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Execution of Justiceルート(山ノ井花音編)
24話「負の感情」
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「……ふぃ~」
私はソファに座り込んだ。緊張が溶けて体も溶けた。なんとかこの場を凌げたが、それでも一時しのぎだ。いつかはバレるだろう。
「どうしたらいいのかなぁ」
……1人で考えても仕方ないね。みんなが起きてから考えるとしようかな。
「――お姉ちゃん大丈夫?」
未来ちゃんが心配そうな目で見てくる。心配かけちゃったな。
「うん。ごめんね。怖かったでしょ?」
「怖くなかったよ。あの人優しかったし」
「……そうなんだ」
人当たりはいいっていうのがいちばん怖いな。何を考えてるかも分からなかったし。私は顔に出やすいタイプだから相性は悪そうだな。
未来ちゃんが私の太ももに座った。なんかいい感じにすっぽりと収まっている。
「どうしたの?」
「暇だからお姉ちゃんの話聞かせてよ」
「私の話?」
「お姉ちゃんがあんなに速くてかっこいい理由とかー、お姉ちゃんの学校の話とか」
速くてかっこいいってなんか照れくさいな。部活とか体育でしか使えないことだしあんまり褒められたこと無かったから嬉しい。
「んーつまんないと思うけど」
「それでいーよ。私は気になることはほっぽり出したくないもん」
「いい心がけだね。将来は研究者さんにでもなりたいの?」
「うんん。警察官になりたいの」
「おーいいじゃん。未来ちゃんなら美人婦警さんかな?」
「えへへ。……私ねいーっぱい事件を解決して、みんなが楽しく暮らせるような世界を作りたいんだー」
まだ小さいのによく考えてるな。私なんかその時は漫画と遊びのことしか頭になかった気がするのに。
「未来ちゃんは優しいね」
「……おじいちゃんが刑事さんだったの。たまにしかいなかったけど、お菓子買ってもらったり、一緒にゲームしてくれたりして優しかったんだー」
「ふーん。私のおじいちゃんも優しかったよ」
「そうなの?私たち似てるね」
「正確には私たちのおじいちゃんだけどね」
「花音ちゃんこまかーい」
「国語はちゃんとしておかないといけないよ。じゃないと中学校で地獄みることになる……」
「お、お姉ちゃんこわーい」
……詳しくは思い出したくないな。一応社会はずっと高かったからね!総合でも150人中20位くらいはあったからね!
「……おじいちゃん1年前くらいに死んじゃったんだー。仕事してる時に犯人にやられたんだって。……私もそんな死に方してみたいなぁ」
「こら。そんな歳で死に方なんて考えちゃダメだよ。今はしっかり生きることを考えないと」
「えー、花音ちゃんも憧れるでしょ。そんなかっこいい死に方」
「私は……とにかくそんなことは考えちゃダメだよ。未来ちゃんのおじいちゃんも未来ちゃんにはちゃんと生きて欲しいって思ってるはずだよ」
「……うん」
かっこいい死に方か……。無惨にも誰かに殺されるって死に方が私には似合ってるのかも。
ドラマみたいな死に方はそうそうできることでもないからね。私は律儀に生きていこうと思う。
「お姉ちゃんは将来なにになりたいの?」
「私?私は――やっぱり……なんだろね。わかんないや」
「えー!なんか変だねー。お姉ちゃんはスーパーヒーローとかが似合ってると思うよ。正義の味方みたいなのとか!」
正義の……味方。スーパーヒーロー……。弱者を助けて悪を倒す。いいなぁ、そんなのになりたかったな。
「……そう?」
「お姉ちゃんは私を助けてくれたんだしね!……でも王子様とかも似合うよ!」
「私女の子だよ?」
「じゃあ王女様!白馬に乗った王女様!」
「特殊だね。そんな王女様見たことないや」
未来ちゃんが脚をプラプラさせている。私はホッコリしながら未来ちゃんの様子をじっと見ていた。
「ねぇねぇ!お姉ちゃんのあのクルクルってどうやってやったの?」
「あのクルクルって、いっぱいクルクルしてたからわかんないなー。どんなクルクル?」
「あの縦にクルクルしてたやつ!」
「縦にって……まぁ前宙かな?あれはね――」
「――それでね、ってあれ?」
いつの間にか未来ちゃんが眠っていた。外は見えないけど、まだ早かったんだろう。私は心臓バクバクしてたから眠気吹っ飛んだけど。
「……動けない」
私の上に座られてるおかげで動けない。こりゃあ荊棘さんとかが起きるまで待つしかないか。
まぁ楽しくお話もできたしいいや。色んなことを一時的にでも忘れさせてもらったし。
「――寝たのか?」
寝ている未来ちゃんの頭を撫でていると、後ろからイコライザーに声をかけられた。体大きいくせに存在感無さすぎてびっくりしちゃった。
「イコライザー。起きてたの?」
「その呼び方はやめろ。プロレスはやめてるんだ」
イコライザーが横の椅子に座る。木の椅子がミシミシとなった。なんか椅子が可哀想になってくる。
「で?どうする気だ?」
「……な、なんのことー?」
「とぼけても迷惑をかけるだけだぞ。せめて俺とノアくらいにはどうするかは言っておけ」
バレてたか……。ていうかどこから聞いてたんだろう。結構前から聞いてたんだよね。どんだけ影薄いのよ。
「……あははー……どうしよう……」
「俺にいい考えがある」
「え!?あるの!?ど、どんなの?」
「――レガシーを殺す」
続く
私はソファに座り込んだ。緊張が溶けて体も溶けた。なんとかこの場を凌げたが、それでも一時しのぎだ。いつかはバレるだろう。
「どうしたらいいのかなぁ」
……1人で考えても仕方ないね。みんなが起きてから考えるとしようかな。
「――お姉ちゃん大丈夫?」
未来ちゃんが心配そうな目で見てくる。心配かけちゃったな。
「うん。ごめんね。怖かったでしょ?」
「怖くなかったよ。あの人優しかったし」
「……そうなんだ」
人当たりはいいっていうのがいちばん怖いな。何を考えてるかも分からなかったし。私は顔に出やすいタイプだから相性は悪そうだな。
未来ちゃんが私の太ももに座った。なんかいい感じにすっぽりと収まっている。
「どうしたの?」
「暇だからお姉ちゃんの話聞かせてよ」
「私の話?」
「お姉ちゃんがあんなに速くてかっこいい理由とかー、お姉ちゃんの学校の話とか」
速くてかっこいいってなんか照れくさいな。部活とか体育でしか使えないことだしあんまり褒められたこと無かったから嬉しい。
「んーつまんないと思うけど」
「それでいーよ。私は気になることはほっぽり出したくないもん」
「いい心がけだね。将来は研究者さんにでもなりたいの?」
「うんん。警察官になりたいの」
「おーいいじゃん。未来ちゃんなら美人婦警さんかな?」
「えへへ。……私ねいーっぱい事件を解決して、みんなが楽しく暮らせるような世界を作りたいんだー」
まだ小さいのによく考えてるな。私なんかその時は漫画と遊びのことしか頭になかった気がするのに。
「未来ちゃんは優しいね」
「……おじいちゃんが刑事さんだったの。たまにしかいなかったけど、お菓子買ってもらったり、一緒にゲームしてくれたりして優しかったんだー」
「ふーん。私のおじいちゃんも優しかったよ」
「そうなの?私たち似てるね」
「正確には私たちのおじいちゃんだけどね」
「花音ちゃんこまかーい」
「国語はちゃんとしておかないといけないよ。じゃないと中学校で地獄みることになる……」
「お、お姉ちゃんこわーい」
……詳しくは思い出したくないな。一応社会はずっと高かったからね!総合でも150人中20位くらいはあったからね!
「……おじいちゃん1年前くらいに死んじゃったんだー。仕事してる時に犯人にやられたんだって。……私もそんな死に方してみたいなぁ」
「こら。そんな歳で死に方なんて考えちゃダメだよ。今はしっかり生きることを考えないと」
「えー、花音ちゃんも憧れるでしょ。そんなかっこいい死に方」
「私は……とにかくそんなことは考えちゃダメだよ。未来ちゃんのおじいちゃんも未来ちゃんにはちゃんと生きて欲しいって思ってるはずだよ」
「……うん」
かっこいい死に方か……。無惨にも誰かに殺されるって死に方が私には似合ってるのかも。
ドラマみたいな死に方はそうそうできることでもないからね。私は律儀に生きていこうと思う。
「お姉ちゃんは将来なにになりたいの?」
「私?私は――やっぱり……なんだろね。わかんないや」
「えー!なんか変だねー。お姉ちゃんはスーパーヒーローとかが似合ってると思うよ。正義の味方みたいなのとか!」
正義の……味方。スーパーヒーロー……。弱者を助けて悪を倒す。いいなぁ、そんなのになりたかったな。
「……そう?」
「お姉ちゃんは私を助けてくれたんだしね!……でも王子様とかも似合うよ!」
「私女の子だよ?」
「じゃあ王女様!白馬に乗った王女様!」
「特殊だね。そんな王女様見たことないや」
未来ちゃんが脚をプラプラさせている。私はホッコリしながら未来ちゃんの様子をじっと見ていた。
「ねぇねぇ!お姉ちゃんのあのクルクルってどうやってやったの?」
「あのクルクルって、いっぱいクルクルしてたからわかんないなー。どんなクルクル?」
「あの縦にクルクルしてたやつ!」
「縦にって……まぁ前宙かな?あれはね――」
「――それでね、ってあれ?」
いつの間にか未来ちゃんが眠っていた。外は見えないけど、まだ早かったんだろう。私は心臓バクバクしてたから眠気吹っ飛んだけど。
「……動けない」
私の上に座られてるおかげで動けない。こりゃあ荊棘さんとかが起きるまで待つしかないか。
まぁ楽しくお話もできたしいいや。色んなことを一時的にでも忘れさせてもらったし。
「――寝たのか?」
寝ている未来ちゃんの頭を撫でていると、後ろからイコライザーに声をかけられた。体大きいくせに存在感無さすぎてびっくりしちゃった。
「イコライザー。起きてたの?」
「その呼び方はやめろ。プロレスはやめてるんだ」
イコライザーが横の椅子に座る。木の椅子がミシミシとなった。なんか椅子が可哀想になってくる。
「で?どうする気だ?」
「……な、なんのことー?」
「とぼけても迷惑をかけるだけだぞ。せめて俺とノアくらいにはどうするかは言っておけ」
バレてたか……。ていうかどこから聞いてたんだろう。結構前から聞いてたんだよね。どんだけ影薄いのよ。
「……あははー……どうしよう……」
「俺にいい考えがある」
「え!?あるの!?ど、どんなの?」
「――レガシーを殺す」
続く
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