無職で何が悪い!

アタラクシア

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3章「美しき水の世界」

115話「うねりをあげる水!」

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ウォーターブレイカー水塊!!」
フレイムウェイブ炎上津波

ヘキオンの右手に一瞬で生成される巨大な水の塊。大きさはリングの4分の1を超えるほどの大きさ。

ノノの左腕から膨張する炎。こちらも大きさはリングの4分の1を超えるほど。

2つの相対する力。水と炎。高温の物質と液体がリングの中心で同時にぶつかりあった。


発生したエネルギー。作られた風圧が観客席にまで波打つ。

1歩も引かない水と炎。威力は互角……かのように思われた。


「っっ――!!」

炎が1歩リード。巨大な水の塊を全て蒸発させた。そして奥にいるヘキオンの元へと突き進む。


アクアブレイカーを解除。止まることなく次の行動へと移る。

両手を地面に向け、水を高圧噴射する。体は地面から離れて飛び上がった。下では炎の津波が、ヘキオンの居たところを焼き尽くしている。

「単純な魔法勝負だと分が悪い……」

威力の差は一目瞭然。まともに戦ったら負けるのはヘキオンの方だろう。


ならば搦め手で行くしかない。

水の塊を背後に生成。塊は槍の形へと変化していく。

ウォータースピア水槍!!」

槍は3つ。ノノに狙いを定めた槍が発射された。


ファイア

手から放出されるのは炎。火炎放射器のように飛び出る炎は、向かってくる水の槍を次々と蒸発させる。


空中からノノの周りを旋回するように移動。その間もウォータースピアを撃ち続ける。

向かってくる槍を全て炎で蒸発させる。それも軽々しく。当たり前のように空気ごと焼き尽くしていった。


「鬱陶しい……」

左手を空へとかざす。灼熱の炎は上空で渦を巻き、雲のようにリングの上を覆った。

「――フレイムレイン炎の雨


小さな炎の塊が降り注ぐ。それは名前の通り、まさしく雨。

「熱――熱!?あっちち!!」

素肌を出している腕。皮膚に触れる度に突き刺すような熱さがヘキオンを襲う。

水圧で浮かんでいたが、他のことに気を取られるとバランスが崩れてしまうもの。フラッと地面に叩き落とされてしまう。


その間も降り続ける炎。空からの攻撃に慣れてないヘキオンは反応が遅れてしまう。

ノノは隙を見逃さない。空からの逃げ道を無くした。与える選択肢をできるだけ減らせば、その分相手の行動も制限できる。

フレイムローグ炎渦

リングを囲む炎。辺りを熱が多い、空気を吸うだけで内蔵が焼け焦げそうな程に熱される。


「あちっ、あつ!」

ここまで熱されてはウォーターサーチも使えない。使用すれば一瞬で蒸発してしまうからだ。そうなると必然的にアクアマリンも使用不可となる。

主な目的はこれ。ヘキオンに主導権を握らせない。握られれば勝つのは難しくなる。ノノもヘキオンのことを見くびっているわけではなかった。


ヘキオンの行動をさらに制限する。空、周り。そうと来たら残ってるのはひとつ。

レッドカーペット炎の絨毯

足を前に出す。踏み込んだ地面が赤色に。侵食していくかのようにリングの床を赤一面に染め上げた。


「えっ――あっっつ!!??」

ジュワ。焼ける音。靴を履いていても分かる地面の熱。思わず片足をあげるが、もう片方の足の熱は襲ってくる。

熱から逃げるためにもう片方をあげるが、普通の人間は空中に浮くことは出来ない。必然的にもう片方を下ろす。

そうなるとまた熱は足の裏に……。逃げることはできない。ヘキオンに渡された選択肢は一気に減少した。


「っっ――アクアスラッシュ。水切り!!」

視界にノノを収めたヘキオン。情報過多な脳をすぐに整え、攻撃を放った。

蹴りあげる動作と一緒に、地面を切り裂きながら突き進む水の斬撃。大地に切れ目をつけながらノノへと突進していく。


ウェルダン炎柱

ノノの前に斬撃が到達したその瞬間。地面から天高くに登る炎の柱が出現した。

水の斬撃はたちまち蒸発し、跡形もなく消える。跳ねる水滴もノノに触れることなく消失した。


「はぁはぁ……あつ……」

ダラダラと流れる汗。眼を開けていたらすぐに乾くほどの温度。思考が汗に溶けて零れ落ちてしまいそうな感覚。

ヘキオンは追い詰められていた。誰が見てもわかるとは思うが。


視界も朧気に。じわじわと追い詰めてくる熱。普通の違和感や反応すらも感じるのが遅れてしまう。

「――?」

目をこする。視界の朧気。それが異様に強かった。ギリギリ残っていた意識がそれを違和感と認識した。

「これも……技っ……!!」

降り注ぐ炎の雨。リングを熱する炎の床。そして目の前を阻害する歪みの空気。

腕で額を拭うが、そんな行動は一瞬で無意味となる。すぐに次の汗が供給された。

「――フラーム陽炎

陽炎がヘキオンの視界を歪ませていた。


上には逃げられない。地面に立つこともままならない。外へ行くことも不可。攻撃すれば蒸発させられる。そして魔力は相手の方が上。

圧倒的な格上。見えない威圧はまるで巨人のように大きく、悪魔のように禍々しかった。











続く
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