5 / 15
第1章 複合社会マレーシア(1)
1-(4) 複合社会マレーシアの形成
しおりを挟む
図4のマレーシアと日本における民族ごとの人口比率の比較を再度見ていただく。マレー人が4割、華人は3割、タミル人が1割弱を占めており、日本における極端な人口比率のモデルとは異なり、バランスがとれている。そのため民族の数だけ言語や宗教が存在する複合社会が形成されている。それでは、なぜ複数の民族が「共存」することになったのだろうか。
マレーシアの主要民族のうち、華人とタミル人が移民集団である。華人とタミル人が移民として流入したため複合社会が形成されたのである。華人とタミル人の流入が活発になったのは、マレーシアがイギリスに植民地として支配されていた頃で、19世紀後半から20世紀初頭のことである。当時のマレーシアではイギリスによって大規模な鉱山開発や、プランテーションによる農園経営が行われていた。移民の時期は華人のほうがタミル人よりも少し早い。華人は中国南部から契約労働者としてイギリス領だったマレーシアへ流入し、鉄鋼や錫などを採掘する鉱山労働者となった。
タミル人移民の流入は華人より少し遅れて20世紀に入ってからのことである。タミル人の移民が活発になったのは、1907年にマレーシア国内でタミル人移民基金条例が制定されてからのことである。タミル人はマレーシアに来てプランテーション農場の契約労働者として働いた。その後1938年にインド側で移民とその補助が禁止され、また1949年にはマレーシア側でも新規の移民が禁止されたため、毎年8~10万人(注4)もの規模だったタミル人の移民の歴史は終わりを告げる。
ここで注目すべき点は、華人移民は男性と女性がともに移住したこと、そして短期間のうちに急速に、かつ大量にやって来たことである。もし男性だけがマレーシアへやって来たのであれば、マレー人の女性と結婚しマレーシアの文化や社会に同化していたかも知れない。しかし、華人は男女ともに移住した。短期間のうちに大量にやって来たために中国社会がマレーシア国内に移植される形となった。そのため現地マレーシアの社会とは同化しない、全く異質の華人社会が出現したのである。
タミル人の場合は男性が単身で流入してきたが、2~3年間働いた後インドへ戻り、結婚相手を見つけて再びマレーシアへ帰って来る者が多かった。従ってマレーシア国内にタミル人社会も形成される結果になったのである。
注4 当時のタミル人のマレーシアへの移住者の数は、刻々と変化する国家の移民方針や、プランテーションや鉱山の経営状況によって大きく変化していた。
マレーシアの主要民族のうち、華人とタミル人が移民集団である。華人とタミル人が移民として流入したため複合社会が形成されたのである。華人とタミル人の流入が活発になったのは、マレーシアがイギリスに植民地として支配されていた頃で、19世紀後半から20世紀初頭のことである。当時のマレーシアではイギリスによって大規模な鉱山開発や、プランテーションによる農園経営が行われていた。移民の時期は華人のほうがタミル人よりも少し早い。華人は中国南部から契約労働者としてイギリス領だったマレーシアへ流入し、鉄鋼や錫などを採掘する鉱山労働者となった。
タミル人移民の流入は華人より少し遅れて20世紀に入ってからのことである。タミル人の移民が活発になったのは、1907年にマレーシア国内でタミル人移民基金条例が制定されてからのことである。タミル人はマレーシアに来てプランテーション農場の契約労働者として働いた。その後1938年にインド側で移民とその補助が禁止され、また1949年にはマレーシア側でも新規の移民が禁止されたため、毎年8~10万人(注4)もの規模だったタミル人の移民の歴史は終わりを告げる。
ここで注目すべき点は、華人移民は男性と女性がともに移住したこと、そして短期間のうちに急速に、かつ大量にやって来たことである。もし男性だけがマレーシアへやって来たのであれば、マレー人の女性と結婚しマレーシアの文化や社会に同化していたかも知れない。しかし、華人は男女ともに移住した。短期間のうちに大量にやって来たために中国社会がマレーシア国内に移植される形となった。そのため現地マレーシアの社会とは同化しない、全く異質の華人社会が出現したのである。
タミル人の場合は男性が単身で流入してきたが、2~3年間働いた後インドへ戻り、結婚相手を見つけて再びマレーシアへ帰って来る者が多かった。従ってマレーシア国内にタミル人社会も形成される結果になったのである。
注4 当時のタミル人のマレーシアへの移住者の数は、刻々と変化する国家の移民方針や、プランテーションや鉱山の経営状況によって大きく変化していた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
鳴瀬ゆず子の社外秘備忘録 〜掃除のおばさんは見た~
羽瀬川璃紗
経済・企業
清掃員:鳴瀬ゆず子(68)が目の当たりにした、色んな職場の裏事情や騒動の記録。
※この物語はフィクションです。登場する団体・人物は架空のものであり、実在のものとは何の関係もありません。
※ストーリー展開上、個人情報や機密の漏洩など就業規則違反の描写がありますが、正当化や教唆の意図はありません。
注意事項はタイトル欄併記。続き物もありますが、基本的に1話完結、どの話からお読み頂いても大丈夫です。
25年3月限定で毎週金曜22時更新予定。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
RICE WORK
フィッシュナツミ
経済・企業
近未来の日本、長時間労働と低賃金に苦しむ社会で、国民全員に月額11万円を支給するベーシックインカムが導入され、誰もが「生活のために働かなくても良い」自由を手にしたかに見えました。希望に満ちた時代が到来する中、人々は仕事から解放され、家族との時間や自分の夢に専念できるようになります。しかし、時が経つにつれ、社会には次第に違和感が漂い始めます。
『RICE WORK』は、経済的安定と引き換えに失われた「働くことの意味」や「人間としての尊厳」を問いかける物語。理想と現実の狭間で揺れる人々の姿を通して、私たちに社会の未来を考えさせるディストピア小説です。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる