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第2話 桃葉の家
しおりを挟む「お兄ちゃん!! ここが私の家だよ!!」
連れてこられたのは、新築に近い真っ白の一軒家。その頃には、外は真っ暗になっていた。俺は真っ直ぐに家に近づき、扉へ向かう。
「お兄ちゃん!! 待って!!」
――ガチャ!!
「えっ!?」
桃葉の言葉で硬直。そのまま俺は、勢い良くドアで押されて、外壁との間に挟まれる。これで不幸は2回目だ。もっと言えば10回目かもしれない。
朝は寝坊。朝食はコンビニ。商品はほぼ無しで、何とか買えたがレジ渋滞で電車ギリギリ。かと思えば数秒の差で乗り損ねて、大遅刻。
今日は不幸でしかない。こんなものはうんざりだ。俺はサンドイッチになった気分で、ギュ~と押され続ける。
「ママ、お兄ちゃんが挟まれてるよ!! ママ!!」
『お兄さんが? もしかして源磨くんかしら?』
「そうだよ!! 早く助けてあげて!! ドア少し閉めて!!」
桃葉の言葉が届いたのか、少し緩んで俺は抜け出した。いろいろな場所が痛むが、ゆっくり入り口に戻る。
首をさすりながら顔を上げると、ほっそりした大人の女性。名前は確か………………。
「お久しぶりね。元気してた? ほら、アイネ。桃葉っていう可愛い名前ありがとね」
そうだ、アイネだ。桃葉の母親の。アイネは俺に寄り添い頭を撫でる。もう、俺高校生なんだけどなぁ~。やっぱり、ゲームでもリアルでも、子供は子供なのか…………。
「こ、こちらこそお久しぶりです…………。最近ゲームで見かけなかったので、心配していました」
「あらあら、同じこと考えていたのね。桃ママも会えて嬉しかったわ」
も、桃ママ!? ささ、さっき桃ママって言ってたよね!? いつの間に、そうなったの!? たた、確かに『桃葉』の『ママ』で間違ってないけど、『桃ママ』!? 略し方簡単過ぎ、っていうかひねり無し!! ってか、たったこれだけで過剰に反応してる俺が馬鹿!!
というのは置いといて、家の中へ。桃葉の家はリビングが広く、部屋もたくさんあって、とにかく整理整頓されていた。
対して、俺の部屋はもう、足の踏み場も無いくらいの散らかりっぷり。毎回整理整頓しようとしても、やる気になれないし。全くの手付かず。
比較しても、これじゃあ月とスッポンどころか、働き方も蟻とキリギリスくらいも差が激しい。つまり、俺は働かなさすぎ…………。
「こんなに広いと、のんびりしたくなるなぁ~」
「でしょ!! もしかして、源磨お兄ちゃんの家って散らかってるの?」
「ギクッ!!」
「ハイ、図星!!」
さっき考えていたことを、年下のAIに容易く見破られてしまう俺。感情が表に出やすいのが仇になってしまった。
すると突然、床が揺れ始める。俺と桃葉はその場にあった物を、片っ端からかき集め、外に飛び出した。
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