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第3章 ダークファンタジー編

第85話 ルヴァレイからの通達

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「ガデルしゃん。おかえりなんだりょん」
「ただいまフィレンさん。雷夜さんに風魔さんも」
「新たな武器。手に入れたようだな」
「そうみたいなんだりょん」
「ガデル。呼び出してみて」
「わかった、雷夜さん」

 ――装備転送ウェポン・テレポート レフィレン・ダガー‼

 私は新しく入手したレフィレン・ダガーを手に取る。2度目だからかもう持ち慣れていた。こんなにも馴染む武器は初めて。
 これなら戦いも楽になる。けれども、フラット・サンクチュの存在が未だにわからない。どこまでが本物でどこまでが偽物なのか?
 彼は未来が見えると言っていた。ルグアも未来視できるが、対するフラットは私の目の前でやってくれなかった。
 もしこれが嘘なら。それだけの人と思えばいい。器がちっちゃいただの他人だから。私は戦場へ向かう。
 アレン達が戦っている戦場へ。私も加勢しなければならない。この新しい武器で敵を一掃させる。今の私なら強くあれると思った。

「アレンさん‼」
「ガデルさん‼ 来てくれたんすね‼」
「はい‼ 私も参戦します‼」

 ――神器起動レジェンド・アクティベート ポイズン・フィールド マナエンチャント‼

「これで敵の動きを食い止めます‼」
「ガデルしゃん頭良いりょん。毒でじわじわなんだりょん」
「フィレンさんありがとう」
「どういたしましてなんだりょん」

 明理さんがまだ来てないみたいだけど、これだけ人数がいるんだから、少しは遅らせられる。フォルテもアレンもキレッキレだ。
 私はダガーを構える。切り返しからの切り下ろし。旋回からのスクリュー戦法。肉薄を繰り返し、斬撃を叩き込む。
 バレンも加勢していて、漆黒に包まれている。彼は何を考えているのだろうか? 私にはわからなかった。


 ◇◇◇バレン目線◇◇◇


「ったく。アル中の野郎め……。俺一人にしてどーすんだよ‼ グハァッ⁉ この痛みは最高だろ。こんにゃろーーー‼」
敵軍『バレンが笑っているだと?』
「どんどん攻撃してきやがれ‼」

 俺はアビス・レクイヴァントを放りだし、自らを犠牲にさせて的になる。痛いのは大好きだ。死に近くなればなるほど、うずうずしてくる。
 死を知っているからこそ、うずうずが止まらない。死にたい。だけど、その死に損ないである自分が好きだ。
 チビの野郎みたいに不死身ではないが、流れる血に笑いが込み上げてくる。このまま真っ赤に染まりたい。怒り狂わせて欲しい。

「バレン‼ だ。大丈夫っす……」
「調子馬鹿は黙ってろ‼ こっちにも作戦があんだよ‼ グフッ……。やっぱ最高に楽しいな。玩具にされるのはよぉ‼」
「バレン独特すぎ……っすね……」

 なにが独特だ。俺にとってはこれが普通。

「胸刺すなら刺して来い」
敵軍『だってよ。刺していいなら殺そうぜ?』
「ぬん‼」

 敵軍が襲いかかってくる。俺のの心臓を貫く剣。笑いが止まらない。金庫開けた時と同じ感覚だ。あの時のゾクゾク感は忘れられない。
 血を抜いて鍵にして、返還でどす黒くなった血を受け取る。死んだじいちゃんの記録を塗り替えたあの日。あれが全ての始まりだった。
 七歳児パーティーリーダーに振り回されて、チビや調子馬鹿と出会った、だから、この戦いは絶対勝つ‼

「かかって来やがれぇぇぇぇ‼」
敵軍『ぉぉおおおおおお!!!!!』

 攻撃をされるごとに怒りが込み上げてくる。自主的に必然的に怒りを溜め込む。そして、その怒りをハデスの力へ変換する。

 ――上級ハイエスト精霊憑依エンチャント ヌル ハデス‼ アビス!
 ――追加詠唱ティニアキャスト 上級ハイエスト武装アーマード アンリミテッド・ブースト
 ――連続詠唱トリンキャスト 装備転送ウェポン・テレポート アビス・レクイヴァント アビスエンチャント
 ――複合詠唱フォアルキャスト 深層解放リミットブレイク アビスクラウン エンチャント
 ――最終詠唱ファルフキャスト エンチャント・チェックメイト‼ ビースト!

「グルル……‼」(これだけ怒れりゃこっちのもんだ‼)
敵軍『バレンが……。獣に……⁉』
「グルワァウ‼」(俺が獣だと⁉)

 確かに今の俺の目線が低い。そんなのどうだっていい。今の俺は飢えている。

「グワァウグルル……‼(今の俺は獣だ‼) さあどうする?」

 血の匂いがする。俺は敵に喰らいつく。 そして噛みちぎる。髄まで噛み砕き一気に飲み込む。今の俺は人ではない。

「バレンが獣になってるっすけど……」
「獣になって何が悪い? 調子馬鹿。んな前に戦いに集中しやがれ‼ ガルル」
「バレンその状態大丈夫なんすか?」
「大丈夫じゃねぇよ。さっさと動かねぇと、全部喰うぞ!」

(血がうめぇけど。腹減ってたからちょうどいい)

 俺は敵を引きちぎる。血の匂いが食欲を唆る。人を喰えるのは今の状態のみだろう。普通の顎では骨まで喰えない。
 獣化。獣人化すればより接近戦で攻められる。敵を貪り喰らう。痛みに泣き叫ぶ敵軍。俺にとっては勝利のファンファーレ。
 ひたすら喰らいつく。獣人化状態が切れるまで、暴れ回る。血塗れちまみれの身体。舐めれば傷は治る。
 まるでオオカミとも言える容姿。全身毛皮に覆われて、ハイエナのように肉を頬張る。だんだん腹が満たされてきた。
 そろそろ強制終了するか。

 ――スペルクリア

「ふぅ……。喰った喰った……。さて、食後の運動と行きますか……」
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