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第3章

第29話 ルグアの本気

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「グルルルルル」
「本気で来るっす‼ ルグアのこと言えないけど、攻撃は全部この身体で‼ そして避けるっすよ‼」

 〈アルス・グレイソード〉の形状変形。コマンドでできるようにすれば。さらに戦いやすくなると気付いた俺。
 武器を手放し。剣を宙に浮かせ。遠隔で振り回すバレン。手入れされてない長い爪で、俺を引き裂こうとしてくる。

『やっと出られた……。アレン‼』

「ルグア‼」

『集中して‼ 私も合流する‼』

「はい‼」

 ルグアが瓦礫から出てきた。フォルテは回収済みのようで、治癒魔法を連続使用している。相当痛手を負ったらしいが、彼女なら心配いらない。
 俺はルグアを信じる。彼女が俺を信じているように。確実にバレンの尖爪を掻い潜り、伸びる剣で急所を狙う。まずは、脇腹を‼

「グファッ⁉ やるなぁ……」
「まだまだ‼」
「崩壊するのが先か。死ぬのが先か」
「それ以外を俺は描くっすよ‼」
「それ以外だと⁉」

 いつもなら、ぐっすり眠ってしまうバレン。その様子はどこにもない。獣のように飛び跳ねる彼の身体。野性味が爆発する。
 しなやかな動き。後方へのバックステップから、会議室の壁を伝って、強攻撃を仕掛けてくる。俺はそれを回避するため別の壁を探すが、どこも脆くなっていた。

(避けきれないじゃん‼)

 ――ガシャンッ⁉

「当たった……。アレン大丈夫?」
「ルグアあざっす‼」
「どうも。アレンみたいにアクロバットは繰り出せないけど。空中戦は任せて‼」
「なら俺も‼」
「君はしなくていい。今のアレンなら、バレンの動きに追いつける。アクロバットを全開にして‼」
「アクロバットを全開に?」
「そう。アレンのアクロバットトリックバトルを、私に見せて‼」

 アクロバットトリックバトル‼ それが俺の戦い方。俺は体育会系、体操は大の得意。バク宙からの柱伝い。バレンの乱れ引っ掻きは、ルグアが全て対応している。
 いつまで持続するかわからない。俺は落下を続ける天井の破片を蹴り飛ばし、外の方へと向かう。天に昇る。状況を把握するために。

「あともうちょっと。光は見えるけど‼」

『アレン‼ バレンがそっちに行った‼』

「マジっすか⁉」
「うぅ。外に出るな‼」
「ばれッ⁉」
「逃がさん‼」

 ――ズシャッ⁉

「うぐっ⁉」

『アレン‼ 今行く‼』

 ――神器起動レジェンド・アクティベート スカーレット・ブレイブ タイプブレイド‼

「アレンから離れろおおおぉぉォォォォォ‼」

 真下から、正確には斜め後ろから迫り来る熱線。煌々と紅き閃光を放つルグアの剣。近づくにつれて、全身が熱くなる。

「うぉりゃァァァァァ‼」

 ――『アレン避けて‼』

「了解しやした‼」

 俺はルグアの攻撃を避ける。烈火の剣はバレンに命中。しかし、傷一つつかない。身体が強靭すぎる。ルグアの剣は、バレンの皮膚にすら、歯が立たなかった。 

「二人がかりでもダメージが入らないなんて……」
「いや、ルグア。俺の攻撃では弱ってたっすよ‼」
「ほんと?」
「よく見るっす‼ 俺の神器起動でつけた傷が癒えてないっすよ‼」

 俺の技は微々たるものだが、傷痕と残していた。俺の攻撃でなら、怯ませることができる。ルグアには、支援に回ってもらうのが適策だ。

 俺は前衛。ルグアは後衛。

 ――神器起動レジェンド・アクティベート グレイス・ブレイブ‼ タイプ・ランス‼

 俺にもルグアと同じことができるかもしれない。予想は的中し、愛剣はソードからランスに変形した。


 ******


『ま、こんなもんかな? 大体わかっただろ? 私とお前の違いがさ。お前は、広く見すぎだ。どこを攻撃しても、当たると思っている。
 けど、小型エネミーはそうはいかない。もう少し、視野を狭くしたらどうだ?
 それともう一つ。もっと攻撃のレパートリーを、増やした方が良い』


 ******


 ルグアからの指摘を糧に。俺は広く見ずに、正面の狭い的を睨む。中央にバレンがハマれば、こっちのもの。
 バレンを追従する。そして、追撃の時を待つ。なかなか範囲に入らないバレン。だが、その距離は射程圏内だ。
 ここを逃せば次はない。会議室という小さな世界を舞台に、展開されるバトル。経過時間は2時間以上も進んでいる。

「アレン疲れてない?」
「ノープロブレムっす‼」
「の、のー……」
「問題なしっすよ‼ 英語っす‼」
「もうちょっと‼ 私英語できないんだから‼」
「ゲーム用語はペラペラっすけどね。ルグアは」
「それとこれとは別ぅぅ‼」
「行くっすよ‼」

 茶番はこれ以上しない。茶番してたら日が暮れる。何としてもバレンを抑えなければ。会議室の耐久値は下がっていく。
 柱も何本か土台から外れ、支えが消えていた。この城の終わりもかなり近い。だが、バレンは暴走を継続中。彼を止めるには……。

「ゼレネス。アレス。ゼレネスの花を使えば‼」
「ゼレネスの花っすか?」
「そう‼ リゲルは知ってますよね?」
『ええ。一番近いのは、旧ミルフェシア近辺でしょうか』
「アレン。お願いできる?」
「あ、は、はい‼ けど、ルグアは?」
「私はここで食い止める」
「それってひと……」
「今までの戦法を抜きにすれば、これくらい‼ 本当の、真の私ならね」
「ッ⁉ ルグアのオーラが……」

 光が強すぎる。目も開けてられないレベルの極光。黄金が色を失っていく。無色透明になっていく。いや、ただの無色透明ではない。
 黄金の色は完全に消えていない。その代わり、七色に染められている。黄金を覆うように七色のオーロラが包みこむ。

「ルグア。その状態って……」
「アレンの戦いを見て色々勉強しちゃったなぁ……」
「え?」
「今の私は自分でも制御不能。ギリギリ意識を残してる」
「制御不能って……」
「ほら、ゼレネスの花。それでバレンを眠らせれば。そろそろ私の鎖も外れるから」
「鎖ってなんすか?」
「解答はバトルのあとあと‼ こうしてられるのも……」
「ルグア‼ ……。了解しやした‼ あとはお任せしやす‼」
「うん‼」
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