Catastrophe

アタラクシア

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Hero of the Shadowルート (如月楓夜 編)

34話「本当の再開」

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「キャハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!バーカ!!私の手の内で踊らされてやーーーーんの!!!」

桃が大笑いしている。だけど桃の声じゃない。誰なんだ。

桃?を蹴り飛ばした。こいつは桃じゃない。なんだ。誰だ。なんで……誰だこいつは。

桃?の顔が段々と崩れていった。まるで氷が解けるかのように体を覆っていた何かが溶けていった。

溶けた何かの中から白髪の少女が現れた。おそらく小学生1年生ほどの大きさだ。なんとなく外国人っぽい。

「ケホッ……ハァハァ……残念だったねぇ……あんたの理想の人じゃなくて」
「……」
「そこで倒れてるやつはパパから何故か気に入られてたからね。ちょっと意地悪しちゃったの。ちょうどあんたが倒してくれて……もうほんとに……アハハハハハハハ!!!……ハァハァ」

……あぁ。そうか。そうか。こいつは偽物だったのか。俺を利用しただけだったのか。もういいさ。

「……」
「あっ怒ってるね。私に怒ってるね。自分から騙されておいて……バッカみたい!そんなんだから、彼女を連れ去られちゃうんだよ~」

頭の中で何かが切れた。弓を持つ手に力が宿る。

「キャハハハハハハハ!!私を殺したくなった!?そんな体で私を殺せるって思ってんの!?馬鹿すぎてお腹いったぁい!!」


地面を鳴らしながらクソガキに近づく。呼吸が途切れ途切れになっている。

「ハハハ!!!なーにー?もしかしてあたしと戦いたいのー?頭悪いのー?キャハハハ!!」

クソガキが右足を大きく踏み込んだ。すると地面から鋭く尖った氷柱が飛び出てきた。いや、生成されたと言った方がいいか。

その氷柱は5mは離れていた俺の右胸を貫いた。心臓にダメージはない。ならば別に動ける。

「キャHAHAHAHAHAHAHA!!!!どうしたの!?今の攻撃も避けられないの~!?その程度でよくここまで来たねぇ! !撫でてあげるからこっちに来てみて……って来れないよね?キャハハハ!!」

クソガキの甲高い声が廊下に響き渡る。耳鳴りがしてきた。うるさい。気持ち悪い。

俺は刺さっていた氷柱を握りつぶした。氷の粉が顔に少しついた。またクソガキに向かって歩き出した。弓を地面に置く。

「……え?……はは、思っていたより強いね」

クソガキの首を掴んだ。細い首だ。ちょっと太い鉄棒を掴んでいる気分だ。クソガキを地面に叩きつける。

「かハッ―――」

クソガキの顔面に拳を叩きつけた。思いっきりだ。辺りに血が飛び散った。思っていたより人間の顔は柔らかいな。まるでバスケットボールを叩いている感じだ。

拳を引き上げた。クソガキのドロっとした血が手に着いている。

「ぶ……ぶ……」

また拳を叩きつけた。さらに顔が凹んだ。頭蓋骨が皿のように割れている。既に血の匂いが漂っていたおかげで、このクソガキの血の匂いを嗅がなくて済んだ。

もう一度拳を叩きつけた。さらにもう一度。もう一度。もう一度。もう一度。もう一度。もう一度。もう一度。もう一度。もう一度。もう一度。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。









「……ク……ゥゥゥン」

ヒルの声で意識が戻った。既にクソガキの顔面は原型を留めてなどいなかった。ほとんど無い方がマシだろう。

フラフラと立ち上がる。もう拳の感覚がない。自分の拳の血とクソガキの血が混ざっている。自分の拳が傷ついているのかどうなっているのかが分からない。

ヒルの近くに座った。傷は着いているが、致命傷と言うほどでもない。ヒルもちゃんと生きている。





「これで……よしと」

ヒルの応急処置をした。とりあえずヒルが無事でよかった。

「ワン!」
「……元気か……よかった」

ヒルの頭を撫でる。もしヒルが死んでたら俺はどうなっていただろう……考えたくもない。

立ち上がる。胸の傷はもういい。どうせ自然治癒するだろう。

「……」

精神がすり減った。もう何もしたくない。疲れた。

「……もう……寝たいな……」

もう痛いとか、そういうのは感じなくなった。体も限界だ。眠たいし。……桃に……もう一度だけ……会いたいな……。




「ワン!」

突然ヒルが走り出した。……もしかして……桃か……!

ヒルの後ろに着いていく。フラフラしていた足が整った。走った。ひたすら走った。ヒルは俺に合わせてくれているのか、同じぐらいのスピードで走ってくれている。




ヒルが止まった。そこには死体が沢山あった。ここに桃がいるとは思えないほどに死体があった。

「……桃……」

……桃は……もう……。膝から地面に落ちた。頭の中が空っぽになった。……ここまで頑張ってきた結果がこれか……。

「ここまで……来たのに……………その結果が……これかよ……」

目から何か冷たいものが流れ落ちた。頭の中がもう無くなった。思考が無くなった。全て終わった。もう……何も……。








「ふ……う、や……?」

体がはねた。思考が元に戻った。涙のせいで視界がぼんやりとしていた。涙をふいて、死体の海を見る。







そこにはボロボロになっていた桃がいた。









続く
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