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序章
第5話 初めてのバトル!
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銃弾のように飛びかかるウルフィー。それをザックが切り上げる。これを皮切りに他のウルフィーも飛びかかってきた。
「――ヴァインバインド!!」
ミクの詠唱なし魔法。技名と同時に地面から大量のつるが飛び出てきた。
細長いつるはウルフィーの体に蛇のように巻き付く。そして体の動きを完全に止めた。
「ヘキオンちゃんお願い!!」
「え、あ――うん!」
初めてのパーティでの戦闘だからか。ヘキオンはどこかボーッとしていた様子だ。ミクの掛け声に反応して魔法を展開する。
右手に収縮する水。どこからともなく現れた水はヘキオンの拳に集まっていく。
「ふぅ……ウォーター――」
――何かを一瞬だけ躊躇った。「使うべきか使わぬべきか」を迷っているかのように。
だがすぐに軌道修正。違う言葉を放とうとした唇を噛んで、本来の魔法を唱えた。
「――スプラッシュ!!」
放たれる圧縮された水。狙いはウルフィーの脳天。見事に直撃した水はウルフィーを脳震盪させることに成功した。
「やるねヘキオンちゃん!でもまだ終わってないよ!」
小さく親指を立てる。ヘキオンは微笑みでそれを返した。
「そうだぞヘキオン――ちゃん!!」
3匹目を撃破。地面に杭を刺すようにウルフィーに剣を突き刺す。これで残り2匹。予想よりも簡単だ。
これなら大丈夫。簡単に終わらせられる。この中のザックとミクは確信していた。――ヘキオンは違う。その情報に気がついたからだ。
全員が助かるために行動する。パーティでの結束だ。だからヘキオンも動いた――。
ザックがウルフィーを切り裂き、ミクが再度ウルフィーを拘束。
「ふぅ、これで終わり――」
――目の前にまで迫る大きく開かれた口。規則正しく並んだ牙。野生動物のはずなのに美しく磨かれたかのように綺麗な牙。
ウルフィーはミクの目の前にまで迫っていた。逃げられない。避けられない。油断しているところを狙われた。そもそもサーチで見つけたのは5匹だ。6匹目はどこから現れたのか。遅くなっていく視界でミクはそんなことを考えていた。
ザックは動けない。あまりにも突然の襲撃だからだ。ウルフィーから刃を引き抜いている間にミクは噛まれる。顔面を噛まれては大ダメージ、最悪の場合は死――。
目を瞑る。ザックは届かなくても全力で剣を振るおうとする。間に合わない。それでも、ほんの少しでも可能性があるのならば。
現実はそんなにも甘くはない。こんな危険な仕事をしていれば分かっているはずだ。いずれ死んでしまうかもしれない。そんな簡単なことさえ頭から離れていた。
それこそが敗因。もしくは死因。眼前にまで迫る牙を受け入れるように、ミクは息を吐いた――。
「――アクアブロー!!」
――瞬間、ウルフィーの頬をヘキオンの拳が貫いた。
「え――」
「は――」
2人が驚いたのはウルフィーが水切りのようにバウンドして殴り飛ばされてから数秒後。それまでは意識が石になったかのように固まって考えられなかったからだ。
殴り飛ばしたヘキオンは驚いていない。当然の結果だった。満足の表情。「これがずっとしたかった」と言いたげな表情だ。
……とりあえずは危機を脱出。一件落着だ。
「……まぁまずは、ね。ありがとうヘキオンちゃん。助かったよ」
「それほどでもー」
照れるヘキオン。
「しっかし……凄いなさっきの。ヘキオンって魔法使いなんだよな?」
「うん。魔法使いだよ」
「……格闘家の間違いじゃなく?」
「うん。正真正銘の魔法使いだよ」
ザックとミクが驚くのも無理はない。それほどまでヘキオンの取った行動は不可解なのだ。
この不可解さを説明するためには、まず魔力因子と呼ばれるモノについて知って貰わなくてはならない。
『魔力因子』とは、生物の細胞内に存在する物質のことで、酸素を元として魔力を作り出す性質を持つ。つまり呼吸をすれば体内で魔力が発生するということだ。
この説明を聞けばわかると思うが、魔力因子の数が多ければ多いほど、魔力を多く生成することができる。メリットばかりに聞こえるだろうが、実は魔力因子が多いとデメリットも存在する。
さっきも述べたとおり、魔力因子は酸素を元としている。正確に述べるならば、本来細胞が受け取るはずだった酸素を半分にして魔力因子に流すのだ。
このことから魔力因子が多い場合、身体能力が低くなってしまう。取り込める酸素が半分になるのだから当然だ。
つまり魔法使いに適している魔力因子の多い人物は軒並み身体能力が低いこととなる。だから魔法使いは中距離から遠距離のアタッカーとなるのだ。
この説明を聞けば分かるだろう。魔法使いであるはずのヘキオンがウルフィーを素手で何mも殴り飛ばした。
明らかにおかしいことである。近距離戦をする魔法使いなど2人は聞いたことがなかった。そもそも魔法使いが近距離戦をするメリットがない。せいぜい不意をつく程度だ。まぁ人によってはそれだけで十分かもしれないが。
「どうやったのあれ?」
「えっと……真似されたくないから秘密」
「真似なんてできないと思うけどなぁ」
「――ヴァインバインド!!」
ミクの詠唱なし魔法。技名と同時に地面から大量のつるが飛び出てきた。
細長いつるはウルフィーの体に蛇のように巻き付く。そして体の動きを完全に止めた。
「ヘキオンちゃんお願い!!」
「え、あ――うん!」
初めてのパーティでの戦闘だからか。ヘキオンはどこかボーッとしていた様子だ。ミクの掛け声に反応して魔法を展開する。
右手に収縮する水。どこからともなく現れた水はヘキオンの拳に集まっていく。
「ふぅ……ウォーター――」
――何かを一瞬だけ躊躇った。「使うべきか使わぬべきか」を迷っているかのように。
だがすぐに軌道修正。違う言葉を放とうとした唇を噛んで、本来の魔法を唱えた。
「――スプラッシュ!!」
放たれる圧縮された水。狙いはウルフィーの脳天。見事に直撃した水はウルフィーを脳震盪させることに成功した。
「やるねヘキオンちゃん!でもまだ終わってないよ!」
小さく親指を立てる。ヘキオンは微笑みでそれを返した。
「そうだぞヘキオン――ちゃん!!」
3匹目を撃破。地面に杭を刺すようにウルフィーに剣を突き刺す。これで残り2匹。予想よりも簡単だ。
これなら大丈夫。簡単に終わらせられる。この中のザックとミクは確信していた。――ヘキオンは違う。その情報に気がついたからだ。
全員が助かるために行動する。パーティでの結束だ。だからヘキオンも動いた――。
ザックがウルフィーを切り裂き、ミクが再度ウルフィーを拘束。
「ふぅ、これで終わり――」
――目の前にまで迫る大きく開かれた口。規則正しく並んだ牙。野生動物のはずなのに美しく磨かれたかのように綺麗な牙。
ウルフィーはミクの目の前にまで迫っていた。逃げられない。避けられない。油断しているところを狙われた。そもそもサーチで見つけたのは5匹だ。6匹目はどこから現れたのか。遅くなっていく視界でミクはそんなことを考えていた。
ザックは動けない。あまりにも突然の襲撃だからだ。ウルフィーから刃を引き抜いている間にミクは噛まれる。顔面を噛まれては大ダメージ、最悪の場合は死――。
目を瞑る。ザックは届かなくても全力で剣を振るおうとする。間に合わない。それでも、ほんの少しでも可能性があるのならば。
現実はそんなにも甘くはない。こんな危険な仕事をしていれば分かっているはずだ。いずれ死んでしまうかもしれない。そんな簡単なことさえ頭から離れていた。
それこそが敗因。もしくは死因。眼前にまで迫る牙を受け入れるように、ミクは息を吐いた――。
「――アクアブロー!!」
――瞬間、ウルフィーの頬をヘキオンの拳が貫いた。
「え――」
「は――」
2人が驚いたのはウルフィーが水切りのようにバウンドして殴り飛ばされてから数秒後。それまでは意識が石になったかのように固まって考えられなかったからだ。
殴り飛ばしたヘキオンは驚いていない。当然の結果だった。満足の表情。「これがずっとしたかった」と言いたげな表情だ。
……とりあえずは危機を脱出。一件落着だ。
「……まぁまずは、ね。ありがとうヘキオンちゃん。助かったよ」
「それほどでもー」
照れるヘキオン。
「しっかし……凄いなさっきの。ヘキオンって魔法使いなんだよな?」
「うん。魔法使いだよ」
「……格闘家の間違いじゃなく?」
「うん。正真正銘の魔法使いだよ」
ザックとミクが驚くのも無理はない。それほどまでヘキオンの取った行動は不可解なのだ。
この不可解さを説明するためには、まず魔力因子と呼ばれるモノについて知って貰わなくてはならない。
『魔力因子』とは、生物の細胞内に存在する物質のことで、酸素を元として魔力を作り出す性質を持つ。つまり呼吸をすれば体内で魔力が発生するということだ。
この説明を聞けばわかると思うが、魔力因子の数が多ければ多いほど、魔力を多く生成することができる。メリットばかりに聞こえるだろうが、実は魔力因子が多いとデメリットも存在する。
さっきも述べたとおり、魔力因子は酸素を元としている。正確に述べるならば、本来細胞が受け取るはずだった酸素を半分にして魔力因子に流すのだ。
このことから魔力因子が多い場合、身体能力が低くなってしまう。取り込める酸素が半分になるのだから当然だ。
つまり魔法使いに適している魔力因子の多い人物は軒並み身体能力が低いこととなる。だから魔法使いは中距離から遠距離のアタッカーとなるのだ。
この説明を聞けば分かるだろう。魔法使いであるはずのヘキオンがウルフィーを素手で何mも殴り飛ばした。
明らかにおかしいことである。近距離戦をする魔法使いなど2人は聞いたことがなかった。そもそも魔法使いが近距離戦をするメリットがない。せいぜい不意をつく程度だ。まぁ人によってはそれだけで十分かもしれないが。
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