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第1章 

第96話 本気の俺は……

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 ――ウォォォォォォォォォ……。

「ななっ⁉ なんかデカいゴブリンが落ちてき……」

 ――ウォォ?

アレン「へ?」
リゲル『く、空中浮遊……』
ダレネス「してますね……」

 ――『い、今のうちに……』

 どこかつらそうな声を出すルグアと、不自然に浮遊する巨大ゴブリン。浮遊している本人も、目をまん丸くさせている。

「ルグア団長⁉ 一体これはどゆこと? 実体はないのに……」

 ――『遠隔で受け止めているんだよ。ものすごい集中させてやる必要があるから、いつまで続くかは……。なあリゲル‼』

『はい、なんでしょう?』

 ――『目算でいいから大体の重さを教えてくれ‼』

『それでしたら、2500ウィレトだと思います』

 ウィレト? 聞いたことのない単位だ……。世界中にいろんな単位があるけど、ルグアはこれでわか……。

 ――『2500ウィレトってことは、約50から60トンか……』

 理解出来んのかーーーーーーーい‼ あ、ここ地の文だったわ。マズイマズイ。ガデルに見つかったら怒られるパターンだ……。今、完全石化中だけど……。
 ってか、それが先じゃん‼ 優先順位‼ 優先順位俺間違ってる‼ 仲間助けないと‼ だけど、どうすれば?
 いや、その前に今更だけど、50トンから60トンって人死んでんじゃん‼ ルグア怪力すぎなんすけどぉぉぉ‼

 ――『いいか……ら、ア……レン早くッ……』

「ルグア、俺に良い考えがあります‼ そのままでキープしてください‼」

 ――『この状態でか……。なら、一時間耐えてみるか……。それくらいで問題ねぇよな?』

(余裕ありすぎでありがたいっすよ。マジで)

 俺は、武器を〈クリムゾン・ブレード〉に変更。通常は火属性だが、無理やり氷属性を付与させる。意思の力だけで属性変更させるのはこれで二回目。それなのに、属性の増幅速度が早くなったいた。
 もしかしたら、遠隔で協力している愛人を巻き込むかもしれない。だけど、ずっと迷っていれば時間の無駄。
 今まで俺は何を学んで来たんだ……。行動力や人間関係、協力することの大切さ。必要不必要の違い。様々なことを教わって来たじゃないか……。
 まだ、わからないことが多いけど……。

(多いけど……。教わってなくてもできることが、きっとまだッ‼)

 ――ビュルグォォォォォン‼

「り、リゲ……。いえ、アレンさん、さ、寒い……。へっくしょん……」
「ダレネスさん、すぐ温まりますから、大丈夫っすよ‼ 今は、このバカデカゴブリンを一瞬で‼」

 俺を中心に渦巻くブリザード。ものすごく寒いはずなのに、全く気にならない。氷点下なのだろうけど、温度変化が感じられない。
 
 ――『成長したな……』

「えゥ?」

 ――『初めて会った時より成長している。今のお前は、正真正銘の本気で戦おうとしている』

「正真……正銘の……本気……」

 ――『何ボケっとしてんだよ。考える前に動け‼ クヨクヨする暇あるんじゃみっともねぇよ。背筋伸ばして何度も見詰め直せ。諦めたら全部終わっちまうぞ‼』

「この言葉……。前に風魔が……」

 彼は人の言葉を借りることが多い。けれども、本当に本人が同じ発言をするとは、少しも思わなかった。ただ思いついたことを言っているだけだと考えていたから。

 ――『早くしねぇと集中切れるぞ‼』

「そうっすね‼」

(ゴブリンはすでに絶対零度のはず。なら‼)

「属性を火属性に急速転換すれば‼」

 余分な思考は一旦放棄。前触れも無しに、極寒の吹雪から、灼熱地獄へ切り替える。最初にやった時は集中するだけでものすごい脆かった。
 しかし、今は本気で倒そうとしている。ルグアの勘が合っているなら、今の俺はきっとその上に行くこともできる。
 そうしている間に、炎はゴブリン集団を巻き込み、一面を焼け野原へ変えていく。桜の木も形すら成していない。そして……。

 ――ブゥワァゴォォォン‼

 絶対零度のゴブリンは、急激な温度上昇で盛大な爆裂を放ち、灰すら残さず消し去った。
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