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Hero of the Shadowルート (如月楓夜 編)
50話「終局」
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体が重力に従って下へと落ちてゆく。風は体全体を押し上げようと、体が動かないほどの強さで全身を押してくる。
この触手はある男と繋がっていた。俺が知っている男だ。というかさっきまで会っていた男だ。どいつもこいつもしつこい奴らばかりだ。少しは引くことを覚えてたりしないのかまったく。
「貴様のせい……貴様のせいで、貴様のせいで全てが台無しだ!!」
ホープが触手を1本飛ばしてきた。銀色に輝くその刃が俺のボロボロの腹に突入してきた。
「グフッ――しつこいぞてめぇ……。さっさと死んでくれよマジで!!」
血が落ちる速度よりも俺が落ちる速度の方が速いので、血が上へと飛び上がっているように見える。
「30年だ!30年もかけてこの作戦を実行したんだぞ!!」
触手が俺の右胸を貫いた。とてつもなく痛い。まるで火で炙られてる気分だ。
「貴様が産まれるよりもはるかに長い年月をかけて実行したんだ!!それを貴様が全て壊した!!貴様だけは殺してやる!!」
「弱肉強食って言ったのはお前だろ!?お前が馬鹿だったってだけのことだ!!」
突風に逆らって弓を構える。手が震える。風によってガタガタと狙いが定まらない。胸から血も吹き出ている。
「殺してやる!!殺してやる!!殺してやる!!殺してやる!!殺してやるぅ!!」
ホープが何か喚いている。あいつは同じことしか言わない、壊れたロボットかよ。
少しだけ落ち着いた。大きく息を吐いて、精神を落ち着かせる。
手のブレが少なくなった。体の痛みも減った。意識はホープを殺すということで固定する。殺り方はわかるんだ。そろそろ決着をつけないとな。
「くたばれクソ野郎が……」
指から弦が離れた。風や血を切り裂きながら、ホープの元へ進む。まるでそれだけが加速しているかのようなスピードでホープの心臓へ到達した。
心臓を刺し裂き、心臓の筋肉を切断する。血を全身に浴びながらも、その矢は止まることなく進み続けた。そして、その矢は自分の目の前にあった壁を突き破って行った。
「ああああああああああ!!!!!!!クソクソクソクソクソクソッッッタレめ!!くたばれ!!死ね!!消えろ!!貴様はここで終わりだァァァァ!!」
地面が徐々に近づいてくる。……まさか本当に落ちるとは思ってなかったな。事前に確認しておいてよかったよ。
体から触手が抜け落ちた。同時に息苦しさも消えた。これで自由に動く事が出来る。
体をずらして、下の自動車に標準を合わせる。これなら死なないはず。いや、死ぬわけにはいかない。ここから出て桃と暮らすんだ。寝ている訳にはいかないんだ――。
目を覚ます。上にのしかかっていた木箱を押しのける。目の前にはボコボコにへこんだ白い車が置いてあった。よかった。本当にクッションになった。
弓を見てみる。まだ一応使える。外に出たら新調しないとな。まぁ記念に置いておくが。こいつはずっと戦ってきてくれたからな。捨てるなんてできないさ。
矢も見てみる。残り本数は20本。さっきバッグから補充はしたから問題はない。折れてもないから使える。よかった。
「ハァハァ……またこの階段のぼんのかよ」
嫌だなー。なんでエレベーターを用意してないんだよ。馬鹿か。変なところ作るより、もっと作るべきものあっただろ。
フラフラと歩き出す。足取りはおぼつかない。俺の体は限界をとうに超えていた。多分寝転んだらそのまま死にそうだ。頭も痛いしな。
「……桃。もうすぐだ。終わったら膝枕でもしてくれよ……」
上にいる桃に向かって小声で叫ぶ。聞こえでもしてたら大変だな。無事だといいんだが。
「俺も……さっさと出ないと」
あの女は死んでるだろうか。死んでてもらわないと困る。あの女が桃を殺してたら、まじで生き地獄を味あわせてやるからな。
突然、地面が大きく揺れた。地震とかではない。いや、地震と同じか。それほどまでに大きく揺れた。立っていられないほどに。
「なんだ?何が起こってる……」
少し焦げ臭い匂いを感じた。何かが燃えている?……いや、これは火事か!?つまりさっきのは爆発!?
「なんで……なんで爆発なんか……」
なんで……とりあえずここを出よう。つか、出ないと死ぬ。
足を引きずりながら階段に向かう。焦りからか火事のせいかは知らないが、汗をかいてきた。まずい。さっさと出ないと……。
「……貴様は終わりだ……」
聞き覚えのある声が聞こえてきた。ドスの効いた黒い声。聞くだけで殺したくなるほど頭がおかしくなりそうな声。
後ろを振り向く。そこにはぐちゃぐちゃの肉体になっているホープの姿があった。顔だけは無事で、その腹の立つ顔が人形のようにたっていた。
ぐちゃぐちゃになっていた身体が、沸騰したお湯のようにグツグツと揺れている。肉体はもはや液体とも言えるほどに原型が無くなっていた。
「貴様はこコで死ぬんだ……貴様の運命はここで終わりだ……」
なんなんだよこいつ……。なんでこんなことになってんのに生きてんだよ……。しつこすぎんだろ……。
「貴様は死ヌ!!誰の助けも得られるコとも無ク!!孤独に!!誰にも見らレルことも無く!!貴様は独りダ!!いつモノよう二独りで孤独に戦ウンダ!!」
ホープの体が内部で爆発しているかのように、肉体の面積が大きくなる。徐々に、徐々に、少しずつだが大きくなっていく。……どうやら、まだやらないといけないことがあるらしい。
ここまで来たんだ。決着をつけるのは俺だ。俺は戦わなくてはならない。桃が幸せに暮らせるような世界を作るんだ。そのためにはこいつを殺さなくてはいけないんだ……。
「……確かに俺は1人だ。だが、孤独じゃない。お前とは違うんだ。俺には桃がいる。チビがいる。心の中には、今まで死んでいった人がいるんだ。……本当に孤独なのはお前だけだ」
弦を少し弾く。もうそろそろ弦も限界だな。「げん」だけにね。……ハハ。
「お前は終わりだ!!もう何も無い!!ここで……ここで……」
ホープの体の変化が止まったようだ。ようやくうるさいのが終わったか。
その体はまさに「怪物」というのが合っているような外見だった。
顔は釣り上げられているかのように鋭くなっており、目の色も紫色に変わっている。体そのものも巨大化しており、目測3m近くはある。中指の部分には長い刃が縦に着いており、肘の先にまで刃が伸びている。
もはや人間とは呼べない体だろう。だが、中身には似合っているな。
「ここで殺してやる!!!!!」
それしか言えないのか。語彙力もないな。学校では国語の評定が1だっただろうな。
「そろそろ、くたばってくれよ……」
俺は弦を強く引いた。
続く
この触手はある男と繋がっていた。俺が知っている男だ。というかさっきまで会っていた男だ。どいつもこいつもしつこい奴らばかりだ。少しは引くことを覚えてたりしないのかまったく。
「貴様のせい……貴様のせいで、貴様のせいで全てが台無しだ!!」
ホープが触手を1本飛ばしてきた。銀色に輝くその刃が俺のボロボロの腹に突入してきた。
「グフッ――しつこいぞてめぇ……。さっさと死んでくれよマジで!!」
血が落ちる速度よりも俺が落ちる速度の方が速いので、血が上へと飛び上がっているように見える。
「30年だ!30年もかけてこの作戦を実行したんだぞ!!」
触手が俺の右胸を貫いた。とてつもなく痛い。まるで火で炙られてる気分だ。
「貴様が産まれるよりもはるかに長い年月をかけて実行したんだ!!それを貴様が全て壊した!!貴様だけは殺してやる!!」
「弱肉強食って言ったのはお前だろ!?お前が馬鹿だったってだけのことだ!!」
突風に逆らって弓を構える。手が震える。風によってガタガタと狙いが定まらない。胸から血も吹き出ている。
「殺してやる!!殺してやる!!殺してやる!!殺してやる!!殺してやるぅ!!」
ホープが何か喚いている。あいつは同じことしか言わない、壊れたロボットかよ。
少しだけ落ち着いた。大きく息を吐いて、精神を落ち着かせる。
手のブレが少なくなった。体の痛みも減った。意識はホープを殺すということで固定する。殺り方はわかるんだ。そろそろ決着をつけないとな。
「くたばれクソ野郎が……」
指から弦が離れた。風や血を切り裂きながら、ホープの元へ進む。まるでそれだけが加速しているかのようなスピードでホープの心臓へ到達した。
心臓を刺し裂き、心臓の筋肉を切断する。血を全身に浴びながらも、その矢は止まることなく進み続けた。そして、その矢は自分の目の前にあった壁を突き破って行った。
「ああああああああああ!!!!!!!クソクソクソクソクソクソッッッタレめ!!くたばれ!!死ね!!消えろ!!貴様はここで終わりだァァァァ!!」
