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第2章後編
第60話 西部ラウナ遊園地
しおりを挟む ◇◇◇西郡ラウナ遊園地◇◇◇
「んな。どうして俺連れてくんだよ……。眠りたんねぇんだけど……」
「そうですよ明理さん。僕達はまだいいですけど……」
「バイタル値異常でしょ? ちゃんと計算に入れてるから大丈夫。一時的だけど、魔法で安定させることならできるし。
〝治療魔法〟とかわかるかな? それの最上位互換なら」
――Z+魔法 ジャッジメント・フローリア・ヒール‼
「ッな⁉ こ、ここ、古代……魔法」
どうして私が特異点魔法を使うと、みんな古代魔法と言うのだろうか? 私にとっては普通だけど、知らぬ間に風化したのだろう。
〝フローリア〟はフローラルからとった治癒魔法。ゲーム内では異常状態回復と永続回復。ここでは精神異常の治癒に効く。
追加で属性魔力値の上昇バフを付与したので、しばらく彼も問題ないはず。万全にしておいた方が楽だから。
「どう……かな?」
「……。眠気は引いた……。んけど。さっきのは古代魔法なんだろ? ぜってぇそれに決まってる‼
この目で見れるなんて今すぐ死んでもいいくらいだ。俺は所詮遊び道具。結婚なんか論外論が……」
「あら王子? そう言っておいて、あたしとの関係忘れたのかしら? 『あたしのために生きてもらう』って言ったわよ?」
「あ、ああれはべべ別だ。ベツモンダイ……」
「さらに付け足すと王子は〝好きにしろ〟って答えてたわよね? 忘れないでちょうだい」
(メルフィナさん。チェリスよりも怖い……)
完全に凍りついたバレン。私にはどうしようもない。早くクエストを終わらせて情報入手したいけど、この空気感に寒気がする。
私の隣には、そんな二人に苦笑を浮かべるロム。このままでは時間が過ぎるだけ。
いつの間にか、目的のゴブリンが野次馬化していた。
「おふたりとも、そろそろやめません? 私が指導するので……。最初はロムさんからにしようかな? ちょっとその槍を貸してください」
「〈フォトン・グングニール〉をってこと?」
「はい。一度握ってみたいのもあるし、仮の槍がないので。一部のメンバーしか握ることができなかったはずだから、えーと……」
――パシンッ‼
(わかっていたけど、やっぱり弾かれるんだよね……。フォルテが適合者だったと思うけど、基本拳術だから指導丸投げは難しいか……)
「なら、弾かれるのを上手く利用して遠隔魔法で……。追加で保護魔法と、反射系統の弱いやつを重ねがけすれば……素手で……」
魔法術式をワード変換させ、声に出しながら発動していく。無言詠唱よりも効果時間が長いし、効果強度も高い。
最初の言葉で槍を浮かせる。二つ目で弾かれないように膜を張り、三つ目で反発方向を逆転。逆転させれば弾かれても引き寄せられる。
「下準備よし。ロムさん。至近距離戦法と中距離戦法、どっちがいいですか?」
「……そんな。本当に持ってしまうんですね……」
「私の集中力切れるまでね。約5時間は永続使用できるかな? 少しメニュー変更」
「メニュー変更……」
(〈フォトン・グングニール〉…実際に握ってわかったことだけど、この槍は至近距離向きでも、中距離向きでもない。
もしかしたら遠距離向き? そうなると手探りで戦術練り直す必要も……。指導の前に私が勉強しないと、か……)
今日はなぜか頭の回転時間が早く短い。この状態で勘に任せれば、なんとかなるのではと、ひたすら模索を続ける。
遠距離なら空気を振動させる方法が有力。そのためには勢いをつけるしかない。属性付与の思考転換法を、応用してみることにした。
風属性を思考だけで増幅。魔法で強制的に増幅させる方法もあるけど、トリック丸見えからの連行なので、使用不可能だ。
ってことで、複数同時に魔法を発動しながら、無事に属性値の限界まで増幅させたので、そのまま槍の攻撃範囲を伸ばす。
「……すす、すごい。こんな方法もあるんですね……」
「ほんの少しだけ無理してますけどね……。特異点魔法……。皆さんが言う古代魔法の代償が残ってるから。
一応一日10回までは連続使用できます。その代わり受ける代償も倍になるけど」
「その代償って。噂では〝即死レベル〟ってバレンから聞いたんですが……」
「〝即死レベル〟ね……。あながち間違えではないけど、私だけ例外だから。実際は無限に使えると思うし……」
「む、無……限……」
「さて、本気で行きますかね……」
私は増幅した属性魔力をギリギリまで使い、槍の長さを伸ばす。そのまま形状変形を行ない弓へ。
魔法不使用なので、魔力操作は思考と集中力のみ。少しでも油断すれば、魔力供給がプツリと途絶えて、元の槍に戻る。
これをロムに伝授したいのだけど、習得するには時間がかかる。なにせ、彼は戦闘初心者に近いのだから。
頭の片隅で考えながら、生成した魔力矢を番えると、狙いを定めて射抜いていく。
ロムには通信魔法で解説。適正距離が遠距離であっても、中距離までなら許容範囲と見て、槍の先と弓で貫通させる。
「やっ……ぱり……」
「明理さん‼」
「ウェンドラに頼めばよかった。もっと負荷をさ……」
「負荷を下げ?」
「3000億倍に引き上げてもらえばよかった。集中力が続かない……。今からじゃ遅いし」
「3000億倍……」
「まあ、なんとかなるけど」
