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Hero of the Shadowルート (如月楓夜 編)
17話「神狼」
しおりを挟む「や、やっと出れた……」
「ワン!!」
ヒルとともに地上の空気を吸った。下水道の臭い匂いから解放され、新鮮な美味しい空気を存分に吸えるようになったのだ。いつも吸ってるものだからあんまり味を感じないが、ずっと臭いところにいた後に地上の空気を吸うともう最高。高級ホテルのフレンチトーストくらい空気が美味しい。
「あぁぁぁぁぁ。もう最高だな。空気だけでお腹膨れるわ」
「ワンワン!」
「……なんてな。お腹普通に空いたわ」
「クゥゥゥン……」
そういえばバッグを落としたのを忘れてた。あれの中に食料とか銃とか入ってたはずだ。……まずここどこだ。
辺りを見渡す。近くにはガソリンスタンドやファミレスがあった。多分ファミレスの食料は腐ってるだろうな。
「どうしよ……またここら辺探索しないと行けないのか……」
「ワン?」
「……」
「クゥゥゥン?」
「そうだ!お前狼じゃん!!」
「ワオン?」
そういやヒルって狼だった。ヒルに俺の匂い追跡させたらバッグ見つけてくれるかもしれない!俺まじ頭いいわ。
「よーし!ほんじゃあヒル!任せたぞ!」
「ワン!」
「大丈夫か~?」
地面に鼻を押し付けるようにして嗅ぎながらヒルが歩く。その後ろを俺は着いていく。
ヒルに俺の服の匂いを嗅がせて今はバッグを探している。ついでにガソリンスタンドからガソリンを拝借させてもらった。何かの時に使う用と戦闘に使う用。あの炎の矢はかっこよかったからまた使いたい。多分威力も上がるだろうしね。
しばらく歩いているとさっきまでいた住宅街に着いた。
「おぉ、さすがだな」
やはりヒルは凄いな。本当に心強い。仲間になってくれてよかった。
見つけた。知らない人の家の庭にバッグが落ちてあった。ヒルがバッグを見つけて吠えた。
「ワン!!」
「……あった!!やっぱりお前は最高だな!!まじで神だわ!神狼だわ!!」
「クゥン」
ヒルの頭と顔を撫で回す。モフモフしてて気持ちいい。もうさっきまで気持ち悪いやつに追いかけられたり首掴まれたししてたからもうほんとに最高。ヒルを枕にして寝たい気分だ。
「まぁこれでよしだな!」
バッグを背負った。その瞬間に背中に激痛が走った。
「あが!?」
バッグを地面に落とす。そういえばあのでかい狼に投げ飛ばされた後、段差に背中ぶつけたっけな~。その時に背中怪我しちゃったのか。
「困ったぞ……これじゃあバッグ持てねぇ」
どうしようか。前につけるのはなんかダサいし、緊急事態の時に素早く動けない。まずそもそも俺は前の方が怪我してるし。
悩んでいると、ヒルが俺の方に近寄ってきた。
「クゥン?」
……そうだ!ヒルには悪いがヒルにバッグを持たせればいいんだ。
「ちょっと頼むなヒル」
「ワン?」
ヒルにバッグを背負わせてみた。前足にショルダーストラップを通して動きやすくしてみた。
「動けるか?」
ヒルはバッグを持ってないかのごとく軽快に動き回った。
「ワン!!」
そういえばヒルも化け物側のやつだったな。やっぱり普通のやつより力が強いのかな。
「……やっぱりお前は最高だな!!」
「ワン!!」
まぁどうでもいいか。これからこの世界を生き抜くのにヒルがいてくれたら心強い。俺はまたヒルの頭を撫で回した。
「……人……いないな~」
「クゥン」
ヒルと一緒に辺りを歩き回る。何故か分からないがここら辺にもゾンビがいないのだ。また化け物でもいるんだろうか。流石にもういやなんだが。
歩いていると遠くの方からなにか聞こえた気がした。化け物の声とかではなく人の声だ。
「ヒル、人は襲うなよ」
「ワン!」
ヒルを後ろにする。もしかしたら食料を奪いに来たやつかもしれない。一応弓に矢をつがえる。俺は声のした方に向かって歩いた。
「あ!おいあんた!」
しばらく探索していると急に後ろから声をかけられた。弦を引いて声のした方に向ける。
「ちょちょ!やめてくれ!俺は人間だ!」
「……」
声の主は確かに人間っぽかった。赤髪にガッシリとした体格の男だ。恐らくラグビー部にでも入っていたのだろう。弦を戻した。
「ってあんた!なんだよその姿!?傷だらけってレベルじゃねぇじゃねぇか!」
「あぁ……これは……まぁうん」
「……怪我人に助けを乞うのは気が引けるが今はそんなことを言ってる時じゃないんだ!」
男が強い声で言った。この男の言い方的に相当切羽詰まった状況なのだろう。
「どうかしたのか?」
「仲間が化け物に襲われてるんだ!頼む!遠くからでいいから加勢してくれないか!」
化け物に襲われてるか。まぁ俺は対化け物のプロフェッショナルだからな。余裕だろ。
「オーケーわかった。そこに連れてけ」
「ありがとう!来てくれ!」
男が走り出した。
「行くぞヒル!」
「ワン!!」
俺もヒルと共に男の後について行った。
「ハァハァ……あ、あれだ!!あそこだ!!」
しばらく男と走った。ヒルは全く息が切れてる様子はなく、まだまだ余裕そうだ。さすが狼。俺は多少息は切れてるがすぐに立て直せる。
男が指を指した。指の方向には確かに化け物に襲われてる人達がいた。化け物はゴリラみたいに筋肉があり、それでいてでかい。5mくらいはある。
そして、その化け物の周りには何人かの人がいた。銃を化け物に向けて放っている。しかし銃は化け物に効いていないようだ。
「ちょっとやばいな……」
「あんた、弓持ってるってことは使えるんだろ?」
「まぁな」
「ならこっから狙撃して援護してくれよ!俺も一応これはあるんだ」
男はそういうと懐から双眼鏡を取り出した。てっきりスナイパーライフルとかあるのかと思ったわ。
「ほら!狙撃手の横にいる観測手みたいな感じでさ!サポートしてやるよ」
「必要無いさ。それ貸して」
「……はい」
男から双眼鏡を貸してもらった。アーチェリーでも双眼鏡は結構使うのだ。
双眼鏡を覗く。化け物の顔がよく見えた。頭にでかい釘が刺さってる。痛々しいな。周りの人達も確認してみる。アサルトライフルを持ってる男やクロスボウを持ってる女。そんな人達の中に1人、見知った顔の子がいた。
「……えっ……桃……?」
続く
「ワン!!」
ヒルとともに地上の空気を吸った。下水道の臭い匂いから解放され、新鮮な美味しい空気を存分に吸えるようになったのだ。いつも吸ってるものだからあんまり味を感じないが、ずっと臭いところにいた後に地上の空気を吸うともう最高。高級ホテルのフレンチトーストくらい空気が美味しい。
「あぁぁぁぁぁ。もう最高だな。空気だけでお腹膨れるわ」
「ワンワン!」
「……なんてな。お腹普通に空いたわ」
「クゥゥゥン……」
そういえばバッグを落としたのを忘れてた。あれの中に食料とか銃とか入ってたはずだ。……まずここどこだ。
辺りを見渡す。近くにはガソリンスタンドやファミレスがあった。多分ファミレスの食料は腐ってるだろうな。
「どうしよ……またここら辺探索しないと行けないのか……」
「ワン?」
「……」
「クゥゥゥン?」
「そうだ!お前狼じゃん!!」
「ワオン?」
そういやヒルって狼だった。ヒルに俺の匂い追跡させたらバッグ見つけてくれるかもしれない!俺まじ頭いいわ。
「よーし!ほんじゃあヒル!任せたぞ!」
「ワン!」
「大丈夫か~?」
地面に鼻を押し付けるようにして嗅ぎながらヒルが歩く。その後ろを俺は着いていく。
ヒルに俺の服の匂いを嗅がせて今はバッグを探している。ついでにガソリンスタンドからガソリンを拝借させてもらった。何かの時に使う用と戦闘に使う用。あの炎の矢はかっこよかったからまた使いたい。多分威力も上がるだろうしね。
しばらく歩いているとさっきまでいた住宅街に着いた。
「おぉ、さすがだな」
やはりヒルは凄いな。本当に心強い。仲間になってくれてよかった。
見つけた。知らない人の家の庭にバッグが落ちてあった。ヒルがバッグを見つけて吠えた。
「ワン!!」
「……あった!!やっぱりお前は最高だな!!まじで神だわ!神狼だわ!!」
「クゥン」
ヒルの頭と顔を撫で回す。モフモフしてて気持ちいい。もうさっきまで気持ち悪いやつに追いかけられたり首掴まれたししてたからもうほんとに最高。ヒルを枕にして寝たい気分だ。
「まぁこれでよしだな!」
バッグを背負った。その瞬間に背中に激痛が走った。
「あが!?」
バッグを地面に落とす。そういえばあのでかい狼に投げ飛ばされた後、段差に背中ぶつけたっけな~。その時に背中怪我しちゃったのか。
「困ったぞ……これじゃあバッグ持てねぇ」
どうしようか。前につけるのはなんかダサいし、緊急事態の時に素早く動けない。まずそもそも俺は前の方が怪我してるし。
悩んでいると、ヒルが俺の方に近寄ってきた。
「クゥン?」
……そうだ!ヒルには悪いがヒルにバッグを持たせればいいんだ。
「ちょっと頼むなヒル」
「ワン?」
ヒルにバッグを背負わせてみた。前足にショルダーストラップを通して動きやすくしてみた。
「動けるか?」
ヒルはバッグを持ってないかのごとく軽快に動き回った。
「ワン!!」
そういえばヒルも化け物側のやつだったな。やっぱり普通のやつより力が強いのかな。
「……やっぱりお前は最高だな!!」
「ワン!!」
まぁどうでもいいか。これからこの世界を生き抜くのにヒルがいてくれたら心強い。俺はまたヒルの頭を撫で回した。
「……人……いないな~」
「クゥン」
ヒルと一緒に辺りを歩き回る。何故か分からないがここら辺にもゾンビがいないのだ。また化け物でもいるんだろうか。流石にもういやなんだが。
歩いていると遠くの方からなにか聞こえた気がした。化け物の声とかではなく人の声だ。
「ヒル、人は襲うなよ」
「ワン!」
ヒルを後ろにする。もしかしたら食料を奪いに来たやつかもしれない。一応弓に矢をつがえる。俺は声のした方に向かって歩いた。
「あ!おいあんた!」
しばらく探索していると急に後ろから声をかけられた。弦を引いて声のした方に向ける。
「ちょちょ!やめてくれ!俺は人間だ!」
「……」
声の主は確かに人間っぽかった。赤髪にガッシリとした体格の男だ。恐らくラグビー部にでも入っていたのだろう。弦を戻した。
「ってあんた!なんだよその姿!?傷だらけってレベルじゃねぇじゃねぇか!」
「あぁ……これは……まぁうん」
「……怪我人に助けを乞うのは気が引けるが今はそんなことを言ってる時じゃないんだ!」
男が強い声で言った。この男の言い方的に相当切羽詰まった状況なのだろう。
「どうかしたのか?」
「仲間が化け物に襲われてるんだ!頼む!遠くからでいいから加勢してくれないか!」
化け物に襲われてるか。まぁ俺は対化け物のプロフェッショナルだからな。余裕だろ。
「オーケーわかった。そこに連れてけ」
「ありがとう!来てくれ!」
男が走り出した。
「行くぞヒル!」
「ワン!!」
俺もヒルと共に男の後について行った。
「ハァハァ……あ、あれだ!!あそこだ!!」
しばらく男と走った。ヒルは全く息が切れてる様子はなく、まだまだ余裕そうだ。さすが狼。俺は多少息は切れてるがすぐに立て直せる。
男が指を指した。指の方向には確かに化け物に襲われてる人達がいた。化け物はゴリラみたいに筋肉があり、それでいてでかい。5mくらいはある。
そして、その化け物の周りには何人かの人がいた。銃を化け物に向けて放っている。しかし銃は化け物に効いていないようだ。
「ちょっとやばいな……」
「あんた、弓持ってるってことは使えるんだろ?」
「まぁな」
「ならこっから狙撃して援護してくれよ!俺も一応これはあるんだ」
男はそういうと懐から双眼鏡を取り出した。てっきりスナイパーライフルとかあるのかと思ったわ。
「ほら!狙撃手の横にいる観測手みたいな感じでさ!サポートしてやるよ」
「必要無いさ。それ貸して」
「……はい」
男から双眼鏡を貸してもらった。アーチェリーでも双眼鏡は結構使うのだ。
双眼鏡を覗く。化け物の顔がよく見えた。頭にでかい釘が刺さってる。痛々しいな。周りの人達も確認してみる。アサルトライフルを持ってる男やクロスボウを持ってる女。そんな人達の中に1人、見知った顔の子がいた。
「……えっ……桃……?」
続く
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