104 / 341
第1章
第96話 本気の俺は……
しおりを挟む――ウォォォォォォォォォ……。
「ななっ⁉ なんかデカいゴブリンが落ちてき……」
――ウォォ?
アレン「へ?」
リゲル『く、空中浮遊……』
ダレネス「してますね……」
――『い、今のうちに……』
どこかつらそうな声を出すルグアと、不自然に浮遊する巨大ゴブリン。浮遊している本人も、目をまん丸くさせている。
「ルグア団長⁉ 一体これはどゆこと? 実体はないのに……」
――『遠隔で受け止めているんだよ。ものすごい集中させてやる必要があるから、いつまで続くかは……。なあリゲル‼』
『はい、なんでしょう?』
――『目算でいいから大体の重さを教えてくれ‼』
『それでしたら、2500ウィレトだと思います』
ウィレト? 聞いたことのない単位だ……。世界中にいろんな単位があるけど、ルグアはこれでわか……。
――『2500ウィレトってことは、約50から60トンか……』
理解出来んのかーーーーーーーい‼ あ、ここ地の文だったわ。マズイマズイ。ガデルに見つかったら怒られるパターンだ……。今、完全石化中だけど……。
ってか、それが先じゃん‼ 優先順位‼ 優先順位俺間違ってる‼ 仲間助けないと‼ だけど、どうすれば?
いや、その前に今更だけど、50トンから60トンって人死んでんじゃん‼ ルグア怪力すぎなんすけどぉぉぉ‼
――『いいか……ら、ア……レン早くッ……』
「ルグア、俺に良い考えがあります‼ そのままでキープしてください‼」
――『この状態でか……。なら、一時間耐えてみるか……。それくらいで問題ねぇよな?』
(余裕ありすぎでありがたいっすよ。マジで)
俺は、武器を〈クリムゾン・ブレード〉に変更。通常は火属性だが、無理やり氷属性を付与させる。意思の力だけで属性変更させるのはこれで二回目。それなのに、属性の増幅速度が早くなったいた。
もしかしたら、遠隔で協力している愛人を巻き込むかもしれない。だけど、ずっと迷っていれば時間の無駄。
今まで俺は何を学んで来たんだ……。行動力や人間関係、協力することの大切さ。必要不必要の違い。様々なことを教わって来たじゃないか……。
まだ、わからないことが多いけど……。
(多いけど……。教わってなくてもできることが、きっとまだッ‼)
――ビュルグォォォォォン‼
「り、リゲ……。いえ、アレンさん、さ、寒い……。へっくしょん……」
「ダレネスさん、すぐ温まりますから、大丈夫っすよ‼ 今は、このバカデカゴブリンを一瞬で‼」
俺を中心に渦巻くブリザード。ものすごく寒いはずなのに、全く気にならない。氷点下なのだろうけど、温度変化が感じられない。
――『成長したな……』
「えゥ?」
――『初めて会った時より成長している。今のお前は、正真正銘の本気で戦おうとしている』
「正真……正銘の……本気……」
――『何ボケっとしてんだよ。考える前に動け‼ クヨクヨする暇あるんじゃみっともねぇよ。背筋伸ばして何度も見詰め直せ。諦めたら全部終わっちまうぞ‼』
「この言葉……。前に風魔が……」
彼は人の言葉を借りることが多い。けれども、本当に本人が同じ発言をするとは、少しも思わなかった。ただ思いついたことを言っているだけだと考えていたから。
――『早くしねぇと集中切れるぞ‼』
「そうっすね‼」
(ゴブリンはすでに絶対零度のはず。なら‼)
「属性を火属性に急速転換すれば‼」
余分な思考は一旦放棄。前触れも無しに、極寒の吹雪から、灼熱地獄へ切り替える。最初にやった時は集中するだけでものすごい脆かった。
しかし、今は本気で倒そうとしている。ルグアの勘が合っているなら、今の俺はきっとその上に行くこともできる。
そうしている間に、炎はゴブリン集団を巻き込み、一面を焼け野原へ変えていく。桜の木も形すら成していない。そして……。
――ブゥワァゴォォォン‼
絶対零度のゴブリンは、急激な温度上昇で盛大な爆裂を放ち、灰すら残さず消し去った。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
ビースト・オンライン 〜追憶の道しるべ。操作ミスで兎になった俺は、仲間の記憶を辿り世界を紐解く〜
八ッ坂千鶴
SF
普通の高校生の少年は高熱と酷い風邪に悩まされていた。くしゃみが止まらず学校にも行けないまま1週間。そんな彼を心配して、母親はとあるゲームを差し出す。
そして、そのゲームはやがて彼を大事件に巻き込んでいく……!
VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。
ーOnly Life Onlineーで生産職中心に遊んでたらトッププレイヤーの仲間入り
星月 ライド
ファンタジー
親友の勧めで遊び、マイペースに進めていたら何故かトッププレイヤーになっていた!?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
注意事項
※主人公リアルチート
暴力・流血表現
VRMMO
一応ファンタジー
もふもふにご注意ください。
強くてニューゲーム!~とある人気実況プレイヤーのVRMMO奮闘記~
邑上主水
SF
数多くの実況プレイヤーがプレイする、剣と魔術のファンタジーVRMMOゲーム、ドラゴンズクロンヌで人気実力ともにNo1実況プレイヤー江戸川 蘭はその人気ぶりから企業からスポンサードされるほどのプレイヤーだったが、現実世界では友達ゼロ、ボッチでコミュ障の高校生だった。
そして、いつものように苦痛の昼休みをじっと耐えていたある日、蘭は憧れのクラスメイトである二ノ宮 鈴に思いがけない言葉をかけられる。
「ドラゴンズクロンヌ、一緒にプレイしてくれないかな?」
これはLV1のキャラクターで知識とテクニックを武器に仮想現実世界を無双していく、とある実況プレイヤーの(リア充になるための)奮闘記である。
モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件
こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。
だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。
好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。
これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。
※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ
Alliance Possibility On-line~ロマンプレイのプレーヤーが多すぎる中で、普通にプレイしてたら最強になっていた~
百々 五十六
ファンタジー
極振りしてみたり、弱いとされている職やスキルを使ったり、あえてわき道にそれるプレイをするなど、一見、非効率的なプレイをして、ゲーム内で最強になるような作品が流行りすぎてしまったため、ゲームでみんな変なプレイ、ロマンプレイをするようになってしった。
この世界初のフルダイブVRMMORPGである『Alliance Possibility On-line』でも皆ロマンを追いたがる。
憧れの、個性あふれるプレイ、一見非効率なプレイ、変なプレイを皆がしだした。
そんな中、実直に地道に普通なプレイをする少年のプレイヤーがいた。
名前は、早乙女 久。
プレイヤー名は オクツ。
運営が想定しているような、正しい順路で少しずつ強くなる彼は、非効率的なプレイをしていくプレイヤーたちを置き去っていく。
何か特別な力も、特別な出会いもないまま進む彼は、回り道なんかよりもよっぽど効率良く先頭をひた走る。
初討伐特典や、先行特典という、優位性を崩さず実直にプレイする彼は、ちゃんと強くなるし、ちゃんと話題になっていく。
ロマンばかり追い求めたプレイヤーの中で”普通”な彼が、目立っていく、新感覚VRMMO物語。
テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ
雪月 夜狐
SF
「強くなくても楽しめる、のんびりスローライフ!」
フリーターの陽平が、VRMMO『エターナルガーデンオンライン』で目指すのは、テイマーとしてモンスターと共にスローライフを満喫すること。戦闘や冒険は他のプレイヤーにお任せ!彼がこだわるのは、癒し系モンスターのテイムと、美味しい料理を作ること。
ゲームを始めてすぐに出会った相棒は、かわいい青いスライム「ぷに」。畑仕事に付き合ったり、料理を手伝ったり、のんびりとした毎日が続く……はずだったけれど、テイムしたモンスターが思わぬ成長を見せたり、謎の大型イベントに巻き込まれたりと、少しずつ非日常もやってくる?
モンスター牧場でスローライフ!料理とテイムを楽しみながら、異世界VRMMOでのんびり過ごすほのぼのストーリー。
スライムの「ぷに」と一緒に、あなただけのゆったり冒険、始めませんか?
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/270920526】
現実逃避のために逃げ込んだVRMMOの世界で、私はかわいいテイムモンスターたちに囲まれてゲームの世界を堪能する
にがりの少なかった豆腐
ファンタジー
この作品は 旧題:金運に恵まれたが人運に恵まれなかった俺は、現実逃避するためにフルダイブVRゲームの世界に逃げ込んだ
の内容を一部変更し修正加筆したものになります。
宝くじにより大金を手に入れた主人公だったが、それを皮切りに周囲の人間関係が悪化し、色々あった結果、現実の生活に見切りを付け、溜まっていた鬱憤をVRゲームの世界で好き勝手やって晴らすことを決めた。
そして、課金したりかわいいテイムモンスターといちゃいちゃしたり、なんて事をしている内にダンジョンを手に入れたりする主人公の物語。
※ 異世界転移や転生、ログアウト不可物の話ではありません ※
※修正前から主人公の性別が変わっているので注意。
※男主人公バージョンはカクヨムにあります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる