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第2章後編

第63話 取り残された人

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「あとはちっこいのがやれ……」
「アハハ……。でも、なんか親近感湧くんだよね」
「親……近……感?」
「私も、早く終わらせたくなったりするから。そういうところが似ているなぁって」
「か、勝手に同類扱いしねぇでくれ」
「ふぁふ♡ バレンさん照れてる」
「て、てて照れてなんかねぇって。茶化すなバーーーーーカ‼」

 そんなことより、またゴブリン軍団が野次馬化している。戦いたくて不満なのか、領地から追い出すためのブーイングなのか?
 とにかく早くクエストを終わらせる必要がある。このようなクエストには、親玉がいる可能が高いため、親玉を探すのが最善手。
 私は、ポケットの中に入った、受注控えのシートを改めて確認する。


――――――――――――――――――


【ミニオンゴブリン討伐】

クエストクラス:F+
クエスト形式:魔物討伐
クエスト場所:西部ラウナ遊園地周辺
クリア報酬:5000ウェレス
サブクエスト:金鉱石50個納品


――――――――――――――――――


 サブクエストについては、もうすでに大量の金鉱石があるので、ノルマクリア。しかし、ゴブリン討伐数の具体的な条件がなかった。
 これでは、どこまでがノルマなのかがはっきりしない。親玉を見つけて倒せばなんとかなるけど、気配もない。
 すぐ近くにはいないのだろう。予想で作るサブマッピングでなら問題ないけど。
 〝リアゼノン〟第四層や第五層のように、上空からの把握ができない。これは間接的な行動制限なのだろうか?
 もしアレンがこの状況に置かれていたなら、彼はオーラで居場所を突き止める。だけど、私にはそれができない。
 把握の仕方が全く違うのだから。真似できることもあれば、実現不可能の場合も多いはず。

「ちっこいのいい事教えてやっけどいるか?」
「いい事? なんですか?」
「の前に、俺の元々の立ち位置見りゃわかんだろ? 開園前の特別入場を許可させてやる」

(そうか。その手が……。バレンは元第二王子。まだ権限が切れてなければ、入れる可能性が残ってる)

「てめぇはここで待ちな。余計なやつ連れ歩く方が邪魔だ」
「わかった。じゃあ私は、メルフィナさんとロムさんを呼んできます」
「そういう判断は好きにしていい。俺は関係ねぇっしよ」
「りょーかい‼ 呼んできます‼ 王子さん‼」
「んだから王子じゃねぇっての‼ アホバカチビ女‼」

 バレンの言葉が少々グサリと突き刺さるけど、遊園地はお任せすることにした私は、休憩用の茂みへと走る。
 ついでに、上げすぎた負荷の倍率も、300段階までに下げておく。さすがに、現実世界での3年前みたいにはなりたくない。
 自分の限界――実際は存在しないのだろうが――を考えずに、大幅な倍率変更で意識を失って病院行き。
 3年間の療養とゲーム禁止令に従ったことで、開発に携わった〝リアゼノン〟にログインできた。
 だから、今は一時的に上昇させるだけにして、控えめにする。少しでも負担を減らすために。
 そうこうしているうちに、茂みへ到着。ロムとメルフィナを呼んで、遊園地入口に戻る。

「あとは、バレンさんを見つければいいんだけど……」
「ふーん。思ったより速ぇな。もうちっとで入場できっけど……」
「交渉はついたの?」
「交渉もなんもねぇよ。さっき暖かくなったらつったけど、今は廃墟。魔物出てっからがらんどうだ」
「がらんどうって、無人⁉」
「おん」

 そうだったのか。やけにゴブリンだけで人が少ないと思ったら、急襲に遭っていたなんて……。
 正門の扉をガラガラとスライドさせるバレン。私も手を添えて、一緒に押す。
 扉が開くと押し寄せてくるゴブリン軍団。〝リアゼノン〟第20層と同じ光景だった。今私はアレンがいた場所と似た場所にいる。

「ってことはもしかして……」

 ――Z+魔法 ジャッジメント・オーシャン・ラビリンス‼

 ゴブリン軍団を飲み込む激流。オーシャンは津波を表している短縮術式で、火砕流と同じように壁に沿って流れていく。
 水だから被害も少ない。飲み込まれたゴブリン軍団は溺死判定で一掃。
 あとは親玉だけ。あの時と同じように、見えない壁で仕切られている道。最後の鬼とのバトルを思い出す。

「明理さんあれ‼」
「ロムさんどうしたんですか?」
「人かしら? 取り残された人の可能性が高いわね」
「よく生存できるよなぁ。興味ねぇけど」
「バレン君はもう……」
「別にいいだろ? 赤の他人との接触は真っ平御免だ……」
「真っ平御免って。私はどうなるの?」
「てめぇは特別枠だ。ちっこいの」

 なんやかんや言って、私は特別枠で落ち着いたらしい。それでもバレンは、警戒の表情をしたまま横を歩いている。
 何も襲ったりする気はないのに……。そこまで、私という存在が嫌いなのだろうか? あまりにも過剰すぎる。
 これ以上考えると私まで過剰になるので、程々に。仲間と共に取り残された人の近くへ歩み寄る。

「お久しぶりです。旅の冒険者様。そしてこの世界に生きる者よ。皆様のことをずっとお待ちしておりました」

 立っていた人は、すらりとした体型の若い女性。彼女の白い肌は、どこかで見たことがあった。
 短い時間だけアレンと一緒に行動して、彼氏の墓場で木になった女性。彼氏の近くで眠りにつき、アレンに鏡の盾を渡した人。

「もしかしてあなたは。第十八層にいたダレネスさん?」
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