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第2章後編

第70話 風のナンバー・ストーン

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 ◇◇◇ロム目線◇◇◇

「風魔さんはこれからどうするんですか?」
「どうするか……。汚染されている以上、観察することしかできない。守護精霊が近寄れば、影響はこちらにも及ぶ」
「そうなんですね……」
「ただ、バレンの現状含め条件が揃っているのは確定と言える。彼はすでに一つ浄化し役割を継承。バレン合ってるか?」
「リヴァイアス?」
「イエス」

 やっぱり二人の会話に着いていけない。僕が何も知らないから。そういうことは知ってる。だけど幼なじみなのにわからない。
 バレンの思考は悟ることが難しい。何でもかんでも大丈夫。何でもかんでもめんどくさい。眠いと言うだけ。

「それがバレンなんだよね……」
「んあ? ロムなんか言った?」
「い、いやあ。なんだったかなぁ……」
「とぼけんな!!」
「あへへ……」
「はぁ……」

(バレン。もしかしてまたやるのかな?)

 またやるというのは、ゼレネスの花で眠らせてクリスタルの中へ入れるというもの。お酒が入っているので心配になる……。
 案の定メルフィナのバッグから大量の花束。香水まで用意されていた。もちろんバレンは眠りにつく……。彼はこの花に弱いから。

「けど、ほんと効果抜群ですね……」
「そうね……。王子と初めて会った場所。実はゼレネスの花畑だったの。あの時花畑の中央で熟睡してたから」

『ロムさん‼ 風魔‼ 雷のナンバー・ストーンの浄化終わりました‼』

「明理さん‼」
「明理。報告助かる。ご苦労だった」

『フォルテのおかげだけどね……』

 遠くで声をかけてきた明理。しかしフォルテの姿がなかった。彼もバレンの50倍以上お酒飲んでいたけど、大丈夫なのだろうか?
 それより、風のナンバー・ストーンの浄化はしておきたい。風車を元に戻すのが先だから。フォルテの話はいつでも聞ける。

「ロム。一つお願いがある」
「お願い? 何かな?」
「一度シルフィードの武器を返してほしい」
「シルフィードの……武器?」
「そう。フォトン・グングニール。それはかつてここに封印されていた」
『ふぁ~うぅ……よく寝た。んで……。そのフォトン・グングニールとやらをオレが解放して、王族の金庫に隠したってわけだ』
「フォルテさん‼」
「おはようフォルテ」
『おはよう……』
「やはりそうだったか……」
『すまない風魔……実はそれだけじゃないんだ……』

 フォルテの声が少し掠れる。明理さんも顔を暗くさせた。

『実はだな……。レイグスがもう一つの武器、エクスキャリオン・ブレードを解放してさ。オレと一緒に金庫へ封印したんだよ』
「エクスキャリオン・ブレードって⁉」
『今バレンが持っているヤツだ』


 ◇◇◇アレストロ城 アレン目線◇◇◇


「古代魔法イコール特異点魔法……。ふむふむ……」
「アレン、貴様は何をブツブツ言っている」
「いや、前見た文献にっすね……」
「なるほど」

 ってか、そんなん知らないここの人の頭があれだよ‼ 無関係な人が解けるの変じゃん‼ うんうん、変だよ変おかしすぎる‼
 というより。こんな城の中で特異点魔法使う必要なくね? 俺の特異点魔法って範囲系とバフ系だし。他に何かあったっけ?
 そんなことはどうでもいいか。今はここからどうにかして逃げないとだし。ルグアにも会いたいし……あれ?

 ――ホワン……。

「金色のオーラ……もしかして‼」
「金色のオーラ? 一体何話している」
「い、いやあ……」

 ――ホワン……。

「ッ⁉ 今度は緑‼ 黄色に……薄紫も‼ 初めて見る色もあんじゃん‼」
「さっきから何をブツブツ言っている‼」
「え、あ、そ、その……すんません……」
「事を今すぐ説明しろ」

(ルグア団長……。俺のために来てたんだ……。何とかして脱出します‼ 団長‼ いや待てよ……。俺の方から通信魔法を……)

「やってみなくちゃ分からないっすよね……。団長……」
「早く事を説明しやがれ‼ さもなければここで息の根を止めさせてもらう」
「へ? 息の根を止める? 別に良いっすけど……」

 おい‼ 何OK出してんだよ‼ 俺‼ 息の根を止める? 死ぬんじゃん‼ 俺死んじゃうじゃん‼
 いやいや、ま。まあ特異点魔法使えばなんとかなるけど? そうしてる場合か‼ 死にに行ってどうすんだよ俺の馬鹿‼
 マジで〝無能ナマケモノ・ヘタレカタツムリ・スキルぼったくり・発狂イケメン馬鹿犬アレン〟じゃん‼

 いや実際は、
〝無能ナマケモノ・自己判断できないヘタレカタツムリ・スキルぼったくり・発狂イケメン思考回路馬鹿犬アレン〟なのか? 
 自虐してどうするんだよ‼ 俺完全に自虐主人公じゃん‼

「ふむ……まあいい。後日聞くとしよう」
「す、すんません……」
「貴様はもう用済みだ」
「ふぁ⁉」
「用済みと言った。ろくに話が通用しない人に言葉を交わす必要はない」
「そ、そうっすよね……」

(今ルグアさん出られるかなぁ?)

 俺は感覚と見つけたオーラを頼りに、ルグアへの接続を試みる。だが、あと少しのところで集中が途切れてしまった。
 練習を繰り返し10回目。それはようやく……。

「……繋がった……かな? ルグア団長‼ 俺です‼ アレンです‼ 聞こえたら返事お願いしやす‼」

 ――『通信魔法か? もしやお前‼』

「俺が繋げたんすよ団長‼」

 ――『はは。ほんとお前成長早すぎだろ。まさかアレンの方から繋げてくるとはな……。私は今風魔や雷……』

「知ってるっすよ‼ オーラで誰が近くにいるのかわかるんで」

 ――『そうだったな。使いこなせているようで安心した。今どこにいるかわかるか? 近くにあるものでも何でもいい』

「近くにあるものっすか?」

 ――『そうだ。それを使って、アレンがいる場所周辺のサブマップ作るからさ』

「了解しやした‼」
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