3 / 82
Hero of the Shadowルート (如月楓夜 編)
3話「鉄の男」
しおりを挟むこの世界に逃げ場など存在しない。安息の地など存在しない。そう思ってしまった。至る所にヤツらがいる。ヤツら以外にも謎の化け物までいる。今の僕では戦力にならない。化け物と出会った時、ちゃんと戦えるようにしないといけない。そのためには武器が必要だ。今の僕の武器はポケットナイフと警官の弾の入っていないリボルバー。糸部さんの銃を借りようと思ったが大事な物と言っていたのでやめておいた。つまり今持っている武器はナイフ1本のみ。それだけではダメだ。僕が使っている僕にあった武器。
弓だ。アーチェリーの弓だ。あれを取りに行かなくてはならない。そう決意した僕は僕の通っていた高校へと足を進めた。
何も無い道路を歩く。ヤツらはいないので隠れて歩く必要はない。いつもは車が通っていて道路を歩くなんてできるはずが無かったのだが今はできる。なんだか変な気分だ。弓を手に入れることが目的だがその間にヤツらに襲われたら大変だ。あまりしたくないが死んでいる警官の銃から弾を貰うことにしよう。と、考えていた時にちょうど警官の死体を2体発見した。しかし片方は腹から下が無くなっており、内蔵がドロドロと散乱していた。もう片方は真ん中からちょうど左右に分かれており、見るに堪えない姿をしていた。明らかに不自然だ。今までの死体は噛みちぎられた跡があったりしたが今回のは噛みちぎられたと言うよりも斬られたという方が正しい。もしかしたらさっきの化け物かもしれない。黙祷をした後に警官2人から銃弾を貰うことにした。
歩いていると僕の通っていた中学校が見えた。行くべきだろうか悩む。もし人が避難していたら、桃もそこにいるのかもしれない。しかし、小学校は人が2人しか避難していなかった。地震の避難場所に設定されているならこんな状況は絶対避難するはずだ。つまりそれほど生存者は少ないということ。その状況で学校にまた行くべきなのか。食料とかはあるかもしれないが、さっきのこともあって行くのが怖い。だけど、もしかしたら桃もいるかもしれないと思うと気が気でならない。僕は学校に足を運ぶことにした。
学校のフェンスの前まで来た。ここまで来ると道に沿って行けばすぐに着く。そう思っていたがすぐには着けそうになくなった。ヤツらがいる。しかも結構な数がいる。目視できる範囲では前に7体もいる。行く途中で2人の警官の死体から銃弾を貰ってきたので現在は銃弾が10発ある。なのでヤツら全員を倒すことは出来なくはない。糸部さんは頭に当てたらだいたい倒せると言っていたが、アーチェリーをしていたとはいえ、拳銃で人間の形をしているヤツの頭を撃つなんてことは難しい。仕方がないので遠回りしようと後ろを振り向く。後ろにもヤツらはいたが、一体がボケっと突っ立っているだけだった。一体だけなら隠れながら移動できる。そう思い、しゃがんで移動した。ゆっくりと移動する。ヤツは違う方向を向いている。いける。これなら普通にいける。そう思いやつの後ろを通過した。
その瞬間なにかの音が聞こえた。
ブィィィィィン………
聞いたことのある音だ。確か木を切る時に使うチェーンソーの音だ。嫌な予感がした。後ろを振り返る。そこには灰色のボロボロな服を着た、大男がたっていた。見た目が紫色なのと目があっちこっちについてるのと両手の手首から先がチェーンソーになっていること以外は普通だった。さっきの警官を殺したのも恐らくこいつだ。この化け物はこちらをみるやいなや
アヒョヒョヒョヒョヒョ!!!
などと言いながら斬りかかってきた。恐怖で一瞬息が止まる。しかし本能で死ぬことを察知し立ち上がって走り出した。走り出したのに気がつかれたせいで僕が後ろを通り過ぎたヤツもこちらを追いかけてきた。チェーンソーが長く地面についているがお構い無しに走っているので、地面にチェーンソーの跡ができていた。本気で走った。さすがにアレで斬られるとひとたまりもない。死なないように全力で走った。しかし化け物ではなくヤツに追いつかれてしまった。左肩に思い切り噛みつかれてしまう。噛み切られはしなかったがヤツはそのままずっとものすごい力で噛み付いている。ものすごく痛い。噛み付いたままなので重さで走るスピードも落ちてしまった。化け物が近ずいてくる。やばい。このままだと、こんなヤツと一緒に死ななくてはならなくなる。嫌だ。死にたくない。やつがすぐそこまで迫ってくる。右手を振り上げている。なんとか肩のヤツを離そうと肘でヤツの腹を思い切り殴ってみるが微動だにしない。そうしている間にも化け物は右手を振り下ろそうと邪悪な笑みを浮かべている。化け物の笑い声がどんどん近づいてくる。恐怖で過呼吸になる。頭の中が死でいっぱいになる。その時チェーンソーは振り下ろされた。
あ、死んだ。そう思った。しかし何故か痛みが来ない。それどころか肩の痛みも抜けて体が軽くなった。後ろを振り向く。確かにヤツはチェーンソーを振り落とした。しかしそのチェーンソーは僕に当たることはなく噛み付いていたヤツの体を切り落とした。幸運だった。チェーンソーの射程距離内にギリギリ僕は入っていなかった。チェーンソーが地面に刺さっている。化け物はそれを引き抜こうと躍起になっている。どうやら知能が低いらしい。その隙に猛ダッシュをした。中学校で陸上をしていた時より速かったかもしれない。呼吸をするのを忘れて急いで校舎の敷地内に入り、草むらに入り込んだ。呼吸をする。大きく思い切り呼吸したいがやつがまだ近くにいる。チェーンソーを抜いた直後、おそらく僕を見つけようと辺りをうろつき回っている。しかし1分ほど見回った後、奇声をあげてどこかへ走り去っていった。
ようやく安心して大きく呼吸をした。あの化け物はなんだったのか。ついさっき鉄の尾の化け物も見たというのに今度はチェーンソーとな。だがこんなところに長居はできない。さっさと学校を見回って出よう。
広い校舎が僕の目に映った。コンクリートの校舎に瓦の屋根。奥には黄色い運動場がある。普通なら懐かしい気分になっていいだろうが今はそんな状況では無い。なんだか嫌な予感がする。しかしここまで来たのなら行くしかない。僕は門をよじ登り敷地内に入った。
体育館の扉を開けようとするが鍵がかかってて開かない。
「ここからじゃ開かないか……上から行くか」
1階からの扉は開かないので2階から行くことにした。しかし2回から行くには校舎内に入って行くしかない。ここの校舎は一本道が多く、挟み撃ちになると逃げることが困難だ。しかしここが気になるので危険を承知で行くことにした。
玄関の扉は開いており、中はまだ昼ということもあって明るい。しかし辺りには乾いた血の跡がたくさん付着していた。その光景にゾッとしてしまう。辺りを見てみるがヤツらはいない。というかこの校舎にはヤツらがいない。校舎の外には結構な数のヤツらがいたのだが。何かがここにあるのだろうか。まぁおそらくさっきのチェーンソーの化け物だろうが。
さっきの化け物に会うのも嫌なので校舎の探索は後にして体育館へと向かう。階段を登り、校舎から体育館へと繋ぐ橋を渡る。時々後ろを確認しながら化け物がいないかを確認する。
体育館の扉に着いた。扉を開けようとするがやはり開かない。扉を叩いて中に人がいるかを確認する。
「あのー、誰かいませんかー?」
何も返答がない。いないということのようだ。とりあえず校舎を探索しようと思って後ろを振り向くと後ろから声が聞こえた。
「周りにヤツはいないな?」
若い男の声だった。思わずびっくりして声をあげる。
「周りにヤツはいないかと言ってるんだ」
「え?あ、うん」
思わず適当に返事をしてしまう。ヤツというのはおそらくあのチェーンソーの化け物だろう。そいつなら確かにいない。
「ならいい、入れ」
体育館の扉が開けられた。お言葉に甘えて入るとすぐに体育館の扉が閉められて鍵がかけられた。
扉の方を向くと、黒髪の筋肉質な男が立っていた。
「すぐに開けなくてすまないな。ヤツが居ては困るからね」
男は低い声で話しかけてきた。
「とりあえず下に案内するよ、生存者がいる」
男は着いてきて、といい階段を降りていった。僕も後を追って階段を降りる。階段は前通っていた時よりも汚くなっている。体育祭扉の前まで来た。
「俺だ、入るぞ」
そう言って男は体育館の扉を開けた。
そこには5人ほどの男女がそこら辺で雑魚寝したり座っていたりした。
「おい、健!なんなんだそいつは?」
「生存者だ。さっきここに来た」
「ちっ、連れてくるなよ。俺達の食料が更に減っちまうだろ」
「そんなことを言うなよ」
「でも事実でしょう?」
「そ、そうですよ、ただでさえ食料も少ないのに……」
「おデブちゃんは黙ってな。お前なんて食べなくてもその腹の中のもので耐えれるだろ?」
「な、なんだと」
「喧嘩するなお前ら」
なんか色んな人が話している。多分閉鎖的な空間だからストレスが溜まってるんだろう。
「おい、坊主」
横から座っていた、腕に龍のタトゥーが入っているスキンヘッドの男が話しかけてきた。顔に大きな切り傷が入っており、おそらくヤクザだろう。
「名は?」
「き、如月楓夜です」
「そうか、俺は藤木龍之介(ふじきりゅうのすけ)だ。そんなにビクビクしなくていい。争いごとはしねぇよ」
思ってたより温厚な人でよかった。横に刀が置いてあるから完全に斬られるかと思った。とゆうか今の時代でもヤクザは刀を使っているのかな。
「あぁそうだった俺も名乗るのを忘れていた。俺の名前は相澤健(あいざわけん)健って読んでくれ」
さっきの黒髪の男が名乗ってきた。この人も温厚そうだ。
「ほらお前らも名前くらい言ったらどうだ?」
