60 / 82
Execution of Justiceルート(山ノ井花音編)
2話「炎のように」
しおりを挟む
「――――花音ちゃん!!」
「んうぇ!?」
背中を叩かれて目が覚めた。結構強く叩かれたようで、背中がヒリヒリする。
「も~。また寝てたでしょ!さっきの授業も半生半死みたいな状態だったし」
「ご、ごめん。最近ゲームが楽しくて……」
「夜更かしはお肌の天敵なんだから、夜更かしは程々にね。花音ちゃんお肌綺麗なんだし~」
「あ~」
私の頬をムニムニしてくるこの子は、立花歩美ちゃん。同じクラスで薙刀部に入っている。なかなかにモテている。
ちなみに私の名前は山ノ井 花音。陸上部に所属している普通の高校生だ。
「もっと起こすときの威力を下げてくれると嬉しいんだけど……じゃないと私の背中がトマトみたいになりそう」
「しょーがないじゃん。花音ちゃんゆすっても全然起きないしさ」
歩美ちゃんはなかなかアグレッシブな子だ。薙刀部なせいなのか力も強い。マウントを取ろうとしても逆にマウントを取られてしまう。
「それで?どうかしたの?」
「あ、そうだった。今日さお弁当忘れてきちゃったからさ、購買一緒に行こうよ」
「いいよ。ちょうど私もコーヒー牛乳飲みたかったし」
「よーし、それじゃあさっそく行こー!」
「あちょっと、引っ張らないで~」
購買の前に着いた。無理矢理腕を引っ張られたので肩が痛い。
「あー!もう、花音ちゃんが寝てたせいでハムパン売り切れちゃったじゃん!」
「歩美ちゃんの運が悪かったせいでしょー」
歩美ちゃんが肩を落とした。この学校のハムパンは生徒に人気だからね。1、2時間目の間に買いに行かないと直ぐに売り切れてしまう。
「も~。私は一体何を食べればいいのよ!」
「私コーヒー牛乳買ってくるー」
「無視するなー!」
歩美ちゃんがぷりぷり怒っているのを横目に私はおばちゃんにお金を渡したのだった。
「それでさ~」
「うんうん――あっ」
教室に戻ってる途中、嫌なものを見てしまった。
「――んで?金は?」
「その……今日は無くて……」
「えー?ないのー?なんでー?」
「その……その……」
「ちゃんと言えよ。言わないと分からないだろ?」
寄ってたかって数人で1人の男子生徒を虐めていた。言動的に金をせびっているとかなんだろう。
「……ちょっとこれ持ってて」
「あっ花音ちゃん――」
虐めている奴らに近づく。私はこういうのを絶対に見逃せないたちだ。いじめとか見て見ぬふりをすることはできない。
「財布よこせよ」
「それは……」
「はーやーくー寄越せよー」
「めんどくせ。取ろうぜ――」
財布を取ろうとした女の子の手を掴んだ。できるだけ強い力で腕を握る。
「やめなよそういうの」
「花音かよ。お前には関係ないだろ。どっか行け」
「なら金取るのはやめて」
「なんの権限があって君が命令できるのー?」
「……腕離して」
握っていた腕を振るわれて、手を離してしまった。
「……」
「……」
女の子と見つめ合う。いつ攻撃が来てもいいように、少しだけ構えた。
「――行こ。喧嘩しても無駄だし」
女の子が私から目を逸らして、歩いていった。
「あ、待てよ」
「ちっっ、後で来るからな」
取り巻きの男たちも女の子に着いていくようにして走っていった。
「大丈夫?」
「う、うん」
カツアゲされていた男の子に目を向ける。メガネをかけてなよなよしている。いかにもカツアゲをされてそうな子だ。偏見だけど。
「こういうのは先生に言うんだよ。人によっては対処してくれると思うから」
「うん……分かった」
「じゃあね」
もうちょっと気を強く持てたらカツアゲなんてされなくて済むのに。
「花音ちゃんは凄いね……あんな不良がいる所に突っ込んで行くなんて」
歩美ちゃんと階段を歩きながらそんな会話をしていた。
父の影響か知らないけど、昔から私は正義感が強かった。小学生の時はセクハラしてくる教師を蹴り倒したし、中学生の時はいじめっ子を病院送りにしてやった。
まぁそんなことばっかりしてたから、あんまり友達がいない。お父さんの仕事が仕事だからすぐに引越しをするっていうのもある。
だからこんなことをしてても仲良くしてくれている歩美ちゃんには頭が上がらない。
「……別に。そんなに凄くないよ。それに、どうせ私の方が強いし」
これが事実だ。最近ちょっと調子に乗ってきているのは自分でも分かるが、事実は事実だ。
「あーそっか。確か花音ちゃんのお父さん自衛隊の偉い人だったね。だったらあれ?CQCだっけ?そんなの習ってるの?」
「私は習いたかったんだけどね。お父さんが『花音には危ないことはして欲しくない』って言うからさ、教えてくれなかったんだよ。教えてくれたのは護身術だけだよ」
お父さんのことは好きだけど、そのことだけは根に持ってる。
「護身術って例えば?」
「例えばって聞かれると困るな……まぁ柔道とか合気道とかかな」
「えー!かっこいい!暇な時私にも教えてね」
「暇で暇でしょうがない時に多分考えておくよ」
「もー!約束だからね」
コーヒー牛乳にストローを刺しながら、私はそんな会話をしていた。
「ん~♪んん~♪」
鼻歌を歌いながら自転車を漕ぐ。部活も終わり、脚に疲労が溜まっている。この溜まっている時にマッサージをするのがまた気持ちいい。
満月も綺麗に出ていて、とても美しい。月に兎がいるって初めに考えた人はすごいと思う。
ピロン♪
スマホが振動した。片手運転でスマホを確認する。
『帰りにさつまいもとじゃがいも買ってきてね~』
「え~めんどくさいな~。……はぁ。まぁいいけど。買っていかない方が後でめんどくさくなるし」
お母さんはお父さんに比べて私に厳しい。ちょっとテストの点が落ちただけでスマホを取られたり、髪を切られたりする。
まぁお父さんがたまにしか帰ってこないからその影響もあると思うけど。
「さっさと買って帰ろ」
私はペダルを踏む力を強くした。
続く
「んうぇ!?」
背中を叩かれて目が覚めた。結構強く叩かれたようで、背中がヒリヒリする。
「も~。また寝てたでしょ!さっきの授業も半生半死みたいな状態だったし」
「ご、ごめん。最近ゲームが楽しくて……」
「夜更かしはお肌の天敵なんだから、夜更かしは程々にね。花音ちゃんお肌綺麗なんだし~」
「あ~」
私の頬をムニムニしてくるこの子は、立花歩美ちゃん。同じクラスで薙刀部に入っている。なかなかにモテている。
ちなみに私の名前は山ノ井 花音。陸上部に所属している普通の高校生だ。
「もっと起こすときの威力を下げてくれると嬉しいんだけど……じゃないと私の背中がトマトみたいになりそう」
「しょーがないじゃん。花音ちゃんゆすっても全然起きないしさ」
歩美ちゃんはなかなかアグレッシブな子だ。薙刀部なせいなのか力も強い。マウントを取ろうとしても逆にマウントを取られてしまう。
「それで?どうかしたの?」
「あ、そうだった。今日さお弁当忘れてきちゃったからさ、購買一緒に行こうよ」
「いいよ。ちょうど私もコーヒー牛乳飲みたかったし」
「よーし、それじゃあさっそく行こー!」
「あちょっと、引っ張らないで~」
購買の前に着いた。無理矢理腕を引っ張られたので肩が痛い。
「あー!もう、花音ちゃんが寝てたせいでハムパン売り切れちゃったじゃん!」
「歩美ちゃんの運が悪かったせいでしょー」
歩美ちゃんが肩を落とした。この学校のハムパンは生徒に人気だからね。1、2時間目の間に買いに行かないと直ぐに売り切れてしまう。
「も~。私は一体何を食べればいいのよ!」
「私コーヒー牛乳買ってくるー」
「無視するなー!」
歩美ちゃんがぷりぷり怒っているのを横目に私はおばちゃんにお金を渡したのだった。
「それでさ~」
「うんうん――あっ」
教室に戻ってる途中、嫌なものを見てしまった。
「――んで?金は?」
「その……今日は無くて……」
「えー?ないのー?なんでー?」
「その……その……」
「ちゃんと言えよ。言わないと分からないだろ?」
寄ってたかって数人で1人の男子生徒を虐めていた。言動的に金をせびっているとかなんだろう。
「……ちょっとこれ持ってて」
「あっ花音ちゃん――」
虐めている奴らに近づく。私はこういうのを絶対に見逃せないたちだ。いじめとか見て見ぬふりをすることはできない。
「財布よこせよ」
「それは……」
「はーやーくー寄越せよー」
「めんどくせ。取ろうぜ――」
財布を取ろうとした女の子の手を掴んだ。できるだけ強い力で腕を握る。
「やめなよそういうの」
「花音かよ。お前には関係ないだろ。どっか行け」
「なら金取るのはやめて」
「なんの権限があって君が命令できるのー?」
「……腕離して」
握っていた腕を振るわれて、手を離してしまった。
「……」
「……」
女の子と見つめ合う。いつ攻撃が来てもいいように、少しだけ構えた。
「――行こ。喧嘩しても無駄だし」
女の子が私から目を逸らして、歩いていった。
「あ、待てよ」
「ちっっ、後で来るからな」
取り巻きの男たちも女の子に着いていくようにして走っていった。
「大丈夫?」
「う、うん」
カツアゲされていた男の子に目を向ける。メガネをかけてなよなよしている。いかにもカツアゲをされてそうな子だ。偏見だけど。
「こういうのは先生に言うんだよ。人によっては対処してくれると思うから」
「うん……分かった」
「じゃあね」
もうちょっと気を強く持てたらカツアゲなんてされなくて済むのに。
「花音ちゃんは凄いね……あんな不良がいる所に突っ込んで行くなんて」
歩美ちゃんと階段を歩きながらそんな会話をしていた。
父の影響か知らないけど、昔から私は正義感が強かった。小学生の時はセクハラしてくる教師を蹴り倒したし、中学生の時はいじめっ子を病院送りにしてやった。
まぁそんなことばっかりしてたから、あんまり友達がいない。お父さんの仕事が仕事だからすぐに引越しをするっていうのもある。
だからこんなことをしてても仲良くしてくれている歩美ちゃんには頭が上がらない。
「……別に。そんなに凄くないよ。それに、どうせ私の方が強いし」
これが事実だ。最近ちょっと調子に乗ってきているのは自分でも分かるが、事実は事実だ。
「あーそっか。確か花音ちゃんのお父さん自衛隊の偉い人だったね。だったらあれ?CQCだっけ?そんなの習ってるの?」
「私は習いたかったんだけどね。お父さんが『花音には危ないことはして欲しくない』って言うからさ、教えてくれなかったんだよ。教えてくれたのは護身術だけだよ」
お父さんのことは好きだけど、そのことだけは根に持ってる。
「護身術って例えば?」
「例えばって聞かれると困るな……まぁ柔道とか合気道とかかな」
「えー!かっこいい!暇な時私にも教えてね」
「暇で暇でしょうがない時に多分考えておくよ」
「もー!約束だからね」
コーヒー牛乳にストローを刺しながら、私はそんな会話をしていた。
「ん~♪んん~♪」
鼻歌を歌いながら自転車を漕ぐ。部活も終わり、脚に疲労が溜まっている。この溜まっている時にマッサージをするのがまた気持ちいい。
満月も綺麗に出ていて、とても美しい。月に兎がいるって初めに考えた人はすごいと思う。
ピロン♪
スマホが振動した。片手運転でスマホを確認する。
『帰りにさつまいもとじゃがいも買ってきてね~』
「え~めんどくさいな~。……はぁ。まぁいいけど。買っていかない方が後でめんどくさくなるし」
お母さんはお父さんに比べて私に厳しい。ちょっとテストの点が落ちただけでスマホを取られたり、髪を切られたりする。
まぁお父さんがたまにしか帰ってこないからその影響もあると思うけど。
「さっさと買って帰ろ」
私はペダルを踏む力を強くした。
続く
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
ゾンビだらけの世界で俺はゾンビのふりをし続ける
気ままに
ホラー
家で寝て起きたらまさかの世界がゾンビパンデミックとなってしまっていた!
しかもセーラー服の可愛い女子高生のゾンビに噛まれてしまう!
もう終わりかと思ったら俺はゾンビになる事はなかった。しかもゾンビに狙われない体質へとなってしまう……これは映画で見た展開と同じじゃないか!
てことで俺は人間に利用されるのは御免被るのでゾンビのフリをして人間の安息の地が完成するまでのんびりと生活させて頂きます。
ネタバレ注意!↓↓
黒藤冬夜は自分を噛んだ知性ある女子高生のゾンビ、特殊体を探すためまず総合病院に向かう。
そこでゾンビとは思えない程の、異常なまでの力を持つ別の特殊体に出会う。
そこの総合病院の地下ではある研究が行われていた……
"P-tB"
人を救う研究のはずがそれは大きな厄災をもたらす事になる……
何故ゾンビが生まれたか……
何故知性あるゾンビが居るのか……
そして何故自分はゾンビにならず、ゾンビに狙われない孤独な存在となってしまったのか……
ill〜怪異特務課事件簿〜
錦木
ホラー
現実の常識が通用しない『怪異』絡みの事件を扱う「怪異特務課」。
ミステリアスで冷徹な捜査官・名護、真面目である事情により怪異と深くつながる体質となってしまった捜査官・戸草。
とある秘密を共有する二人は協力して怪奇事件の捜査を行う。
怨念がおんねん〜祓い屋アベの記録〜
君影 ルナ
ホラー
・事例 壱
『自分』は真冬に似合わない服装で、見知らぬ集落に向かって歩いているらしい。
何故『自分』はあの集落に向かっている?
何故『自分』のことが分からない?
何故……
・事例 弍
??
──────────
・ホラー編と解決編とに分かれております。
・純粋にホラーを楽しみたい方は漢数字の話だけを、解決編も楽しみたい方は数字を気にせず読んでいただけたらと思います。
・フィクションです。


鎌倉呪具師の回収録~使霊の箱~
平本りこ
ホラー
――恐ろしきは怨霊か、それとも。
土蔵珠子はある日突然、婚約者と勤め先、住んでいた家を同時に失った。
六年前、母に先立たれた珠子にとって、二度目の大きな裏切りだった。
けれど、悲嘆にくれてばかりもいられない。珠子には頼れる親戚もいないのだ。
住む場所だけはどうにかしなければと思うが、職も保証人もないので物件探しは難航し、なんとか借りることのできたのは、鎌倉にあるおんぼろアパートだ。
いわくつき物件のご多分に漏れず、入居初日の晩、稲光が差し込む窓越しに、珠子は恐ろしいものを見てしまう。
それは、古風な小袖を纏い焼けただれた女性の姿であった。
時を同じくして、呪具師一族の末裔である大江間諭が珠子の部屋の隣に越して来る。
呪具とは、鎌倉時代から続く大江間という一族が神秘の力を織り合わせて作り出した、超常現象を引き起こす道具のことである。
諭は日本中に散らばってしまった危険な呪具を回収するため、怨霊の気配が漂うおんぼろアパートにやってきたのだった。
ひょんなことから、霊を成仏させるために強力することになった珠子と諭。やがて、珠子には、残留思念を読む異能があることがわかる。けれどそれは生まれつきのものではなく、どうやら珠子は後天的に、生身の「呪具」になってしまったようなのだ。
さらに、諭が追っている呪具には珠子の母親の死と関連があることがわかってきて……。
※毎日17:40更新
最終章は3月29日に4エピソード同時更新です
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
彷徨う屍
半道海豚
ホラー
春休みは、まもなく終わり。関東の桜は散ったが、東北はいまが盛り。気候変動の中で、いろいろな疫病が人々を苦しめている。それでも、日々の生活はいつもと同じだった。その瞬間までは。4人の高校生は旅先で、ゾンビと遭遇してしまう。周囲の人々が逃げ惑う。4人の高校生はホテルから逃げ出し、人気のない山中に向かうことにしたのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる