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3章「美しき水の世界」
100話「戦え、戦士たち!」
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「今までに3回の戦いが終わりました。次は四回目。この戦いで準決勝に進む4人が決まります!」
指を鳴らし、現れた煙から出てくる二人。残っていたのはノノとルネサンスだ。向かいあわせで立ち尽くす。
「ルネサンス選手は予選8位通過!8人の中では最下位ですが、それが強さに直結することはありません……それをここで証明してくれるのかぁぁ!?」
時は夏。この世界日場所によって四季が違うが、時期的には夏の時期。気温も暑い。
そんな時期だというのにルネサンスは白い息を吐いていた。冬の時期に吐くあの白い息。普通なら夏に吐くはずのないあの息を吐いていたのだ。
「そして相手はこの人……予選を1位で通過、魔王を倒す役目を背負った勇者パーティの1人。炎の魔法使いノノだぁぁぁぁぁ!!!」
観客が一気に沸き上がる。会場が揺れるほどの歓声。それを上げさせる程の力をノノは持っていた――。
この世界には魔物と呼ばれる生物がいることはもう知っているだろう。
魔物は自然に発生した訳では無い。ある者によって創り出された。
そう。魔物を作った者。様々な種族に恐れられ、様々な種族に仇を成してきた魔物の王。諸悪の根源。それが「魔王」である。
実際に会ったものは片指で数えられるほどしかおらず、その全容は分かっていない。
ただし伝えられているものがある。それはただひたすらにつよいということ。
全ての生命体の中で1番強い。1番偉い。1番最強。それが魔王なのである。
魔王は不死身である。どんなに傷を負ってもたちまち回復することができる。魔王が最強たる所以のひとつだ。
しかしそんな不死身の体に永続させるダメージを追わせる武器がある。
その名も『聖剣 エクスカリバー』。神の力を纏いし剣。この剣なら闇を纏いし魔王にちゃんとした傷を付けることができる。
しかし1つの欠点。それは選ばれた者にしか扱うことはできないという点。
選ばれてない者が触れると、太陽に触れたかのような熱さを放つ。もちろんそんなものを持つことはできない。
その剣に選ばれた者。つまりは魔王を倒すという使命を持った者。その人物こそが勇者である。
魔王を倒すためのパーティに入っている。ならば弱いわけがない。観客もそのことを理解している。
だからこその歓声。勇者パーティの一角がどれほど強いのかを知ってるからこそ、歓声をあげているのだ。
「一応忠告しておくぜ。勇者パーティの魔法使いさん」
「……なに」
ムスッとしているノノ。ルネサンスは挑発的な笑みを浮かべていた。
「俺はあんたが有名だからって手加減はしないぜ……冒険者の界隈では勇者パーティは嫌われてる。俺もお前らのことは好いてないんでな」
魔王が消えれば魔物も消える。もしくはかなりの数が減る。ならば魔物が絡む仕事の多い冒険者の金が稼げなくなる。
そうなると魔王を倒してほしくない者も多い。勇者パーティを嫌っている者も少数ではない。
「……どうぞご自由に。負けても文句言わないでよね」
「言うじゃねぇか。2秒で終わらせてやるよ」
「じゃあ私は1秒で終わらせてあげる」
ルネサンスの皮膚。白く、蒼く。薄氷が腕に覆われた。
ノノの皮膚。紅く、揺らめく。妖炎が腕に纏われた。
「さぁ1回戦最後の戦い。ここで勝てば2回戦に進む者が全て決まります!!勝つのはルネサンス選手か!?それともノノ選手か!?」
リベレイターが浮かび上がる。どちらも構えてない。動こうともしない。
「よぉい――」
どちらも魔法をメインにして戦うようだ。だったら他の人みたいに構える必要ない。
ただ相手に魔法をぶつけて、場外に落とすだけ。それか叩きのめすだけだ。
「――ファイト!!」
放たれた氷。放たれた炎。ふたつの相反するものがぶつかり合った。
「――全ての試合が終了しました。これから2回戦に進む者の名前を発表しましょう!!」
辺りは暗く。スポットライトがリベレイターに向けられている。
「まずは1人目。筋肉の要塞を殴り飛ばした魔法少女『ヘキオン』!!」
「そして2人目。小さな巨人を弾き返した黒服の男『オフィサー』!!」
「次は3人目。この世の理を殴り倒した男『レオン』!!」
「最後に4人目――」
端的に言おう。戦いは一瞬で終わった。
炎と氷のぶつかり合い。単純な物量差なら氷の方が大きかった。
しかしここはネリオミア。現実世界で正しいことがこの世界でも正しい……とは限らない。
勝ったのはノノ。要因は純粋な魔力の質。物量が大きくても、込められた魔力はノノの方が多かったのだ。
威力で負けた氷は燃やし尽くされ、奥にいたルネサンスを一撃で戦闘不能に追い込んだ。
一瞬の勝負。戦いは1秒で決着が着いた。
「――氷山をすべて溶かし尽くした女『ノノ』!!」
2回戦へと進む4人が決まった。
続く
指を鳴らし、現れた煙から出てくる二人。残っていたのはノノとルネサンスだ。向かいあわせで立ち尽くす。
「ルネサンス選手は予選8位通過!8人の中では最下位ですが、それが強さに直結することはありません……それをここで証明してくれるのかぁぁ!?」
時は夏。この世界日場所によって四季が違うが、時期的には夏の時期。気温も暑い。
そんな時期だというのにルネサンスは白い息を吐いていた。冬の時期に吐くあの白い息。普通なら夏に吐くはずのないあの息を吐いていたのだ。
「そして相手はこの人……予選を1位で通過、魔王を倒す役目を背負った勇者パーティの1人。炎の魔法使いノノだぁぁぁぁぁ!!!」
観客が一気に沸き上がる。会場が揺れるほどの歓声。それを上げさせる程の力をノノは持っていた――。
この世界には魔物と呼ばれる生物がいることはもう知っているだろう。
魔物は自然に発生した訳では無い。ある者によって創り出された。
そう。魔物を作った者。様々な種族に恐れられ、様々な種族に仇を成してきた魔物の王。諸悪の根源。それが「魔王」である。
実際に会ったものは片指で数えられるほどしかおらず、その全容は分かっていない。
ただし伝えられているものがある。それはただひたすらにつよいということ。
全ての生命体の中で1番強い。1番偉い。1番最強。それが魔王なのである。
魔王は不死身である。どんなに傷を負ってもたちまち回復することができる。魔王が最強たる所以のひとつだ。
しかしそんな不死身の体に永続させるダメージを追わせる武器がある。
その名も『聖剣 エクスカリバー』。神の力を纏いし剣。この剣なら闇を纏いし魔王にちゃんとした傷を付けることができる。
しかし1つの欠点。それは選ばれた者にしか扱うことはできないという点。
選ばれてない者が触れると、太陽に触れたかのような熱さを放つ。もちろんそんなものを持つことはできない。
その剣に選ばれた者。つまりは魔王を倒すという使命を持った者。その人物こそが勇者である。
魔王を倒すためのパーティに入っている。ならば弱いわけがない。観客もそのことを理解している。
だからこその歓声。勇者パーティの一角がどれほど強いのかを知ってるからこそ、歓声をあげているのだ。
「一応忠告しておくぜ。勇者パーティの魔法使いさん」
「……なに」
ムスッとしているノノ。ルネサンスは挑発的な笑みを浮かべていた。
「俺はあんたが有名だからって手加減はしないぜ……冒険者の界隈では勇者パーティは嫌われてる。俺もお前らのことは好いてないんでな」
魔王が消えれば魔物も消える。もしくはかなりの数が減る。ならば魔物が絡む仕事の多い冒険者の金が稼げなくなる。
そうなると魔王を倒してほしくない者も多い。勇者パーティを嫌っている者も少数ではない。
「……どうぞご自由に。負けても文句言わないでよね」
「言うじゃねぇか。2秒で終わらせてやるよ」
「じゃあ私は1秒で終わらせてあげる」
ルネサンスの皮膚。白く、蒼く。薄氷が腕に覆われた。
ノノの皮膚。紅く、揺らめく。妖炎が腕に纏われた。
「さぁ1回戦最後の戦い。ここで勝てば2回戦に進む者が全て決まります!!勝つのはルネサンス選手か!?それともノノ選手か!?」
リベレイターが浮かび上がる。どちらも構えてない。動こうともしない。
「よぉい――」
どちらも魔法をメインにして戦うようだ。だったら他の人みたいに構える必要ない。
ただ相手に魔法をぶつけて、場外に落とすだけ。それか叩きのめすだけだ。
「――ファイト!!」
放たれた氷。放たれた炎。ふたつの相反するものがぶつかり合った。
「――全ての試合が終了しました。これから2回戦に進む者の名前を発表しましょう!!」
辺りは暗く。スポットライトがリベレイターに向けられている。
「まずは1人目。筋肉の要塞を殴り飛ばした魔法少女『ヘキオン』!!」
「そして2人目。小さな巨人を弾き返した黒服の男『オフィサー』!!」
「次は3人目。この世の理を殴り倒した男『レオン』!!」
「最後に4人目――」
端的に言おう。戦いは一瞬で終わった。
炎と氷のぶつかり合い。単純な物量差なら氷の方が大きかった。
しかしここはネリオミア。現実世界で正しいことがこの世界でも正しい……とは限らない。
勝ったのはノノ。要因は純粋な魔力の質。物量が大きくても、込められた魔力はノノの方が多かったのだ。
威力で負けた氷は燃やし尽くされ、奥にいたルネサンスを一撃で戦闘不能に追い込んだ。
一瞬の勝負。戦いは1秒で決着が着いた。
「――氷山をすべて溶かし尽くした女『ノノ』!!」
2回戦へと進む4人が決まった。
続く
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