46 / 82
Hero of the Shadowルート (如月楓夜 編)
46話「緩やかに崩れ壊れてゆく」
しおりを挟む
高い。何メートル落ちてるんだ。体感20m以上は落ちてる――。
「ゾッッ!!」
腰から地面に落ちた。痛い。なんか変な声が出た。
ここはどこだ。いつも通り白い場所だが、様々な色がついているコンテナが無数に置いてある。
かく言う俺もコンテナの上に腰から落ちたのだがな。恥ずかしい話なのだが。
辺りを見渡してみる。かなり広いところだ。縦横共に100mはあるだろう。高さは低く見積っても50mはある。
ホープは俺と10mほど離れたコンテナの上に着地した。なかなか人間離れしているようだ。今更か。
すぐさま立ち上がった。矢を弓につがえる。中距離戦ならこっちにも分がある。そもそもあんな腕を持っている以上、近接戦に持ち込むのはかなりきついだろう。
ある程度距離を保ちながら、隙が出来たら矢を放つ。それなら俺にも正気があるだろう。既にあいつとは2回も戦っている。形態は違うが戦い方はほとんど同じでいいだろう。
「この高さから落ちても無傷とは。やはりお前はいいな……私が求めていた本当の強者だ。山ノ井花音の前哨戦にするには惜しい……」
花音……あのチビか。あいつとホープに何があったんだ。チビは俺より弱いだけで、そこまで雑魚でもないからな。ホープに認められたんだろう。
「あのチビのことか。俺はあのチビよりも強いぞ」
「ほぅ、戦いでもしたのか。なるほど、お前が言うのなら信用できるぞ。なら相手にとって不足はないな……」
「あんまり信用するなよ、お前に信用されても気持ち悪いからなッッ――」
矢をホープに向かって放った。ちょうどホープの脳天。暗くもないから狙いやすい。ほとんど不意打ちだが、これでおあいこだろう。
矢はホープの目の前まで到達した。矢の時速はだいたい200キロほど。ましてや不意打ち。避けられるはずもない。
しかしホープは避けた。顔を少しずらすという小さな行動で避けた。時速200キロで進む細い矢を何事も無かったかのように避けた。
見た目に反してなかなかに速いようだ。こりゃあ倒すのに骨が折れそうだ。
ホープが右腕の触手2本を高速で動かした。触手の攻撃範囲はよく分からない。だからできるだけ慎重に、大胆に避けなければ当たる可能性がある。
俺は隣のコンテナに飛び写った。同時に隣のコンテナが切れる音がする。コンテナに目を向けてみる。
俺がいたコンテナは横から斜めに斬られており、上の部分が滑り落ちて地面に落下している。とんでもなく重苦しい音が大音量で耳に殴りかかってきた。
よく見てみると、俺のいたところから縦に真っ二つに割れていた。つまりあのままその場にいたら、さけるチーズみたいに真ん中から2つに分かれていたということか。
もう一度弓に矢をつがえる。今度こそ当てる。次に撃つのは胴体。頭よりかは当たる可能性があるだろう。
弦を引いて、ホープを狙う。ホープは上半身を右に捻っている。何をしようとしているんだ?まぁとにかくチャンスだ。
俺は指の力を緩めた。矢はホープの元に向かって飛んでいく。それと同時にホープが体を左回りに捻ってきた。
まさか溜めていたのか。これはまずい――。
体を下におろした。髪に少し違和感を感じたと同時間。隣にあったコンテナが横一閃。綺麗に切れた。コンテナの色が黄色なので間にクリームでも入れたらモナカに見えるだろう。
そんなこと思ってる場合じゃねぇよ。何考えてんだ俺。
矢は狙い通りホープの胴体に当たった。しかし、矢は貫通することなくホープの背中に穴を開けて停止した。
アーチェリーの矢は場所によるが、厚さ5ミリの鉄板を射抜くことが出来る程の貫通力を持つ。そんな矢が男の体で止まる。ホープの体内には滑り止めでもしているのだろうか。
ホープがまた溜め始めた。今度は両腕を後ろにしている。
さっきはたまたま避けられただけだ。今度あんなことをしたら、次はやられる。だから今回は攻撃を見送りにする。
後ろを向く。後ろにはクレーンで吊るされたコンテナが宙に浮いてプラプラと小刻みに揺れていた。
「しめたっっ――」
俺は後ろのコンテナに飛び乗った。その瞬間、俺がいたコンテナは爆破されたビルのようにボロボロと崩れ去っていった。
「どんな切れ味してんだよ……」
あいつの刃を包丁にしたら、飛ぶように売れるだろうな。切れすぎてまな板ごとやりそうだが。
矢をつがえる。ホープは左腕を後ろに下げた。しかし今回は浅い。すぐにくる。ならその場に立っているだけだったらまずいな。
コンテナに引っ掛けてあった太いワイヤーを足場にして、空中に高く飛び上がった。もちろん弦は引いたままだ。
ホープの左腕が振られる。新幹線が急停止するような高い音が出たと思うと、ワイヤーが切れてコンテナが地面へと落下した。
体は空中。立って狙いを定めたいが、今は無理だ。だが、俺ならバランスの取れない空中でも正確に撃つことができる。
体が逆さまになっている状態で矢を発射した。割と同じような起動を描きながら、矢はホープの首に突き刺さった。
「よしっ!」
まさか当たるとは思っていなかったので嬉しい。俺は落下しながらそんなことを考えていた。
続く
「ゾッッ!!」
腰から地面に落ちた。痛い。なんか変な声が出た。
ここはどこだ。いつも通り白い場所だが、様々な色がついているコンテナが無数に置いてある。
かく言う俺もコンテナの上に腰から落ちたのだがな。恥ずかしい話なのだが。
辺りを見渡してみる。かなり広いところだ。縦横共に100mはあるだろう。高さは低く見積っても50mはある。
ホープは俺と10mほど離れたコンテナの上に着地した。なかなか人間離れしているようだ。今更か。
すぐさま立ち上がった。矢を弓につがえる。中距離戦ならこっちにも分がある。そもそもあんな腕を持っている以上、近接戦に持ち込むのはかなりきついだろう。
ある程度距離を保ちながら、隙が出来たら矢を放つ。それなら俺にも正気があるだろう。既にあいつとは2回も戦っている。形態は違うが戦い方はほとんど同じでいいだろう。
「この高さから落ちても無傷とは。やはりお前はいいな……私が求めていた本当の強者だ。山ノ井花音の前哨戦にするには惜しい……」
花音……あのチビか。あいつとホープに何があったんだ。チビは俺より弱いだけで、そこまで雑魚でもないからな。ホープに認められたんだろう。
「あのチビのことか。俺はあのチビよりも強いぞ」
「ほぅ、戦いでもしたのか。なるほど、お前が言うのなら信用できるぞ。なら相手にとって不足はないな……」
「あんまり信用するなよ、お前に信用されても気持ち悪いからなッッ――」
矢をホープに向かって放った。ちょうどホープの脳天。暗くもないから狙いやすい。ほとんど不意打ちだが、これでおあいこだろう。
矢はホープの目の前まで到達した。矢の時速はだいたい200キロほど。ましてや不意打ち。避けられるはずもない。
しかしホープは避けた。顔を少しずらすという小さな行動で避けた。時速200キロで進む細い矢を何事も無かったかのように避けた。
見た目に反してなかなかに速いようだ。こりゃあ倒すのに骨が折れそうだ。
ホープが右腕の触手2本を高速で動かした。触手の攻撃範囲はよく分からない。だからできるだけ慎重に、大胆に避けなければ当たる可能性がある。
俺は隣のコンテナに飛び写った。同時に隣のコンテナが切れる音がする。コンテナに目を向けてみる。
俺がいたコンテナは横から斜めに斬られており、上の部分が滑り落ちて地面に落下している。とんでもなく重苦しい音が大音量で耳に殴りかかってきた。
よく見てみると、俺のいたところから縦に真っ二つに割れていた。つまりあのままその場にいたら、さけるチーズみたいに真ん中から2つに分かれていたということか。
もう一度弓に矢をつがえる。今度こそ当てる。次に撃つのは胴体。頭よりかは当たる可能性があるだろう。
