Catastrophe

アタラクシア

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Execution of Justiceルート(山ノ井花音編)

16話「世界情勢」

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「このショッピングモールは区間というものに分けられてるんだ」
「区間?」

ノアが埃を指でなぞって説明し始めた。よく見るショッピングモールの地図を書いている。

「まず2階。俺たちの拠点はインテリアショップ。そこを中心にして行動してる」

インテリアショップと思われる場所に指で丸を描いた。

「そして1番近い所で言うと……ここだな。駄菓子屋から時計屋まで。店は4店ある。仕切っているのは大倉おおくらという男だ」
「ちょいちょい待って待って」

仕切ってるって……なんで仕切ってるの。普通手を組んだりするでしょ。

「な、なんで仕切ってるの?」
「それについては後で話す。とりあえず区間を教えるからきちんと覚えろ」
「わ、わかった」
「他にあるのは服屋から宝具店。間にあるのは3店で仕切っているのは龍宮りゅうみやという」

ノアが3つ目の丸を描いた。……あきらかに拠点より丸が大きいことに疑問を覚えたが、それは振り払った。

「2階の勢力図はこれだけだ。次に1階。1階はレストランゾーン全体を春日という男が仕切っている。店は10店だ」
「へー……10店!?なんか桁増えたよ!?」
「1階は食料品が多い。だから自然と大きくなるんだろう」

色々言いたいことはあるがまだやめとこう。

「スマホ店からペットショップまでを翠嵐すいらんという男が仕切ってる。店は8店」
「翠嵐って……なんかかっこよさそうな名前だね」
「そうかもな。ほんで骨董品店からバック屋までがコゼット・ベイリーという女が9店を支配してる」
「女の人が支配してるんだ……すごいなぁ」

1階の地図の丸が2階より全然大きい……。よく生きていけるね2階は……。

「それで最後。一番ヤバイやつだ。1階の大部分を占領しているやつがいる。支配してる店の数は21店もある。そいつは1階の食料品店はほとんど全て支配してる」

……21店!?今までの奴らと全然違うじゃん。最強じゃん!

「その男の名は『レガシー』だ。アメリカから来た男でギャングを率いているらしい」
「なんでそんなヤツらが日本にいんの?」
「さぁ、それは知らない」

ノアが書いた丸はとんでもなく大きかった。2階の丸より何倍もある。……これ一強じゃん。

「さて、とりあえず軽い区間の説明はしたから、次の説明だ。仕切ってる理由についてだな」

ノアが埃のついた指をハンカチで拭きながら話し始めた。

「このパンデミックが起こった時、ショッピングモール内で結構な人が色んな所に避難したんだ。そしてしばらくしたら『ここの資源は俺らのものだ!』って言ってくるヤツらが出てき始めた」
「へぇー」
「それからなんやかんやあって今の状態になってる」
「まだパンデミックが起きて1日も経ってないでしょ?なんでそんなに早く勢力分布なんて起きるの?」
「さぁ。人間は愚かだったとしか言えない」

人間は愚かねぇ……助け合えば楽にすんでいいのになぁ。

「じゃあ説明は終わり。俺らの拠点に行くぞ」

そういえば拠点って言ってたね。なんか他のことがインパクト強すぎて忘れてた。……って拠点ってあのちっちゃい丸のこと!?

「え……大丈夫なの?」
「なにが?」
「そのレガシーとかいうやつに襲われたりしない?」
「1階のヤツらはあんまり考えなくていい。それよりも2階のヤツらに気おつけろ」
「え?なんで?確かに拠点よりも大きいけど」
「まず、ゾンビとの戦闘を避けるために俺たちは基本的に通気口から移動する。それで、通気口から1階には降りれない。それにわざわざ危険を犯してまでくるくらいに2階にいいものないからな」

そうなんだ……。まぁ考えててもしかたないね。とりあえず拠点に行ってみよ。百合ちゃんも心配だし。

「色んなことは後で考えるよ。とりあえず拠点に連れてって」
「おぅ。ボコボコだから気おつけてついてこいよ」

百合ちゃんを見てみる。そういえばさっきから何も喋ってなかったし。

「百合ちゃん大丈――」

……百合ちゃん寝てる。そういえば私が寝てた時も起きてたらしいし。疲れて寝たんだね。

気持ちよさそうにスヤスヤと眠ってる。なんだか小さい子みたい。

「ちゃんと連れてこいよ。置いていっても困る」

ノアが歩き出した。私はもう1回百合ちゃんをおんぶした。












「着いたぞ」

ノアが止まった。ノアの前には白い通気口があった。その通気口を外して地面に落とす。

「ここを降りるんだ」
「――へ?」

ノアが通気口か……飛び降りた!?

すぐに通気口の所まで移動する。下を見てみた。そこには綺麗に着地しているノアがいた。

「え……えぇ」

下までは3、4mくらいある。下にはベットがあるとはいえ、これを飛び降りるのはちょっと……。

「はよ降りてこい」
「――無理無理!高すぎるって!」
「下にはクッションあるから怪我はしない。安心して飛び降りろ」
「無茶言わないでよ!私高いところ苦手なの!」
「……はぁ、なら仕方ない」

ノアが両手をパンパンと2回叩いた。え?何する気?なんか怖いんだけど。

「え?え?なに?なに?何が起きるの?」

映画とかでよく見る変形する秘密基地とか?イケメン執事と美女メイドが階段を置いてくれたり?……最高じゃん!

「えー?えー?なになに?お姫様抱っこして降ろしてくれるの?よしバッチこい!いつでも準備は――」

何かに足を掴まれた。なんかすごい力で。なんかすごい大きい手で。

「え?ちょっ――」

思いっきり引っ張られた。重力の有無が疑問になるくらいの力だ。これほんとに人なんだろうかー。

視界が目まぐるしく変わった。周りの物が1本の線になるくらいに早い。


「――んぶぁ!?」

地面じゃなくベットに叩き落とされた。体とベットが反発して2mくらい跳ねた。ベットに落ちた1秒後に百合ちゃんが私のお尻に落ちてきた。

「痛!」
「んぁー……柔らかい枕ァ~」
「ちょい!?スリスリしないで!!」

お尻に引っ付いてる百合ちゃんを引き剥がしながら、私は足を握ったやつの方に目を向けた。


「……おいノア。こいつ誰だ?」
「生存者だ。また2人増えたぞ」
「……変なことはするなよ」

なんかおっきい人がいた。2mくらいはある。見た感じプロレスラーかな……。腕とか脚の筋肉すごいし。

「ってノア君!その子怪我してるじゃないか!治療の方法も雑だし」

後ろから年配のおじいさんとおばあさんが来た。その周りには若い夫婦と綺麗な大学生くらいのお姉さん、少し歳をとってる男の人がいた。












続く
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