に神々しい、黄金城ダンジョン。
広大な敷地に建物が3つ重なり、跳ね返す眩い日の光に目を細める。周辺には、ガーディアン。
それを掻い潜り、城内に潜入すると、本日2度目のダンジョン攻略開始。
(厄介なやつが、ごった返していそうだな)
思考で感じとる自身の不安感に、目を背けながら剣舞を披露すると、努が後ろで援護を行う。
剣と魔法の世界は悪くない。戦いに終わりはなくなった。これから始まる。ログアウトするための攻略は、山あり谷あり谷底ありの深淵。
私のプレイにリスタートは必要ない。その分努力すればいい。ガーディアンは増えていく。私はそれに立ち向かう。
時々現れるスケルトン、稀に攻撃してくるゴーレム。努が、自信満々に剣を振り盾で跳ね返す。
最初はよかったが、難易度は上がっていき、少しずつ押され始めるが、努が制して前に立つ。
(なんだ? この感覚……、初めてだ……。危険な気配が……)
私は、最後に残った大部屋に、意識を集中させる。それは、私たちが、向かっている部屋。階段を登り、扉を開ける。
――ギギギギギィィ……
甲高い、蝶番の軋む音。再び入り口の前に行き、中を見ると、ざっと40体のスケルトン。
真ん中には、明理の身長の50倍はある大きな2体のゴーレムが、待ち構えている。ちなみに、明理の身長はい148cm。
私の鼓動に混じる、仲間の恐怖の叫び。隣の努は手足を縮めて、ひっくり返った。
(動けるのは私だけ……。クリアしなければ、ダンジョンに閉じ込められる)
私は、魔剣を取り出すと、しまっていた羽根を生やし、ホバリングしてから、群れに突っ込む。
1対42、無謀といえば無謀。だが、ルグアには通用しない。宙に舞う、スケルトンの骨棍棒40本を左の魔剣で弾き、ついでに近くの敵を攻撃。
平均で5回当たれば、倒せる。それを確認したあと、ルグアの動きは加速していく。入り口で観戦中の努は、その強さと俊敏さに絶句した。光景を言葉にできないほどの、熱量に。
ものの数10分で、スケルトンが全滅。残るは巨大なゴーレム2体。叩きつけられる大きい岩石を、スレスレで回避すると、すかさず無防備な関節に刃を入れる。
避けては切りつけの攻防が、大迫力のエフェクトで彩られ、私は、集中力をさらに高めた。
もちろん、加速も止まらない。目で追えない空気の波紋が、うっすら見つけるのが限界だ。
そして、突然ルグアの動きが止まり、実物が出現した。1分後。ゴーレムの胴体が崩れる。
つまり、自分達が勝利した。努は緊迫感から解放され、眠りについてしまった。そんな努を担いで、城に別れを告げる、ルグアだった。
◇◇◇◇◇◇
「努ー!! 大丈夫かー!!」
私は、暗闇の城から5kmほど離れた砂漠地帯で、仲間の身体を揺すっていた。
彼は、私の戦いぶりと、恐怖のどん底から解放されたことで、失神したまま目を覚まさない。
努がログインしたとみられる場所は、大体予想がついていた。群馬県太田市、細かい住所まではいかないが、もしかしたらと思いログアウトの項目を探す。
だが、ログアウトの文字が見当たらない。その時、頭の中によぎったのは『デスゲーム』。
あるある設定の1つで、ログアウトできなくなると、死と隣り合わせのバトルが始まるというもの。
次に、浮かんだのは、『鳥籠』。または、『ヒューマンバードハウス』。
最初は、広い世界だったのに、日が経つと狭くなっていく。人口密度が原因で、強制退場がオチ。
最後は『エンドレスバトル』。その名の通り、エンディングが終わるまで、延々と闘いが続く。
私の予想は、3つ目。大戦系のゲームに多いと思うし、リスタート機能で死ぬことはない。
安全性の高いゲームは、激しい戦闘でも、プレイヤーは遊び続ける。これらは確かではないので、私の見解でしかない。
「う、うぅぅぅ…………」
