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2章 宝石の並ぶ村
第40話 オレンジの荒野!
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オレンジ色に艷めく地面。石のように固く、岸壁を歩いてるかのようにガタガタしている。
「――お兄ちゃぁん。疲れたぁ……休もうよ~」
「もうちょっと我慢しろウォーカー。こんなんで根を上げてどうする」
そんな道を渡るふたりがいた。
片方は男。身長が高く、体つきは細い。体のほとんどを真っ黒の衣装で覆っており、唯一見えている目元の肌はかなり白い。
もう片方は少女。身長が低く、こちらも体つきは細い。同じく体のほとんどを真っ黒の衣装で覆っている。目元から見える瞳は血のように赤かった。
「こんなところに噂のヤツらがいるの?信憑性もないでしょ。こんな人も来ないようなところに」
「人が来ないからこそだ。隠れるのには持ってこいのところだぜ」
どうやら宛もなく歩いているようだ。時間は昼。灼熱の炎の日差しが歩く2人に降り注いでいる。
「見つけてやるぞ……クリスタリアン」
「で、出れたぁ!」
ようやく森を抜けたヘキオンとカエデ。疲れからか、地面に倒れるヘキオン。
「長かったぁ……」
「この森を抜けたってことは……あと少しでベネッチアだな」
「カエデさんの少しは少しじゃないですからね!……一応聞きますけど、あとどのくらいですか?」
「さぁ?地図見た感じだと……30kmくらいかな?」
「おお!結構近い……いや近くはないですね」
足をバタバタさせている。ここまでずっと歩いてきたから乳酸が溜まっているのだ。カエデは疲れてるどころか、息一つ切らしてもいない。
「……なぁヘキオン。これからもっとキツくなるって言ったらどうする?」
「それってどういうこと――」
ヘキオンがムクっと起き上がる。目の前の光景。その光景にヘキオンは唖然とした。
燃えるような赤色の強いオレンジ色の地面。木は1本も生えてなく、空気はカラカラに乾ききっている。
そのような場所に水などあるはずがない。ザラザラの地面には水分ひとつも感じ取ることはできない。乾いた大地。
「――」
口をぽかんと開けている。さっきまで歩いていたところが天国に見えるほどの景色。ヘキオンからしたら絶望感しか感じないだろう。
「ここを……30km……」
乾いた笑いを起こす。対するカエデはまだまだ余裕そうである。
「アレクロイド。この荒野の名前だ。水分はこの空間にいることは許されないほどの灼熱地獄。ここを通れば水の都ベネッチアだ」
「……なんで荒野の隣が水の都なんですか?」
「知らん。地形の問題だろ」
ヘキオンの問いをバッサリと斬り捨てた。
「どうする?回り道をすればここは通らなくても済むが」
「――いや。行きましょう!」
顔を叩いて心を引き締める。
「いいね!それでこそヘキオン!」
「こんな過酷な森を生き残れたんです!!たかが暑い程度で私はへこたれなんかしません!!」
「死ぬぅ……カエデさん無理ですぅ……おんぶしてくださぁいぃ……」
さっきの威勢はどうしたのか。太陽の光に汗を輝かせながら歩いている。ぽたぽたと汗が地面に落下するが、着地した地面は数秒もすれば水分を蒸発させていた。
「もう少しがんば……い、いや。まぁ……おんぶしてやってもいいけど――」
「あ!あそこに穴がありますよ!」
ヘキオンが指を指す。その先にあったのはCの字のようになっている大岩。ちょうど影になっている場所があった。
「だいぶ歩きましたし一旦休みましょうよ!!」
「……ソウダネー」
影に向かって楽しそうに走るヘキオンを涙目で見ている。可哀想だが、これが運命だ。頑張れカエデくん。
「わぁ……すっごく涼しい~……」
影で寝そべるヘキオン。そうとう疲れてたのだろう。寝むってしまいそうな勢いだ。
そんなヘキオンをカエデはなぜか影の外で見ている。
「なぁヘキオン」
「ん~なんですか~?」
「こういう荒れ果てた土地に住む魔物や動物って、生き残るために独自の進化をするんだ」
「それが何か?」
「例えば擬態。特にこういうところでは、影場や水場とかに擬態すれば自然と動物は寄ってくる。そうすれば食料が採れるな?」
「……」
「え?もしかしてここ――」
閉じられる大岩。麒麟戦で鍛えられた反射神経で何とか閉じられる前に脱出する。
「あっぶな!!わかってるんなら先に言ってくださいよ!!」
「だって気持ちよさそうにしてたし」
「わかってたら気持ちよくなってませんよ!!」
地面を壊しながら出てくる魔物。肉食動物のように鋭い眼光。よく見ると牙もある。四足歩行でオレンジ色の体色……オレンジ色は砂に塗れているからか。
その風貌はワニ。荒野に住むワニ。体調10mはありそうなワニがヘキオンをじっと見つめていた。食べられなかったので怒っている様子。
「……あーもう!怒ったからね。やっと……やっと涼めると思ったのにぃ!!」
ワニの頬を思い切り蹴る。もちろん水を纏った攻撃だ。水風船が割れるような音を出す。
――グルゥ!?
