無職で何が悪い!

アタラクシア

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3章「美しき水の世界」

107話「炎の女王、筋肉の皇帝!」

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リベレイターの登場。真っ平らなリングに足をつける。

「ヘキオン選手とオフィサー選手は凄まじい戦いを見せてくれました!次の2人も面白い戦いを見せてくれるのでしょうか!?」

ヘキオンとオフィサーの戦いからあまり時間も経っていない。観客の興奮が冷めることはなかったようだ。

観客の声にかき消されないほどの大きな音で指を鳴らす。壁のような煙に包まれたリング。

「次に戦ってもらうのはコイツだ!!……重力を無視した重戦車!!炎をかいくぐり……いや、炎を吹き飛ばすことができるのか――」







「――レオン選手!!」

煙から出てきたのはレオン。上半身の服を脱ぎさり、その金剛力士像のような筋肉を観客に見せつける。

熱を持った身体。例えるなら重戦車、それともクリントンと同じ要塞か。浮かび上がる血管はレオンの強さを誇示していた。

「1回戦ではその筋肉で重力を乗り越えることに成功しています。今回の相手は炎。自慢の筋肉は炎をかき消すことができるのか!?」







もうひとつ指を鳴らす。レオンとは反対方向に溢れる煙。白い妖楼はリングを包、その奥の人物を覆い隠していた。

「そんなレオン選手の相手は魔法使い!!氷山すらも蒸発させる勇者パーティの1人!!その炎は筋肉をも焼き尽くすことができるのか――」








「――ノノ選手!!」

煙から出てきたのはノノ。ローブとスカートを風でたなびかせての登場。ふわっとした髪が背中で揺れる。

熱を持った魔力。その火力は現代の火炎放射器など余裕で超えているほどの強さ。炎のように真っ赤な眼は相手の男を映していた。

「1回戦では氷を一瞬で溶かすほどの火力を魅せてくれました!その炎は筋肉に通用するのでしょうか!?」








相も変わらず興奮し続けている観客。筋肉と魔法使いという真逆な2人。どちらが勝つか全く予想がつかない。それが理由の1つだ。

「2回戦最後の戦い。それでは始めます……よぉい――」

レオンの構え。体勢を後ろに。顔と胸の辺りを腕で覆う。防御重視の構えだ。

ノノは無構え。ただし何もする気がない訳では無い。左腕には蛇のような炎を纏う。攻撃態勢。こう見えてレオンとは真逆の構えだ。




「――ファイト!!」

戦いのゴングは鳴らされた。








信じられないことが起きた。レオンが構えを解いたのだ。両手を下に。戦う気が無いかのように脱力している。

「……」

静まり返るコロシアム。さっそくどちらかが攻撃すると思っていたらしい。予想外のことに言葉が出ていない。

ノノも予想外だったようで、あまりの奇妙さに少したじろいでいる。この反応は予想内だったのか。レオンは当たり前かのような顔だ。


ゆっくりとノノに向かって歩き始める。普通よりも遅い速度。1歩1歩を踏みしめているかのように歩く。

よく分からない行動の連発。ノノの思考は情報量の少なさで逆にオーバーヒートした。

腕の炎は行き場を探しているかのように揺れている。その姿はまるで今のノノの姿を表しているかのようだ。

「――どうしたんだ?もしかしてビビっているのか?」

ノノに語りかける。話しかけている間も足は止めない。ゆっくりと、ゆっくりとノノに近づいている。

「……わかったよ。本気だすから死なないでね……!!」


挑発に乗ったノノ。炎を纏った腕を後ろに下げる。赤色の炎は膨張。

フレイムウェイブ炎上津波!!」

莫大な大きさの炎をレオンに叩きつけた。巻き上がる熱風。超高音の塊がレオンに襲いかかる。

普通に喰らったら死にそうな技。ネリオミアの住民は現実の世界の人よりも硬くはあるが、それを加味しても大ダメージは免れないほどの火力。


そんな炎の塊からゆっくりと現れた。皮膚は少し黒ずんでいるが、全然効いてなさそうだ。何事もないかのようにゆっくりとノノに向かって歩く。

冷や汗がポトリ。ノノの頬をするりと伝った。しかし怯むことは無い。また攻撃態勢をとる。


ノノの横に現れる炎の塊。形は球体から星の形へと変わる。

アストラルファイア新星炎花!!」

炎の星はレオンの方へと飛ばされた。もちろんレオンに避ける気配はない。まっすぐと突き進むのみだ。

直撃。同時に爆破が起こる。黒い煙がレオンを覆うように立ち込めた。


その中から出てくるのは無傷のレオン。顔を拭うこともせず、ただひたすら前に前にと突き進んでいた。

「いい熱だ……だが俺のパンプアップした筋肉と比べたら冷たいぐらいだな!!」

強がりではない。本心。誇張はしているだろうが、今のレオンの姿を見ると嘘とも言いきれなさそうだ。











続く
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