多民族から成る複合社会マレーシアとその歪み

Yoshinari F/Route-17

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第3章 複合社会とブミ・プトラ政策

3-(3) ビデオデッキが普及するわけ

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 複合社会マレーシアで行われているブミ・プトラ政策の影響で、非マレー系の家庭にビデオデッキが普及している、という事実がある。
 ブミ・プトラ政策の一環として、マレーシアでは「マレー語化」が進められている。マス・メディアも例外なく、近年ラジオ、テレビ、でもマレー語が占める割合が高くなっているのである。情報省によれば2000年までに、テレビとラジオの番組の80%をマレー語にする事を目標としている(注7)。

 民族ごとのテレビの普及率を見てみると、普及率の高い順に、華人が95%、タミル人が92%、そしてマレー人が86%となっている。また、その中の36%がビデオデッキも所有しており、ビデオデッキ所有率のうちの6割は華人の世帯が占めている。マレー語化政策のため、華語によるテレビ放送の割合が低下すると、かれらは当然ながらビデオへと流れてゆくことになる。
 
 ビデオデッキの普及はビデオソフトの入手のしやすさとも関連している。マレーシアでも日本と同様にレンタルビデオショップが多数ある。また、違法コピーによる商品も低価格で販売されている。この事が非マレー系民族の、テレビからビデオへの「乗り換え」を容易にしているのである。

 華人たち非マレー系の民族にとってテレビとは、番組受信用ではなく、ビデオの再生用なのである。テレビ番組のマレー語化が、非マレー系民族にビデオデッキを所有させる結果になった。



注7 鳥居高 論文「ソフトな管理が進むマス・メディア」より
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