初めて発したワニの鳴き声。ヘキオンが聞くのは初めての声。それが最初で最後の声となったのだった。
「――お兄ちゃぁん。疲れたぁ……休もうよ~」
「もうちょっと我慢しろウォーカー。こんなんで根を上げてどうする」
そんな道を渡るふたりがいた。
片方は男。身長が高く、体つきは細い。体のほとんどを真っ黒の衣装で覆っており、唯一見えている目元の肌はかなり白い。
もう片方は少女。身長が低く、こちらも体つきは細い。同じく体のほとんどを真っ黒の衣装で覆っている。目元から見える瞳は血のように赤かった。
「こんなところに噂のヤツらがいるの?信憑性もないでしょ。こんな人も来ないようなところに」
「人が来ないからこそだ。隠れるのには持ってこいのところだぜ」
どうやら宛もなく歩いているようだ。時間は昼。灼熱の炎の日差しが歩く2人に降り注いでいる。
「見つけてやるぞ……クリスタリアン」
「で、出れたぁ!」
ようやく森を抜けたヘキオンとカエデ。疲れからか、地面に倒れるヘキオン。
「長かったぁ……」
「この森を抜けたってことは……あと少しでベネッチアだな」
「カエデさんの少しは少しじゃないですからね!……一応聞きますけど、あとどのくらいですか?」
「さぁ?地図見た感じだと……30kmくらいかな?」
「おお!結構近い……いや近くはないですね」
足をバタバタさせている。ここまでずっと歩いてきたから乳酸が溜まっているのだ。カエデは疲れてるどころか、息一つ切らしてもいない。
「……なぁヘキオン。これからもっとキツくなるって言ったらどうする?」
「それってどういうこと――」
ヘキオンがムクっと起き上がる。目の前の光景。その光景にヘキオンは唖然とした。
燃えるような赤色の強いオレンジ色の地面。木は1本も生えてなく、空気はカラカラに乾ききっている。
そのような場所に水などあるはずがない。ザラザラの地面には水分ひとつも感じ取ることはできない。乾いた大地。
「――」
口をぽかんと開けている。さっきまで歩いていたところが天国に見えるほどの景色。ヘキオンからしたら絶望感しか感じないだろう。
「ここを……30km……」
乾いた笑いを起こす。対するカエデはまだまだ余裕そうである。
「アレクロイド。この荒野の名前だ。水分はこの空間にいることは許されないほどの灼熱地獄。ここを通れば水の都ベネッチアだ」
「……なんで荒野の隣が水の都なんですか?」
「知らん。地形の問題だろ」
ヘキオンの問いをバッサリと斬り捨てた。
「どうする?回り道をすればここは通らなくても済むが」
「――いや。行きましょう!」
顔を叩いて心を引き締める。
「いいね!それでこそヘキオン!」
「こんな過酷な森を生き残れたんです!!たかが暑い程度で私はへこたれなんかしません!!」
「死ぬぅ……カエデさん無理ですぅ……おんぶしてくださぁいぃ……」
さっきの威勢はどうしたのか。太陽の光に汗を輝かせながら歩いている。ぽたぽたと汗が地面に落下するが、着地した地面は数秒もすれば水分を蒸発させていた。
「もう少しがんば……い、いや。まぁ……おんぶしてやってもいいけど――」
「あ!あそこに穴がありますよ!」
ヘキオンが指を指す。その先にあったのはCの字のようになっている大岩。ちょうど影になっている場所があった。
「だいぶ歩きましたし一旦休みましょうよ!!」
「……ソウダネー」
影に向かって楽しそうに走るヘキオンを涙目で見ている。可哀想だが、これが運命だ。頑張れカエデくん。
「わぁ……すっごく涼しい~……」
影で寝そべるヘキオン。そうとう疲れてたのだろう。寝むってしまいそうな勢いだ。
そんなヘキオンをカエデはなぜか影の外で見ている。
「なぁヘキオン」
「ん~なんですか~?」
「こういう荒れ果てた土地に住む魔物や動物って、生き残るために独自の進化をするんだ」
「それが何か?」
「例えば擬態。特にこういうところでは、影場や水場とかに擬態すれば自然と動物は寄ってくる。そうすれば食料が採れるな?」
「……」
「え?もしかしてここ――」
閉じられる大岩。麒麟戦で鍛えられた反射神経で何とか閉じられる前に脱出する。
「あっぶな!!わかってるんなら先に言ってくださいよ!!」
「だって気持ちよさそうにしてたし」
「わかってたら気持ちよくなってませんよ!!」
地面を壊しながら出てくる魔物。肉食動物のように鋭い眼光。よく見ると牙もある。四足歩行でオレンジ色の体色……オレンジ色は砂に塗れているからか。
その風貌はワニ。荒野に住むワニ。体調10mはありそうなワニがヘキオンをじっと見つめていた。食べられなかったので怒っている様子。
「……あーもう!怒ったからね。やっと……やっと涼めると思ったのにぃ!!」
ワニの頬を思い切り蹴る。もちろん水を纏った攻撃だ。水風船が割れるような音を出す。
――グルゥ!?
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