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Hero of the Shadowルート (如月楓夜 編)
31話「クリムゾン」
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指を緩めて矢を放つ。矢は真っ直ぐ女の方に飛んで行った。普通なら当たる。当たるはずだ。
女は目にも止まらないスピードで上半身をずらして、矢を避けた。
「は――」
女が俺の目の前まで一瞬で走ってきた。拳を腰の位置で溜めている。次の攻撃はおそらく正拳突きだ。
女が思っていた通り、俺のみぞおちを狙って正拳突きを放ってきた。体を捻って拳を避ける。
とりあえず少し距離を取らないと。近距離戦ならまず勝ち目はない。
女がこちらに向いてきた。その目は血走っている。あまりの威圧感に体の動きが一瞬止まった。
その瞬間女が俺の顔に向かってハイキックを当ててきた。まるで弾丸の如き速さだ。避けられるはずがない。
体が縦に3回転ほどしながら奥の扉に突っ込んだ。辺りに金属が引きちぎれる音が鳴る。
痛い。頭がぐわんぐわんする。脳震盪かもしれない。視界もグラグラする。世界が真逆になったようだ。
言うことの聞かない体に無理矢理命令を出して立ち上がる。女はゆっくりと歩いて俺の方に来ているようだ。
自分の頭をグーで叩いてポケットナイフ抜き取る。女との距離は約5m。女のスピードからして弓を構えてる暇はなさそうだ。
女の足が俺の腹に目がけて飛んできた。左手を盾にして防御する。木が折れるかのような鈍い音を立てながら、女の蹴りの威力を消し去った。
同時に右手に持っていたポケットナイフで蹴りあげている女のアキレス腱を斬り裂いた。これでこの足は使えない。
女のアキレス腱から血が流れる。自慢のスピードは無くなった。今のこいつにパワー以外で恐れる理由はない。
女の首元を切り裂こうと、腕をしならせて振りかぶった。鞭のように空気を切り裂く音を出しながら、弧を描く軌道でナイフを振った。
アキレス腱を切られて同様しているはずだ。このスピードなら女の首を半分にしてやれる。そのはずだった。
振りかぶったナイフは女の片手によって止められた。ナイフを握っている右手ごと、その大きい片手に止められた。
手を捻られる。反射的にナイフを地面に落としてしまった。
「づっっ――」
声を出す暇もなく女の掌底が俺の鼻をへし折った。前に折れていたからダメージは対してないが、それでも血は出るし怯みもする。
視界も一瞬奪われて女の次の行動が見えなくなった。音を聞く余裕もなく、次の攻撃の予想をする暇もなく、女の拳が俺のみぞおちを貫いた。
比喩ではない。本当に貫いた。女の拳が俺の体の内部を通過したのだ。口からダムが決壊したかのように血が出てきた。アニメでしかこんな状態は見たことがないぞ。
「あ――がハッ――ぁぁ――」
女の腕が持ち上がる。必然的に俺の体も持ち上がった。痛い。口から永遠に血が出てくる。俺の血の量は琵琶湖の水の量と同じぐらいはありそうだ。
力が出ない。呼吸ができない。刺さっている部分が気持ち悪い。女の体が生きているのを自分の体内で理解してしまった。
口に血が溜まる。女は無表情でこちらを見つめている。冷たい目だ。そんな目で何人も殺したのか。
……こいつのポーカーフェイスが崩れるのを見るのが楽しみだ。
口の中に溜まった血を一点に集中させ、女のある場所にぶつけた。その場所は涙穴。顔面の急所の1つでここに水を叩きつけられると、目と鼻に微量水が入る。
するとどうなるか。叩きつけられた人物は溺れるかのような感覚に陥るのだ。女の体は強靭だ。だがそれは外の話だ。
「かハッ!?」
腹から女の腕が抜けた。地面に腰から落ちる。もっと優しくおろしてくれてもいいんだがな。
女が手や足をばたつかせている。こんな身体能力をしているのにカナヅチらしい。意外と可愛い所もあるようだな。
血がドロドロと流れている腹を押さえて、女の横を通り抜けた。今は殺すよりも自分の治療の方が先決だ。さすがにダメージがデカすぎる。初っ端からこの怪我をするとは……この先が思いやられるな。
俺は部屋の扉を閉めた。女は部屋の中で声を出すことも無く暴れ続けていた。
フラフラと歩くと、落ちてきた地面の上にヒルが座っていた。そういやヒルのこと忘れてたな。
「クゥゥン……」
なんだか落ち込んでいるようにも見える。もしかして、俺のところに加勢する勇気がなかったのを落ち込んでるのかな。
「そう悲しむな。別に生きてるんだからいいんだよ。それより自分が生き残ることを1番に考えろよ」
ヒルの頭を撫でる。正直ヒルに生きててもらわないと桃を見つけるのが難しくなる。だからヒルにはまだまだ働いてもらう。だから加勢しなかったのは結構正解でもあるのだ。どうせ俺は死なないし。
「……ワン!」
ヒルが元気になった。元気になってくれてよかった。
「つっっっ―――」
針を腹に通す。痛みで頭がおかしくなりそうだが、死ぬよりかはマシだ。
糸を結んだ。これで腹の縫合は完了。包帯を強めに巻いて、一応は応急処置が完了した。できれば休みたいが、休んでる暇はない。
体を起こして、歩き出す。足元はおぼつかないがいずれ普通になるだろう。
「はぁ……はぁ……行くか」
「ワン」
俺はフラフラと揺れながら先の道へ進んで行った。
続く
女は目にも止まらないスピードで上半身をずらして、矢を避けた。
「は――」
女が俺の目の前まで一瞬で走ってきた。拳を腰の位置で溜めている。次の攻撃はおそらく正拳突きだ。
女が思っていた通り、俺のみぞおちを狙って正拳突きを放ってきた。体を捻って拳を避ける。
とりあえず少し距離を取らないと。近距離戦ならまず勝ち目はない。
女がこちらに向いてきた。その目は血走っている。あまりの威圧感に体の動きが一瞬止まった。
その瞬間女が俺の顔に向かってハイキックを当ててきた。まるで弾丸の如き速さだ。避けられるはずがない。
体が縦に3回転ほどしながら奥の扉に突っ込んだ。辺りに金属が引きちぎれる音が鳴る。
痛い。頭がぐわんぐわんする。脳震盪かもしれない。視界もグラグラする。世界が真逆になったようだ。
言うことの聞かない体に無理矢理命令を出して立ち上がる。女はゆっくりと歩いて俺の方に来ているようだ。
自分の頭をグーで叩いてポケットナイフ抜き取る。女との距離は約5m。女のスピードからして弓を構えてる暇はなさそうだ。
女の足が俺の腹に目がけて飛んできた。左手を盾にして防御する。木が折れるかのような鈍い音を立てながら、女の蹴りの威力を消し去った。
同時に右手に持っていたポケットナイフで蹴りあげている女のアキレス腱を斬り裂いた。これでこの足は使えない。
女のアキレス腱から血が流れる。自慢のスピードは無くなった。今のこいつにパワー以外で恐れる理由はない。
女の首元を切り裂こうと、腕をしならせて振りかぶった。鞭のように空気を切り裂く音を出しながら、弧を描く軌道でナイフを振った。
アキレス腱を切られて同様しているはずだ。このスピードなら女の首を半分にしてやれる。そのはずだった。
振りかぶったナイフは女の片手によって止められた。ナイフを握っている右手ごと、その大きい片手に止められた。
手を捻られる。反射的にナイフを地面に落としてしまった。
「づっっ――」
声を出す暇もなく女の掌底が俺の鼻をへし折った。前に折れていたからダメージは対してないが、それでも血は出るし怯みもする。
視界も一瞬奪われて女の次の行動が見えなくなった。音を聞く余裕もなく、次の攻撃の予想をする暇もなく、女の拳が俺のみぞおちを貫いた。
比喩ではない。本当に貫いた。女の拳が俺の体の内部を通過したのだ。口からダムが決壊したかのように血が出てきた。アニメでしかこんな状態は見たことがないぞ。
「あ――がハッ――ぁぁ――」
女の腕が持ち上がる。必然的に俺の体も持ち上がった。痛い。口から永遠に血が出てくる。俺の血の量は琵琶湖の水の量と同じぐらいはありそうだ。
力が出ない。呼吸ができない。刺さっている部分が気持ち悪い。女の体が生きているのを自分の体内で理解してしまった。
口に血が溜まる。女は無表情でこちらを見つめている。冷たい目だ。そんな目で何人も殺したのか。
……こいつのポーカーフェイスが崩れるのを見るのが楽しみだ。
口の中に溜まった血を一点に集中させ、女のある場所にぶつけた。その場所は涙穴。顔面の急所の1つでここに水を叩きつけられると、目と鼻に微量水が入る。
するとどうなるか。叩きつけられた人物は溺れるかのような感覚に陥るのだ。女の体は強靭だ。だがそれは外の話だ。
「かハッ!?」
腹から女の腕が抜けた。地面に腰から落ちる。もっと優しくおろしてくれてもいいんだがな。
女が手や足をばたつかせている。こんな身体能力をしているのにカナヅチらしい。意外と可愛い所もあるようだな。
血がドロドロと流れている腹を押さえて、女の横を通り抜けた。今は殺すよりも自分の治療の方が先決だ。さすがにダメージがデカすぎる。初っ端からこの怪我をするとは……この先が思いやられるな。
俺は部屋の扉を閉めた。女は部屋の中で声を出すことも無く暴れ続けていた。
フラフラと歩くと、落ちてきた地面の上にヒルが座っていた。そういやヒルのこと忘れてたな。
「クゥゥン……」
なんだか落ち込んでいるようにも見える。もしかして、俺のところに加勢する勇気がなかったのを落ち込んでるのかな。
「そう悲しむな。別に生きてるんだからいいんだよ。それより自分が生き残ることを1番に考えろよ」
ヒルの頭を撫でる。正直ヒルに生きててもらわないと桃を見つけるのが難しくなる。だからヒルにはまだまだ働いてもらう。だから加勢しなかったのは結構正解でもあるのだ。どうせ俺は死なないし。
「……ワン!」
ヒルが元気になった。元気になってくれてよかった。
「つっっっ―――」
針を腹に通す。痛みで頭がおかしくなりそうだが、死ぬよりかはマシだ。
糸を結んだ。これで腹の縫合は完了。包帯を強めに巻いて、一応は応急処置が完了した。できれば休みたいが、休んでる暇はない。
体を起こして、歩き出す。足元はおぼつかないがいずれ普通になるだろう。
「はぁ……はぁ……行くか」
「ワン」
俺はフラフラと揺れながら先の道へ進んで行った。
続く
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