弦を引いて、ホープを狙う。ホープは上半身を右に捻っている。何をしようとしているんだ?まぁとにかくチャンスだ。
俺は指の力を緩めた。矢はホープの元に向かって飛んでいく。それと同時にホープが体を左回りに捻ってきた。
まさか溜めていたのか。これはまずい――。
体を下におろした。髪に少し違和感を感じたと同時間。隣にあったコンテナが横一閃。綺麗に切れた。コンテナの色が黄色なので間にクリームでも入れたらモナカに見えるだろう。
そんなこと思ってる場合じゃねぇよ。何考えてんだ俺。
矢は狙い通りホープの胴体に当たった。しかし、矢は貫通することなくホープの背中に穴を開けて停止した。
アーチェリーの矢は場所によるが、厚さ5ミリの鉄板を射抜くことが出来る程の貫通力を持つ。そんな矢が男の体で止まる。ホープの体内には滑り止めでもしているのだろうか。
ホープがまた溜め始めた。今度は両腕を後ろにしている。
さっきはたまたま避けられただけだ。今度あんなことをしたら、次はやられる。だから今回は攻撃を見送りにする。
後ろを向く。後ろにはクレーンで吊るされたコンテナが宙に浮いてプラプラと小刻みに揺れていた。
「しめたっっ――」
俺は後ろのコンテナに飛び乗った。その瞬間、俺がいたコンテナは爆破されたビルのようにボロボロと崩れ去っていった。
「どんな切れ味してんだよ……」
あいつの刃を包丁にしたら、飛ぶように売れるだろうな。切れすぎてまな板ごとやりそうだが。
矢をつがえる。ホープは左腕を後ろに下げた。しかし今回は浅い。すぐにくる。ならその場に立っているだけだったらまずいな。
コンテナに引っ掛けてあった太いワイヤーを足場にして、空中に高く飛び上がった。もちろん弦は引いたままだ。
ホープの左腕が振られる。新幹線が急停止するような高い音が出たと思うと、ワイヤーが切れてコンテナが地面へと落下した。
体は空中。立って狙いを定めたいが、今は無理だ。だが、俺ならバランスの取れない空中でも正確に撃つことができる。
体が逆さまになっている状態で矢を発射した。割と同じような起動を描きながら、矢はホープの首に突き刺さった。
「よしっ!」
まさか当たるとは思っていなかったので嬉しい。俺は落下しながらそんなことを考えていた。
続く
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
ill〜怪異特務課事件簿〜
錦木
ホラー
現実の常識が通用しない『怪異』絡みの事件を扱う「怪異特務課」。
ミステリアスで冷徹な捜査官・名護、真面目である事情により怪異と深くつながる体質となってしまった捜査官・戸草。
とある秘密を共有する二人は協力して怪奇事件の捜査を行う。
お客様が不在の為お荷物を持ち帰りました。
鞠目
ホラー
さくら急便のある営業所に、奇妙な配達員にいたずらをされたという不可思議な問い合わせが届く。
最初はいたずら電話と思われていたこの案件だが、同じような問い合わせが複数人から発生し、どうやらいたずら電話ではないことがわかる。
迷惑行為をしているのは運送会社の人間なのか、それとも部外者か? 詳細がわからない状況の中、消息を断つ者が増えていく……
3月24日完結予定
毎日16時ごろに更新します
お越しをお待ちしております

特別。
月芝
ホラー
正義のヒーローに変身して悪と戦う。
一流のスポーツ選手となって活躍する。
ゲームのような異世界で勇者となって魔王と闘う。
すごい発明をして大金持ちになる。
歴史に名を刻むほどの偉人となる。
現実という物語の中で、主人公になる。
自分はみんなとはちがう。
この世に生まれたからには、何かを成し遂げたい。
自分が生きた証が欲しい。
特別な存在になりたい。
特別な存在でありたい。
特別な存在だったらいいな。
そんな願望、誰だって少しは持っているだろう?
でも、もしも本当に自分が世界にとっての「特別」だとしたら……
自宅の地下であるモノを見つけてしまったことを境にして、日常が変貌していく。まるでオセロのように白が黒に、黒が白へと裏返る。
次々と明らかになっていく真実。
特別なボクの心はいつまで耐えられるのだろうか……
伝奇ホラー作品。

鎌倉呪具師の回収録~使霊の箱~
平本りこ
ホラー
――恐ろしきは怨霊か、それとも。
土蔵珠子はある日突然、婚約者と勤め先、住んでいた家を同時に失った。
六年前、母に先立たれた珠子にとって、二度目の大きな裏切りだった。
けれど、悲嘆にくれてばかりもいられない。珠子には頼れる親戚もいないのだ。
住む場所だけはどうにかしなければと思うが、職も保証人もないので物件探しは難航し、なんとか借りることのできたのは、鎌倉にあるおんぼろアパートだ。
いわくつき物件のご多分に漏れず、入居初日の晩、稲光が差し込む窓越しに、珠子は恐ろしいものを見てしまう。
それは、古風な小袖を纏い焼けただれた女性の姿であった。
時を同じくして、呪具師一族の末裔である大江間諭が珠子の部屋の隣に越して来る。
呪具とは、鎌倉時代から続く大江間という一族が神秘の力を織り合わせて作り出した、超常現象を引き起こす道具のことである。
諭は日本中に散らばってしまった危険な呪具を回収するため、怨霊の気配が漂うおんぼろアパートにやってきたのだった。
ひょんなことから、霊を成仏させるために強力することになった珠子と諭。やがて、珠子には、残留思念を読む異能があることがわかる。けれどそれは生まれつきのものではなく、どうやら珠子は後天的に、生身の「呪具」になってしまったようなのだ。
さらに、諭が追っている呪具には珠子の母親の死と関連があることがわかってきて……。
※毎日17:40更新
最終章は3月29日に4エピソード同時更新です
【BIO DEFENSE】 ~終わった世界に作られる都市~
こばん
SF
世界は唐突に終わりを告げる。それはある日突然現れて、平和な日常を過ごす人々に襲い掛かった。それは醜悪な様相に異臭を放ちながら、かつての日常に我が物顔で居座った。
人から人に感染し、感染した人はまだ感染していない人に襲い掛かり、恐るべき加速度で被害は広がって行く。
それに対抗する術は、今は無い。
平和な日常があっという間に非日常の世界に変わり、残った人々は集い、四国でいくつかの都市を形成して反攻の糸口と感染のルーツを探る。
しかしそれに対してか感染者も進化して困難な状況に拍車をかけてくる。
さらにそんな状態のなかでも、権益を求め人の足元をすくうため画策する者、理性をなくし欲望のままに動く者、この状況を利用すらして己の利益のみを求めて動く者らが牙をむき出しにしていきパニックは混迷を極める。
普通の高校生であったカナタもパニックに巻き込まれ、都市の一つに避難した。その都市の守備隊に仲間達と共に入り、第十一番隊として活動していく。様々な人と出会い、別れを繰り返しながら、感染者や都市外の略奪者などと戦い、都市同士の思惑に巻き込まれたりしながら日々を過ごしていた。
そして、やがて一つの真実に辿り着く。
それは大きな選択を迫られるものだった。
bio defence
※物語に出て来るすべての人名及び地名などの固有名詞はすべてフィクションです。作者の頭の中だけに存在するものであり、特定の人物や場所に対して何らかの意味合いを持たせたものではありません。
ゾンビだらけの世界で俺はゾンビのふりをし続ける
気ままに
ホラー
家で寝て起きたらまさかの世界がゾンビパンデミックとなってしまっていた!
しかもセーラー服の可愛い女子高生のゾンビに噛まれてしまう!
もう終わりかと思ったら俺はゾンビになる事はなかった。しかもゾンビに狙われない体質へとなってしまう……これは映画で見た展開と同じじゃないか!
てことで俺は人間に利用されるのは御免被るのでゾンビのフリをして人間の安息の地が完成するまでのんびりと生活させて頂きます。
ネタバレ注意!↓↓
黒藤冬夜は自分を噛んだ知性ある女子高生のゾンビ、特殊体を探すためまず総合病院に向かう。
そこでゾンビとは思えない程の、異常なまでの力を持つ別の特殊体に出会う。
そこの総合病院の地下ではある研究が行われていた……
"P-tB"
人を救う研究のはずがそれは大きな厄災をもたらす事になる……
何故ゾンビが生まれたか……
何故知性あるゾンビが居るのか……
そして何故自分はゾンビにならず、ゾンビに狙われない孤独な存在となってしまったのか……

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる