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第2章後編

第98話 残虐的な長話

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 バレンがルグアに連絡を始めて1時間。難航に難航を重ね、応答を待つ。どうやら深層部にまで損傷が起きているらしく、手こずっていた。

「そういえばっすけど、〝脳〟にまで爆弾を……」
「脳だと⁉ チビの野郎め……」
「けど、普通だったっすね……。どこも問題なさそうだし……」
「俺からすれば大問題だ。脳に損傷が起きてれば、深層部にも辿り着けねぇからな」
「そうなんすか?」
「ん? いや待て嘘だろ?」
「どどど⁉」
「チビの野郎……。やりやがったみてぇだ。損傷も死人級に激しいんによ……」

 ――『……』

「ルグア‼」

 スクリーンに映っていたのは、ルグアの深層意識。もちろんその姿も彼女自身。その表情が少し動き始めていた。

 ――『……。この空間は……』

「ルグア‼ なかなか応答してくれなかったっすから……。みんな心配してたんすよ‼」

 ――『なんだ、それだけか……。エルフィレンナは通信魔法が機能しないからな。接続できなくて当然だよ』

「そうなんすね……。それで……」
「そんで、脳の損傷はどうなんだよチビ。俺から見たところ、死人級の大怪我じゃねぇかよ……」

 ――『そこは私も気づいてるよ。だから、少しでも遅らせるために寝ていたんだが……。ま、いくらか良くなったかな?』

「言ってることと現状が真逆だな」

 ――『ただ、現在地からして正門ではないようだ……。別の場所に移動している。ま、囚人が脱獄できないようにはしてるが……』

「正門じゃない? じゃ、どこに?」

 ――『それは、私もわからん……。ま、問題ないだろ? 盗み聞きでは最新型埋め込むとか、何とか言ってるみたいだし』

「最新型⁉ それって……」

 ――『私が脳に埋め込んだことが、開発のきっかけになったらしい。新型なら歓迎だし。損傷もどんと来いだからさ。
 痛めつけられても怒りゃしない。今はその威力がどれほどあるのか。そっちの方で高まってるよ。今回も脳だそうだ』

 やっぱりドMなんだ。ルグアは。どこまで傷負いたいの? 脳が死人級なのに……。そもそもよく生きていられるよね?
 どちらにしろ不死身なのか……。バレンは混乱しているし。俺も混乱中。だって、規格外すぎるんだもん‼

「今どーゆー状況かわかるか?」

 ――『深層部。ですよね? 全部ダダ漏れだったから』

「さすがだな。正解だ。呼びかけ中のも聞こえてたんか。聞こえんなら返事しろよ」

 ――『ぐっすりだったからね。ごめん』

「次やったら殺すかんな‼ チビ‼」

 ――『お好きにどうぞ。急所に突っ込むのも大歓迎だし……。楽しませてくれるのならね。もう一回リベンジしたいし』

「勝てるもんならな。俺はチビの弱点を知っている。てめぇが気づくのが先か、もがき苦しんで死ぬのが先か……」
「ちょちょちょ‼ なんで喧嘩売りあってんすか⁉」
「喧嘩だとぉ⁉」

 ――『んなことやってねぇよ。これでようやく、バレンの固有番号が判明したしさ。そろそろ始まるみたいだ。切るぜ‼』

「了解っした‼ どうか生きて……」

 ――『死ぬわけねぇだろ?』

「そうっしたね……」
「馬鹿なヤツだ……。かけられるもんならかけてみろ。できなかったら殺す」

 ――『なら、こっちは超絶高難易度ゲーのお決まり攻略法で、相手していいかな?』

「ゲーってなんだ。ゲーって」
「ゲームの略っすね……」
「ふーんそっか。んでまだ切ってねんかよチビ‼」

 ――『実は。これ私の方からじゃ切れないみたい……』

「じゃ、こっちから切る。死ぬ気にはなっとけよ‼」

 ――プチンッ‼

 長い長い長話。ということは今手術中? 麻酔なしで脳ドリルだからなぁ。また激痛と戦っているんだろうなぁ。
 っていうか。今起きたってことは、完全に起きてる状態で脳ドリルだよね? 相当痛み激しそうだったし。それでも意識あるのはすごい。
 俺はやらないからね。ルグアじゃないから絶対死ぬもん‼ 生きてる方がヤバいから‼ 激痛大歓迎はエグいから‼

 ――『よしっと……』

「えっ?」

 ――『ん? あ、ああ。逆術式で接続した。こっちなら、エルフィレンナでも使用できるし。最中手術中だし。脳ドリル』

「痛くないんすか?」

 ――『痛いに決まってるよ……。今回は完全覚醒状態で受けることにしたから。胸の爆弾は常時爆破してもらってる。
 もちろん、威力も10倍以上の最新型に変更してもらったし。数も中が爆弾で埋まるくらいにさ。こっちも痛みは激しい。
 ガチで寝てられなくて驚いた。だから今んとこ一睡もしてない。手術が全部完了するまでに2日かかるらしいし。終わるまで耐久戦。まるで解剖されてる感じだな』

「か、解剖……」
「馬鹿馬鹿しい……。死ねよ……チビ」

 ――『私だって死ねるなら死にたいよ。けど、この身体じゃできない。痛みも今じゃ苦に感じないし』

「なんだよ。死にてぇんじゃねぇか」

 ――『あ、そろそろ通信切れる位置まで逝くみたい。切ります』

「二度とかけてくんな。死ね‼」
「バレンさん。言い過ぎっすよ‼」
「調子馬鹿は黙れ」

 ――『はい、じゃ、一旦死に落ちます』

「ちゃんと死ねよ‼」
「……なんか。この二人怖い……」
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