80 / 82
Execution of Justiceルート(山ノ井花音編)
22話「ひと時の休息」
しおりを挟む 今日は涼香が大輝の部屋で料理を作っている。
「あ、おたまが無い? おたまーおたまーおたまー」
「あー、だめだ。じゃがいもが……」
「ん? 醤油、これ濃口だけか? しまったなー……へへ」
大輝は気になってチラチラと横目で見る。台所に見に行きたいし、手伝いたいがさっき涼香から「もう! 座っててよ、大輝くん立ち入り禁止」と言われてしまった。
「あ、しまった……塩忘れてたな、まぁいいやどうにかなるさ──今入れよ」
その後も涼香と料理の戦いは続いている。一生懸命な背中を見ていて嬉しくなる。
涼香ちゃんは料理に遊ばれてるみたいだな……。
大輝は希のことを思い出していた。希みたいに涼香になって欲しいと思っていない。代わりを求めてもないし、二人を比べてどうこういう気もない。二人は別の人間なのだから……。二人とも大切な人だ。
「出来た!」
どうやら完成らしい。
嬉しそうにテーブルに並べていく涼香を見て大輝の心も温かくなる。
「いただきます」
鳥の唐揚げにイカとじゃがいもの煮物にサラダが並ぶ。涼香の大好物ばかりだ。箸を持ち一口食べる。
おぉ!?
「美味しい……美味しいな、コレ」
大輝は目を見開く。かなり美味い……悪戦苦闘していたのが嘘のようだ。大輝は大きな口でそれらを平らげていく。涼香はその様子を微笑みながら見ていた。
視線に気づき大輝が箸を止める。
「うん、どうした?」
「うん? 希さんは料理が上手だったから作るの緊張したけど、良かったなぁって思って」
大輝は涼香にその話をしていたことを思い出した。
どんな気持ちで料理をしていたんだろう。比べられる、そう思っていたんじゃないか……。
大輝は席を立つと涼香を抱きしめる。
「バカ、比べるわけないだろうが……。希は希だし、涼香ちゃんは涼香ちゃんだろう? どちらが良いとか悪いとか……そんなんじゃない……」
「ありがとう。でも比べられるのがイヤだとかじゃないの。私ね希さんが好きなの……大輝くんが話してくれる希さんが……。だから、心配しないで」
涼香は大輝をさらに強く抱きしめた。
「大輝くん、嘘だと思ってんじゃない? 無理させてるとか……」
涼香が胸の中でクスっと笑った。
「じゃあ、私がこうして抱きしめてもらってる時に武人と比べてるとでも思ってる?」
「え? いや、それは──思ってなかったけど……」
まさかの質問に大輝は焦る。そんな事思ってもみなかった。涼香は大輝の頰に触れる。
「比べようがない、でしょ? 私の気持ち、分かった? 大輝くんは大輝くんだから、私は私……それでいいんだよ」
「涼香ちゃん……」
「希さんの分も私が作って大輝くんを太らせてあげる、ふふふ」
涼香は鳥の唐揚げを箸でつまむと大輝の口の中へと放り込んだ。
「……美味しい?」
「……うん、最高」
大輝は涼香の願い通り白飯もお代わりした。美味しいご飯だった。
「やっぱりイカはじゃがいもと食べるのが合うと思うのよね」
「んー、俺は里芋も捨てがたい……」
「なんですと!?……これは私が全部食べるからね! 里芋派め──」
「いや、待て……里芋はイカの旨味を吸ってなかなかいい味が──」
大輝は慌てて大皿を掴む。二人の食卓は賑やかなものになった。
「あ、おたまが無い? おたまーおたまーおたまー」
「あー、だめだ。じゃがいもが……」
「ん? 醤油、これ濃口だけか? しまったなー……へへ」
大輝は気になってチラチラと横目で見る。台所に見に行きたいし、手伝いたいがさっき涼香から「もう! 座っててよ、大輝くん立ち入り禁止」と言われてしまった。
「あ、しまった……塩忘れてたな、まぁいいやどうにかなるさ──今入れよ」
その後も涼香と料理の戦いは続いている。一生懸命な背中を見ていて嬉しくなる。
涼香ちゃんは料理に遊ばれてるみたいだな……。
大輝は希のことを思い出していた。希みたいに涼香になって欲しいと思っていない。代わりを求めてもないし、二人を比べてどうこういう気もない。二人は別の人間なのだから……。二人とも大切な人だ。
「出来た!」
どうやら完成らしい。
嬉しそうにテーブルに並べていく涼香を見て大輝の心も温かくなる。
「いただきます」
鳥の唐揚げにイカとじゃがいもの煮物にサラダが並ぶ。涼香の大好物ばかりだ。箸を持ち一口食べる。
おぉ!?
「美味しい……美味しいな、コレ」
大輝は目を見開く。かなり美味い……悪戦苦闘していたのが嘘のようだ。大輝は大きな口でそれらを平らげていく。涼香はその様子を微笑みながら見ていた。
視線に気づき大輝が箸を止める。
「うん、どうした?」
「うん? 希さんは料理が上手だったから作るの緊張したけど、良かったなぁって思って」
大輝は涼香にその話をしていたことを思い出した。
どんな気持ちで料理をしていたんだろう。比べられる、そう思っていたんじゃないか……。
大輝は席を立つと涼香を抱きしめる。
「バカ、比べるわけないだろうが……。希は希だし、涼香ちゃんは涼香ちゃんだろう? どちらが良いとか悪いとか……そんなんじゃない……」
「ありがとう。でも比べられるのがイヤだとかじゃないの。私ね希さんが好きなの……大輝くんが話してくれる希さんが……。だから、心配しないで」
涼香は大輝をさらに強く抱きしめた。
「大輝くん、嘘だと思ってんじゃない? 無理させてるとか……」
涼香が胸の中でクスっと笑った。
「じゃあ、私がこうして抱きしめてもらってる時に武人と比べてるとでも思ってる?」
「え? いや、それは──思ってなかったけど……」
まさかの質問に大輝は焦る。そんな事思ってもみなかった。涼香は大輝の頰に触れる。
「比べようがない、でしょ? 私の気持ち、分かった? 大輝くんは大輝くんだから、私は私……それでいいんだよ」
「涼香ちゃん……」
「希さんの分も私が作って大輝くんを太らせてあげる、ふふふ」
涼香は鳥の唐揚げを箸でつまむと大輝の口の中へと放り込んだ。
「……美味しい?」
「……うん、最高」
大輝は涼香の願い通り白飯もお代わりした。美味しいご飯だった。
「やっぱりイカはじゃがいもと食べるのが合うと思うのよね」
「んー、俺は里芋も捨てがたい……」
「なんですと!?……これは私が全部食べるからね! 里芋派め──」
「いや、待て……里芋はイカの旨味を吸ってなかなかいい味が──」
大輝は慌てて大皿を掴む。二人の食卓は賑やかなものになった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
ill〜怪異特務課事件簿〜
錦木
ホラー
現実の常識が通用しない『怪異』絡みの事件を扱う「怪異特務課」。
ミステリアスで冷徹な捜査官・名護、真面目である事情により怪異と深くつながる体質となってしまった捜査官・戸草。
とある秘密を共有する二人は協力して怪奇事件の捜査を行う。

特別。
月芝
ホラー
正義のヒーローに変身して悪と戦う。
一流のスポーツ選手となって活躍する。
ゲームのような異世界で勇者となって魔王と闘う。
すごい発明をして大金持ちになる。
歴史に名を刻むほどの偉人となる。
現実という物語の中で、主人公になる。
自分はみんなとはちがう。
この世に生まれたからには、何かを成し遂げたい。
自分が生きた証が欲しい。
特別な存在になりたい。
特別な存在でありたい。
特別な存在だったらいいな。
そんな願望、誰だって少しは持っているだろう?
でも、もしも本当に自分が世界にとっての「特別」だとしたら……
自宅の地下であるモノを見つけてしまったことを境にして、日常が変貌していく。まるでオセロのように白が黒に、黒が白へと裏返る。
次々と明らかになっていく真実。
特別なボクの心はいつまで耐えられるのだろうか……
伝奇ホラー作品。
お客様が不在の為お荷物を持ち帰りました。
鞠目
ホラー
さくら急便のある営業所に、奇妙な配達員にいたずらをされたという不可思議な問い合わせが届く。
最初はいたずら電話と思われていたこの案件だが、同じような問い合わせが複数人から発生し、どうやらいたずら電話ではないことがわかる。
迷惑行為をしているのは運送会社の人間なのか、それとも部外者か? 詳細がわからない状況の中、消息を断つ者が増えていく……
3月24日完結予定
毎日16時ごろに更新します
お越しをお待ちしております
ゾンビだらけの世界で俺はゾンビのふりをし続ける
気ままに
ホラー
家で寝て起きたらまさかの世界がゾンビパンデミックとなってしまっていた!
しかもセーラー服の可愛い女子高生のゾンビに噛まれてしまう!
もう終わりかと思ったら俺はゾンビになる事はなかった。しかもゾンビに狙われない体質へとなってしまう……これは映画で見た展開と同じじゃないか!
てことで俺は人間に利用されるのは御免被るのでゾンビのフリをして人間の安息の地が完成するまでのんびりと生活させて頂きます。
ネタバレ注意!↓↓
黒藤冬夜は自分を噛んだ知性ある女子高生のゾンビ、特殊体を探すためまず総合病院に向かう。
そこでゾンビとは思えない程の、異常なまでの力を持つ別の特殊体に出会う。
そこの総合病院の地下ではある研究が行われていた……
"P-tB"
人を救う研究のはずがそれは大きな厄災をもたらす事になる……
何故ゾンビが生まれたか……
何故知性あるゾンビが居るのか……
そして何故自分はゾンビにならず、ゾンビに狙われない孤独な存在となってしまったのか……
【BIO DEFENSE】 ~終わった世界に作られる都市~
こばん
SF
世界は唐突に終わりを告げる。それはある日突然現れて、平和な日常を過ごす人々に襲い掛かった。それは醜悪な様相に異臭を放ちながら、かつての日常に我が物顔で居座った。
人から人に感染し、感染した人はまだ感染していない人に襲い掛かり、恐るべき加速度で被害は広がって行く。
それに対抗する術は、今は無い。
平和な日常があっという間に非日常の世界に変わり、残った人々は集い、四国でいくつかの都市を形成して反攻の糸口と感染のルーツを探る。
しかしそれに対してか感染者も進化して困難な状況に拍車をかけてくる。
さらにそんな状態のなかでも、権益を求め人の足元をすくうため画策する者、理性をなくし欲望のままに動く者、この状況を利用すらして己の利益のみを求めて動く者らが牙をむき出しにしていきパニックは混迷を極める。
普通の高校生であったカナタもパニックに巻き込まれ、都市の一つに避難した。その都市の守備隊に仲間達と共に入り、第十一番隊として活動していく。様々な人と出会い、別れを繰り返しながら、感染者や都市外の略奪者などと戦い、都市同士の思惑に巻き込まれたりしながら日々を過ごしていた。
そして、やがて一つの真実に辿り着く。
それは大きな選択を迫られるものだった。
bio defence
※物語に出て来るすべての人名及び地名などの固有名詞はすべてフィクションです。作者の頭の中だけに存在するものであり、特定の人物や場所に対して何らかの意味合いを持たせたものではありません。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる