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第2章後編

第73話 アレン脱出作戦 その3

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「ルグアさん‼」

 ――『なんだ?』

「本当にたくさん使っていいんすか?」

 ――『問題ないが……』

「ずっと心配で……。早く会いたいからド派手な不利術デバフ使おうかな? って重ねがけで……」

 ――『重ねがけか……。うおっとアレン。囲まれてるみたいだぞ‼』

「わわわっ‼」

 ――『落ち着けアレン。特異点魔法使うなら使え‼ ぶちかませ‼』

「りょりょりょ、了解しやしたァァァ‼」

 ――『の前に深呼吸な‼』

 俺はあたふたしながらも気持ちを落ち着かせる。ルグアは特異点魔法をたくさん使って良いと言ってくれた。
 この機会を逃してはいけない。4500段階。彼女は俺のために追い込み処理速度を上げて対応してもらっている。
 精神統一と言ってもいいくらい呼吸を整え、特異点魔法の範囲を定める。俺が見えるオーラは城周辺を黒く塗りつぶしていた。

「つまりは、ここ一帯が敵だらけということっすね……。ルグアさんすみません‼ 最大出力で使わせていただきやす‼」

 ――Z+魔法 エレメンタル・フィールド‼
 ――エレメンタル・ポイズンミスト‼

 ルグアに言われた通りに今有効な魔法を唱える。俺に付与される異常状態回復、異常状態無効、永続回復、ダメージ軽減、攻撃力上昇。
 異常状態もデバフだけど、不利術も同じくデバフ。読み方は両方一緒にしてるから、今は議論せずに戦う。
 重ねがけで使用した【ポイズンミスト】。有名ゲームの技名で使われてるけど、効果そのまま周辺の敵を猛毒状態にする。

 ――『ほんとド派手だな。にしても最大出力とは……。私の切り札と同レベルの負荷強度じゃないか……』

「そうなんすか?」

 ――『経験なしでんなこと言わねぇだろ。これで一つわかった。お前の特異点の威力領域が』

「威力……領域……」

 ――『お前の特異点魔法の最大出力が、私の切り札と同等。そこから考えるに、お前の切り札の負荷は私の億倍だろうなってさ』

「お、億倍ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ‼」

 ――『使用時は私が代わりに受けてやる。安心しろ。これくらいは処理可能域の範囲内だ』

「わ、わかりゃした……」
『お二人とも、逃げ道ができ始めたようですよ』

 意識を今現在の世界に戻す。大量にいたモンスターは毒で悶えている最中。逃げるチャンスで出てきた。

『ルグアさん。僕が見せかけ担当をしますので、正規魔法の詠唱を願えますでしょうか?』

 ――『おうよ。任せたぜ。リゲル‼』

『かしこまりました‼ 開けゴマ‼』

 え? 見せかけってそれ? マジでそれなの? ガチで開けゴマ言ってんじゃん‼ 異世界でも通用するのか……。

 ――ゴゴゴゴゴォォォォォォォ‼

『急いで出ましょう。魔法詠唱の場合は自動で施錠されますから』
「全力疾走じゃァァァァァァァァァァァァいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ‼」

 ――『おーい、キャラ崩壊してっぞーー』

「うおぉォォォォォォォ‼ ルグアさーーん‼ 位置情報お願いしゃーーーーす‼」

 ――『旧ライナス北部はフォルテの故郷レミリスの南西。アレンがいる場所から一直線に進めば旧ライナス南部。
 現ルナジェインだな。そこを抜けてさらに南へ進めば、洞穴がある。その地下が私の現在地だ』

「ひたすら南っすね‼ 最大出力で全力‼ 疾走じゃァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ‼
 うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおぉぉぉぉお‼」

 ――『壁気をつけろよ……。私の方も用済んだみたいだし、洞穴の外で待つ』

「あざァァァァァァァァァッすぅぅぅぅ‼」

 以降走ることに意識を向けすぎて、思考がぶっ飛んでしまった。


 ◇◇◇明理ルグア目線◇◇◇


「さて……。そういえば風のナンバー・ストーンが見当たらないけど……」
「アイツの担当は継承した。吸収したからもうねぇよ。それより眠い。さっき寝たばっかなんに眠すぎる……」
「バレンさん。ほんと猫みたいだね。なんか可愛いし」
「可愛くねぇよチビ‼」
「可愛いよ‼」

 補足。これは寝盗られではない。バレンの感情を増やすためのスキンシップだ。私達はアレンと再会するため来た道を戻る。
 洞穴は暗い。多分それがバレンの眠気を引き起こしているのだろう。ショートスリーパーの私には無効なので、気にしていない。

「あとは……。私が地上に運びますね。もうすぐアレンの声が聞こえる頃だし」
「アレンさんって。明理さん達が探していた人ですよね?」
「そうですよ。ロムさん達は初見ですよね。ものすごいテンション高い阿呆・・なので、楽しいですよ」
「あの調子馬鹿か……。耳が痛くなりそうだ……」

 トロンとさせた目を開閉するバレン。見てるこっちまで眠気を感じる。そういえば、フォルテが私に……。


 ******


『明理。コルク栓記念にどうだ?』
『ただのコルク栓でしょ?』
『ただのじゃねぇって。ほらポケットの中突っ込んどく』
『んもう、フォルテー……』


 ******


「もしかしたらコルク栓」

 私はポケットからコルク栓を取り出す。それを勢いよくバレンの鼻へ。いつ見ても息苦しそうだが、念の為だ。
 洞穴の入口に到着し、私は一人ずつ手を繋いで地上に移動させる。忘れてはいけない負荷値も修正済み。
 そして数分後。

『ルーグーアーだんちょーーーー‼』

 アレンが私に向かって突進してきた。
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