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第3章 複合社会とブミ・プトラ政策

3-(2) ブミ・プトラ政策の「効果」

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 ブミ・プトラ政策(マレー人優先政策)の存在意義は、社会的にも経済的にも立場の弱いマレー人を保護することにある。マレー語を国語、イスラム教を国教と認める。公務員、軍人、また一般企業においてもマレー人を優先的に採用する。そしてマレー人経営者や労働者を育成するなど、文化的、社会的、経済的にありとあらゆる面でマレー人の保護が行われた。イギリスの植民地時代に、マレー人に「特別な地位」が与えられて以来、現在に至るまで、マレー人の優先的立場は変わってはいない。

  マレー人、華人、タミル人が混在するマレーシアにおいて、マレー人にのみ「特別な地位」を与えることは、非常に危険な事である。一つの民族だけを優遇することは他の民族の不満を昂らせてしまうことになるからだ。それでもブミ・プトラ政策は施行されている。マレーシア政府はマレー人に特権を与え、マレー人の立場の強化に努めた。総人口の過半数に近い数を占める、社会的にも経済的にも立場の弱い、マレー人の不満を抱えたままでは、マレーシアの更なる発展は望めなかったのである。

 ブミ・プトラ政策の結果、マレー人の立場は飛躍的に上昇した。まず、第二次産業におけるマレー人の比率が、1970年の13.8%から83年の39.7%へと増加した。そして株式資本の所有率も1.9%から18.7%へと急増したのである。また、70年代に設立された公営企業では多くのマレー人経営者や労働者が育成されたし、大規模な農地開発や入植事業の結果、農村のマレー人失業者を吸収することも出来た。文化面でのマレー語化政策もマレー人の社会進出を促進した。公的な場ではマレー語が使用されるようになり、マレー語を母語とするマレー人のマレー人の社会進出の意欲を煽ったからである。

 マレー人は、非マレー人に比べて立場の弱い民族だったが、現在彼らは優遇措置を受けて非マレー人に負けないだけの地位を得たのである。

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