72 / 82
Execution of Justiceルート(山ノ井花音編)
14話「華」
しおりを挟む
「……んぇ?」
ボーッとなっていて反応が遅れた。頬に赤い血が付いている。それは私のじゃなく、エムプーサの血であった。
私にかかっていた重さがなくなり、エムプーサの体が私にのしかかってきた。やっぱり軽かった。こんな軽い女の子に好き勝手されてたの……。
「か……花音ちゃん……」
奥からフラフラしながら百合ちゃんが歩いてくるのが見えた。片腹から血を流しながら弓を構えている。
エムプーサの頭には穴が空いていた。百合ちゃんがエムプーサを倒してくれたようだ。これから一生百合ちゃんに頭が上がらなそう……。
エムプーサを横にどけて百合ちゃんに歩み寄る。血はかなり出ているがまだ間に合うレベルだと思いたい。
「百合ちゃん!大丈夫!?」
「な、なんとか……花音ちゃんエロビデオでも撮ってたの?」
「うるさい……」
思い出すと顔が赤くなる。あの子供め……なんであんなのがいるんだよぉ。
そういえば産みつけられた卵はどうしたらいいんだろう……まぁあとで頑張って吐き出そう。
「とりあえず中に入ろう。ここには長居しない方がいい」
「私も……賛成……」
百合ちゃんの意識が朧気になってる。やっぱりまだダメだ。早く止血しないとまずい。
すぐさまバックと銃を持ってきて、中身を漁る。こういう時のためにドラッグストアから色々持ってきておいたのだ。
百合ちゃんを寝かせようとしたその時だった。
アヒャアヒャアヒャアヒャアヒャ!!!
ゾンビが横から飛び出てきた。そういえばここら辺はゾンビがむちゃくちゃ多かったんだった!
ゾンビの腹を蹴って怯ませる。そうして落ちた頭を両手でガシッと掴み、持ち上げたひざにその頭を叩きつけた。
ゾンビの顔面から顔が噴水のように流しながら地面に倒れた。死んではないと思う。
アヒャアヒャアヒャアヒャアヒャ!!!
辺りからゾンビの笑い声が聞こえてくる。ここはやばい。女の子に飼い殺されるのも嫌だけどゾンビに喰い殺されるのも嫌だ。
すぐさま百合ちゃんを横抱きして走った。同時に数十体のゾンビが目の前に現れる。
流石に百合ちゃんを抱えたまま全員と戦うのはきつい。ならわざわざ戦う必要も無いだろう。
銃口を消化器に向けて引き金を2回引いた。白い煙が音を立てて吐き出される。その煙は唸っていたゾンビの顔面に直撃した。
ゾンビ達が目の前の煙を払おうと手をバタバタさせている隙にダッシュで通り抜ける。
煙を通り抜けて私はショッピングモールの出入口に飛び込んだ。ここは3階なので店はなく、あるのはエスカレーターとガチャガチャだけだ。
まだ中にゾンビはいなかったが、下に行けばゾンビがかなりいるだろう。外にもゾンビはかなりいる。
「止血するならここだけだよね……」
百合ちゃんを地面に寝かせて服を軽く脱がした。白くて細い綺麗なお腹からドロドロと血が流れていた。
「か、花音ちゃんのエッチ……」
「ハイハイ静かに。喋るともっと血が出てきちゃうよ」
ガーゼを置いてテープを貼る。ガーゼを置いた瞬間、白いガーゼが血に染った。そのまま包帯をお腹周りにグルグルと巻く。
「包帯を巻かれてるのを見てるとサラシを思い出すねぇ」
「なんでこんな状況で思い出すの……」
「花音ちゃんはサラシとか巻かないの?」
「巻くわけないでしょ。武士じゃないんだから」
キュッと包帯を締めつけた。百合ちゃんの体が少しはねる。やっぱり痛いのだろう。
「これでどう?」
「うん。まったく痛み引いてないけど血が出てる感覚は少なくなったよ」
「痛いのは我慢してね。もう大人でしょ?」
「……子供扱いしてない?」
百合ちゃんがジト目でこちらを見てくる。……可愛い。
百合ちゃんに肩を貸しながら立ち上がった。少しフラフラしているが動けるには動けるそうだ。
「言っとくけど、年齢は私の方が年上なんだからね!あとそんなに身長変わらないからね!」
「うんうんあとで聞いてあげまちゅからねー。じっとしてましょうねー」
「……彩ちゃんに会ったら花音ちゃんが小学生の女の子に発情してたって言ってやるもんね」
「――そ、それはやめてください……」
あーもー!あの子のせいで変なことになったじゃん!可愛かったけどあの子は絶対許してあげないんだから!
エスカレーターの上から辺りを見渡す。ここを下れば目の前にはゲームセンターがある。そこの隣の隣にフードコートがある。集合場所はそこだ。
「そう簡単には行けないね」
やっぱりというか、ゾンビが大量にいた。強行突破も無理。1人でもキツそうなのに怪我人を抱えたままなんて無理に決まってる。
私は百合ちゃんをまた床に寝かせた。私は壁に寄りかかって座った。
「さて……これからどうしよう」
彩達は大丈夫なのかな。死んではないだろうか。……心配したら沼にハマったように心配し続けてしまう。心配しても何もできないのに心配してしまうなぁ。
「……2人なら大丈夫だよ。少なくとも正一は超強いからね」
百合ちゃんが笑いながら言ってくれた。……優しいな百合ちゃんは。
「そうだね。心配してても仕方ない。とりあえずゾンビが少なくなるまで待とっか」
私は少し力を抜いたのだった。
続く
ボーッとなっていて反応が遅れた。頬に赤い血が付いている。それは私のじゃなく、エムプーサの血であった。
私にかかっていた重さがなくなり、エムプーサの体が私にのしかかってきた。やっぱり軽かった。こんな軽い女の子に好き勝手されてたの……。
「か……花音ちゃん……」
奥からフラフラしながら百合ちゃんが歩いてくるのが見えた。片腹から血を流しながら弓を構えている。
エムプーサの頭には穴が空いていた。百合ちゃんがエムプーサを倒してくれたようだ。これから一生百合ちゃんに頭が上がらなそう……。
エムプーサを横にどけて百合ちゃんに歩み寄る。血はかなり出ているがまだ間に合うレベルだと思いたい。
「百合ちゃん!大丈夫!?」
「な、なんとか……花音ちゃんエロビデオでも撮ってたの?」
「うるさい……」
思い出すと顔が赤くなる。あの子供め……なんであんなのがいるんだよぉ。
そういえば産みつけられた卵はどうしたらいいんだろう……まぁあとで頑張って吐き出そう。
「とりあえず中に入ろう。ここには長居しない方がいい」
「私も……賛成……」
百合ちゃんの意識が朧気になってる。やっぱりまだダメだ。早く止血しないとまずい。
すぐさまバックと銃を持ってきて、中身を漁る。こういう時のためにドラッグストアから色々持ってきておいたのだ。
百合ちゃんを寝かせようとしたその時だった。
アヒャアヒャアヒャアヒャアヒャ!!!
ゾンビが横から飛び出てきた。そういえばここら辺はゾンビがむちゃくちゃ多かったんだった!
ゾンビの腹を蹴って怯ませる。そうして落ちた頭を両手でガシッと掴み、持ち上げたひざにその頭を叩きつけた。
ゾンビの顔面から顔が噴水のように流しながら地面に倒れた。死んではないと思う。
アヒャアヒャアヒャアヒャアヒャ!!!
辺りからゾンビの笑い声が聞こえてくる。ここはやばい。女の子に飼い殺されるのも嫌だけどゾンビに喰い殺されるのも嫌だ。
すぐさま百合ちゃんを横抱きして走った。同時に数十体のゾンビが目の前に現れる。
流石に百合ちゃんを抱えたまま全員と戦うのはきつい。ならわざわざ戦う必要も無いだろう。
銃口を消化器に向けて引き金を2回引いた。白い煙が音を立てて吐き出される。その煙は唸っていたゾンビの顔面に直撃した。
ゾンビ達が目の前の煙を払おうと手をバタバタさせている隙にダッシュで通り抜ける。
煙を通り抜けて私はショッピングモールの出入口に飛び込んだ。ここは3階なので店はなく、あるのはエスカレーターとガチャガチャだけだ。
まだ中にゾンビはいなかったが、下に行けばゾンビがかなりいるだろう。外にもゾンビはかなりいる。
「止血するならここだけだよね……」
百合ちゃんを地面に寝かせて服を軽く脱がした。白くて細い綺麗なお腹からドロドロと血が流れていた。
「か、花音ちゃんのエッチ……」
「ハイハイ静かに。喋るともっと血が出てきちゃうよ」
ガーゼを置いてテープを貼る。ガーゼを置いた瞬間、白いガーゼが血に染った。そのまま包帯をお腹周りにグルグルと巻く。
「包帯を巻かれてるのを見てるとサラシを思い出すねぇ」
「なんでこんな状況で思い出すの……」
「花音ちゃんはサラシとか巻かないの?」
「巻くわけないでしょ。武士じゃないんだから」
キュッと包帯を締めつけた。百合ちゃんの体が少しはねる。やっぱり痛いのだろう。
「これでどう?」
「うん。まったく痛み引いてないけど血が出てる感覚は少なくなったよ」
「痛いのは我慢してね。もう大人でしょ?」
「……子供扱いしてない?」
百合ちゃんがジト目でこちらを見てくる。……可愛い。
百合ちゃんに肩を貸しながら立ち上がった。少しフラフラしているが動けるには動けるそうだ。
「言っとくけど、年齢は私の方が年上なんだからね!あとそんなに身長変わらないからね!」
「うんうんあとで聞いてあげまちゅからねー。じっとしてましょうねー」
「……彩ちゃんに会ったら花音ちゃんが小学生の女の子に発情してたって言ってやるもんね」
「――そ、それはやめてください……」
あーもー!あの子のせいで変なことになったじゃん!可愛かったけどあの子は絶対許してあげないんだから!
