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2章 宝石の並ぶ村
第41話 予想外のたくましさ!
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「やるじゃないかヘキオン。まさかワンパンで倒すとは思ってもなかったぞ」
肩を落とすヘキオン。
「うぅ……せっかく……せっかく涼めると思ったのにぃ……」
「せっかくの水属性なんだから、水を纏ったりでもすればいいのに」
「ずっと展開してたら魔力が無くなるじゃないですかぁ……まぁ魔力が無くなったことないけど」
「あ、そうだ!」と言ってワニの腹部を触るヘキオン。皮膚はパリパリとしており、死んだせいか触るだけで皮膚が剥がれ落ちている。
「どうした?」
「ちょっと思い出しまして――っと!」
ワニの体を水で貫く。
「――へ?」
「このワニの血は日焼け止めの効果と同時に、太陽光の熱の源でもある赤外線の効果を抑える効果があるんです。これを体に塗れば――」
ドクドクと流れる血液を手ですくって顔や首に塗りつける。露出している肌全てだ。ヘキオンの綺麗な肌は赤黒く染まっていく。
理にはかなった行動ではあるが……少々グロい。サバイバル生活にある程度は慣れているカエデも少し引いていた。
「さらにです。こういう地域では水分はかなり貴重です。だから生物たちは貴重な水分をできるだけ溜め込もうとする。このワニの場合は血流に水分を溜め込んでいるんです。だからこの血も飲めるし喉が潤う」
今度はガブガブと血を飲み始めたヘキオン。喉は乾いてるものの、なんというか……飲欲をそそらない見た目だ。
「――ふぅ。ほらどうですか?」
「え、あー、えっと……」
「遠慮しなくてもいいんですよ。血はたーくさんありますから!」
蛇口を捻ったように出続ける血。これは当分無くなりそうにはない。つまり逃げる選択しがひとつ減った。
別にヘキオンも意地悪で言ってるわけじゃない。それは分かってる。それは分かっているが、どうも前に進めない。
でもここで「飲まない」と言ったらヘキオンを悲しませてしまう。それに『ダサい』と思われる可能性だってある。
(た、たかが血だ。別に排泄物を飲むわけじゃないんだ。問題ない。問題ないだろ。なぁカエデ……!!)
覚悟は――決まらない。だがヘキオンは既に手ですくってカエデの前に差し出してる。
(……これを飲まない選択肢など……ありえない!!)
――飲んだ。ヘキオンの手の動きに合わせて喉に流し込んだ。そして飲み込んだ。
まず最初に感じたのは――『血』だった。水が含まれてると言ってたはずだが、思いっきり血だった。
(いや飲めるよ。飲めるけども!?)
不味い……と言われると不味い。ただまぁ飲めないか……と言われる飲める。積極的に飲むことはないだろう。
なんか思ったよりもいける。そしてすぐ後に来たのは――この血をヘキオンに飲ませてもらっている、という情報だった。
指先が自分の唇に当たっている。そしてヘキオンに跪いている。……なんだかエッチな状況だ。カエデはそう思った。
(飲めるけど――ってあれ。なんか血の味が濃くなってきたような……?)
ヘキオンは楽しいのか、嬉しいのか、嬉々として表情でカエデに飲ませ続けている。可愛い……が、顔が赤黒いので怖い。
「美味しかったですか?」
「……飲めはする」
「そうですか?良かったです!」
美味しいとは言っていない。事実は述べた。
「はは……それよりカエデさん――なんか血出てません?」
カエデの口周りは真っ赤になっていた。血の影響だろう。それとは別に鼻周りも血が出ていた。鼻に血が入ったのだろうか。
飲みきったはずだが顎を伝ってポトポトと血が垂れている。飲みきれなかったのだろうか。
「……それ鼻血」
「違う」
食い気味に答える。
「……やっぱりそれ鼻血」
「違う」
これまた食い気味に答える。
「……なんで鼻血出してるんですか」
「それはヘキ――いや違う。多分飲んでる時に鼻に入っただけだ」
「そうです……か」
食い気味に答えるカエデの圧に負けたようだ。
「とりあえずワニの肉でも取りますか。食料は温存するが吉です」
「そうだな無駄使いしたら後が大変だしな」
鼻血を拭くカエデ。
「……やっぱり鼻血」
「違う」
肩を落とすヘキオン。
「うぅ……せっかく……せっかく涼めると思ったのにぃ……」
「せっかくの水属性なんだから、水を纏ったりでもすればいいのに」
「ずっと展開してたら魔力が無くなるじゃないですかぁ……まぁ魔力が無くなったことないけど」
「あ、そうだ!」と言ってワニの腹部を触るヘキオン。皮膚はパリパリとしており、死んだせいか触るだけで皮膚が剥がれ落ちている。
「どうした?」
「ちょっと思い出しまして――っと!」
ワニの体を水で貫く。
「――へ?」
「このワニの血は日焼け止めの効果と同時に、太陽光の熱の源でもある赤外線の効果を抑える効果があるんです。これを体に塗れば――」
ドクドクと流れる血液を手ですくって顔や首に塗りつける。露出している肌全てだ。ヘキオンの綺麗な肌は赤黒く染まっていく。
理にはかなった行動ではあるが……少々グロい。サバイバル生活にある程度は慣れているカエデも少し引いていた。
「さらにです。こういう地域では水分はかなり貴重です。だから生物たちは貴重な水分をできるだけ溜め込もうとする。このワニの場合は血流に水分を溜め込んでいるんです。だからこの血も飲めるし喉が潤う」
今度はガブガブと血を飲み始めたヘキオン。喉は乾いてるものの、なんというか……飲欲をそそらない見た目だ。
「――ふぅ。ほらどうですか?」
「え、あー、えっと……」
「遠慮しなくてもいいんですよ。血はたーくさんありますから!」
蛇口を捻ったように出続ける血。これは当分無くなりそうにはない。つまり逃げる選択しがひとつ減った。
別にヘキオンも意地悪で言ってるわけじゃない。それは分かってる。それは分かっているが、どうも前に進めない。
でもここで「飲まない」と言ったらヘキオンを悲しませてしまう。それに『ダサい』と思われる可能性だってある。
(た、たかが血だ。別に排泄物を飲むわけじゃないんだ。問題ない。問題ないだろ。なぁカエデ……!!)
覚悟は――決まらない。だがヘキオンは既に手ですくってカエデの前に差し出してる。
(……これを飲まない選択肢など……ありえない!!)
――飲んだ。ヘキオンの手の動きに合わせて喉に流し込んだ。そして飲み込んだ。
まず最初に感じたのは――『血』だった。水が含まれてると言ってたはずだが、思いっきり血だった。
(いや飲めるよ。飲めるけども!?)
不味い……と言われると不味い。ただまぁ飲めないか……と言われる飲める。積極的に飲むことはないだろう。
なんか思ったよりもいける。そしてすぐ後に来たのは――この血をヘキオンに飲ませてもらっている、という情報だった。
指先が自分の唇に当たっている。そしてヘキオンに跪いている。……なんだかエッチな状況だ。カエデはそう思った。
(飲めるけど――ってあれ。なんか血の味が濃くなってきたような……?)
ヘキオンは楽しいのか、嬉しいのか、嬉々として表情でカエデに飲ませ続けている。可愛い……が、顔が赤黒いので怖い。
「美味しかったですか?」
「……飲めはする」
「そうですか?良かったです!」
美味しいとは言っていない。事実は述べた。
「はは……それよりカエデさん――なんか血出てません?」
カエデの口周りは真っ赤になっていた。血の影響だろう。それとは別に鼻周りも血が出ていた。鼻に血が入ったのだろうか。
飲みきったはずだが顎を伝ってポトポトと血が垂れている。飲みきれなかったのだろうか。
「……それ鼻血」
「違う」
食い気味に答える。
「……やっぱりそれ鼻血」
「違う」
これまた食い気味に答える。
「……なんで鼻血出してるんですか」
「それはヘキ――いや違う。多分飲んでる時に鼻に入っただけだ」
「そうです……か」
食い気味に答えるカエデの圧に負けたようだ。
「とりあえずワニの肉でも取りますか。食料は温存するが吉です」
「そうだな無駄使いしたら後が大変だしな」
鼻血を拭くカエデ。
「……やっぱり鼻血」
「違う」
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