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第3章 ダークファンタジー編

第38話 フォルテの父の魔導銃

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「フォルテ。ルナジェインの方は順調?」
「じいちゃんのおかげでな。このリアカーもピンピンしてる。感謝しかねぇよ。一度に十人以上乗せられるしさ。
 あと600人以上残っているが……」
「よかった。その残った人達って……」
「アルヴェリアの防衛部隊だ。ルナジェインを守るために残るらしい」

 ――生し者よ。争いの幕切れを……。

「ッ⁉」
「まずい……。ハデスの呪術だ……。明理は大丈夫か?」
「う、うん。この前ゼウスを憑依エンチャントしたから、その残り香で守られてるみたい。フォルテは?」
「同じくだ。それに、オレの場合は闇属性の影響を受けないらしい。ゼウスの加護……。かもしれないな」

(ゼウスの加護……)

「リゲルに聞けば早いが……。王族で兄弟が生まれると、クリスタルと契約するんだってよ。そん時にオレはゼウスと契約していたらしい」
「それも。思い出したってこと?」
「おん」

 この加護があれば、いくらか楽になる。エルフィレンナと、リアグリフの避難は終わった。
 あとは、ルナジェインのみ。私はフォルテと一緒に向かう。護衛や兵士も避難させた方がいい。
 だが、この時はもう遅かった。

『敵が来たぞ‼ ハデス様のご意向に従え‼』

 ――うおおおおおおおおおおおおおお‼

「何が起こってるの⁉」
「マジかよ」
「え⁉」
「くっそぉぉぉ‼ あいつらはもう、ハデスの言いなりだ。戦争が始まる……」
「嘘。嘘だよ。そんなの……。戦争は……見たくない……」
「明理……。まだ魔石は持ってるか?」
「魔石? それならたくさん持ってるけど」

 私は住民を避難させる時に、患者用の魔石をいくつか集めていた。持っているのは、火、水、雷、風。そして、光と闇。
 中でも、雷の魔石は一つしか持ってない。複製を試みた結果、避難所の光源にするだけの数にできた。
 余分にたくさん用意したので、在庫はたくさんある。ただ、フォルテはこれで何をしようと……。

「そうか。よかった」
「?」
「まだ、オレの家が残っているのなら……。着いてきてくれ」
「わ、わかった」

 フォルテに従う私。ラノグロアに何かあるのだろうか? とにかく急いで向かう。距離はそこまで遠くないが、道は険しくなっていた。
 炎に包まれたラノグロア。フォルテはその炎も気にすることなく、ラノグロア城に入っていく。

「この地下に……。お父ちゃんが隠していた魔銃が……」
「魔銃?」
「ああ。正確には魔導銃な」
「一体どうするつもりなの?」
「どうするって、魔導銃で兵士を撃つんだよ」
「撃つって……」
「大丈夫だ。光の魔石をセットして、オレの加護を反映させれば、ゼウスと同じ効果になる。実際やったことねぇから、予想だけどさ」

(そんなことできるんだ……)

 地下まで駆け下り、必至に部屋を探すフォルテ。だが、その道は落ちた床で塞がれていた。そそくさと引き返すフォルテ。
 私も追いかけて、着いたのはラノグロアの墓場だった。レミリスの時の墓は、もうない。なのに、フォルテは迷うことなく進む。
 横500基、縦400基。同じ配置の墓場が全部で50ヶ所以上。昔はここまで数がなかった。それでも、フォルテは前へ行く。

「城から中に入れないなら……。ここにレイグスと掘った隠し通路が……」
「レイグスって弟の?」
「そうだ。ここの真下に風のナンバー・ストーンがあるんだ。そこからなら、お父ちゃんの部屋に……。墓が動かねぇ……」
「⁉ わかった。私も手伝う‼」
「サンキュー明理‼」

 ――グゴゴゴゴゴゴゴゴォォォ……。

「穴が……」
「まだ残っていたのか……。明理入るぞ‼」
「う、うん」

 一人分の大きさの穴に、身体をねじ込む私とフォルテ。穴の深さは割とあって、一瞬身体が浮いたと思うと、風魔の部屋に到着した。
 まだ踏み入れていない、風魔の部屋のさらに奥。ナンバー・ストーンがあった場所を通り過ぎ、見えてきたのは木製の扉。

「この先にお父ちゃんの部屋がある。魔導銃もあるはずだ」
「開けるよ」
「おう」

 軋む扉は引くタイプで、手前に引き寄せるとともに、ホコリが舞う。咳き込む私とフォルテ。中も使われていなかったからか、散らかっている。
 魔法で簡単にホコリがを除去し、フォルテは戸棚に近づく。そこにはたくさんの書籍が埋まっていた。

「んーと。たしかここの本とこっちの本。あとその下の本三冊を、こう動かせば……」

 縦に三段ある本棚。フォルテは、中段右3左4。上段正面、左5。中段正面2。下段正面三冊を右真ん中左と押し込む。
 
「最後に正面の中央を押し込めば……っと」

 ――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォォ……。

「あった。お父ちゃんの宝箱。こん中に、魔導銃が……。よしッ‼ 明理欲しいものは手に入った‼」
「ほんと?」
「ああ。お父ちゃんが護衛時代に使っていた。遺品たからをさ」
「私も、フォルテが使えそうなの見つけたよ」
「なんだ?」

 私は、フォルテのお父さんが使っていたであろう、魔石の入ったカバンを渡す。市販のカバンよりも丈夫で、容量も大きい。
 魔導銃の使用に魔石が必要ならば、たくさん入る方がいい。弾切れはフォルテが負けることになる。

「だから、無限に魔石を複製、実体化されるように、魔法かけてる。魔力供給は私のを使ってるから、安心して」
「毎回ありがとな。明理」
「当然だよ。フォルテは私の仲間第一号だもん」
「ハハッ。言われてみればそうだな。天井が壊れる前に地上へ出よう。レイグスに教えてもらった。ルナジェインへの抜け道があるんだ」
「わかった。頼りにしてるよ」
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