無職で何が悪い!!―Those days are like dreams―

アタラクシア

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1章 血塗れになったエルフ

第20話 今日から大親友!

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「――どうでもいいが、早くしてくれ」

ヘキオンの後ろに男は立っていた。びっくりして猫みたいになるヘキオン。しかしカエデとクエッテは分かっていたかのように男を見ていた。

「あんたが村長の言ってた案内役?」
「ザッシュだ。あの村長の息子でクエッテの夫だ。よろしく」
「へぇ――え、夫?」

クエッテは顔を赤くして俯いていた。

「結婚してたんだ……」
「うん……」
「そこはどうでもいいだろ。それよりヘキオンとか言うやつ」

カエデの背中に隠れていたヘキオンを覗き見る。

「レベルは?」
「……33です」


ここでもう1つ説明。レベルは自分で見る方法、相手に見せる方法の2つがある。

自分で見るのは簡単。魔力を頭に込めるだけだ。そうすれば今のレベルが脳裏に浮かび上がってくる。

相手に見せるには自分の魔力を相手に流し込む必要がある。だが特に手間もかからない。

他にも『リサーチ鑑定』という魔法を使ったり、情報魂と言う宝石に触れるなどの方法で相手に見せることも可能だ。


「そうか――ならここに残っていた方がいい」
「はぁ?なんで――」
「連れてくと下手したら死ぬぞ」

――ザッシュの圧にのほほんとしていたヘキオンが冷や汗をかいた。

「……そう言うなら。じゃあ留守番頼んだ」
「了解です!頑張って子供を育て上げます!」
「お前冒険者だよな?」
「ワタシもカジをしなくちゃだから」
「……お前も子育て?」
「チガうよ」





そんなこんなでヘキオンやクエッテと別れたカエデとザッシュ。2人は古き者の柱へと向かっていた。

「なぁ聞いていいか?」
「なんだ」
「お前は他のエルフと比べて流暢に喋るよな。なんでだ?」
「ちょっと前まで人間の町で暮らしてたんだ。興味があったからな。そしてクエッテと結婚するために戻ってきた」
「なるほどね。クエッテが好きなのか」
「愛してる」
「……そ、そうか」

自分で聞いておきながら照れている。

「……なぁもう一個聞いてもいいか?」
「なんだ」
「告白した?」
「した。俺からした」
「なんて言ったの?」
「シンプルに『幸せにする。結婚してくれ』と」
「ほ、ほぉう」

また照れてる。

「お前も許嫁がいるのか?」
「いやぁ!?いなっ、いないよ。まだ……ね」
「あのヘキオンって子は?」
「えぇ!?お前、俺とあの子が許嫁に見えたの!?困るなぁ~」
「そこまでは言ってない」

照れながらも満更では無い表情だ。さっきからずっと照れている。まるで酒乱だ。酒に酔っているのではなく、ヘキオンに酔っているが。

「まぁ?俺とヘキオンは?相性はバッチしだと思うけど?お前は見る目があるなぁ!」
「そうか」

ずっと冷静なザッシュがいるせいでカエデの顔が余計に目立つ。

「よし今日から友達!大親友になろう!」
「いいぞ」
「やっほーい!大親友ー!」

さっきからテンションが高い。勘違いされたのがそんなに嬉しいのだろう。別に勘違いもされてなかったが。





――その頃。


「ヘキオン」

子供とじゃれてるヘキオンに手招きをする。先程と同じように子犬みたいに歩み寄った。

「どうしました?」
「イマからサカナをトりにイく。テツダってくれない?」
「分かりましたー」

子供たちにしばしの別れを告げ、クエッテと共に歩き出す。

「……あっさりだね。カエデのトキはゴネてたのに」
「魚採りも楽しそうですし。ダンジョンは面倒くさそうですし……」
「ボウケンシャなのにそれでいいの」
「いいんです。それより、私の家が川の近くだったから、よく川遊びしてたんです。だから魚採りには自信がありますよ!」
「ふふっ、タノもしいね」

気が大きくなってマッスルポーズをしている。筋肉はない。ジャガイモの薄皮みたいな二の腕だ。それとも玉ねぎの皮か。

「――そうだ。ついでに修行の相手をしてくれませんか?家事が終わってからでもいいので。なんなら手伝いますので」
「それはいいけど……ワタシはアナタにマけてるのよ」
「勝敗は関係ないんです。まずカエデさんがいなかったら最初の弓で殺られてますし。聞きたいことが結構あるんです。近距離戦の対策とか、雷属性への対応とか」
「そ、そう。そんなにイうならいいよ」

クエッテは他人に戦い方を教えるのは初めてだった。頼られるというのも初めて。だからヘキオンの言葉に恥ずかしさと嬉しさを覚えた。

キラキラと目を光らせるヘキオン。同じように嬉しさで饒舌になるクエッテ。身長差もあいまって、2人は姉妹のようであった。
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