失神状態の努が唸った。どうやら、無事回復したようだ。ゆっくり目を開いて、上体を起こし、
「ルグアさん、ここは、砂漠?」
つぶやく。私は、
「ああ。ボス倒してここまで運んだ私に礼を忘れるなよ? と言いたいが、今回はおまけしてやる」
ブレのない口調で、簡単に説明した。もちろん、敵が0というわけではない。
見張って、敵が出現したら攻撃。努へ危害のないように守っていた。
「ログアウトができなくなった。こっから先も、2人でやっていかないか?」
「喜んで!!」
大きく首を振って頷いた。歩くしか手段のない努を抱き上げ、再びルグアは空を飛ぶ。
次の目的地は、誰も踏み入れたことのない、黄金城。景色は、砂漠からサバンナに変化した。
◇◇◇◇◇◇
日差しが強いサバンナ地帯の上空を、私は努を抱えて移動中。
画面右上のデジタル時計は、お昼の12時で止まっている。エンドレスバトルの特徴の1つだ。
現実世界の時間が止まり、ゲーム世界の時間だけが進むということ。
ちなみに、『デスゲーム』は並行時間。『鳥籠』は倍速時間となっていて、違和感は少ない。
時の流れは変わらず、ただ、現実と差が生まれるだけ。慣れれば、普通の生活に戻れる。
「ルグアさんは、何歳ですか?」
「16。逆におまえは、いくつだ?」
「18歳です。ルグアさんの方が、僕より年下ですね」
そうこうしてる間に、見えてきたのは、全体的に神々しい、黄金城ダンジョン。
広大な敷地に建物が3つ重なり、跳ね返す眩い日の光に目を細める。周辺には、ガーディアン。
それを掻い潜り、城内に潜入すると、本日2度目のダンジョン攻略開始。
(厄介なやつが、ごった返していそうだな)
思考で感じとる自身の不安感に、目を背けながら剣舞を披露すると、努が後ろで援護を行う。
剣と魔法の世界は悪くない。戦いに終わりはなくなった。これから始まる。ログアウトするための攻略は、山あり谷あり谷底ありの深淵。
私のプレイにリスタートは必要ない。その分努力すればいい。ガーディアンは増えていく。私はそれに立ち向かう。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

【VRMMO】イースターエッグ・オンライン【RPG】
一樹
SF
ちょっと色々あって、オンラインゲームを始めることとなった主人公。
しかし、オンラインゲームのことなんてほとんど知らない主人公は、スレ立てをしてオススメのオンラインゲームを、スレ民に聞くのだった。
ゲーム初心者の活字中毒高校生が、オンラインゲームをする話です。
以前投稿した短編
【緩募】ゲーム初心者にもオススメのオンラインゲーム教えて
の連載版です。
連載するにあたり、短編は削除しました。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【おんJ】 彡(゚)(゚)ファッ!?ワイが天下分け目の関ヶ原の戦いに!?
俊也
SF
これまた、かつて私がおーぷん2ちゃんねるに載せ、ご好評頂きました戦国架空戦記SSです。
この他、
「新訳 零戦戦記」
「総統戦記」もよろしくお願いします。

海道一の弓取り~昨日なし明日またしらぬ、人はただ今日のうちこそ命なりけれ~
海野 入鹿
SF
高校2年生の相場源太は暴走した車によって突如として人生に終止符を打たれた、はずだった。
再び目覚めた時、源太はあの桶狭間の戦いで有名な今川義元に転生していた―
これは現代っ子の高校生が突き進む戦国物語。
史実に沿って進みますが、作者の創作なので架空の人物や設定が入っております。
不定期更新です。
SFとなっていますが、歴史物です。
小説家になろうでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる