61 / 82
Execution of Justiceルート(山ノ井花音編)
3話「運命の始まり」
しおりを挟む
家の前にあるスーパーに着いた。私の家は一軒家じゃなくてマンションだ。エスカレーターはあるが、なんか分からないけど不気味な感じがするから使ってない。
自動ドアを通り抜けて店の中に入る。スーパーとかっていつ行ってもちょうどいい気温だと私は思う。匂いも無機質なちょうどいいスーパーの匂いだ。
夜とはいえ、やはり人は結構いる。家族連れの人や髭の生えている中年の男の人、高校生くらいと男子とかいる。
このザワザワしている感じがザ・スーパーって思う。流行りの音楽を鳴らしているのもなかなかいい。
地面はツルツルしている大理石みたいなやつだ。当たり前だが転けると痛い。
緑色のカゴを持って野菜売り場に行く。さつまいもとかじゃがいもって、海外だと主食になっているのに日本だと野菜として分類されてるのは不思議だと思う。
「あの」
「はい?」
野菜売り場にてじゃがいもとさつまいもを取ろうとした時、ちょうど横にいたおばさんに話しかけられた。
白髪で顔にはシワが何本もある。どこにでもいる優しそうなおばあちゃんみたいな人だ。
「豆腐ってここにありますか?」
「豆腐ですか?ここじゃないですね。あっちの冷凍食品売り場の横にあると思います」
指をさしておばあちゃんに教える。おばあちゃんは「ありがとうね」と言ってカゴを持って歩いていこうとしていた。
私は特に気にすることなく、じゃがいもとさつまいもをカゴに入れた――。
――その瞬間だった。
辺りの電気が消えた。一瞬にして周りが薄黒色に包まれる。
「わひゃあ!?」
突然のことで体がビクッと跳ねた。人間は暗いところが怖いっていうのが本能だからね。仕方ない。
「え?え?……え?」
困惑する。すっごく困惑する。停電だろうか。
「……あれ?」
1つ不思議なことに気がついた。静かだ。さっきまでザワザワしていた声が無くなった。
こういう時にこそもっとザワザワするはずだ。子供とかは泣いたりしそうだが。
辺りを見渡してみる。薄暗いのであんまりよく見えないが、普通に人が立っている。
ただ、棒のように真っ直ぐ立っている。指1本動いている気配がない。なんなら呼吸している音も聞こえない。
「……あ、あの。おばあちゃん?」
まだ隣にいたおばあちゃんに話しかけてみる。おばあちゃんもまったく動かない。動いていない。
「お、おばあちゃん!大丈夫?」
肩を強めに揺らしてみる。ただ音が欲しかった。音が無さすぎて不気味だった。この不気味な感覚がひたすらに嫌だった。
このおばあちゃんは誰かも分からないし、どんな人かも知らない。だけどこの人の声さえ聞ければ安心できるはずだ。
おばあちゃんの体がガタガタと小刻みに震え始めた。びっくりして肩から手を離す。
まるで機械のように一定の間隔で震えている。怖い。ただただ怖い。
周りを見てみる。さっきまで柱のように動かなかった人達がまるで地震が起きているかのように震えていた。
「あ……あ、え、……や、やだっ……」
声が震える。もうダメだ。耐えられない。恐怖に感情を支配されそうだ。
カゴを地面に落とした。同時に入口に向かって走る。全力で走る。つい一時間前までクタクタになって走っていたのを忘れたかのように走った。
入ってくる景色はどこも恐怖を煽ってくる。子供、中年男性、女子高生。目に入る全ての人間が小刻みに震えている。嫌だ。嫌だ。
入口の自動ドアを蹴飛ばして外に出た。外に出れた安心で地面に倒れてしまう。
水溜まりの冷たさと、辺りの音で頭が整った。そのせいで今までのことが現実であることも理解してしまう。
フラフラしながら立ち上がる。スーパーの外がどうなっているのかが気になる。辺りからは音が聞こえるから普通なんだろうか。
心臓の鼓動が大きくなった。汗が頬を流れる。呼吸が乱れる。
水溜まり?水溜まりってなんだ。雨なんて降ってなかった。1粒も降ってなかった。そうだ。満月だ。今日は満月がよく見えた。
月明かりを使って、自分の手を見てみる。
そこには、真っ赤な血とドロっとした肉塊が手にべっとりとくっついていた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」
びっくりして後ずさりする。手を自分の服でゴシゴシ吹く。気持ち悪い。今更匂いが鼻を突き刺してきた。
腐臭だ。ゴミ捨て場みたいな腐臭。気持ち悪い匂いだ。吐き気がしてくる。ドロドロした感覚が手のひらにまとわりつく。
「な、なんなのこれ!?なんで……な、なんで……」
肉塊はビーフシチューの肉をもっとドロドロにした感じだ。嫌だ。本当に嫌だ。気持ち悪すぎる。
「う、うぁ……」
泣きそうになる。怖い。とても怖い。何が起こっているのかも分からない。
ゆっくりと立ち上がる。色んな所で音が鳴っている。車と車がぶつかるような音、女の人の悲鳴、犬の悲惨な鳴き声。まるで世紀末のような音が耳に入ってくる。
爆音がなったと同時、目の前から熱い風が向かってきた。肺をレンジのように熱くする。呼吸する度に喉が焼けそうだ。
目を開けて前を向く。車と車が衝突していた。青いボディの車が真っ赤に燃えている。
情報量が多すぎる。脳がショートしそうだ。新しいことが考えられない。声が出てこない。立ち上がるのもままらない。
「な、なんなの……これ……」
頭の中がぐちゃぐちゃになった私の目の前には、まさに終末世界という言葉が合うような光景が広がっていたのだった。
続く
自動ドアを通り抜けて店の中に入る。スーパーとかっていつ行ってもちょうどいい気温だと私は思う。匂いも無機質なちょうどいいスーパーの匂いだ。
夜とはいえ、やはり人は結構いる。家族連れの人や髭の生えている中年の男の人、高校生くらいと男子とかいる。
このザワザワしている感じがザ・スーパーって思う。流行りの音楽を鳴らしているのもなかなかいい。
地面はツルツルしている大理石みたいなやつだ。当たり前だが転けると痛い。
緑色のカゴを持って野菜売り場に行く。さつまいもとかじゃがいもって、海外だと主食になっているのに日本だと野菜として分類されてるのは不思議だと思う。
「あの」
「はい?」
野菜売り場にてじゃがいもとさつまいもを取ろうとした時、ちょうど横にいたおばさんに話しかけられた。
白髪で顔にはシワが何本もある。どこにでもいる優しそうなおばあちゃんみたいな人だ。
「豆腐ってここにありますか?」
「豆腐ですか?ここじゃないですね。あっちの冷凍食品売り場の横にあると思います」
指をさしておばあちゃんに教える。おばあちゃんは「ありがとうね」と言ってカゴを持って歩いていこうとしていた。
私は特に気にすることなく、じゃがいもとさつまいもをカゴに入れた――。
――その瞬間だった。
辺りの電気が消えた。一瞬にして周りが薄黒色に包まれる。
「わひゃあ!?」
突然のことで体がビクッと跳ねた。人間は暗いところが怖いっていうのが本能だからね。仕方ない。
「え?え?……え?」
困惑する。すっごく困惑する。停電だろうか。
「……あれ?」
1つ不思議なことに気がついた。静かだ。さっきまでザワザワしていた声が無くなった。
こういう時にこそもっとザワザワするはずだ。子供とかは泣いたりしそうだが。
辺りを見渡してみる。薄暗いのであんまりよく見えないが、普通に人が立っている。
ただ、棒のように真っ直ぐ立っている。指1本動いている気配がない。なんなら呼吸している音も聞こえない。
「……あ、あの。おばあちゃん?」
まだ隣にいたおばあちゃんに話しかけてみる。おばあちゃんもまったく動かない。動いていない。
「お、おばあちゃん!大丈夫?」
肩を強めに揺らしてみる。ただ音が欲しかった。音が無さすぎて不気味だった。この不気味な感覚がひたすらに嫌だった。
このおばあちゃんは誰かも分からないし、どんな人かも知らない。だけどこの人の声さえ聞ければ安心できるはずだ。
おばあちゃんの体がガタガタと小刻みに震え始めた。びっくりして肩から手を離す。
まるで機械のように一定の間隔で震えている。怖い。ただただ怖い。
周りを見てみる。さっきまで柱のように動かなかった人達がまるで地震が起きているかのように震えていた。
「あ……あ、え、……や、やだっ……」
声が震える。もうダメだ。耐えられない。恐怖に感情を支配されそうだ。
カゴを地面に落とした。同時に入口に向かって走る。全力で走る。つい一時間前までクタクタになって走っていたのを忘れたかのように走った。
入ってくる景色はどこも恐怖を煽ってくる。子供、中年男性、女子高生。目に入る全ての人間が小刻みに震えている。嫌だ。嫌だ。
入口の自動ドアを蹴飛ばして外に出た。外に出れた安心で地面に倒れてしまう。
水溜まりの冷たさと、辺りの音で頭が整った。そのせいで今までのことが現実であることも理解してしまう。
フラフラしながら立ち上がる。スーパーの外がどうなっているのかが気になる。辺りからは音が聞こえるから普通なんだろうか。
心臓の鼓動が大きくなった。汗が頬を流れる。呼吸が乱れる。
水溜まり?水溜まりってなんだ。雨なんて降ってなかった。1粒も降ってなかった。そうだ。満月だ。今日は満月がよく見えた。
月明かりを使って、自分の手を見てみる。
そこには、真っ赤な血とドロっとした肉塊が手にべっとりとくっついていた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」
びっくりして後ずさりする。手を自分の服でゴシゴシ吹く。気持ち悪い。今更匂いが鼻を突き刺してきた。
腐臭だ。ゴミ捨て場みたいな腐臭。気持ち悪い匂いだ。吐き気がしてくる。ドロドロした感覚が手のひらにまとわりつく。
「な、なんなのこれ!?なんで……な、なんで……」
肉塊はビーフシチューの肉をもっとドロドロにした感じだ。嫌だ。本当に嫌だ。気持ち悪すぎる。
「う、うぁ……」
泣きそうになる。怖い。とても怖い。何が起こっているのかも分からない。
ゆっくりと立ち上がる。色んな所で音が鳴っている。車と車がぶつかるような音、女の人の悲鳴、犬の悲惨な鳴き声。まるで世紀末のような音が耳に入ってくる。
爆音がなったと同時、目の前から熱い風が向かってきた。肺をレンジのように熱くする。呼吸する度に喉が焼けそうだ。
目を開けて前を向く。車と車が衝突していた。青いボディの車が真っ赤に燃えている。
情報量が多すぎる。脳がショートしそうだ。新しいことが考えられない。声が出てこない。立ち上がるのもままらない。
「な、なんなの……これ……」
頭の中がぐちゃぐちゃになった私の目の前には、まさに終末世界という言葉が合うような光景が広がっていたのだった。
続く
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
ゾンビだらけの世界で俺はゾンビのふりをし続ける
気ままに
ホラー
家で寝て起きたらまさかの世界がゾンビパンデミックとなってしまっていた!
しかもセーラー服の可愛い女子高生のゾンビに噛まれてしまう!
もう終わりかと思ったら俺はゾンビになる事はなかった。しかもゾンビに狙われない体質へとなってしまう……これは映画で見た展開と同じじゃないか!
てことで俺は人間に利用されるのは御免被るのでゾンビのフリをして人間の安息の地が完成するまでのんびりと生活させて頂きます。
ネタバレ注意!↓↓
黒藤冬夜は自分を噛んだ知性ある女子高生のゾンビ、特殊体を探すためまず総合病院に向かう。
そこでゾンビとは思えない程の、異常なまでの力を持つ別の特殊体に出会う。
そこの総合病院の地下ではある研究が行われていた……
"P-tB"
人を救う研究のはずがそれは大きな厄災をもたらす事になる……
何故ゾンビが生まれたか……
何故知性あるゾンビが居るのか……
そして何故自分はゾンビにならず、ゾンビに狙われない孤独な存在となってしまったのか……
ill〜怪異特務課事件簿〜
錦木
ホラー
現実の常識が通用しない『怪異』絡みの事件を扱う「怪異特務課」。
ミステリアスで冷徹な捜査官・名護、真面目である事情により怪異と深くつながる体質となってしまった捜査官・戸草。
とある秘密を共有する二人は協力して怪奇事件の捜査を行う。

怨念がおんねん〜祓い屋アベの記録〜
君影 ルナ
ホラー
・事例 壱
『自分』は真冬に似合わない服装で、見知らぬ集落に向かって歩いているらしい。
何故『自分』はあの集落に向かっている?
何故『自分』のことが分からない?
何故……
・事例 弍
??
──────────
・ホラー編と解決編とに分かれております。
・純粋にホラーを楽しみたい方は漢数字の話だけを、解決編も楽しみたい方は数字を気にせず読んでいただけたらと思います。
・フィクションです。
彷徨う屍
半道海豚
ホラー
春休みは、まもなく終わり。関東の桜は散ったが、東北はいまが盛り。気候変動の中で、いろいろな疫病が人々を苦しめている。それでも、日々の生活はいつもと同じだった。その瞬間までは。4人の高校生は旅先で、ゾンビと遭遇してしまう。周囲の人々が逃げ惑う。4人の高校生はホテルから逃げ出し、人気のない山中に向かうことにしたのだが……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。

特別。
月芝
ホラー
正義のヒーローに変身して悪と戦う。
一流のスポーツ選手となって活躍する。
ゲームのような異世界で勇者となって魔王と闘う。
すごい発明をして大金持ちになる。
歴史に名を刻むほどの偉人となる。
現実という物語の中で、主人公になる。
自分はみんなとはちがう。
この世に生まれたからには、何かを成し遂げたい。
自分が生きた証が欲しい。
特別な存在になりたい。
特別な存在でありたい。
特別な存在だったらいいな。
そんな願望、誰だって少しは持っているだろう?
でも、もしも本当に自分が世界にとっての「特別」だとしたら……
自宅の地下であるモノを見つけてしまったことを境にして、日常が変貌していく。まるでオセロのように白が黒に、黒が白へと裏返る。
次々と明らかになっていく真実。
特別なボクの心はいつまで耐えられるのだろうか……
伝奇ホラー作品。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる