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1章 血塗れになったエルフ
第23話 蛇の処刑人!
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突進してくるヒステリアに合わせて、顎に膝蹴りを入れる。カエデだけを見るならとても軽い膝蹴りだ。
しかしヒステリアは膝蹴りの威力で天井にまで打ち上げられた。長い体をうねらせながら地面に叩きつけられている。
「――!?!?!?」
ふらふらしている。自分に何が起こったのか分かっていないようだ。ザッシュもまったく見えてなかったようで、目をゴシゴシしながら目の前の事実を確認している。
そんなヒステリアにゆっくりと歩いていくカエデ。未だ闘争心は壊れていない様子だ。
「ちっ!!」
周りに紫色の球体が浮かび上がる。それは圧縮された水。毒水。つまり毒だ。
複数の毒の球体はヒステリアの上に集まっていく。
「――ポイズンドラゴン!!」
毒は百足の形へと変貌した。かなり大きい百足。集まった毒の量よりも圧倒的に多い毒が百足の形へと変わっていった。
空気が紫になるほどの毒。それほどの毒の量。ヒステリアが毒の百足をカエデに向かって飛ばしてきた。
地面を壊しながら向かってくる百足。カエデが小さく見えるほどの大きな百足。大きな口を開けてカエデに向かってゆく。
カエデが棒を軽く振った。振り上げるように。机に置いた卵を持ち上げるかのように。軽く。軽く。
そんな軽い振りの風圧。まるでソニックブームのような衝撃波がカエデの前に現れた。
衝撃波は毒の百足を弾き飛ばした。その後ろにいるヒステリア。ヒステリアにまで衝撃波は向かっていた。
マッハの攻撃を避けることはもちろんできない。普通はできない。ヒステリアは普通の部類に入っていたようだが。
衝撃波に飛ばされたヒステリアは後ろの壁に叩きつけられた。音を立てて周りの壁からポロポロと砂が落ちてくる。
「――っく」
ズルズルと地面に落ちてゆく体。カエデはまだまだ余裕そうだ。
「くっそ……」
頭から流れる血を前腕で拭き取りながら立ち上がる。もうこの時点ですでにカエデとヒステリアの差は明確になっていた。確実にカエデの方が強い。
ヒステリアはそのことを理解している。理解はしている。しかし認められなかった。今まで自分が負けたことは無い。その自信が一瞬で崩れ去ってしまうのが怖かったのだ。
「まだ……だ!」
毒の球体がまた現れる。球体はまたヒステリアの上に集まっていく。
集まった毒の球体はこの空間の上。天井近くに移動した。その球体は沸騰したかのようにブクブクと泡が出てくる。
「ポイズンミスト!!」
開かれた手が強く握られた。同時に球体が破裂する。
破裂した球体から毒の霧が溢れてきた。その霧は瞬く間にこの空間を侵食していった。
「これは猛毒の霧だ!この霧を吸い込めばすぐに体の動きが鈍くなるぞ!!」
嬉しそうに話している。勝ちを確信しているかのようだ。
「しかもこの毒が制限するのは体の動きだけ!神経はそのまま。つまりお前は意識がハッキリとしたまま私に殺されるんだ!!」
頭をポリポリとかくカエデ。もちろんカエデは霧に呑まれている。なのに余裕そうだ。
ヒステリアの周りにまた球体が現れる。その球体はナイフのように鋭く尖る。液体ではあるが、触れれば肌が切れそうだ。
「ポイズンウェーブ!!」
その尖った毒がカエデに向かって飛んできた。まるで銃弾のような速度。
そんな速度でカエデに毒が刺さった。……いや、刺さってない。水鉄砲を壁に当てた時のように液体が弾けた。
カエデはもちろんノーダメージ。当たった場所を気にすることもない。
「な、なんで――」
言葉を発するよりも速く、カエデは一瞬で近づき頭を掴んだ。そのまま地面に顔面を叩きつける。地面に顔が埋まると同時に紫色の液体が飛び出た。
そのまま蛇の姫の体を投げ飛ばす。まるで水切りのように体をバウンドさせながら、反対側の壁に背中から叩き込まれた。
カエデは軽そうに首を鳴らす。まるで今のがまだまだ弱気というくらいに軽そうだ。
「――あ……くそ……ちくしょう……」
ガクガク震えるヒステリア。恐怖と痛み。ふたつがヒステリアを襲っていた。
「お前……体の動きが……制限されてないのか……?」
「いや?制限はされてるよ。いつもより動きにくい」
「そ、それでか……?」
肩をコキコキ鳴らす。ボロボロのヒステリア。それに対して余裕のカエデ。
「――っっ!あぁああああああ!!!!」
勢いよく地面に両手を叩きつけた。地面に手の形がくっきりと残るほどの威力。本命はそこではない。
時間差で地面から液体が飛び出てきた。蛇壺から蛇が出てくるかのように毒の液体が噴出される。しかし今までの液体とは違う。
紫がかった色ではなく透明であった。とろみも着いておらず、ただの水のように見える。
「これに水滴1粒でも触れれば一瞬で死ぬぞ!!侵食なんて生ぬるいものじゃない!!これは触れれば体が溶ける程の毒だ!!」
まるで蛇のように液体がうねうねと動きながらカエデに向かってきた。
「キングポイズン!!!」
「――まぁこのレベルか」
向かってきた液体がカエデの前で弾け飛んだ。水風船が割れるように。ガラスが割れるように。
弾けた液体は周りに降りかかった。降りかかったところはジュワッと音を立てて溶けている。人肌に触れればひとたまりもないだろう。
「――」
絶句している。驚き、恐怖、畏怖、悲しみ。様々な感情が顔に現れている。
「ヘキオンだったらまずかったな。あの子のレベルじゃあまだまだ倒せなさそうだ。お前だいぶ強いね」
「あっ、は、は」
「ほんとはヘキオンをお前で特訓させたいけどなぁ。お前を殺さないと宝玉が貰えないからね。こっちにも事情があるんだ。仕方ないよな」
カエデが拳にグッと力を入れる。その腕は彫刻のように美しい力こぶをつけている。
もはや蛇の姫に闘争心など無くなっていた。消えていた。ただただ恐怖。カエデは畏怖の対象でしかなかった。
「い……いや……」
顔を振る。蛇の姫の心の中には「恐れ」の文字しか無くなっていた。
「いやァァァァァァ――――――!!」
蛇の姫が逃げようと動いた瞬間。顔面に向かってカエデの拳が飛んできた。
蛇の姫の頭が壁に埋まる。蛇の姫を中心として大きなヒビが入った。まるで蜘蛛の巣のように。地響きのような音を出しながら。
しかしヒステリアは膝蹴りの威力で天井にまで打ち上げられた。長い体をうねらせながら地面に叩きつけられている。
「――!?!?!?」
ふらふらしている。自分に何が起こったのか分かっていないようだ。ザッシュもまったく見えてなかったようで、目をゴシゴシしながら目の前の事実を確認している。
そんなヒステリアにゆっくりと歩いていくカエデ。未だ闘争心は壊れていない様子だ。
「ちっ!!」
周りに紫色の球体が浮かび上がる。それは圧縮された水。毒水。つまり毒だ。
複数の毒の球体はヒステリアの上に集まっていく。
「――ポイズンドラゴン!!」
毒は百足の形へと変貌した。かなり大きい百足。集まった毒の量よりも圧倒的に多い毒が百足の形へと変わっていった。
空気が紫になるほどの毒。それほどの毒の量。ヒステリアが毒の百足をカエデに向かって飛ばしてきた。
地面を壊しながら向かってくる百足。カエデが小さく見えるほどの大きな百足。大きな口を開けてカエデに向かってゆく。
カエデが棒を軽く振った。振り上げるように。机に置いた卵を持ち上げるかのように。軽く。軽く。
そんな軽い振りの風圧。まるでソニックブームのような衝撃波がカエデの前に現れた。
衝撃波は毒の百足を弾き飛ばした。その後ろにいるヒステリア。ヒステリアにまで衝撃波は向かっていた。
マッハの攻撃を避けることはもちろんできない。普通はできない。ヒステリアは普通の部類に入っていたようだが。
衝撃波に飛ばされたヒステリアは後ろの壁に叩きつけられた。音を立てて周りの壁からポロポロと砂が落ちてくる。
「――っく」
ズルズルと地面に落ちてゆく体。カエデはまだまだ余裕そうだ。
「くっそ……」
頭から流れる血を前腕で拭き取りながら立ち上がる。もうこの時点ですでにカエデとヒステリアの差は明確になっていた。確実にカエデの方が強い。
ヒステリアはそのことを理解している。理解はしている。しかし認められなかった。今まで自分が負けたことは無い。その自信が一瞬で崩れ去ってしまうのが怖かったのだ。
「まだ……だ!」
毒の球体がまた現れる。球体はまたヒステリアの上に集まっていく。
集まった毒の球体はこの空間の上。天井近くに移動した。その球体は沸騰したかのようにブクブクと泡が出てくる。
「ポイズンミスト!!」
開かれた手が強く握られた。同時に球体が破裂する。
破裂した球体から毒の霧が溢れてきた。その霧は瞬く間にこの空間を侵食していった。
「これは猛毒の霧だ!この霧を吸い込めばすぐに体の動きが鈍くなるぞ!!」
嬉しそうに話している。勝ちを確信しているかのようだ。
「しかもこの毒が制限するのは体の動きだけ!神経はそのまま。つまりお前は意識がハッキリとしたまま私に殺されるんだ!!」
頭をポリポリとかくカエデ。もちろんカエデは霧に呑まれている。なのに余裕そうだ。
ヒステリアの周りにまた球体が現れる。その球体はナイフのように鋭く尖る。液体ではあるが、触れれば肌が切れそうだ。
「ポイズンウェーブ!!」
その尖った毒がカエデに向かって飛んできた。まるで銃弾のような速度。
そんな速度でカエデに毒が刺さった。……いや、刺さってない。水鉄砲を壁に当てた時のように液体が弾けた。
カエデはもちろんノーダメージ。当たった場所を気にすることもない。
「な、なんで――」
言葉を発するよりも速く、カエデは一瞬で近づき頭を掴んだ。そのまま地面に顔面を叩きつける。地面に顔が埋まると同時に紫色の液体が飛び出た。
そのまま蛇の姫の体を投げ飛ばす。まるで水切りのように体をバウンドさせながら、反対側の壁に背中から叩き込まれた。
カエデは軽そうに首を鳴らす。まるで今のがまだまだ弱気というくらいに軽そうだ。
「――あ……くそ……ちくしょう……」
ガクガク震えるヒステリア。恐怖と痛み。ふたつがヒステリアを襲っていた。
「お前……体の動きが……制限されてないのか……?」
「いや?制限はされてるよ。いつもより動きにくい」
「そ、それでか……?」
肩をコキコキ鳴らす。ボロボロのヒステリア。それに対して余裕のカエデ。
「――っっ!あぁああああああ!!!!」
勢いよく地面に両手を叩きつけた。地面に手の形がくっきりと残るほどの威力。本命はそこではない。
時間差で地面から液体が飛び出てきた。蛇壺から蛇が出てくるかのように毒の液体が噴出される。しかし今までの液体とは違う。
紫がかった色ではなく透明であった。とろみも着いておらず、ただの水のように見える。
「これに水滴1粒でも触れれば一瞬で死ぬぞ!!侵食なんて生ぬるいものじゃない!!これは触れれば体が溶ける程の毒だ!!」
まるで蛇のように液体がうねうねと動きながらカエデに向かってきた。
「キングポイズン!!!」
「――まぁこのレベルか」
向かってきた液体がカエデの前で弾け飛んだ。水風船が割れるように。ガラスが割れるように。
弾けた液体は周りに降りかかった。降りかかったところはジュワッと音を立てて溶けている。人肌に触れればひとたまりもないだろう。
「――」
絶句している。驚き、恐怖、畏怖、悲しみ。様々な感情が顔に現れている。
「ヘキオンだったらまずかったな。あの子のレベルじゃあまだまだ倒せなさそうだ。お前だいぶ強いね」
「あっ、は、は」
「ほんとはヘキオンをお前で特訓させたいけどなぁ。お前を殺さないと宝玉が貰えないからね。こっちにも事情があるんだ。仕方ないよな」
カエデが拳にグッと力を入れる。その腕は彫刻のように美しい力こぶをつけている。
もはや蛇の姫に闘争心など無くなっていた。消えていた。ただただ恐怖。カエデは畏怖の対象でしかなかった。
「い……いや……」
顔を振る。蛇の姫の心の中には「恐れ」の文字しか無くなっていた。
「いやァァァァァァ――――――!!」
蛇の姫が逃げようと動いた瞬間。顔面に向かってカエデの拳が飛んできた。
蛇の姫の頭が壁に埋まる。蛇の姫を中心として大きなヒビが入った。まるで蜘蛛の巣のように。地響きのような音を出しながら。
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