「なんとかなるんかい‼』(ロム/フォルテ)
「んな。どうして俺連れてくんだよ……。眠りたんねぇんだけど……」
「そうですよ明理さん。僕達はまだいいですけど……」
「バイタル値異常でしょ? ちゃんと計算に入れてるから大丈夫。一時的だけど、魔法で安定させることならできるし。
〝治療魔法〟とかわかるかな? それの最上位互換なら」
――Z+魔法 ジャッジメント・フローリア・ヒール‼
「ッな⁉ こ、ここ、古代……魔法」
どうして私が特異点魔法を使うと、みんな古代魔法と言うのだろうか? 私にとっては普通だけど、知らぬ間に風化したのだろう。
〝フローリア〟はフローラルからとった治癒魔法。ゲーム内では異常状態回復と永続回復。ここでは精神異常の治癒に効く。
追加で属性魔力値の上昇バフを付与したので、しばらく彼も問題ないはず。万全にしておいた方が楽だから。
「どう……かな?」
「……。眠気は引いた……。んけど。さっきのは古代魔法なんだろ? ぜってぇそれに決まってる‼
この目で見れるなんて今すぐ死んでもいいくらいだ。俺は所詮遊び道具。結婚なんか論外論が……」
「あら王子? そう言っておいて、あたしとの関係忘れたのかしら? 『あたしのために生きてもらう』って言ったわよ?」
「あ、ああれはべべ別だ。ベツモンダイ……」
「さらに付け足すと王子は〝好きにしろ〟って答えてたわよね? 忘れないでちょうだい」
(メルフィナさん。チェリスよりも怖い……)
完全に凍りついたバレン。私にはどうしようもない。早くクエストを終わらせて情報入手したいけど、この空気感に寒気がする。
私の隣には、そんな二人に苦笑を浮かべるロム。このままでは時間が過ぎるだけ。
いつの間にか、目的のゴブリンが野次馬化していた。
「おふたりとも、そろそろやめません? 私が指導するので……。最初はロムさんからにしようかな? ちょっとその槍を貸してください」
「〈フォトン・グングニール〉をってこと?」
「はい。一度握ってみたいのもあるし、仮の槍がないので。一部のメンバーしか握ることができなかったはずだから、えーと……」
――パシンッ‼
(わかっていたけど、やっぱり弾かれるんだよね……。フォルテが適合者だったと思うけど、基本拳術だから指導丸投げは難しいか……)
「なら、弾かれるのを上手く利用して遠隔魔法で……。追加で保護魔法と、反射系統の弱いやつを重ねがけすれば……素手で……」
魔法術式をワード変換させ、声に出しながら発動していく。無言詠唱よりも効果時間が長いし、効果強度も高い。
最初の言葉で槍を浮かせる。二つ目で弾かれないように膜を張り、三つ目で反発方向を逆転。逆転させれば弾かれても引き寄せられる。
「下準備よし。ロムさん。至近距離戦法と中距離戦法、どっちがいいですか?」
「……そんな。本当に持ってしまうんですね……」
「私の集中力切れるまでね。約5時間は永続使用できるかな? 少しメニュー変更」
「メニュー変更……」
(〈フォトン・グングニール〉…実際に握ってわかったことだけど、この槍は至近距離向きでも、中距離向きでもない。
もしかしたら遠距離向き? そうなると手探りで戦術練り直す必要も……。指導の前に私が勉強しないと、か……)
今日はなぜか頭の回転時間が早く短い。この状態で勘に任せれば、なんとかなるのではと、ひたすら模索を続ける。
遠距離なら空気を振動させる方法が有力。そのためには勢いをつけるしかない。属性付与の思考転換法を、応用してみることにした。
風属性を思考だけで増幅。魔法で強制的に増幅させる方法もあるけど、トリック丸見えからの連行なので、使用不可能だ。
ってことで、複数同時に魔法を発動しながら、無事に属性値の限界まで増幅させたので、そのまま槍の攻撃範囲を伸ばす。
「……すす、すごい。こんな方法もあるんですね……」
「ほんの少しだけ無理してますけどね……。特異点魔法……。皆さんが言う古代魔法の代償が残ってるから。
一応一日10回までは連続使用できます。その代わり受ける代償も倍になるけど」
「その代償って。噂では〝即死レベル〟ってバレンから聞いたんですが……」
「〝即死レベル〟ね……。あながち間違えではないけど、私だけ例外だから。実際は無限に使えると思うし……」
「む、無……限……」
「さて、本気で行きますかね……」
私は増幅した属性魔力をギリギリまで使い、槍の長さを伸ばす。そのまま形状変形を行ない弓へ。
魔法不使用なので、魔力操作は思考と集中力のみ。少しでも油断すれば、魔力供給がプツリと途絶えて、元の槍に戻る。
これをロムに伝授したいのだけど、習得するには時間がかかる。なにせ、彼は戦闘初心者に近いのだから。
頭の片隅で考えながら、生成した魔力矢を番えると、狙いを定めて射抜いていく。
ロムには通信魔法で解説。適正距離が遠距離であっても、中距離までなら許容範囲と見て、槍の先と弓で貫通させる。
「やっ……ぱり……」
「明理さん‼」
「ウェンドラに頼めばよかった。もっと負荷をさ……」
「負荷を下げ?」
「3000億倍に引き上げてもらえばよかった。集中力が続かない……。今からじゃ遅いし」
「3000億倍……」
「まあ、なんとかなるけど」
「なんとかなるんかい‼』(ロム/フォルテ)
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