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3章「美しき水の世界」
102話「再度始まる戦い!」
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髪を吹き終えたカエデ。牛乳を吹いたタオルを渡すことはできないので、とりあえず横へと置く。
「まさかこんなところで勇者パーティに会えるとは……」
「ここで会ったのも何かの縁。一緒に楽しく観戦させてください」
「もちろんです。……まぁでも私はヘキオンを応援しますけどね!」
「なら私たちは負けないくらいにノノを応援させてもらいますよ!」
――時刻は30分を過ぎた。
「さぁ休憩は終わり。次は2回戦の始まりだァァァァァ!!!」
沸き上がる観客。ひと時の休憩を終えて体力を回復した観客たちのパワーは絶大。コロシアムを振動させるほどの声をあげていた。
「――2回戦が始まるよ!」
「分かってる」
控え室の選手たちも準備万端。やる気も万端だ。
「まずはヘキオンちゃんとオフィサー君か!どっちも頑張ってくれよ!」
「優勝するのは私はですからね!手加減はしませんよ!」
全員闘気が滲み出ている。ここにいる全員は戦いが好きだ。だからこそこんなにもやる気に満ち溢れている。……何人かは金のためでもあるが。
「ルールは1回戦も変わりません。相手を外に落とすか、戦闘不能にさせるだけ。武器の使用以外は何をしてもオーケー!」
ルールは何も変わらない。1回戦以上の戦いを観客たちは望んでいる。選手たちはそれに応えるように、準備体操を始めていた。
「もうこれ以上の解説はいらないでしょう……それではさっそく登場してもらおうか!!」
パチンと指を鳴らす音と共に出現する厚い煙。灰色がかった白の煙がリングに登場した。
「まずはこの人!筋肉の要塞を殴り飛ばした最強の物理魔法少女!可愛い顔には騙されるな――」
「――ヘキオン選手!!」
煙から出てきたのはヘキオン。短くなった髪を風で揺らし、リングの端に仁王立ちをしている。
小動物のような可愛さ。それでいて鬼神の如しパワーをその小さな体に宿している。もうヘキオンを侮る人などいない。
「1回戦で魅せてくれたスピーディな格闘技を今回も見せつけてくれるのか!?――そしてもう1人!!」
もひとつ指をパチンと鳴らす。同じく厚い煙。白い壁がリングに発生する。
「巨人のようなパワーを持った小さな少女をはねっ返したこの男!黒衣に砂を付けられるか――」
「――オフィサー選手!!」
煙から出てきたのはオフィサー。黒衣を風で揺らしながらの登場。やや高めの体格を前へと向ける。
殺し屋のような風貌。それに見合う威圧感。初めからこの男を侮っている者などいない。
「1回戦ではその能力の一端しか見せてくれませんでした!この戦いでは派手な魔法を見せつけてくるのでしょうかぁ!?」
どちらとも準備は終えている。あとは目の前の敵をぶちのめすだけ。勝つか負けるかは後で考えればいい。
自分の闘志を相手にぶつけるのみ。やれることはそれだけだ。
「それでは始めます……よぉい――」
ヘキオンが構える。いつもの前傾姿勢。水を手に纏い、青色の残光を放ちながらオフィサーを睨みつけた。
オフィサーは無構え。ポケットに手を突っ込んだままだ。しかし油断している訳では無い。その証拠に服の上からでも分かるくらいには筋肉にパワーを溜め込んでいる。
「――ファイト!!」
戦いのゴングが鳴った。
地面をぶっ飛ばすほどの縮地。一気にオフィサーの懐に入り込む。
オフィサーはまだ無構え。それに対してヘキオンは殴る準備ができている。ならばどちらの攻撃が先に届くのかは明白。
ここまではロード戦と同じ。ロードもここまでは一緒だった。だがあの謎の花がある。
タネの分かっているものに突っ込むほどヘキオンも単純ではない。念の為の技を用意してある。
フワッと目の前からヘキオンが消えた。その場に残ったのは水。
後ろだ。一瞬の間に後ろに移動していた。腕に水が詰められている。
「アクアマジック――」
予測していたのか、それともただの反射神経か。瞬間移動ともいえる速度で回り込んだヘキオンの方へオフィサーの顔が向いた。
瞳に映るヘキオンの顔。その表情に驚愕の感情は見られなかった。
またヘキオンの体が消える。そこに残っていたのは躍動感を保つ水。踊りのように舞い散った水が地面にビシャりと落ちた。
今度は前に。またもや移動していた。
「――ダブル!!」
二回連続のアクアマジック。二重に重ねられた水の幻影はオフィサーの目を眩ませた。
意識外からの攻撃。対抗する手段はない。確信したヘキオンの拳は真っ直ぐ前に。目の前のオフィサーの腹へと叩きつけられた――。
しかし見破られていた。殴った音は軽く、貫いたと思った拳は力なく花の上に添えられていた。
赤色と黄色が混ざりあった花。ロードの時と同じ花がヘキオンの拳に。鱗粉を巻きながら衝撃の雄叫びを上げていた。
「miaflower」
バチりと雷鳴。来るのは衝撃の波。地震で言うと初期微動。そのすぐあとに来る主要動にヘキオンは備えることしかできなかった。
「っっ――!!」
吹き飛ばされるヘキオン。だがしかしロードの時よりかはその威力は低めだ。
場外までは行かず、その手前の所に着地。見た感じのダメージは無さそうだ。
「与えたダメージじゃなく、衝撃を弾き返すってこと……」
「読み通りだ。さすがだな」
腹部に咲いた花が枯れて朽ちる。
「殴る前に威力を落としただろ。やはり前のガキよりかは圧倒的に楽しめそうだ」
「ふん……偉そうにしてるのも今のうちだよ!」
続く
「まさかこんなところで勇者パーティに会えるとは……」
「ここで会ったのも何かの縁。一緒に楽しく観戦させてください」
「もちろんです。……まぁでも私はヘキオンを応援しますけどね!」
「なら私たちは負けないくらいにノノを応援させてもらいますよ!」
――時刻は30分を過ぎた。
「さぁ休憩は終わり。次は2回戦の始まりだァァァァァ!!!」
沸き上がる観客。ひと時の休憩を終えて体力を回復した観客たちのパワーは絶大。コロシアムを振動させるほどの声をあげていた。
「――2回戦が始まるよ!」
「分かってる」
控え室の選手たちも準備万端。やる気も万端だ。
「まずはヘキオンちゃんとオフィサー君か!どっちも頑張ってくれよ!」
「優勝するのは私はですからね!手加減はしませんよ!」
全員闘気が滲み出ている。ここにいる全員は戦いが好きだ。だからこそこんなにもやる気に満ち溢れている。……何人かは金のためでもあるが。
「ルールは1回戦も変わりません。相手を外に落とすか、戦闘不能にさせるだけ。武器の使用以外は何をしてもオーケー!」
ルールは何も変わらない。1回戦以上の戦いを観客たちは望んでいる。選手たちはそれに応えるように、準備体操を始めていた。
「もうこれ以上の解説はいらないでしょう……それではさっそく登場してもらおうか!!」
パチンと指を鳴らす音と共に出現する厚い煙。灰色がかった白の煙がリングに登場した。
「まずはこの人!筋肉の要塞を殴り飛ばした最強の物理魔法少女!可愛い顔には騙されるな――」
「――ヘキオン選手!!」
煙から出てきたのはヘキオン。短くなった髪を風で揺らし、リングの端に仁王立ちをしている。
小動物のような可愛さ。それでいて鬼神の如しパワーをその小さな体に宿している。もうヘキオンを侮る人などいない。
「1回戦で魅せてくれたスピーディな格闘技を今回も見せつけてくれるのか!?――そしてもう1人!!」
もひとつ指をパチンと鳴らす。同じく厚い煙。白い壁がリングに発生する。
「巨人のようなパワーを持った小さな少女をはねっ返したこの男!黒衣に砂を付けられるか――」
「――オフィサー選手!!」
煙から出てきたのはオフィサー。黒衣を風で揺らしながらの登場。やや高めの体格を前へと向ける。
殺し屋のような風貌。それに見合う威圧感。初めからこの男を侮っている者などいない。
「1回戦ではその能力の一端しか見せてくれませんでした!この戦いでは派手な魔法を見せつけてくるのでしょうかぁ!?」
どちらとも準備は終えている。あとは目の前の敵をぶちのめすだけ。勝つか負けるかは後で考えればいい。
自分の闘志を相手にぶつけるのみ。やれることはそれだけだ。
「それでは始めます……よぉい――」
ヘキオンが構える。いつもの前傾姿勢。水を手に纏い、青色の残光を放ちながらオフィサーを睨みつけた。
オフィサーは無構え。ポケットに手を突っ込んだままだ。しかし油断している訳では無い。その証拠に服の上からでも分かるくらいには筋肉にパワーを溜め込んでいる。
「――ファイト!!」
戦いのゴングが鳴った。
地面をぶっ飛ばすほどの縮地。一気にオフィサーの懐に入り込む。
オフィサーはまだ無構え。それに対してヘキオンは殴る準備ができている。ならばどちらの攻撃が先に届くのかは明白。
ここまではロード戦と同じ。ロードもここまでは一緒だった。だがあの謎の花がある。
タネの分かっているものに突っ込むほどヘキオンも単純ではない。念の為の技を用意してある。
フワッと目の前からヘキオンが消えた。その場に残ったのは水。
後ろだ。一瞬の間に後ろに移動していた。腕に水が詰められている。
「アクアマジック――」
予測していたのか、それともただの反射神経か。瞬間移動ともいえる速度で回り込んだヘキオンの方へオフィサーの顔が向いた。
瞳に映るヘキオンの顔。その表情に驚愕の感情は見られなかった。
またヘキオンの体が消える。そこに残っていたのは躍動感を保つ水。踊りのように舞い散った水が地面にビシャりと落ちた。
今度は前に。またもや移動していた。
「――ダブル!!」
二回連続のアクアマジック。二重に重ねられた水の幻影はオフィサーの目を眩ませた。
意識外からの攻撃。対抗する手段はない。確信したヘキオンの拳は真っ直ぐ前に。目の前のオフィサーの腹へと叩きつけられた――。
しかし見破られていた。殴った音は軽く、貫いたと思った拳は力なく花の上に添えられていた。
赤色と黄色が混ざりあった花。ロードの時と同じ花がヘキオンの拳に。鱗粉を巻きながら衝撃の雄叫びを上げていた。
「miaflower」
バチりと雷鳴。来るのは衝撃の波。地震で言うと初期微動。そのすぐあとに来る主要動にヘキオンは備えることしかできなかった。
「っっ――!!」
吹き飛ばされるヘキオン。だがしかしロードの時よりかはその威力は低めだ。
場外までは行かず、その手前の所に着地。見た感じのダメージは無さそうだ。
「与えたダメージじゃなく、衝撃を弾き返すってこと……」
「読み通りだ。さすがだな」
腹部に咲いた花が枯れて朽ちる。
「殴る前に威力を落としただろ。やはり前のガキよりかは圧倒的に楽しめそうだ」
「ふん……偉そうにしてるのも今のうちだよ!」
続く
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