無職で何が悪い!!―Those days are like dreams―

アタラクシア

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序章

第3話 テキトーでもいい!

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「よぉヘキオン!金は稼げたか?」

ため息をついていると、大きな手で頭をワシワシと撫でられた。ムッとした表情で振り返ると、そこには巨漢の男。察するにヘキオンとは顔見知りのようだ。

「ペリルさんか。アレッサさんがケチでね。全然貰えなかったよ。というか子供扱いしないで」
「はいはい。それよりもだ……金に困ってんだろ?」

首を縦に振る。このままだと宿賃すら払えない。野宿をする羽目になる。

「お前もそろそろ冒険者らしい仕事をしたくないか?」
「冒険者らしい……酒飲んで肉食べること?」
「まぁそれも仕事のうちだが」
「肯定しないでよ」
「とにかくだ。お前も魔物と戦ってみようじゃないか」

ヘキオンは未だに魔物と戦う依頼は受けていない。怖いというのもあるが、そもそも魔物系統の仕事は『パーティ』と呼ばれる冒険者複数人でチームを組む方法で受けるのが主流だ。

駆け出しの冒険者であるヘキオンじゃパーティを組んでくれる人はいない。なので今まではチマチマと稼いできたのだ。

「それは願ってもないことだけど……ペリルさんがパーティ組んでくれるの?」

ペリルはここら辺では名の知れた冒険者だ。つまり実力がある。強い冒険者と組めば、それだけ安心感が生まれるものだ。

「いーやダメだ。お前のためにもならん。なので――集めてきた」


ペリルが指を鳴らすと、後ろから青年と少女が出てきた。

「俺の子供たちだ。お前よりかは経験がある」
「俺はザック。よろしく」
「私はミク。よろしくね」

片方はペリルよりもふた周りほど小さい青年ザック。腰には剣を携え、皮の軽そうな鎧を身にまとっている。

もう片方はザックよりも小さい少女ミク。おとぎ話に出てきそうなとんがり帽子と紺色のローブ、そして宝玉の付いた杖を持っている。

「ほれ――」
「わわ、ちょっと!」

ボケっとしていたヘキオンに紙を投げる。――依頼書だ。なんとか地面に落ちる前に受け取った。


『ウルフィーの討伐』

依頼書にはそう書かれてある。場所も今いる所のすぐ近く。歩いて5分ほどだ。

「なんかヤンメおばさんの家の近くにウルフィーがよく出没するらしい。老人1人じゃ対処しきれないだろ?」
「……これペリルさんの依頼じゃないの?」
「――金は渡してやる。十分用意してから行けよ」
「こら話を逸らすな」
「はい行け。よし行け。飯くらいは作っといてやるからなー!」

ヘキオンが止める前にペリルはどこかへと走り去ってしまった。体がでかいくせに素早い。ゴキブリの上位互換みたいなヤツだ。

「……大変だね。あんなお父さん持って」
「あはは。毎日が大変です」





しかし依頼は引き受けた。3人は多少の身支度を整え、目的地であるヤンメおばさんの家へと向かうことにした。

「――そーいえば名前は言ったけど、とかは聞いてなかったね」
「そうだな。俺は剣士だ。レベルは19」
「私は魔法使いだよ!レベルは16!」
「へぇ、私も魔法使いだよ」
「おー!奇遇だね!」



ここで1つずつ軽い説明をしておこう。ジョブというのは戦闘における役割のことである。冒険者となって初めて就くジョブは下位職と呼ばれる。数は全部で7つ。

近距離メインの『剣士』
中距離メインの『魔法使い』
遠距離メインの『弓使い』
補助メインの『僧侶』
超接近戦メインの『格闘家』
防御メインの『戦士』
隠密メインの『盗賊』

である。これら下位職があるのならば、その逆である上位職と呼ばれる職業もある。

上位職に就くためにはレベルが100必要だ。かなりの苦行。最中に命を落とす者も多い。だがそれに見合ったリターンもでかいのだ。


もう1つ説明すべきなのは『レベル』だ。レベルというのは簡潔に言うと戦闘力である。レベルが高いほど強く、低いほど弱い。至極簡単な話だ。

レベル差があれば、それだけ勝つことも難しくなる。大まかにレベル差が100を超えてくると、相手に勝つのはかなり厳しい領域へと入ってくる。

ちなみに目安としては、
駆け出しの冒険者の平均レベルは10ほど
少し腕の立つ冒険者になって50くらい
熟練の冒険者となると100へと到達する
戦いに明け暮れた人で500レベルへ
人生を戦いに費やした人なら1000を超える

といったところだ。あくまで目安なので、そこまで重大に見る必要はない。



「後衛が2人か……」
「ちょっとキツいかな?」
「まぁなんとかなるだろ」
「テキトーだなぁ……」

前衛と後衛。バランスが揃っていればパーティとしては完璧だ。今回は即席のパーティなのでこうなっても仕方ない。

「後衛……か……」

ザックとミクが話をしている横で、ヘキオンは何かを考えている素振りを見せていた。
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