Catastrophe

アタラクシア

文字の大きさ
上 下
74 / 82
Execution of Justiceルート(山ノ井花音編)

16話「世界情勢」

しおりを挟む
「このショッピングモールは区間というものに分けられてるんだ」
「区間?」

ノアが埃を指でなぞって説明し始めた。よく見るショッピングモールの地図を書いている。

「まず2階。俺たちの拠点はインテリアショップ。そこを中心にして行動してる」

インテリアショップと思われる場所に指で丸を描いた。

「そして1番近い所で言うと……ここだな。駄菓子屋から時計屋まで。店は4店ある。仕切っているのは大倉おおくらという男だ」
「ちょいちょい待って待って」

仕切ってるって……なんで仕切ってるの。普通手を組んだりするでしょ。

「な、なんで仕切ってるの?」
「それについては後で話す。とりあえず区間を教えるからきちんと覚えろ」
「わ、わかった」
「他にあるのは服屋から宝具店。間にあるのは3店で仕切っているのは龍宮りゅうみやという」

ノアが3つ目の丸を描いた。……あきらかに拠点より丸が大きいことに疑問を覚えたが、それは振り払った。

「2階の勢力図はこれだけだ。次に1階。1階はレストランゾーン全体を春日という男が仕切っている。店は10店だ」
「へー……10店!?なんか桁増えたよ!?」
「1階は食料品が多い。だから自然と大きくなるんだろう」

色々言いたいことはあるがまだやめとこう。

「スマホ店からペットショップまでを翠嵐すいらんという男が仕切ってる。店は8店」
「翠嵐って……なんかかっこよさそうな名前だね」
「そうかもな。ほんで骨董品店からバック屋までがコゼット・ベイリーという女が9店を支配してる」
「女の人が支配してるんだ……すごいなぁ」

1階の地図の丸が2階より全然大きい……。よく生きていけるね2階は……。

「それで最後。一番ヤバイやつだ。1階の大部分を占領しているやつがいる。支配してる店の数は21店もある。そいつは1階の食料品店はほとんど全て支配してる」

……21店!?今までの奴らと全然違うじゃん。最強じゃん!

「その男の名は『レガシー』だ。アメリカから来た男でギャングを率いているらしい」
「なんでそんなヤツらが日本にいんの?」
「さぁ、それは知らない」

ノアが書いた丸はとんでもなく大きかった。2階の丸より何倍もある。……これ一強じゃん。

「さて、とりあえず軽い区間の説明はしたから、次の説明だ。仕切ってる理由についてだな」

ノアが埃のついた指をハンカチで拭きながら話し始めた。

「このパンデミックが起こった時、ショッピングモール内で結構な人が色んな所に避難したんだ。そしてしばらくしたら『ここの資源は俺らのものだ!』って言ってくるヤツらが出てき始めた」
「へぇー」
「それからなんやかんやあって今の状態になってる」
「まだパンデミックが起きて1日も経ってないでしょ?なんでそんなに早く勢力分布なんて起きるの?」
「さぁ。人間は愚かだったとしか言えない」

人間は愚かねぇ……助け合えば楽にすんでいいのになぁ。

「じゃあ説明は終わり。俺らの拠点に行くぞ」

そういえば拠点って言ってたね。なんか他のことがインパクト強すぎて忘れてた。……って拠点ってあのちっちゃい丸のこと!?

「え……大丈夫なの?」
「なにが?」
「そのレガシーとかいうやつに襲われたりしない?」
「1階のヤツらはあんまり考えなくていい。それよりも2階のヤツらに気おつけろ」
「え?なんで?確かに拠点よりも大きいけど」
「まず、ゾンビとの戦闘を避けるために俺たちは基本的に通気口から移動する。それで、通気口から1階には降りれない。それにわざわざ危険を犯してまでくるくらいに2階にいいものないからな」

そうなんだ……。まぁ考えててもしかたないね。とりあえず拠点に行ってみよ。百合ちゃんも心配だし。

「色んなことは後で考えるよ。とりあえず拠点に連れてって」
「おぅ。ボコボコだから気おつけてついてこいよ」

百合ちゃんを見てみる。そういえばさっきから何も喋ってなかったし。

「百合ちゃん大丈――」

……百合ちゃん寝てる。そういえば私が寝てた時も起きてたらしいし。疲れて寝たんだね。

気持ちよさそうにスヤスヤと眠ってる。なんだか小さい子みたい。

「ちゃんと連れてこいよ。置いていっても困る」

ノアが歩き出した。私はもう1回百合ちゃんをおんぶした。












「着いたぞ」

ノアが止まった。ノアの前には白い通気口があった。その通気口を外して地面に落とす。

「ここを降りるんだ」
「――へ?」

ノアが通気口か……飛び降りた!?

すぐに通気口の所まで移動する。下を見てみた。そこには綺麗に着地しているノアがいた。

「え……えぇ」

下までは3、4mくらいある。下にはベットがあるとはいえ、これを飛び降りるのはちょっと……。

「はよ降りてこい」
「――無理無理!高すぎるって!」
「下にはクッションあるから怪我はしない。安心して飛び降りろ」
「無茶言わないでよ!私高いところ苦手なの!」
「……はぁ、なら仕方ない」

ノアが両手をパンパンと2回叩いた。え?何する気?なんか怖いんだけど。

「え?え?なに?なに?何が起きるの?」

映画とかでよく見る変形する秘密基地とか?イケメン執事と美女メイドが階段を置いてくれたり?……最高じゃん!

