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第1章 

第22話 釣り大会の王冠は……

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「なんか、重くなったんだけど……」

 俺は引っ張られる感覚に困惑する。今は釣り大会の真っ最中。しなる竿を押さえるがビクともしない。

「アレン、ちょっと私に代わってくれ」
「あ、はい。了解しやした」

 交代すると、ルグアは竿を巧みに動かし釣り上げる。他のみんなも山のように釣り上げて、すでに魚で溢れていた。

「思えばこの魚。何に使うんすか?」
「ん~。半分は食用。もう半分は納品用だな」

 半分食用って多すぎない⁈ 説明するならデカいクジラ100頭分だよ⁉ 想像しづらいと思うけど量ヤバすぎ‼

「ってことで、私はこのまま簡単に火を通して……。と」

 突然ルグアが、加熱調理しただけの魚を食べ始めた。しかも一口で。ゲームだから骨関係ないもんね。
 俺も同じように食べてみる。でも、さすがに無理があったようで、上手く食べられなかった。ルグアに火を通し直してもらい、もう一度。

「意外と美味しいですね。いつもいろんなゲームで食べてるけど、ここまで美味しいのは初めてなんじゃね? ってくらい驚いてます」
「そうか。私はあんまこだわってねぇけど、たまにはな」

 へぇー。ってか釣り大会関係なくね⁈ 普通に食事してていいの⁉ 釣り大会終わった系?

「よ~しぃ‼ ウチもたっくさん食べるよぉ~‼ 一気に十匹‼ なんちゃって」

 ふ、フランまで⁉ 方向性変わるの早くね⁈ もっと釣り楽しもうよ……。
 俺は湖の方に向かって竿を手に取る。糸を投げ入れ引っかかるのを待ち、重くなったら釣り上げる。

「思えば。ルグアは釣れた……」
「大物ゲット‼ どうだ⁉」

 いつの間にか、大間のマグロと同じくらい立派な魚を片手に、ルグアがドヤ顔で喜んでいた。
 楽しそうなところを見ると、みんな笑顔になる。バトルも――LAラストアタックしかやってないけど――とっても楽しい。

 デスゲームだから、残酷な場面もいろいろあるだろうが、ログアウトするために戦いたい。
 ステータスが減少しても、技術で強くなればいい。みんなみたいに……。ルグア超えはハードルが高すぎるだろうが……。

『みなさん、お料理ができたので集まって欲しいです‼ 早くしないと、大食いフランが全部食べてしまうのです‼』
「「はーい‼」」

 ガロンに呼ばれて湖から離れる。大会をしていたというのは、とっくの昔に忘れていた。
 俺が最後だったので、ウェンドラの隣に座った。やはりウェンドラの隣となると、威圧感と嫌悪感が半端ない。思わず身震いしてしまう。

「アレン。どうかなされましたか? 顔色が悪いようですが……」

 ウェンドラが気にかけて聞いてくる。恐怖しか感じない。そう思っているのは俺だけだろうか?
 すると、背中に冷たい何かが流れ落ちる。真後ろを見ると、目に入ったのは、なにやら黒いモヤ。

「あの、ルグア? なんかモヤが見えるんすけど……」
「ん? 私には見えないが……」

 えっ⁈ じゃあモヤ見えてんの俺だけ? 他のみんなは普通に食事をしている。

「多分、何かあったんだろうな。アレン案内してくれ‼ ウェンドラも頼む」
「了解しました」

 なんでウェンドラも? まあいいか。俺は二人を連れて、モヤが見えた森林に向かった。
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