エスカレーターの上から辺りを見渡す。ここを下れば目の前にはゲームセンターがある。そこの隣の隣にフードコートがある。集合場所はそこだ。
「そう簡単には行けないね」
やっぱりというか、ゾンビが大量にいた。強行突破も無理。1人でもキツそうなのに怪我人を抱えたままなんて無理に決まってる。
私は百合ちゃんをまた床に寝かせた。私は壁に寄りかかって座った。
「さて……これからどうしよう」
彩達は大丈夫なのかな。死んではないだろうか。……心配したら沼にハマったように心配し続けてしまう。心配しても何もできないのに心配してしまうなぁ。
「……2人なら大丈夫だよ。少なくとも正一は超強いからね」
百合ちゃんが笑いながら言ってくれた。……優しいな百合ちゃんは。
「そうだね。心配してても仕方ない。とりあえずゾンビが少なくなるまで待とっか」
私は少し力を抜いたのだった。
続く
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
ill〜怪異特務課事件簿〜
錦木
ホラー
現実の常識が通用しない『怪異』絡みの事件を扱う「怪異特務課」。
ミステリアスで冷徹な捜査官・名護、真面目である事情により怪異と深くつながる体質となってしまった捜査官・戸草。
とある秘密を共有する二人は協力して怪奇事件の捜査を行う。

鎌倉呪具師の回収録~使霊の箱~
平本りこ
ホラー
――恐ろしきは怨霊か、それとも。
土蔵珠子はある日突然、婚約者と勤め先、住んでいた家を同時に失った。
六年前、母に先立たれた珠子にとって、二度目の大きな裏切りだった。
けれど、悲嘆にくれてばかりもいられない。珠子には頼れる親戚もいないのだ。
住む場所だけはどうにかしなければと思うが、職も保証人もないので物件探しは難航し、なんとか借りることのできたのは、鎌倉にあるおんぼろアパートだ。
いわくつき物件のご多分に漏れず、入居初日の晩、稲光が差し込む窓越しに、珠子は恐ろしいものを見てしまう。
それは、古風な小袖を纏い焼けただれた女性の姿であった。
時を同じくして、呪具師一族の末裔である大江間諭が珠子の部屋の隣に越して来る。
呪具とは、鎌倉時代から続く大江間という一族が神秘の力を織り合わせて作り出した、超常現象を引き起こす道具のことである。
諭は日本中に散らばってしまった危険な呪具を回収するため、怨霊の気配が漂うおんぼろアパートにやってきたのだった。
ひょんなことから、霊を成仏させるために強力することになった珠子と諭。やがて、珠子には、残留思念を読む異能があることがわかる。けれどそれは生まれつきのものではなく、どうやら珠子は後天的に、生身の「呪具」になってしまったようなのだ。
さらに、諭が追っている呪具には珠子の母親の死と関連があることがわかってきて……。
※毎日17:40更新
最終章は3月29日に4エピソード同時更新です
怨念がおんねん〜祓い屋アベの記録〜
君影 ルナ
ホラー
・事例 壱
『自分』は真冬に似合わない服装で、見知らぬ集落に向かって歩いているらしい。
何故『自分』はあの集落に向かっている?
何故『自分』のことが分からない?
何故……
・事例 弍
??
──────────
・ホラー編と解決編とに分かれております。
・純粋にホラーを楽しみたい方は漢数字の話だけを、解決編も楽しみたい方は数字を気にせず読んでいただけたらと思います。
・フィクションです。

ゾンビだらけの世界で俺はゾンビのふりをし続ける
気ままに
ホラー
家で寝て起きたらまさかの世界がゾンビパンデミックとなってしまっていた!
しかもセーラー服の可愛い女子高生のゾンビに噛まれてしまう!
もう終わりかと思ったら俺はゾンビになる事はなかった。しかもゾンビに狙われない体質へとなってしまう……これは映画で見た展開と同じじゃないか!
てことで俺は人間に利用されるのは御免被るのでゾンビのフリをして人間の安息の地が完成するまでのんびりと生活させて頂きます。
ネタバレ注意!↓↓
黒藤冬夜は自分を噛んだ知性ある女子高生のゾンビ、特殊体を探すためまず総合病院に向かう。
そこでゾンビとは思えない程の、異常なまでの力を持つ別の特殊体に出会う。
そこの総合病院の地下ではある研究が行われていた……
"P-tB"
人を救う研究のはずがそれは大きな厄災をもたらす事になる……
何故ゾンビが生まれたか……
何故知性あるゾンビが居るのか……
そして何故自分はゾンビにならず、ゾンビに狙われない孤独な存在となってしまったのか……
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる