インステニート 〜インフレ・ステータスじゃなくても規格外のニート少女で、ぶっきらぼうに話す私は異世界からの転生者でした

八ッ坂千鶴

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第2章 WWM 〜世界魔法大戦〜

第16話 メンテ終了 新たなゲーム

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◇◇◇2025年11月29日土曜日◇◇◇


――ポポロン~


〈長らくお待たせしました。VWDLのメンテナンス終了をお知らせします。

 全プレイヤーの更新は全て完了していますので、すぐにプレイ可能です…………〉


 3日間の閉鎖が終わり、報告のメールが届いた。私は、急いでログインしてギルドへ向かう。


「メンテ後の遊園地は……。変わったところとして……」


 しんしんと降り積もる雪。広場の石畳は真っ白に染まり、時々足を滑らせる。


――ザクザクザク…………。


 踏み込めば踏み込むほど、足元がおぼつかない。

(そういや、テレビでやってた歩き方してみるか)

 私は、1度立ち止まり、足の裏全体で歩く。

(ゲームでも通用するんだな)

 というのも、滑らない移動のしやすさに、雪国に対する共感と納得、そして安心感がわかった。

 最初よりも進みが速く、ギルドのゲートにたどり着く。


「おーい、みんないるかー?」


 アーサーラウンダーの活動拠点は、閑散としていた。そんなロビーに友人とノアンの姿。

『あ、ルグアさん。お待ちしてました』

 遠くで手を振るノアン。


〖3日ぶりじゃのう。ルグア殿、そなたに伝えたいことがあってな。はよ来てくれんか?〗


 隣で喋るのは、ホバリングするクリム。私は急いで駆け寄った。集まったところでセレスが、


「突然ですが、本日をもって【アーサーラウンダー】を解散することに、しました…………」


 と、深刻そうな暗いトーンで切り出す。なんでワンクッション置かないんだ。そうツッコミたいが、大事な話なので我慢。続くように、ガロンが口を開く。


「実は、わたし達が気づかないうちに、6人のメンバーが退会していたんです」

 次にノアン。


「でも、【アーサーラウンダー】というギルドは削除しない。残るかどうかは自身の判断で……」


 初めて、彼の口調を聞いたが、とても大人しい雰囲気がした。私は、もちろんここに残る。言わなくても親友の2人は、


「わかりました」「了解です」


 同時に頷いた。他のみんなも、悟ったようで、「よろしくお願いします」と、お辞儀。

 そして、私はとあるゲームに目をつけた。擬似転生型VRMMORPG

〈WWM〉

 というゲームに………。


◇◇◇2025年11月30日日曜日◇◇◇


 現実世界と同じ地形で作られた、2022年発売の大規模なゲームがあった。

 当時、私はゲームに興味がなく。名前だけ聞いていたくらいだ。そのタイトルは、


〈WWM ~世界魔法大戦~〉


 友人から伝えられ、ソフトをPCにインストールしまま放置。それが、急にやりたくなった。

 ログインして、種族を選択。たまには人以外のアバターにしようと、妖精族のエルフを選択。

 降り立ったのは、緑豊かな自然林。自分以外の妖精が、空を飛び鱗粉の雨を降らす。

 しばらくは、違法ゲーを離れてこのゲームに潜る。早速、アシストを使って離陸した。

 だが、これだとバトルは不可能。アシスト無しで飛んだ方が、楽かもしれない。

 もちろん、教えてくれる人はおらず、自主練をした。攻略本は見ないので、感覚を自ら考える。

 約2時間、離着陸を繰り返し自由に飛べるようになると、私は自然林を離れた。

 武器は、魔剣。禍々しい剣は、少し重いけど、〈クリムゾン・ブレード〉よりは軽い。

 地上の人にはわからないだろうが、日本は地図より大きい。そんなのは当たり前。

 インストールは、誰でもできるが新規登録するには、国民番号を所有している必要がある。私は、1ヶ月前に所得したばかりで国民番号は、〈005791871〉。

 このゲームの特徴の1つとして、ステータスの数値を足すと、国民番号になる。

 国民番号=マイナンバー。国民番号の値は変動しないので、弱い勇者ほど継続できるのだが、申請が先着順のため、遅れてしまった。

 私は、ランダムではなく自分で、初期ステータスを割り振る。


プレイヤー名:巣籠 明理
Lv.1
性別:WOMAN 種族:妖精族
ジョブ:エルフソードマン
国民番号:005791871
HP:1,977,895
ATK:1,007,470
DEF:997,690
MAT:1,025,631
MDE:783,185


 あとで気づいたが、相変わらずの異常なステータス配分だ。レベル1でこれは、ありえない。

 それは、一旦端に置いておき、現在進行形で空を移動している。眼下の世界は、緑から赤へ、赤からオレンジへ。そして、舗装された城に着く。


『おーい、そこの君ー!!』


 真下で叫ぶのは、1人の少年。上手く進路を切り替え、地上に降りる。


「君は確か、最近話題になってるルグアさんですよね? はじめまして、須田努です。サイン下さい」


 この世界まで、私の人気が出ているとは思ってなかった。私は、


「すまん、ルグアは私で合ってるが、サインはないんだ。代わりに……」

「一緒に戦ってくれるんですか? ありがとうございます!! 是非是非」


 早とちりで、話を進められる。


「しょうがねぇなぁー、わかったよ。言っとくがレベル1の私は、強いぜ? マジで」


 ささっと、パーティを結成して、ステータスを見せると、予想と同じ引き気味の表情。


「ルグアさん、本当に噂と一緒だ…………」

「噂ってなんだよ!?」


 前にノアンも言っていたが、その”噂”が、何なのかわからない。後々自分も気づくだろう。私と努は城ダンジョンに、歩を進めた。
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