「えー?えー?なになに?お姫様抱っこして降ろしてくれるの?よしバッチこい!いつでも準備は――」

何かに足を掴まれた。なんかすごい力で。なんかすごい大きい手で。

「え?ちょっ――」

思いっきり引っ張られた。重力の有無が疑問になるくらいの力だ。これほんとに人なんだろうかー。

視界が目まぐるしく変わった。周りの物が1本の線になるくらいに早い。


「――んぶぁ!?」

地面じゃなくベットに叩き落とされた。体とベットが反発して2mくらい跳ねた。ベットに落ちた1秒後に百合ちゃんが私のお尻に落ちてきた。

「痛!」
「んぁー……柔らかい枕ァ~」
「ちょい!?スリスリしないで!!」

お尻に引っ付いてる百合ちゃんを引き剥がしながら、私は足を握ったやつの方に目を向けた。


「……おいノア。こいつ誰だ?」
「生存者だ。また2人増えたぞ」
「……変なことはするなよ」

なんかおっきい人がいた。2mくらいはある。見た感じプロレスラーかな……。腕とか脚の筋肉すごいし。

「ってノア君!その子怪我してるじゃないか!治療の方法も雑だし」

後ろから年配のおじいさんとおばあさんが来た。その周りには若い夫婦と綺麗な大学生くらいのお姉さん、少し歳をとってる男の人がいた。












続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ill〜怪異特務課事件簿〜

錦木
ホラー
現実の常識が通用しない『怪異』絡みの事件を扱う「怪異特務課」。 ミステリアスで冷徹な捜査官・名護、真面目である事情により怪異と深くつながる体質となってしまった捜査官・戸草。 とある秘密を共有する二人は協力して怪奇事件の捜査を行う。

ゾンビだらけの世界で俺はゾンビのふりをし続ける

気ままに
ホラー
 家で寝て起きたらまさかの世界がゾンビパンデミックとなってしまっていた!  しかもセーラー服の可愛い女子高生のゾンビに噛まれてしまう!  もう終わりかと思ったら俺はゾンビになる事はなかった。しかもゾンビに狙われない体質へとなってしまう……これは映画で見た展開と同じじゃないか!  てことで俺は人間に利用されるのは御免被るのでゾンビのフリをして人間の安息の地が完成するまでのんびりと生活させて頂きます。  ネタバレ注意!↓↓  黒藤冬夜は自分を噛んだ知性ある女子高生のゾンビ、特殊体を探すためまず総合病院に向かう。  そこでゾンビとは思えない程の、異常なまでの力を持つ別の特殊体に出会う。  そこの総合病院の地下ではある研究が行われていた……  "P-tB"  人を救う研究のはずがそれは大きな厄災をもたらす事になる……  何故ゾンビが生まれたか……  何故知性あるゾンビが居るのか……  そして何故自分はゾンビにならず、ゾンビに狙われない孤独な存在となってしまったのか……

怨念がおんねん〜祓い屋アベの記録〜

君影 ルナ
ホラー
・事例 壱 『自分』は真冬に似合わない服装で、見知らぬ集落に向かって歩いているらしい。 何故『自分』はあの集落に向かっている? 何故『自分』のことが分からない? 何故…… ・事例 弍 ?? ────────── ・ホラー編と解決編とに分かれております。 ・純粋にホラーを楽しみたい方は漢数字の話だけを、解決編も楽しみたい方は数字を気にせず読んでいただけたらと思います。 ・フィクションです。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

鎌倉呪具師の回収録~使霊の箱~

平本りこ
ホラー
――恐ろしきは怨霊か、それとも。 土蔵珠子はある日突然、婚約者と勤め先、住んでいた家を同時に失った。 六年前、母に先立たれた珠子にとって、二度目の大きな裏切りだった。 けれど、悲嘆にくれてばかりもいられない。珠子には頼れる親戚もいないのだ。 住む場所だけはどうにかしなければと思うが、職も保証人もないので物件探しは難航し、なんとか借りることのできたのは、鎌倉にあるおんぼろアパートだ。 いわくつき物件のご多分に漏れず、入居初日の晩、稲光が差し込む窓越しに、珠子は恐ろしいものを見てしまう。 それは、古風な小袖を纏い焼けただれた女性の姿であった。 時を同じくして、呪具師一族の末裔である大江間諭が珠子の部屋の隣に越して来る。 呪具とは、鎌倉時代から続く大江間という一族が神秘の力を織り合わせて作り出した、超常現象を引き起こす道具のことである。 諭は日本中に散らばってしまった危険な呪具を回収するため、怨霊の気配が漂うおんぼろアパートにやってきたのだった。 ひょんなことから、霊を成仏させるために強力することになった珠子と諭。やがて、珠子には、残留思念を読む異能があることがわかる。けれどそれは生まれつきのものではなく、どうやら珠子は後天的に、生身の「呪具」になってしまったようなのだ。 さらに、諭が追っている呪具には珠子の母親の死と関連があることがわかってきて……。 ※毎日17:40更新 最終章は3月29日に4エピソード同時更新です

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

彷徨う屍

半道海豚
ホラー
春休みは、まもなく終わり。関東の桜は散ったが、東北はいまが盛り。気候変動の中で、いろいろな疫病が人々を苦しめている。それでも、日々の生活はいつもと同じだった。その瞬間までは。4人の高校生は旅先で、ゾンビと遭遇してしまう。周囲の人々が逃げ惑う。4人の高校生はホテルから逃げ出し、人気のない山中に向かうことにしたのだが……。

処理中です...