地面が徐々に近づいてくる。……まさか本当に落ちるとは思ってなかったな。事前に確認しておいてよかったよ。
体から触手が抜け落ちた。同時に息苦しさも消えた。これで自由に動く事が出来る。
体をずらして、下の自動車に標準を合わせる。これなら死なないはず。いや、死ぬわけにはいかない。ここから出て桃と暮らすんだ。寝ている訳にはいかないんだ――。
目を覚ます。上にのしかかっていた木箱を押しのける。目の前にはボコボコにへこんだ白い車が置いてあった。よかった。本当にクッションになった。
弓を見てみる。まだ一応使える。外に出たら新調しないとな。まぁ記念に置いておくが。こいつはずっと戦ってきてくれたからな。捨てるなんてできないさ。
矢も見てみる。残り本数は20本。さっきバッグから補充はしたから問題はない。折れてもないから使える。よかった。
「ハァハァ……またこの階段のぼんのかよ」
嫌だなー。なんでエレベーターを用意してないんだよ。馬鹿か。変なところ作るより、もっと作るべきものあっただろ。
フラフラと歩き出す。足取りはおぼつかない。俺の体は限界をとうに超えていた。多分寝転んだらそのまま死にそうだ。頭も痛いしな。
「……桃。もうすぐだ。終わったら膝枕でもしてくれよ……」
上にいる桃に向かって小声で叫ぶ。聞こえでもしてたら大変だな。無事だといいんだが。
「俺も……さっさと出ないと」
あの女は死んでるだろうか。死んでてもらわないと困る。あの女が桃を殺してたら、まじで生き地獄を味あわせてやるからな。
突然、地面が大きく揺れた。地震とかではない。いや、地震と同じか。それほどまでに大きく揺れた。立っていられないほどに。
「なんだ?何が起こってる……」
少し焦げ臭い匂いを感じた。何かが燃えている?……いや、これは火事か!?つまりさっきのは爆発!?
「なんで……なんで爆発なんか……」
なんで……とりあえずここを出よう。つか、出ないと死ぬ。
足を引きずりながら階段に向かう。焦りからか火事のせいかは知らないが、汗をかいてきた。まずい。さっさと出ないと……。
「……貴様は終わりだ……」
聞き覚えのある声が聞こえてきた。ドスの効いた黒い声。聞くだけで殺したくなるほど頭がおかしくなりそうな声。
後ろを振り向く。そこにはぐちゃぐちゃの肉体になっているホープの姿があった。顔だけは無事で、その腹の立つ顔が人形のようにたっていた。
ぐちゃぐちゃになっていた身体が、沸騰したお湯のようにグツグツと揺れている。肉体はもはや液体とも言えるほどに原型が無くなっていた。
「貴様はこコで死ぬんだ……貴様の運命はここで終わりだ……」
なんなんだよこいつ……。なんでこんなことになってんのに生きてんだよ……。しつこすぎんだろ……。
「貴様は死ヌ!!誰の助けも得られるコとも無ク!!孤独に!!誰にも見らレルことも無く!!貴様は独りダ!!いつモノよう二独りで孤独に戦ウンダ!!」
ホープの体が内部で爆発しているかのように、肉体の面積が大きくなる。徐々に、徐々に、少しずつだが大きくなっていく。……どうやら、まだやらないといけないことがあるらしい。
ここまで来たんだ。決着をつけるのは俺だ。俺は戦わなくてはならない。桃が幸せに暮らせるような世界を作るんだ。そのためにはこいつを殺さなくてはいけないんだ……。
「……確かに俺は1人だ。だが、孤独じゃない。お前とは違うんだ。俺には桃がいる。チビがいる。心の中には、今まで死んでいった人がいるんだ。……本当に孤独なのはお前だけだ」
弦を少し弾く。もうそろそろ弦も限界だな。「げん」だけにね。……ハハ。
「お前は終わりだ!!もう何も無い!!ここで……ここで……」
ホープの体の変化が止まったようだ。ようやくうるさいのが終わったか。
その体はまさに「怪物」というのが合っているような外見だった。
顔は釣り上げられているかのように鋭くなっており、目の色も紫色に変わっている。体そのものも巨大化しており、目測3m近くはある。中指の部分には長い刃が縦に着いており、肘の先にまで刃が伸びている。
もはや人間とは呼べない体だろう。だが、中身には似合っているな。
「ここで殺してやる!!!!!」
それしか言えないのか。語彙力もないな。学校では国語の評定が1だっただろうな。
「そろそろ、くたばってくれよ……」
俺は弦を強く引いた。
続く
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