13 / 48
第1章 VWDLと農作業
第13話 決着の報酬
しおりを挟む
左手には、レイドボスのドラゴンから受け取った、真紅の剣が輝いていた。
集中力も回復し、高速移動で相手を翻弄。それを追うドラゴンも剣と同じ色の尻尾を振り回す。避けながら攻撃、攻撃して避ける。戦っているというよりは、遊んでるような感覚。
剣を振り、激しく舞い踊る私と、そのリズムに合わせて避ける、ボス。もちろん、剣先が触れた時のダメージはしっかり入っていて、20分の間に、10本消滅。
クリムゾン・ブレードの威力は絶大で、かすっただけなのに、HPゲージを1本消す。敵のHPゲージは残り8本。真紅の炎は勢いを増して、黒炎に変化。
炎に焼かれ、ドラゴンのHPゲージが次々と消え、ラスト3本。1京という数字は何だったんだ、とレベル設定の雑さに違和感を覚える。
黒く燃える剣は、とても重く集中してもバランスが悪い。だが、剣が重いからこそ舞いによる遠心力で、一撃を強くさせている。
Congratulation
クリアタイム 2時間38分54秒
MVP:ルグア
総ダメージ:98,745,000,………………
ギルドポイント:500,000,…………
「なんじゃこりゃ? 0が…………12? いや他の数字が5つあるから………」
目を凝らし、知ってるところまで計算していると、
〖お見事。では、そなたにお礼を……、と思ったんじゃが、渡せるものがなくてな〗
ドラゴンが、分身の威力に押され、負けるというのを考えてなかったようだ。
〖代わりに、我をそなたらの仲間に入らせてくれんか? ルグア殿のテイムモンスターとして……〗
唐突な展開、プレイヤーが頑張ってテイムするのは、当たり前。
対して、モンスターが希望するのは、知ってるゲームでも数えるくらいしかない。セレス達の方を見る。2人は首を小刻みで縦に振っている。
「わかった、仲間にしてやるよ」
私は、初回ログイン時に貰えるテイムアイテムを使い、ドラゴンを捕獲する。名前はすでに決まっていた。
〈クリムゾン・ドラゴン〉
略して、クリム。ドラゴンも気に入ったようで、テイム後のサイズでケージから飛び出す。姿はボスと同じで、大きさが小さくなっただけ。その裏で、破滅への歯車が、震え出した。
◇◇◇◇◇◇
2時間にも及ぶ戦いに勝ち、報酬として、真紅の剣〈クリムゾン・ブレード〉とテイムした〈クリム〉。
クリムには一度ケージの中に入ってもらい、ギルド拠点へ向かう。背中に武器を納刀できるようになっていたので、〈クリムゾン・ブレード〉は背中の鞘へ。
私は長時間の戦闘で、疲労が溜まり鞘の剣で、ふらつくがセレスとガロンに支えられ、ゆっくり歩を進める。
「あら、おかえりなさい。相当お疲れのようね」
ちょうど通りかかったレーナが、左手を頬に当てて呟いた。
「パーシー、ただいまです。今戻りました」
「レーナさん、ただ今戻りました」
私の右肩を担ぐガロンが、挨拶をする。反対側のセレスも一礼。私は声を出そうとするが、意識が遠のく感覚に邪魔される。
「まぁ、可哀想なルグアさん。あと少しで着くから、ゆっくり休むことをおすすめするわ」
そう言って、4人が拠点のゲートを潜った先の壁に
【祝・レイドボスLv1京クリア】
と書かれた垂れ幕が掛けられ、部屋全体が装飾で溢れていた。
「「おめでとう!!」」
ギルドメンバーが一斉にクラッカーを鳴らし、拍手をする。レイドイベントのギルドランキングは、2位との差が大きく暫定1位。
アーサーラウンダーが0を9個分多かった。きっと他ギルドは、悔しいだろう。心の奥で罪悪感が生まれた。それはさておき、みんなに紹介しなければいけないものがある。
私は、朦朧としながらもメニューを操作しケージを取り出す。扉を開けると、クリムが、
〖ここが、そなたのギルドかね。きらびやかでいいのう。我はクリム。名付け親はルグア殿じゃ〗
宙を舞いながら自己紹介をする一匹のドラゴン。戦った人以外のメンバーは硬直。
「すみませんがモルド。そのモンスターは、レイドボスでは?」
「ああ、そうだが…………」
最初に硬直から回復したのは、ベディだった。野太い声が、意識を回復させる。
〖ベディ殿ですな。ネームは確認できんのじゃが、称号はわかる。ベディ殿の言うボスで間違いない〗
「なんと!!」
クリムは、多分AIが搭載されているからなのか、会話を成立させるのが上手い。でも、AIにしては自然な言い回し。きっと、運営が一から組み上げ育てた結果だと思っている。
だが、ギルド内は賛否別れた。すなわち、分裂。一方は、クリムを招いて活動。もう一方は、クリムを手放し殺すこと。この問題は、ルグアにも突き付けられた。
もう1つの問題。ルグアを残し活動するのと、強制退会させる人だ。2つの問題は、全てが解決することはなかった。理由は、1京のボスを倒したことでの問い合わせ。
メールでVWDL運営に確認をすると、”イベントポイントの集計に不正があるのでは”というもの。運営は、翌日から3日間の緊急メンテナンスを開始。
問題を解決する糸口は、毛先も見せずに薄れ、事態は悪化していくだけ。そのことを知らない者は、アーサーと側近、親友の数人しかいなかった。
集中力も回復し、高速移動で相手を翻弄。それを追うドラゴンも剣と同じ色の尻尾を振り回す。避けながら攻撃、攻撃して避ける。戦っているというよりは、遊んでるような感覚。
剣を振り、激しく舞い踊る私と、そのリズムに合わせて避ける、ボス。もちろん、剣先が触れた時のダメージはしっかり入っていて、20分の間に、10本消滅。
クリムゾン・ブレードの威力は絶大で、かすっただけなのに、HPゲージを1本消す。敵のHPゲージは残り8本。真紅の炎は勢いを増して、黒炎に変化。
炎に焼かれ、ドラゴンのHPゲージが次々と消え、ラスト3本。1京という数字は何だったんだ、とレベル設定の雑さに違和感を覚える。
黒く燃える剣は、とても重く集中してもバランスが悪い。だが、剣が重いからこそ舞いによる遠心力で、一撃を強くさせている。
Congratulation
クリアタイム 2時間38分54秒
MVP:ルグア
総ダメージ:98,745,000,………………
ギルドポイント:500,000,…………
「なんじゃこりゃ? 0が…………12? いや他の数字が5つあるから………」
目を凝らし、知ってるところまで計算していると、
〖お見事。では、そなたにお礼を……、と思ったんじゃが、渡せるものがなくてな〗
ドラゴンが、分身の威力に押され、負けるというのを考えてなかったようだ。
〖代わりに、我をそなたらの仲間に入らせてくれんか? ルグア殿のテイムモンスターとして……〗
唐突な展開、プレイヤーが頑張ってテイムするのは、当たり前。
対して、モンスターが希望するのは、知ってるゲームでも数えるくらいしかない。セレス達の方を見る。2人は首を小刻みで縦に振っている。
「わかった、仲間にしてやるよ」
私は、初回ログイン時に貰えるテイムアイテムを使い、ドラゴンを捕獲する。名前はすでに決まっていた。
〈クリムゾン・ドラゴン〉
略して、クリム。ドラゴンも気に入ったようで、テイム後のサイズでケージから飛び出す。姿はボスと同じで、大きさが小さくなっただけ。その裏で、破滅への歯車が、震え出した。
◇◇◇◇◇◇
2時間にも及ぶ戦いに勝ち、報酬として、真紅の剣〈クリムゾン・ブレード〉とテイムした〈クリム〉。
クリムには一度ケージの中に入ってもらい、ギルド拠点へ向かう。背中に武器を納刀できるようになっていたので、〈クリムゾン・ブレード〉は背中の鞘へ。
私は長時間の戦闘で、疲労が溜まり鞘の剣で、ふらつくがセレスとガロンに支えられ、ゆっくり歩を進める。
「あら、おかえりなさい。相当お疲れのようね」
ちょうど通りかかったレーナが、左手を頬に当てて呟いた。
「パーシー、ただいまです。今戻りました」
「レーナさん、ただ今戻りました」
私の右肩を担ぐガロンが、挨拶をする。反対側のセレスも一礼。私は声を出そうとするが、意識が遠のく感覚に邪魔される。
「まぁ、可哀想なルグアさん。あと少しで着くから、ゆっくり休むことをおすすめするわ」
そう言って、4人が拠点のゲートを潜った先の壁に
【祝・レイドボスLv1京クリア】
と書かれた垂れ幕が掛けられ、部屋全体が装飾で溢れていた。
「「おめでとう!!」」
ギルドメンバーが一斉にクラッカーを鳴らし、拍手をする。レイドイベントのギルドランキングは、2位との差が大きく暫定1位。
アーサーラウンダーが0を9個分多かった。きっと他ギルドは、悔しいだろう。心の奥で罪悪感が生まれた。それはさておき、みんなに紹介しなければいけないものがある。
私は、朦朧としながらもメニューを操作しケージを取り出す。扉を開けると、クリムが、
〖ここが、そなたのギルドかね。きらびやかでいいのう。我はクリム。名付け親はルグア殿じゃ〗
宙を舞いながら自己紹介をする一匹のドラゴン。戦った人以外のメンバーは硬直。
「すみませんがモルド。そのモンスターは、レイドボスでは?」
「ああ、そうだが…………」
最初に硬直から回復したのは、ベディだった。野太い声が、意識を回復させる。
〖ベディ殿ですな。ネームは確認できんのじゃが、称号はわかる。ベディ殿の言うボスで間違いない〗
「なんと!!」
クリムは、多分AIが搭載されているからなのか、会話を成立させるのが上手い。でも、AIにしては自然な言い回し。きっと、運営が一から組み上げ育てた結果だと思っている。
だが、ギルド内は賛否別れた。すなわち、分裂。一方は、クリムを招いて活動。もう一方は、クリムを手放し殺すこと。この問題は、ルグアにも突き付けられた。
もう1つの問題。ルグアを残し活動するのと、強制退会させる人だ。2つの問題は、全てが解決することはなかった。理由は、1京のボスを倒したことでの問い合わせ。
メールでVWDL運営に確認をすると、”イベントポイントの集計に不正があるのでは”というもの。運営は、翌日から3日間の緊急メンテナンスを開始。
問題を解決する糸口は、毛先も見せずに薄れ、事態は悪化していくだけ。そのことを知らない者は、アーサーと側近、親友の数人しかいなかった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

【VRMMO】イースターエッグ・オンライン【RPG】
一樹
SF
ちょっと色々あって、オンラインゲームを始めることとなった主人公。
しかし、オンラインゲームのことなんてほとんど知らない主人公は、スレ立てをしてオススメのオンラインゲームを、スレ民に聞くのだった。
ゲーム初心者の活字中毒高校生が、オンラインゲームをする話です。
以前投稿した短編
【緩募】ゲーム初心者にもオススメのオンラインゲーム教えて
の連載版です。
連載するにあたり、短編は削除しました。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【おんJ】 彡(゚)(゚)ファッ!?ワイが天下分け目の関ヶ原の戦いに!?
俊也
SF
これまた、かつて私がおーぷん2ちゃんねるに載せ、ご好評頂きました戦国架空戦記SSです。
この他、
「新訳 零戦戦記」
「総統戦記」もよろしくお願いします。

海道一の弓取り~昨日なし明日またしらぬ、人はただ今日のうちこそ命なりけれ~
海野 入鹿
SF
高校2年生の相場源太は暴走した車によって突如として人生に終止符を打たれた、はずだった。
再び目覚めた時、源太はあの桶狭間の戦いで有名な今川義元に転生していた―
これは現代っ子の高校生が突き進む戦国物語。
史実に沿って進みますが、作者の創作なので架空の人物や設定が入っております。
不定期更新です。
SFとなっていますが、歴史物です。
小説家になろうでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる