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3章「美しき水の世界」
88話「選手宣誓、選手宣言!」
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――――――――。
「これにて予選は終わり!!今から上位8名を発表します!!」
全ての選手が終わり。コロシアムにいる全ての人が結果に耳をたてていた。
「第8位 ルネサンス選手!! 点数は1821点!!」
立ち上がったのは白いパーカーを着た男。カエデと同じくらいの身長、体格だ。
「第7位 レオン選手!! 点数は1930点!!」
片目の隠れた男。茶色のコートを羽織っている。体格は大きめ。クリントンよりか少し小さいくらいか。
「第6位 チャイルドーム選手!! 点数は1972点!!」
金髪ロングの男。赤いタンクトップを着ているが、なんだかヒョロっとしている。体格も小さい。
「第5位 クリントン選手!! 点数は2435点!!」
立ち上がったクリントン。他の選手と比べてもかなり大きい。なんなら1番大きいだろう。
「第4位 オフィサー選手!! 点数は2504点!!」
同じく立ち上がったのは黒のロングコートを着た男。真っ黒の髪に黒いサングラス。そのおかげで顔の全ては見えない。背は高いが、肩幅は狭い。
「第3位 ロード選手!! 点数は2507点!!」
ロードが立ち上がる。今までの選手と比べても体格はふた周りもさん周りも小さい。それでも出したのは高得点。この世界では見た目で判断してはいけない。
「第2位 ヘキオン選手!! 点数は3445点!!」
次はヘキオン。ロードよりかは大きいが、それでも他と比べて小さい。見た目も強くは見えない。それでも高得点を出している。
ヘキオンが立ち上がった瞬間。コロシアムの歓声は大きくなった。
「応援してるぞーーー!!!」
「頑張って優勝してねぇーー!!!」
「――」
込み上げてくるのは嬉しさ。自分が期待されている。この歓声に答えるために。応援してくれている人に報いるために。
――握りこぶしを空へと掲げた。
「――第1位 ノノ!! 点数は4801点!!」
ゆっくりと立ち上がる女性。勇者パーティの内の一人。魔王を打ち倒し、英雄譚に名前を刻む者だ。
湧き上がる歓声。ヘキオンにあげられていた歓声が全て上書きされる。
ドラムのように体内にまで響く歓声。会場の一体感はピークへ。たった1人に数万の人たちが声を上げていた。
その振動からか。その圧からか。それともただの風か。ヘキオンの髪がふわっと揺れた。
揺れ動く空気。ヘキオンに対抗するため。観客に応えるため。その2つから。その2つからか。
ノノは片腕を空へと掲げた。大きかった歓声がさらに大きく。空間を壊すかの勢いが辺りを揺らした。
挑発するようにヘキオンの方へと顔を向ける。その目は冷たく。蔑むように、煽るかのように。ヘキオンと目を合わせた。
ムッとする。対抗するようにノノを睨みつけるヘキオン。揺れる空気がふたりを分かつ。
「――決勝に進むのはこの8名!!少し準備をしますのでしばらくお待ちください!!決勝に進む選手の方は控え室へ、それ以外の選手の方は出口からお帰りください!!」
補助員の声と同時に動き出す人々。肩を落とすひともいれば、なにやら満足したような顔の人もいる。
悔しいのもあるが、有名人に会えたことが嬉しいのもあるのだろう。それはそれでいいということか。
ヘキオンとロードとクリントン。決勝へと進んだ3人。3人が並んでみると、クリントンだけが場違い感がすごい。子供用のプールにいるお父さんのようだ。……この場合はお母さんか。
「いやぁ!まさか3人ともいけるとは……これは楽しみだね!」
「思ってた以上の強さだなヘキオン。予選では負けたが、次は負けないぞ!」
「……私にも勝ててないのに?」
「決着はついてないからな!!決勝で叩きのめしてやる!!」
「やってみなさいよ~やれるもんならねぇ!」
煽り合う2人。ヘキオンはぼーっとした顔のまま先へ先へと歩いてく。
不思議に思ったふたりが顔を合わせる。やっぱりこの2人実は仲がいいと思うんだが。
「どうしたのヘキオンちゃん。ぼーっとして」
「第2位がそんなに悔しいのか?」
反応無し。そのまま歩き続ける。
「……てい」
「ギュ――」
クリントンのチョップがヘキオンの頭にめり込んだ。軽い掛け声のはずだが、なんか今までに見たことないぐらいに痛がっている。
「――なにするんですか!?」
「ヘキオンが反応しないからだろ」
「脳筋め……」
ズキズキする頭を押さえている。
「どうしたんだ?考えごとか?」
「……あの魔法使いが腹立つ」
「魔法使いってノノ様のこと?腹が立つって……やっぱりヘキオンちゃんヤキモチ焼いてるの?」
「べ、別に……それもあるけど」
「可愛い~!」
ヘキオンの頭を撫でるロード。少しある身長差をつま先立ちで揃えていた。
「――私、あの魔法使いを倒したい!」
グッと力強く拳を握る。覚悟。その2文字が拳に現れている。
「……いい対抗心だねヘキオン。アタシも負けないように頑張るぞ!!」
「どっちみち優勝するにはノノ様に勝つか、ノノ様に勝ったやつに勝たなくちゃならないからね。私も頑張るよ――」
「――ふぅ」
ここは観客席。椅子にもたれかかったカエデは空を眺めていた。
「ちょっとハラハラしたが……ヘキオンが無事決勝に行けてよかったよかった!しっかし勇者パーティも来てたのか。まぁヘキオンなら大丈夫だろ」
満足そうだ。緊張から解放され、だらんととろけている。
見上げる空。青く、蒼く、葵く。吸い込まれそうな程に広く深い空。
「ロード……かぁ。……いつ見ても強いな。あの子は」
そんな空へ。カエデはボソリと呟いた。
続く
「これにて予選は終わり!!今から上位8名を発表します!!」
全ての選手が終わり。コロシアムにいる全ての人が結果に耳をたてていた。
「第8位 ルネサンス選手!! 点数は1821点!!」
立ち上がったのは白いパーカーを着た男。カエデと同じくらいの身長、体格だ。
「第7位 レオン選手!! 点数は1930点!!」
片目の隠れた男。茶色のコートを羽織っている。体格は大きめ。クリントンよりか少し小さいくらいか。
「第6位 チャイルドーム選手!! 点数は1972点!!」
金髪ロングの男。赤いタンクトップを着ているが、なんだかヒョロっとしている。体格も小さい。
「第5位 クリントン選手!! 点数は2435点!!」
立ち上がったクリントン。他の選手と比べてもかなり大きい。なんなら1番大きいだろう。
「第4位 オフィサー選手!! 点数は2504点!!」
同じく立ち上がったのは黒のロングコートを着た男。真っ黒の髪に黒いサングラス。そのおかげで顔の全ては見えない。背は高いが、肩幅は狭い。
「第3位 ロード選手!! 点数は2507点!!」
ロードが立ち上がる。今までの選手と比べても体格はふた周りもさん周りも小さい。それでも出したのは高得点。この世界では見た目で判断してはいけない。
「第2位 ヘキオン選手!! 点数は3445点!!」
次はヘキオン。ロードよりかは大きいが、それでも他と比べて小さい。見た目も強くは見えない。それでも高得点を出している。
ヘキオンが立ち上がった瞬間。コロシアムの歓声は大きくなった。
「応援してるぞーーー!!!」
「頑張って優勝してねぇーー!!!」
「――」
込み上げてくるのは嬉しさ。自分が期待されている。この歓声に答えるために。応援してくれている人に報いるために。
――握りこぶしを空へと掲げた。
「――第1位 ノノ!! 点数は4801点!!」
ゆっくりと立ち上がる女性。勇者パーティの内の一人。魔王を打ち倒し、英雄譚に名前を刻む者だ。
湧き上がる歓声。ヘキオンにあげられていた歓声が全て上書きされる。
ドラムのように体内にまで響く歓声。会場の一体感はピークへ。たった1人に数万の人たちが声を上げていた。
その振動からか。その圧からか。それともただの風か。ヘキオンの髪がふわっと揺れた。
揺れ動く空気。ヘキオンに対抗するため。観客に応えるため。その2つから。その2つからか。
ノノは片腕を空へと掲げた。大きかった歓声がさらに大きく。空間を壊すかの勢いが辺りを揺らした。
挑発するようにヘキオンの方へと顔を向ける。その目は冷たく。蔑むように、煽るかのように。ヘキオンと目を合わせた。
ムッとする。対抗するようにノノを睨みつけるヘキオン。揺れる空気がふたりを分かつ。
「――決勝に進むのはこの8名!!少し準備をしますのでしばらくお待ちください!!決勝に進む選手の方は控え室へ、それ以外の選手の方は出口からお帰りください!!」
補助員の声と同時に動き出す人々。肩を落とすひともいれば、なにやら満足したような顔の人もいる。
悔しいのもあるが、有名人に会えたことが嬉しいのもあるのだろう。それはそれでいいということか。
ヘキオンとロードとクリントン。決勝へと進んだ3人。3人が並んでみると、クリントンだけが場違い感がすごい。子供用のプールにいるお父さんのようだ。……この場合はお母さんか。
「いやぁ!まさか3人ともいけるとは……これは楽しみだね!」
「思ってた以上の強さだなヘキオン。予選では負けたが、次は負けないぞ!」
「……私にも勝ててないのに?」
「決着はついてないからな!!決勝で叩きのめしてやる!!」
「やってみなさいよ~やれるもんならねぇ!」
煽り合う2人。ヘキオンはぼーっとした顔のまま先へ先へと歩いてく。
不思議に思ったふたりが顔を合わせる。やっぱりこの2人実は仲がいいと思うんだが。
「どうしたのヘキオンちゃん。ぼーっとして」
「第2位がそんなに悔しいのか?」
反応無し。そのまま歩き続ける。
「……てい」
「ギュ――」
クリントンのチョップがヘキオンの頭にめり込んだ。軽い掛け声のはずだが、なんか今までに見たことないぐらいに痛がっている。
「――なにするんですか!?」
「ヘキオンが反応しないからだろ」
「脳筋め……」
ズキズキする頭を押さえている。
「どうしたんだ?考えごとか?」
「……あの魔法使いが腹立つ」
「魔法使いってノノ様のこと?腹が立つって……やっぱりヘキオンちゃんヤキモチ焼いてるの?」
「べ、別に……それもあるけど」
「可愛い~!」
ヘキオンの頭を撫でるロード。少しある身長差をつま先立ちで揃えていた。
「――私、あの魔法使いを倒したい!」
グッと力強く拳を握る。覚悟。その2文字が拳に現れている。
「……いい対抗心だねヘキオン。アタシも負けないように頑張るぞ!!」
「どっちみち優勝するにはノノ様に勝つか、ノノ様に勝ったやつに勝たなくちゃならないからね。私も頑張るよ――」
「――ふぅ」
ここは観客席。椅子にもたれかかったカエデは空を眺めていた。
「ちょっとハラハラしたが……ヘキオンが無事決勝に行けてよかったよかった!しっかし勇者パーティも来てたのか。まぁヘキオンなら大丈夫だろ」
満足そうだ。緊張から解放され、だらんととろけている。
見上げる空。青く、蒼く、葵く。吸い込まれそうな程に広く深い空。
「ロード……かぁ。……いつ見ても強いな。あの子は」
そんな空へ。カエデはボソリと呟いた。
続く
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