「はいはい、私は中村優希(なかむらゆうき)、よろしくね」
ここの中で唯一の女性のようだ。スタイルもいい。別に興味はないが。
「ぼ、僕は波北柳瀬(なみきたやなせ)」
ものすごいふくよかな人だ。悪くいうとデブだ。
「やぁ、僕の名前はグラミス・リオネル。アメリカから来たんだ。よろしく」
茶髪の白人の男だ。体格もアメリカ人みたいにでかい。手を出している。握手をして欲しいそうだ。お望みどおり握手する。糸部さんよりかは力を抑えてくれている。
「ほら、お前もしろ」
「……ちっ、柏木金地(かしわぎきんじ)」
金髪の見るからに不良そうな男だ。素行が超悪そうだ。
「すまないな、もともとこういうやつなんだ。許してやってくれ」
「はい」
まぁこういうやつにはあまり関わらない方がいいか。後でどんな目にあうかわからん。とゆうかここには桃はいなかったか。命をかけてまで来たのに無駄足だったな。
来てから数時間たった。健さんは見張りに行っている。健さんは一応ここのリーダー的存在らしい。外は危険だから一時的に匿わせて貰っている。しかし桃のことを考えてしまう。心配だ。無駄だとは思うが一応聞いてみることにした。
「あ、あの?」
「ん?どうしたんだい?」
「もともとここには人探しで来たんですが」
「人探し?どんな子よ」
「蒼木桃っていう子で小さくて、髪を後ろで纏めてる子なんですけど」
「ん~そんな子は知らないね」
「ここに来た女の子は私だけだからね」
「女の子って言える歳かよ」
「何?なんか言った?」
「なんでもねぇよ…」
全員見てないようだ。なんとなく予想はしていたが本当に無駄足だった。
「どうせそんなブス、死んでるか外のヤツらみたいになってるだろ」
「あ?」
金髪がなんか言いやがった。
「んなわけねぇだろ調子に乗るなよクソ金髪」
「あぁ?調子に乗ってるのはてめぇだろ。あとから来やがった癖に偉そうに」
「後先関係ねぇよお前を死体にして外のヤツらに食わしてやろうか?」
「やってみろよ。そしたらてめぇを死体にしてカラスに食わせてやる」
「黙れ餓鬼ども!」
龍之介さんが怒鳴った。
「うるせぇぞ。喧嘩なら外でしろ」
「すみません…」
「すまねぇ…」
クソ金髪がこちらを睨みつけてくる。こちらも睨み返す。こいつは気に食わない。本来なら殴りたいがここで殴りあっても意味がない。
「さ、探しに来たってことはすぐにここをでるつもりなのかい?」
柳瀬さんが聞いてくる。
「まぁそうですね」
「…やった」
柳瀬が小さい声で喜んだ。腹が立つが正直仕方の無いことではある。
「とっととどっかに行っちまえ」
「言わなくても出て行ってやるよ。くたばれクソ金髪」
荷物を全部持つ。こんなところに長居はしたくない。あんなクソ野郎とは話したくもないし、視界に入れたくもない。
「まて坊主」
外に出ようとした時、龍之介さんが止めてきた。
「外はアイツらがウロウロしてる上にあのチェーンソー野郎もいるんだろ?」
「はぁ、さっき来た時はいましたけど」
「なら今外に行くのは危ねぇ。俺も着いてってやる」
「え!?そんな悪いですよ!」
「うるせぇそうしねぇと俺らが見捨てたみたいになるだろうが」
龍之介さんが刀を持って立ち上がる。
「龍之介さん!こんなやつのためにそんなことしなくていいですよ!」
「そ、そうですよ、別に見捨てたっていいじゃないですか」
「そういう訳にはいかねぇんだよ。どんな状況になってもこっちはヤクザっていう肩書きがあんだよ。一般人に危害は加えねぇ。見捨てるってことはそいつを殺してるって言うのと同じだ。そんなことはしねぇ」
普通にいい人だった。人は見た目じゃないって言葉をよく聞くがその言葉が本当なんだと実感した。
「なら僕も行かせて貰うよ。日本のゴクドーというのもかっこいい」
「グラミスさん…」
さっきの外国人の人が散弾銃を持って立ち上がった。この人も同行してくれるようだ。どうやら全員が全員悪い奴では無さそうだ。
「グラミスまで…いいよ、さっさと行っちまえ」
「あぁ行かせてもらう、もともとここの食料も尽きかけてるからな」
「え!?そ、そうなの…」
「俺らに着いてくるかは自由だ。…行くぞお前ら」
そう言って体育館から出ようとした時だった。
「おい!お前らまずいぞ!ヤツらだ!ヤツらが大量に出てきた!」
健さんが大急ぎでこちらに向かってきた。
「まじかよ、この前までいなかったはずだろ?」
「知らねぇよ!とにかくまずい!チェーンソーのヤツも来やがっ…」
健さんの腹からチェーンソーが飛び出してきた。辺り一体に血しぶきが舞った。
「ががががああああああ」
飛び出したチェーンソーはどんどんと上へ移動していき頭を通り抜けて健さんの体を2つに裂けさせた。
「きゃぁぁぁぁ!!」
優希さんが叫ぶ。健さんの後ろにはさっき僕を襲った灰色の大男がいた。
アヒョヒョヒョヒョヒョ!!!
奇声を発しながら両手のチェーンソーを振り回してきた。全員急いで化け物から離れる。それと同時に体育館の扉から大量のヤツらが溢れ出てきた。目視で見ても最低二十体以上はいる。せめて戦おうとポケットから拳銃を取り出す。弾数は10発。どうするかを頭で考える。普通にすればすぐには弾切れになってヤツらの餌となってしまう。かといって何もしなくても死ぬ。なら方法は1つ。逃げること。ヤツらは前の所から出てきたが出口は一つだけではない。横にもいくつかの扉がある。そこからは外に出られる。
大急ぎで横の扉の鍵を開け、外に飛び出した。幸いにも外にはヤツらがあまりいなかった。中にいる他の人達に知らせようとするが
「ぎゃぁぁぁぁやめてぇぇっ!」
優希さんがヤツらに襲われて生きたまま食われている。
「死ね!死ね!死ねぇ!あっ、ごめんなさい!もうしません!もうしません!もうしません!もうしませんからぁ!!」
柳瀬もヤツらに生きたまま食われている。銃で応戦していたようだが弾切れだったところを襲われてダメだった。
「またかよクソっ!」
このままだと糸部さんの時と同じになってしまう。何とかして僕と来てくれようとしていた人達だけでも助けなければ!そう思い、中に入ろうとした時
「まて!楓夜!」
グラミスさんが僕のことをタックルで押し飛ばした。腰から落ちてしまいちょっと動けなくなる。グラミスさんの方向を見る。そこには頭のないグラミスさんが力なく座り込んでいた。
アヒョヒョヒョヒョヒョ!!!
ブィィィィィン………
チェーンソーの化け物がこちらを見て邪悪な笑みを浮かべている。これはまずい。すぐに腰をあげて走り出そうとする。しかし何故か糸部さんと花蓮ちゃんのことを思い出す。あの鉄の尾の化け物にやられた時僕は何もできなかった。何も出来ずに死んでいくのを見るだけだった。またそんなことをするのか。自分のために死んでくれたグラミスさんの仇を取らなくていいのか。そんな心で桃を見つけられるのか。
化け物を見る。チェーンソーを振り上げてこちらに攻撃しようとしている。死にたくはない。グラミスさんが僕のために死んでくれた。その恩を仇で返すことはできない。だからといってこいつから逃げるのは嫌だ。
ブィィィィィン………ブゥゥゥゥン!!
チェーンソーで切りつけてくる。動かなければ頭から真っ二つになる。それを間一髪で避ける。化け物の目を見る。大きく深呼吸をして銃を握りしめる。もう逃げない。逃げる訳にはいかない。
「かかってこいチェーンソー野郎。お前のその自慢チェーンソーをへし折ってやるよ」
続く
弓だ。アーチェリーの弓だ。あれを取りに行かなくてはならない。そう決意した僕は僕の通っていた高校へと足を進めた。
何も無い道路を歩く。ヤツらはいないので隠れて歩く必要はない。いつもは車が通っていて道路を歩くなんてできるはずが無かったのだが今はできる。なんだか変な気分だ。弓を手に入れることが目的だがその間にヤツらに襲われたら大変だ。あまりしたくないが死んでいる警官の銃から弾を貰うことにしよう。と、考えていた時にちょうど警官の死体を2体発見した。しかし片方は腹から下が無くなっており、内蔵がドロドロと散乱していた。もう片方は真ん中からちょうど左右に分かれており、見るに堪えない姿をしていた。明らかに不自然だ。今までの死体は噛みちぎられた跡があったりしたが今回のは噛みちぎられたと言うよりも斬られたという方が正しい。もしかしたらさっきの化け物かもしれない。黙祷をした後に警官2人から銃弾を貰うことにした。
歩いていると僕の通っていた中学校が見えた。行くべきだろうか悩む。もし人が避難していたら、桃もそこにいるのかもしれない。しかし、小学校は人が2人しか避難していなかった。地震の避難場所に設定されているならこんな状況は絶対避難するはずだ。つまりそれほど生存者は少ないということ。その状況で学校にまた行くべきなのか。食料とかはあるかもしれないが、さっきのこともあって行くのが怖い。だけど、もしかしたら桃もいるかもしれないと思うと気が気でならない。僕は学校に足を運ぶことにした。
学校のフェンスの前まで来た。ここまで来ると道に沿って行けばすぐに着く。そう思っていたがすぐには着けそうになくなった。ヤツらがいる。しかも結構な数がいる。目視できる範囲では前に7体もいる。行く途中で2人の警官の死体から銃弾を貰ってきたので現在は銃弾が10発ある。なのでヤツら全員を倒すことは出来なくはない。糸部さんは頭に当てたらだいたい倒せると言っていたが、アーチェリーをしていたとはいえ、拳銃で人間の形をしているヤツの頭を撃つなんてことは難しい。仕方がないので遠回りしようと後ろを振り向く。後ろにもヤツらはいたが、一体がボケっと突っ立っているだけだった。一体だけなら隠れながら移動できる。そう思い、しゃがんで移動した。ゆっくりと移動する。ヤツは違う方向を向いている。いける。これなら普通にいける。そう思いやつの後ろを通過した。
その瞬間なにかの音が聞こえた。
ブィィィィィン………
聞いたことのある音だ。確か木を切る時に使うチェーンソーの音だ。嫌な予感がした。後ろを振り返る。そこには灰色のボロボロな服を着た、大男がたっていた。見た目が紫色なのと目があっちこっちについてるのと両手の手首から先がチェーンソーになっていること以外は普通だった。さっきの警官を殺したのも恐らくこいつだ。この化け物はこちらをみるやいなや
アヒョヒョヒョヒョヒョ!!!
などと言いながら斬りかかってきた。恐怖で一瞬息が止まる。しかし本能で死ぬことを察知し立ち上がって走り出した。走り出したのに気がつかれたせいで僕が後ろを通り過ぎたヤツもこちらを追いかけてきた。チェーンソーが長く地面についているがお構い無しに走っているので、地面にチェーンソーの跡ができていた。本気で走った。さすがにアレで斬られるとひとたまりもない。死なないように全力で走った。しかし化け物ではなくヤツに追いつかれてしまった。左肩に思い切り噛みつかれてしまう。噛み切られはしなかったがヤツはそのままずっとものすごい力で噛み付いている。ものすごく痛い。噛み付いたままなので重さで走るスピードも落ちてしまった。化け物が近ずいてくる。やばい。このままだと、こんなヤツと一緒に死ななくてはならなくなる。嫌だ。死にたくない。やつがすぐそこまで迫ってくる。右手を振り上げている。なんとか肩のヤツを離そうと肘でヤツの腹を思い切り殴ってみるが微動だにしない。そうしている間にも化け物は右手を振り下ろそうと邪悪な笑みを浮かべている。化け物の笑い声がどんどん近づいてくる。恐怖で過呼吸になる。頭の中が死でいっぱいになる。その時チェーンソーは振り下ろされた。
あ、死んだ。そう思った。しかし何故か痛みが来ない。それどころか肩の痛みも抜けて体が軽くなった。後ろを振り向く。確かにヤツはチェーンソーを振り落とした。しかしそのチェーンソーは僕に当たることはなく噛み付いていたヤツの体を切り落とした。幸運だった。チェーンソーの射程距離内にギリギリ僕は入っていなかった。チェーンソーが地面に刺さっている。化け物はそれを引き抜こうと躍起になっている。どうやら知能が低いらしい。その隙に猛ダッシュをした。中学校で陸上をしていた時より速かったかもしれない。呼吸をするのを忘れて急いで校舎の敷地内に入り、草むらに入り込んだ。呼吸をする。大きく思い切り呼吸したいがやつがまだ近くにいる。チェーンソーを抜いた直後、おそらく僕を見つけようと辺りをうろつき回っている。しかし1分ほど見回った後、奇声をあげてどこかへ走り去っていった。
ようやく安心して大きく呼吸をした。あの化け物はなんだったのか。ついさっき鉄の尾の化け物も見たというのに今度はチェーンソーとな。だがこんなところに長居はできない。さっさと学校を見回って出よう。
広い校舎が僕の目に映った。コンクリートの校舎に瓦の屋根。奥には黄色い運動場がある。普通なら懐かしい気分になっていいだろうが今はそんな状況では無い。なんだか嫌な予感がする。しかしここまで来たのなら行くしかない。僕は門をよじ登り敷地内に入った。
体育館の扉を開けようとするが鍵がかかってて開かない。
「ここからじゃ開かないか……上から行くか」
1階からの扉は開かないので2階から行くことにした。しかし2回から行くには校舎内に入って行くしかない。ここの校舎は一本道が多く、挟み撃ちになると逃げることが困難だ。しかしここが気になるので危険を承知で行くことにした。
玄関の扉は開いており、中はまだ昼ということもあって明るい。しかし辺りには乾いた血の跡がたくさん付着していた。その光景にゾッとしてしまう。辺りを見てみるがヤツらはいない。というかこの校舎にはヤツらがいない。校舎の外には結構な数のヤツらがいたのだが。何かがここにあるのだろうか。まぁおそらくさっきのチェーンソーの化け物だろうが。
さっきの化け物に会うのも嫌なので校舎の探索は後にして体育館へと向かう。階段を登り、校舎から体育館へと繋ぐ橋を渡る。時々後ろを確認しながら化け物がいないかを確認する。
体育館の扉に着いた。扉を開けようとするがやはり開かない。扉を叩いて中に人がいるかを確認する。
「あのー、誰かいませんかー?」
何も返答がない。いないということのようだ。とりあえず校舎を探索しようと思って後ろを振り向くと後ろから声が聞こえた。
「周りにヤツはいないな?」
若い男の声だった。思わずびっくりして声をあげる。
「周りにヤツはいないかと言ってるんだ」
「え?あ、うん」
思わず適当に返事をしてしまう。ヤツというのはおそらくあのチェーンソーの化け物だろう。そいつなら確かにいない。
「ならいい、入れ」
体育館の扉が開けられた。お言葉に甘えて入るとすぐに体育館の扉が閉められて鍵がかけられた。
扉の方を向くと、黒髪の筋肉質な男が立っていた。
「すぐに開けなくてすまないな。ヤツが居ては困るからね」
男は低い声で話しかけてきた。
「とりあえず下に案内するよ、生存者がいる」
男は着いてきて、といい階段を降りていった。僕も後を追って階段を降りる。階段は前通っていた時よりも汚くなっている。体育祭扉の前まで来た。
「俺だ、入るぞ」
そう言って男は体育館の扉を開けた。
そこには5人ほどの男女がそこら辺で雑魚寝したり座っていたりした。
「おい、健!なんなんだそいつは?」
「生存者だ。さっきここに来た」
「ちっ、連れてくるなよ。俺達の食料が更に減っちまうだろ」
「そんなことを言うなよ」
「でも事実でしょう?」
「そ、そうですよ、ただでさえ食料も少ないのに……」
「おデブちゃんは黙ってな。お前なんて食べなくてもその腹の中のもので耐えれるだろ?」
「な、なんだと」
「喧嘩するなお前ら」
なんか色んな人が話している。多分閉鎖的な空間だからストレスが溜まってるんだろう。
「おい、坊主」
横から座っていた、腕に龍のタトゥーが入っているスキンヘッドの男が話しかけてきた。顔に大きな切り傷が入っており、おそらくヤクザだろう。
「名は?」
「き、如月楓夜です」
「そうか、俺は藤木龍之介(ふじきりゅうのすけ)だ。そんなにビクビクしなくていい。争いごとはしねぇよ」
思ってたより温厚な人でよかった。横に刀が置いてあるから完全に斬られるかと思った。とゆうか今の時代でもヤクザは刀を使っているのかな。
「あぁそうだった俺も名乗るのを忘れていた。俺の名前は相澤健(あいざわけん)健って読んでくれ」
さっきの黒髪の男が名乗ってきた。この人も温厚そうだ。
「ほらお前らも名前くらい言ったらどうだ?」
「はいはい、私は中村優希(なかむらゆうき)、よろしくね」
ここの中で唯一の女性のようだ。スタイルもいい。別に興味はないが。
「ぼ、僕は波北柳瀬(なみきたやなせ)」
ものすごいふくよかな人だ。悪くいうとデブだ。
「やぁ、僕の名前はグラミス・リオネル。アメリカから来たんだ。よろしく」
茶髪の白人の男だ。体格もアメリカ人みたいにでかい。手を出している。握手をして欲しいそうだ。お望みどおり握手する。糸部さんよりかは力を抑えてくれている。
「ほら、お前もしろ」
「……ちっ、柏木金地(かしわぎきんじ)」
金髪の見るからに不良そうな男だ。素行が超悪そうだ。
「すまないな、もともとこういうやつなんだ。許してやってくれ」
「はい」
まぁこういうやつにはあまり関わらない方がいいか。後でどんな目にあうかわからん。とゆうかここには桃はいなかったか。命をかけてまで来たのに無駄足だったな。
来てから数時間たった。健さんは見張りに行っている。健さんは一応ここのリーダー的存在らしい。外は危険だから一時的に匿わせて貰っている。しかし桃のことを考えてしまう。心配だ。無駄だとは思うが一応聞いてみることにした。
「あ、あの?」
「ん?どうしたんだい?」
「もともとここには人探しで来たんですが」
「人探し?どんな子よ」
「蒼木桃っていう子で小さくて、髪を後ろで纏めてる子なんですけど」
「ん~そんな子は知らないね」
「ここに来た女の子は私だけだからね」
「女の子って言える歳かよ」
「何?なんか言った?」
「なんでもねぇよ…」
全員見てないようだ。なんとなく予想はしていたが本当に無駄足だった。
「どうせそんなブス、死んでるか外のヤツらみたいになってるだろ」
「あ?」
金髪がなんか言いやがった。
「んなわけねぇだろ調子に乗るなよクソ金髪」
「あぁ?調子に乗ってるのはてめぇだろ。あとから来やがった癖に偉そうに」
「後先関係ねぇよお前を死体にして外のヤツらに食わしてやろうか?」
「やってみろよ。そしたらてめぇを死体にしてカラスに食わせてやる」
「黙れ餓鬼ども!」
龍之介さんが怒鳴った。
「うるせぇぞ。喧嘩なら外でしろ」
「すみません…」
「すまねぇ…」
クソ金髪がこちらを睨みつけてくる。こちらも睨み返す。こいつは気に食わない。本来なら殴りたいがここで殴りあっても意味がない。
「さ、探しに来たってことはすぐにここをでるつもりなのかい?」
柳瀬さんが聞いてくる。
「まぁそうですね」
「…やった」
柳瀬が小さい声で喜んだ。腹が立つが正直仕方の無いことではある。
「とっととどっかに行っちまえ」
「言わなくても出て行ってやるよ。くたばれクソ金髪」
荷物を全部持つ。こんなところに長居はしたくない。あんなクソ野郎とは話したくもないし、視界に入れたくもない。
「まて坊主」
外に出ようとした時、龍之介さんが止めてきた。
「外はアイツらがウロウロしてる上にあのチェーンソー野郎もいるんだろ?」
「はぁ、さっき来た時はいましたけど」
「なら今外に行くのは危ねぇ。俺も着いてってやる」
「え!?そんな悪いですよ!」
「うるせぇそうしねぇと俺らが見捨てたみたいになるだろうが」
龍之介さんが刀を持って立ち上がる。
「龍之介さん!こんなやつのためにそんなことしなくていいですよ!」
「そ、そうですよ、別に見捨てたっていいじゃないですか」
「そういう訳にはいかねぇんだよ。どんな状況になってもこっちはヤクザっていう肩書きがあんだよ。一般人に危害は加えねぇ。見捨てるってことはそいつを殺してるって言うのと同じだ。そんなことはしねぇ」
普通にいい人だった。人は見た目じゃないって言葉をよく聞くがその言葉が本当なんだと実感した。
「なら僕も行かせて貰うよ。日本のゴクドーというのもかっこいい」
「グラミスさん…」
さっきの外国人の人が散弾銃を持って立ち上がった。この人も同行してくれるようだ。どうやら全員が全員悪い奴では無さそうだ。
「グラミスまで…いいよ、さっさと行っちまえ」
「あぁ行かせてもらう、もともとここの食料も尽きかけてるからな」
「え!?そ、そうなの…」
「俺らに着いてくるかは自由だ。…行くぞお前ら」
そう言って体育館から出ようとした時だった。
「おい!お前らまずいぞ!ヤツらだ!ヤツらが大量に出てきた!」
健さんが大急ぎでこちらに向かってきた。
「まじかよ、この前までいなかったはずだろ?」
「知らねぇよ!とにかくまずい!チェーンソーのヤツも来やがっ…」
健さんの腹からチェーンソーが飛び出してきた。辺り一体に血しぶきが舞った。
「ががががああああああ」
飛び出したチェーンソーはどんどんと上へ移動していき頭を通り抜けて健さんの体を2つに裂けさせた。
「きゃぁぁぁぁ!!」
優希さんが叫ぶ。健さんの後ろにはさっき僕を襲った灰色の大男がいた。
アヒョヒョヒョヒョヒョ!!!
奇声を発しながら両手のチェーンソーを振り回してきた。全員急いで化け物から離れる。それと同時に体育館の扉から大量のヤツらが溢れ出てきた。目視で見ても最低二十体以上はいる。せめて戦おうとポケットから拳銃を取り出す。弾数は10発。どうするかを頭で考える。普通にすればすぐには弾切れになってヤツらの餌となってしまう。かといって何もしなくても死ぬ。なら方法は1つ。逃げること。ヤツらは前の所から出てきたが出口は一つだけではない。横にもいくつかの扉がある。そこからは外に出られる。
大急ぎで横の扉の鍵を開け、外に飛び出した。幸いにも外にはヤツらがあまりいなかった。中にいる他の人達に知らせようとするが
「ぎゃぁぁぁぁやめてぇぇっ!」
優希さんがヤツらに襲われて生きたまま食われている。
「死ね!死ね!死ねぇ!あっ、ごめんなさい!もうしません!もうしません!もうしません!もうしませんからぁ!!」
柳瀬もヤツらに生きたまま食われている。銃で応戦していたようだが弾切れだったところを襲われてダメだった。
「またかよクソっ!」
このままだと糸部さんの時と同じになってしまう。何とかして僕と来てくれようとしていた人達だけでも助けなければ!そう思い、中に入ろうとした時
「まて!楓夜!」
グラミスさんが僕のことをタックルで押し飛ばした。腰から落ちてしまいちょっと動けなくなる。グラミスさんの方向を見る。そこには頭のないグラミスさんが力なく座り込んでいた。
アヒョヒョヒョヒョヒョ!!!
ブィィィィィン………
チェーンソーの化け物がこちらを見て邪悪な笑みを浮かべている。これはまずい。すぐに腰をあげて走り出そうとする。しかし何故か糸部さんと花蓮ちゃんのことを思い出す。あの鉄の尾の化け物にやられた時僕は何もできなかった。何も出来ずに死んでいくのを見るだけだった。またそんなことをするのか。自分のために死んでくれたグラミスさんの仇を取らなくていいのか。そんな心で桃を見つけられるのか。
化け物を見る。チェーンソーを振り上げてこちらに攻撃しようとしている。死にたくはない。グラミスさんが僕のために死んでくれた。その恩を仇で返すことはできない。だからといってこいつから逃げるのは嫌だ。
ブィィィィィン………ブゥゥゥゥン!!
チェーンソーで切りつけてくる。動かなければ頭から真っ二つになる。それを間一髪で避ける。化け物の目を見る。大きく深呼吸をして銃を握りしめる。もう逃げない。逃げる訳にはいかない。
「かかってこいチェーンソー野郎。お前のその自慢チェーンソーをへし折ってやるよ」
続く
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
ill〜怪異特務課事件簿〜
錦木
ホラー
現実の常識が通用しない『怪異』絡みの事件を扱う「怪異特務課」。
ミステリアスで冷徹な捜査官・名護、真面目である事情により怪異と深くつながる体質となってしまった捜査官・戸草。
とある秘密を共有する二人は協力して怪奇事件の捜査を行う。
お客様が不在の為お荷物を持ち帰りました。
鞠目
ホラー
さくら急便のある営業所に、奇妙な配達員にいたずらをされたという不可思議な問い合わせが届く。
最初はいたずら電話と思われていたこの案件だが、同じような問い合わせが複数人から発生し、どうやらいたずら電話ではないことがわかる。
迷惑行為をしているのは運送会社の人間なのか、それとも部外者か? 詳細がわからない状況の中、消息を断つ者が増えていく……
3月24日完結予定
毎日16時ごろに更新します
お越しをお待ちしております

特別。
月芝
ホラー
正義のヒーローに変身して悪と戦う。
一流のスポーツ選手となって活躍する。
ゲームのような異世界で勇者となって魔王と闘う。
すごい発明をして大金持ちになる。
歴史に名を刻むほどの偉人となる。
現実という物語の中で、主人公になる。
自分はみんなとはちがう。
この世に生まれたからには、何かを成し遂げたい。
自分が生きた証が欲しい。
特別な存在になりたい。
特別な存在でありたい。
特別な存在だったらいいな。
そんな願望、誰だって少しは持っているだろう?
でも、もしも本当に自分が世界にとっての「特別」だとしたら……
自宅の地下であるモノを見つけてしまったことを境にして、日常が変貌していく。まるでオセロのように白が黒に、黒が白へと裏返る。
次々と明らかになっていく真実。
特別なボクの心はいつまで耐えられるのだろうか……
伝奇ホラー作品。

鎌倉呪具師の回収録~使霊の箱~
平本りこ
ホラー
――恐ろしきは怨霊か、それとも。
土蔵珠子はある日突然、婚約者と勤め先、住んでいた家を同時に失った。
六年前、母に先立たれた珠子にとって、二度目の大きな裏切りだった。
けれど、悲嘆にくれてばかりもいられない。珠子には頼れる親戚もいないのだ。
住む場所だけはどうにかしなければと思うが、職も保証人もないので物件探しは難航し、なんとか借りることのできたのは、鎌倉にあるおんぼろアパートだ。
いわくつき物件のご多分に漏れず、入居初日の晩、稲光が差し込む窓越しに、珠子は恐ろしいものを見てしまう。
それは、古風な小袖を纏い焼けただれた女性の姿であった。
時を同じくして、呪具師一族の末裔である大江間諭が珠子の部屋の隣に越して来る。
呪具とは、鎌倉時代から続く大江間という一族が神秘の力を織り合わせて作り出した、超常現象を引き起こす道具のことである。
諭は日本中に散らばってしまった危険な呪具を回収するため、怨霊の気配が漂うおんぼろアパートにやってきたのだった。
ひょんなことから、霊を成仏させるために強力することになった珠子と諭。やがて、珠子には、残留思念を読む異能があることがわかる。けれどそれは生まれつきのものではなく、どうやら珠子は後天的に、生身の「呪具」になってしまったようなのだ。
さらに、諭が追っている呪具には珠子の母親の死と関連があることがわかってきて……。
※毎日17:40更新
最終章は3月29日に4エピソード同時更新です
【BIO DEFENSE】 ~終わった世界に作られる都市~
こばん
SF
世界は唐突に終わりを告げる。それはある日突然現れて、平和な日常を過ごす人々に襲い掛かった。それは醜悪な様相に異臭を放ちながら、かつての日常に我が物顔で居座った。
人から人に感染し、感染した人はまだ感染していない人に襲い掛かり、恐るべき加速度で被害は広がって行く。
それに対抗する術は、今は無い。
平和な日常があっという間に非日常の世界に変わり、残った人々は集い、四国でいくつかの都市を形成して反攻の糸口と感染のルーツを探る。
しかしそれに対してか感染者も進化して困難な状況に拍車をかけてくる。
さらにそんな状態のなかでも、権益を求め人の足元をすくうため画策する者、理性をなくし欲望のままに動く者、この状況を利用すらして己の利益のみを求めて動く者らが牙をむき出しにしていきパニックは混迷を極める。
普通の高校生であったカナタもパニックに巻き込まれ、都市の一つに避難した。その都市の守備隊に仲間達と共に入り、第十一番隊として活動していく。様々な人と出会い、別れを繰り返しながら、感染者や都市外の略奪者などと戦い、都市同士の思惑に巻き込まれたりしながら日々を過ごしていた。
そして、やがて一つの真実に辿り着く。
それは大きな選択を迫られるものだった。
bio defence
※物語に出て来るすべての人名及び地名などの固有名詞はすべてフィクションです。作者の頭の中だけに存在するものであり、特定の人物や場所に対して何らかの意味合いを持たせたものではありません。
ゾンビだらけの世界で俺はゾンビのふりをし続ける
気ままに
ホラー
家で寝て起きたらまさかの世界がゾンビパンデミックとなってしまっていた!
しかもセーラー服の可愛い女子高生のゾンビに噛まれてしまう!
もう終わりかと思ったら俺はゾンビになる事はなかった。しかもゾンビに狙われない体質へとなってしまう……これは映画で見た展開と同じじゃないか!
てことで俺は人間に利用されるのは御免被るのでゾンビのフリをして人間の安息の地が完成するまでのんびりと生活させて頂きます。
ネタバレ注意!↓↓
黒藤冬夜は自分を噛んだ知性ある女子高生のゾンビ、特殊体を探すためまず総合病院に向かう。
そこでゾンビとは思えない程の、異常なまでの力を持つ別の特殊体に出会う。
そこの総合病院の地下ではある研究が行われていた……
"P-tB"
人を救う研究のはずがそれは大きな厄災をもたらす事になる……
何故ゾンビが生まれたか……
何故知性あるゾンビが居るのか……
そして何故自分はゾンビにならず、ゾンビに狙われない孤独な存在となってしまったのか……

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる