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1章 血塗れになったエルフ

第32話 激熱、白熱、天の雷!

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麒麟の頭上に電気が発生する。粘土のように形を変える。例えるのならば丸鋸。丸鋸を横にしたような形だ。それこそチェーンソーのような甲高い音をたてている。

首の振り。それと同時に雷の円がヘキオンに向かってきた。

「――!」

素早く上に飛び上がる。高速の攻撃。まるで新幹線のような速さでヘキオンの下を通過していった。


通り過ぎた雷の円。木々を切り倒して進み、挙句の果てには数十mはあろう大岩を一刀両断していった。当たればタダでは済まなかっただろう。

「や……やば……」

先程よりも強い。本気だ。本能でそれを感じ取ることができる。


ヘキオンの驚きなどお構い無しに続く攻撃。器用に二本足で立ち上がる。麒麟の行動に呼応するかのように、天の雲は青白い閃光を放った。

『――!!』
「――!?」

地面に角を振り下ろす。――3つの雷が轟音と共にヘキオンに降り注いだ。


事前に攻撃を察知したヘキオンは水を噴出させて回避する。

「インチキでしょそんなん――」


雷は落ちてなお残留している。麒麟の角の動きに合わせ、残留した雷は行動を開始。ヘキオンに向けて発射された。

――今度は水を爆発。通常の噴射では間に合わない。多少の反動は覚悟の上。攻撃をくらうことを避けるのが得策だ。

「ぐっ――――」

水を片脚に。形は鋭利に。斬撃の太刀筋のように。水を切ることはできないが、水切ることは可能である――。



「――アクアスラッシュ水切り!!」

蹴りの起動は太刀筋のように。振り抜いた脚からは水の斬撃が噴射される。

水は麒麟の体を切り裂いた。といっても表面の皮のみ。その奥の筋肉にすら到達しなかった。

『ぬぅ――』



一筋の天に昇る光が現れる。天を貫くほどの大きな雷の剣。喰らえば即死は待ったナシ。

それはヘキオンは理解しているようだ。同じように水圧で範囲から回避する。

『鬱陶しい……ヤツめ!!』

大地に歪みを入れながら叩きつけられる雷の剣。地鳴りが山全体を揺らしていった。


再度掲げられる蒼銀の光。ヘキオンからしたら対応することなどは容易い。

水を放って攻撃範囲から避ける。と、同時にヘキオンの横を雷の剣が通り過ぎる。

『消えろ!!』
「ちょっ――」

叩きつけられた雷の剣が横へと薙ぎ払われる。

草刈りのように刈られる木。もはや刈られるというより消し飛ばされている。高熱のレーザー光線のように発射され続ける剣。


横には逃げられない。ならば上。


下に水圧を放って間一髪で上空に逃げる。

「あっぶな……」

下を軽く見るヘキオン。

地面は根こそぎ削られており、岩石ごと抉られたことによって地面はガタガタではなくサラサラとなっている。

後ろを軽く見るヘキオン。

下と同様。しかも坂だったはずの場所は平らな平地へと変貌していた。――これが村方面だったと思うとゾッとする。


(長期戦はヤバい――!!)

攻撃範囲が広いのでアクアマジックは使用不可。防御技も森を焼き払うレベルは防げない。耐久力なんて持ち合わせてもいない。

『ゴキブリが……!!』
「もうちょっと可愛い例えしてよ!!」
『黙れ!!』


ヘキオンの頭上から青い雷の線が数本発射される。それは鳥かごのようにヘキオンを閉じ込めた。

「いつの間に――!?」

――麒麟の体が蒼色に輝く。前足で地面を引っ掻く動作。この牛のような動作は――突進の合図だ。

鳥かごの間は狭い。つまり逃げられない。そこそこ大きいが、避けられるほどじゃない。

「あぁもう――!!」


技を放とうと――した瞬間、雷の縄がヘキオンの右手に絡みついた。

「ッ――――」

体が麻痺した。立っていられない。地面に膝から倒れる。

――左手にも縄が絡みついた。両方の縄はヘキオンを宙吊りにするほど持ち上がる。ちょうどヘキオンの心臓が麒麟の角に刺さるところまで。

避けないといけない。分かっていても動けない。意識は落ちてない。動けるうちに――。



――地面が弾け飛んだ。蒼き弾丸は小さな体を切り裂かんとばかりに迫ってくる。立ち止まる気配は皆無。何もしなければ助かる確率などゼロだ。

ヘキオンの近くに生成される水の円。要領は同じ。さっき麒麟がしたのを真似るだけだ。

(ア――アクア――チェーンソー丸鋸)

丸鋸は縄を切断。ついでに鳥かごも切断。麻痺から解放されたヘキオンは麒麟の軌道からすぐさま外れた――。
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