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第4章 複合社会マレーシア(2)
4-(2) 旅の終わりに
しおりを挟む1997年の春にマレーシアのクアラ・ルンプールを訪れた。わずか数日間の短い期間ではあったが、魅力あるマレーシアを見ることができた。赤道直下に位置し、年中30℃を超える真夏の気候が続くマレーシア。複数の民族がそれぞれ個々のエスニシティ―を守りながら「共存」するクアラ・ルンプール。現地の複数の民族や旅行者までもが混ざり合い活気のある街を形成していた。
⦁ 駅で出会った、カメラの使い方が解らず困っていたタミル人女性。
⦁ マラッカの広場で自分の描いた絵を売るマレー人のおばさん。
⦁ ベンツやBMWなどの高級車を乗りまわす華人。
⦁ インド人街の屋台で果物を売るタミル人男性。
⦁ ドリアンが大好きだ、と言っていたマレー人のタクシードライバー。
⦁ チャイナタウンの店で時計の値段が折り合わずにモメた華人。
⦁ セントラルマーケットの駐車場で成分不明の薬をしつこく売りつけてくる前歯がボロボロの男(マレーシアでは麻薬の所持は死刑)。
旅先で出会った一人一人が複合社会マレーシアを構成していた。彼らの表情は生き生きしており
まるで、そこには民族間の歪みなど存在しないかのように暮らしていた。
しかし、旅行者という立場や視点からでは、本当の複合社会マレーシアを見ることは難しい。日常生活の些細な部分でも確実に「歪み」は生じている。クアラ・ルンプールの靴屋では華人以外の店員はレジに触れることができなかったという事実に、否応なしに現実を認識させられた。マレーシアの華やかな街並みを眺めるだけでは想像もつかないような問題が水面下で存在していたのである。
我々が日本へ戻った後も民族間の問題は継続してゆくし、それでも今日も複合社会マレーシアは華やかに機能してゆくのだろう。そしてマレーシアの経済発展は進み、日々先進国へと近づいてゆくが、国が豊かになっても民族間の問題は簡単になくなる訳ではない。マレーシアの発展は常に民族問題とともにある。その火種はいつ爆発するのか、もしくは不発で終わるのかは誰にもわかりはしない。
平和とともにマレーシアの発展があることをただ願うばかりである。
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