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序章
第7話 新たな発見!
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ヤンメおばさんの家の扉を叩く。ホンワカとした雰囲気で開けた扉の先には――傷だらけの2人を抱えたカエデとヘキオンが居た。
「――あれまぁ!?すぐに治療しないと!!」
特に事情を話すことも無く中へと招き入れる。ミクは右腕を失い、ザックは体に大きな引っかき傷が刻まれている。
状況は予断を許さない。説明なんてしてる暇はないのだ。
「――あ、あの。言いそびれたんですが……ありがとうございました」
治療がある程度終わり、とりあえずの危機は過ぎ去った頃。ベッドで眠っている2人を見ているカエデにぺこりと頭を下げた。
「命を助けて貰って……何かお礼でも――」
「いやいいよ。善意で助けたんじゃないし」
「そうですか……」と呟いてシュンと肩をすぼめる。
「……そもそもなんでこんな場所にウルフィーが来てたんでしょうか?」
「人狼が絡んでんだろ」
まさしく円。目をまん丸にしてカエデを見つめるヘキオン。頭の上には?の文字が浮かんできているようだった。
人狼とは、『月の使徒』とも呼ばれる、その名の通り人型の狼。昼間は人の姿をしているが、夜になると狼の姿になって他の動物を襲う。
だが人狼はこの辺りの地域には存在しない。もっと寒い地域に住み着いているはずだ。
「なんで人狼?」
「最近になってウルフィーが出現しすぎてる。本来は臆病な性格のウルフィーがだ。わざわざ人のいる場所に来なくても、ここには食料がわんさかある。なのに人里に来てるってことは――人狼が手を引いてるってことだ」
「そもそもなんでこんな平和な場所に突然人狼が……」
「さぁな、それは知らん」
扉の方へと歩いていくカエデ。
「え、帰るんですか?」
「俺がいても意味ないしな」
「やっぱりお礼を――」
「いらん。それよりも人狼に気おつけておいた方がいいぞ」
ヘキオンの言葉を無視して家から出ていく。ポツンと立ち尽くすヘキオンに、ヤンメおばさんが話しかけてくる。
「あら?あの男の子は行ってしまったの?」
「はい……お礼も出来てないのに……」
「そう。じゃあ仕方ない。あなたも怖かったでしょ?ご飯でも食べてく?」
「……やっぱり私も行きます」
「え?」
「――やらなきゃいけないことができたので」
――ザックとミクの仇討ち。人々を危険に晒している人物がスタンタウンにいる。放っておくわけにはいかない。
まだ証拠も揃ってない現状では警備隊も動いてくれないだろう。……タダ働きだが、不利益を被ってでもやらなきゃならない。
覚悟に満ちた顔をしながらスタンタウンを歩いていると、前からペリルが綺麗なフォームで走ってきていた。
「――ヘキオン!!」
「ペリルさん?」
「お、お前!無事だったか!?2人の方は!?」
「え、えっと、あの」
肩を掴まれてグワングワン揺らされる。脳が上下左右にシェイク。ヘキオンの目をぐるぐるとうずまきを描く。
「す、すまん……2人は無事か?」
「その無事ではなくて……」
「――死んだのか?」
「死んでは無いです!」
すかさずヘキオンが答える。子供が生きてたら誰だって嬉しいはずだ。だから答えた。なのに――。
「――そうか」
ペリルは少し残念そうな顔を見せた。
「……」
「これは報酬だ。2人を助けてくれたんだろ?お礼に全部やるよ」
「ちょっと――」
何も言わずに歩いていくペリル。明らかに不自然だ。ヘキオンが疑問を抱くのは当然のことであった。
――ギルドにて。少し抱いた疑問を解消するべく、ヘキオンはギルドへと訪れた。
「アレッサさん!」
「ん?ヘキオン?……お金はあげないよ」
「そうじゃないですよ。ちょっと聞きたいことがあって」
片手間の仕事を辞め、ヘキオンの方へと体を向ける。
「人狼の討伐、とかの依頼って来てます?」
「人狼?そんなの来てないよ?」
「ですよね――じゃあ『ヤンメおばさんの家に出没するウルフィーの討伐』とかは?」
「――来てないけど」
「そうですか……ありがとうございました」
――疑問は確信に変わった。ギルドを後にするヘキオンを見ながら、アレッサは「変なの」と呟いた。
「――あれまぁ!?すぐに治療しないと!!」
特に事情を話すことも無く中へと招き入れる。ミクは右腕を失い、ザックは体に大きな引っかき傷が刻まれている。
状況は予断を許さない。説明なんてしてる暇はないのだ。
「――あ、あの。言いそびれたんですが……ありがとうございました」
治療がある程度終わり、とりあえずの危機は過ぎ去った頃。ベッドで眠っている2人を見ているカエデにぺこりと頭を下げた。
「命を助けて貰って……何かお礼でも――」
「いやいいよ。善意で助けたんじゃないし」
「そうですか……」と呟いてシュンと肩をすぼめる。
「……そもそもなんでこんな場所にウルフィーが来てたんでしょうか?」
「人狼が絡んでんだろ」
まさしく円。目をまん丸にしてカエデを見つめるヘキオン。頭の上には?の文字が浮かんできているようだった。
人狼とは、『月の使徒』とも呼ばれる、その名の通り人型の狼。昼間は人の姿をしているが、夜になると狼の姿になって他の動物を襲う。
だが人狼はこの辺りの地域には存在しない。もっと寒い地域に住み着いているはずだ。
「なんで人狼?」
「最近になってウルフィーが出現しすぎてる。本来は臆病な性格のウルフィーがだ。わざわざ人のいる場所に来なくても、ここには食料がわんさかある。なのに人里に来てるってことは――人狼が手を引いてるってことだ」
「そもそもなんでこんな平和な場所に突然人狼が……」
「さぁな、それは知らん」
扉の方へと歩いていくカエデ。
「え、帰るんですか?」
「俺がいても意味ないしな」
「やっぱりお礼を――」
「いらん。それよりも人狼に気おつけておいた方がいいぞ」
ヘキオンの言葉を無視して家から出ていく。ポツンと立ち尽くすヘキオンに、ヤンメおばさんが話しかけてくる。
「あら?あの男の子は行ってしまったの?」
「はい……お礼も出来てないのに……」
「そう。じゃあ仕方ない。あなたも怖かったでしょ?ご飯でも食べてく?」
「……やっぱり私も行きます」
「え?」
「――やらなきゃいけないことができたので」
――ザックとミクの仇討ち。人々を危険に晒している人物がスタンタウンにいる。放っておくわけにはいかない。
まだ証拠も揃ってない現状では警備隊も動いてくれないだろう。……タダ働きだが、不利益を被ってでもやらなきゃならない。
覚悟に満ちた顔をしながらスタンタウンを歩いていると、前からペリルが綺麗なフォームで走ってきていた。
「――ヘキオン!!」
「ペリルさん?」
「お、お前!無事だったか!?2人の方は!?」
「え、えっと、あの」
肩を掴まれてグワングワン揺らされる。脳が上下左右にシェイク。ヘキオンの目をぐるぐるとうずまきを描く。
「す、すまん……2人は無事か?」
「その無事ではなくて……」
「――死んだのか?」
「死んでは無いです!」
すかさずヘキオンが答える。子供が生きてたら誰だって嬉しいはずだ。だから答えた。なのに――。
「――そうか」
ペリルは少し残念そうな顔を見せた。
「……」
「これは報酬だ。2人を助けてくれたんだろ?お礼に全部やるよ」
「ちょっと――」
何も言わずに歩いていくペリル。明らかに不自然だ。ヘキオンが疑問を抱くのは当然のことであった。
――ギルドにて。少し抱いた疑問を解消するべく、ヘキオンはギルドへと訪れた。
「アレッサさん!」
「ん?ヘキオン?……お金はあげないよ」
「そうじゃないですよ。ちょっと聞きたいことがあって」
片手間の仕事を辞め、ヘキオンの方へと体を向ける。
「人狼の討伐、とかの依頼って来てます?」
「人狼?そんなの来てないよ?」
「ですよね――じゃあ『ヤンメおばさんの家に出没するウルフィーの討伐』とかは?」
「――来てないけど」
「そうですか……ありがとうございました」
――疑問は確信に変わった。ギルドを後にするヘキオンを見ながら、アレッサは「変なの」と呟いた。
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