82 / 117
3章「美しき水の世界」
82話「勝利宣言を上げろ!」
しおりを挟む
ポカンとする2人を持ち上げ、椅子にドカンと座らせる。
「へいお兄ちゃん!!ワインを樽で持ってこーーい!!」
「こっちにはジュースを!!」
「毎度あり!!」
店員っぽい人が店の奥へ。1秒も経たずに樽を持った人が出てきた。
「ちょ……あの……」
「ほらほらお嬢ちゃん飲みな飲みな~。ワインはもう少し大人になってからな。ジュースをたくさん飲ませて上げるよ~」
「兄ちゃんも飲みなぁ。俺とワインの飲みあいをしようぜぇ!!」
「いやあの俺まだ17……」
「関係ねぇ関係ねぇ!!バレなきゃ犯罪にはなんねぇよ!!」
雰囲気に押し負けている2人。下手したらスタートタウンのギルドよりも騒がしい。もうわちゃわちゃしてる。
「すごく強ぇなお嬢ちゃん。あたしびっくりしちまったよ」
ヘキオンの前に豪快に座る女。さっきの威圧感はどこへ。とても親しげに話しかけてきた。
「そ、そうですかね……」
「私のパンチをまともに避けたのはお前が初めてだよ!お腹空いてんだろ?――おい兄ちゃん!この店で1番美味しいものをこの子に!」
「はいさいまいどー!」
樽を横に置いた店員がまた店の奥へと走っていった。
「お嬢ちゃん名前は?」
「ヘキオンです」
「いい名前だ!あたしはクリントン!よろしくな!」
「――はい!」
ジョッキに入ったワインをグイッと喉の奥へと流し込む。その豪快な飲みっぷり。ヘキオンはちょっと憧れるかのような目線をクリントンへ送っている。
「というかお嬢ちゃんほんとうに魔法使いなのか?」
「本当ですよ」
「……あんな強い蹴りをしてくるやつが魔法使いとは思えないが」
ガッチガチのクリントンが言うのだ。嘘ではないはず。
「しっかしすごいな。そんな華奢な体のどこにパワーがあるんだ?びっくりしたぞ私」
「えへへ……」
顔を赤くして頭を搔く。嬉しそうだ。
ワイワイガヤガヤ。
騒がしくも楽しそうな空間。ヘキオンもテンションが上がってきている。
「――なぁヘキオン」
ヘキオンと肩を組んでいるクリントンが目の前に紙を差し出した。
黄ばんでいる古めの紙。筆で書かれたその文字は紙に大々的にこう書かれてあった。
『賞金100万!! ブフィック闘技大会!!』
場所はベネッチアのコロシアム。優勝賞金はそのまま100万円。
「これは……」
「明日コロシアムで闘技大会があるんだ。ヘキオンも出てみない?」
「……へぇ」
目がキラキラと光り出す。今日だけでだいぶお金を使っている。賞金100万。これはヘキオンにとって眉唾物だ。欲しいという感情が喉から溢れかけている。
「男女関係の無い闘技大会。遠慮なく存分に楽しめるぞ!」
「――いいね。いいね!楽しそう!」
「……今日のヤツは本気じゃなかっただろ?少なくとも私は本気じゃないぞ」
「もちろん!まだまだ本気じゃないよ!」
「なら明日。次は本気で戦いあおう……!」
親しげな雰囲気から一転。さっきの威圧感を出していた時と同じ。強そうなオーラが体からだしている。
「うんうん!絶対負けないよ!」
それに答えるように。ヘキオンは強く反応した。瞳には闘志が宿っている。
嬉しそうな表情を浮かべるクリントン。たっぷり注がれたワインを一口で飲み干す。
「――おいおい!明日は姉さんが優勝するに決まってんだろ!」
「わわ!?」
ヘキオンの頭を後ろからワシャワシャと撫で回す。出てきたのはこれまたガチガチの女の人。クリントンよりかは小さいが、ヘキオンからしたらカエデと同じくらいには大きい。
「こらこらやめなさい。言ってることは間違いではないけどな――」
「いや!私が優勝します!」
「――言うじゃねぇか!!そういう子は大好きだぜぇ!!」
周りから担ぎあげられている。
「ふぁ!?えっあっ!?」
突然の出来事で焦っている。そんなものはお構い無し。
「明日が楽しみだな!!絶対あたしが勝ってやるからな!!」
ヘキオンの下で叫ぶクリントン。それどころではなさそうなヘキオンであったが、その声に反応した。
「――私が優勝するもん!!絶対買って100万を獲ってやる!!」
「うーん……」
「お兄ちゃん弱いなぁ!そんなんだからあのヘキオンって子の尻に敷かれるんだぜ!」
「敷かれてなぁい……」
ワインを飲まされまくったカエデは机に倒れているのだった。
続く
「へいお兄ちゃん!!ワインを樽で持ってこーーい!!」
「こっちにはジュースを!!」
「毎度あり!!」
店員っぽい人が店の奥へ。1秒も経たずに樽を持った人が出てきた。
「ちょ……あの……」
「ほらほらお嬢ちゃん飲みな飲みな~。ワインはもう少し大人になってからな。ジュースをたくさん飲ませて上げるよ~」
「兄ちゃんも飲みなぁ。俺とワインの飲みあいをしようぜぇ!!」
「いやあの俺まだ17……」
「関係ねぇ関係ねぇ!!バレなきゃ犯罪にはなんねぇよ!!」
雰囲気に押し負けている2人。下手したらスタートタウンのギルドよりも騒がしい。もうわちゃわちゃしてる。
「すごく強ぇなお嬢ちゃん。あたしびっくりしちまったよ」
ヘキオンの前に豪快に座る女。さっきの威圧感はどこへ。とても親しげに話しかけてきた。
「そ、そうですかね……」
「私のパンチをまともに避けたのはお前が初めてだよ!お腹空いてんだろ?――おい兄ちゃん!この店で1番美味しいものをこの子に!」
「はいさいまいどー!」
樽を横に置いた店員がまた店の奥へと走っていった。
「お嬢ちゃん名前は?」
「ヘキオンです」
「いい名前だ!あたしはクリントン!よろしくな!」
「――はい!」
ジョッキに入ったワインをグイッと喉の奥へと流し込む。その豪快な飲みっぷり。ヘキオンはちょっと憧れるかのような目線をクリントンへ送っている。
「というかお嬢ちゃんほんとうに魔法使いなのか?」
「本当ですよ」
「……あんな強い蹴りをしてくるやつが魔法使いとは思えないが」
ガッチガチのクリントンが言うのだ。嘘ではないはず。
「しっかしすごいな。そんな華奢な体のどこにパワーがあるんだ?びっくりしたぞ私」
「えへへ……」
顔を赤くして頭を搔く。嬉しそうだ。
ワイワイガヤガヤ。
騒がしくも楽しそうな空間。ヘキオンもテンションが上がってきている。
「――なぁヘキオン」
ヘキオンと肩を組んでいるクリントンが目の前に紙を差し出した。
黄ばんでいる古めの紙。筆で書かれたその文字は紙に大々的にこう書かれてあった。
『賞金100万!! ブフィック闘技大会!!』
場所はベネッチアのコロシアム。優勝賞金はそのまま100万円。
「これは……」
「明日コロシアムで闘技大会があるんだ。ヘキオンも出てみない?」
「……へぇ」
目がキラキラと光り出す。今日だけでだいぶお金を使っている。賞金100万。これはヘキオンにとって眉唾物だ。欲しいという感情が喉から溢れかけている。
「男女関係の無い闘技大会。遠慮なく存分に楽しめるぞ!」
「――いいね。いいね!楽しそう!」
「……今日のヤツは本気じゃなかっただろ?少なくとも私は本気じゃないぞ」
「もちろん!まだまだ本気じゃないよ!」
「なら明日。次は本気で戦いあおう……!」
親しげな雰囲気から一転。さっきの威圧感を出していた時と同じ。強そうなオーラが体からだしている。
「うんうん!絶対負けないよ!」
それに答えるように。ヘキオンは強く反応した。瞳には闘志が宿っている。
嬉しそうな表情を浮かべるクリントン。たっぷり注がれたワインを一口で飲み干す。
「――おいおい!明日は姉さんが優勝するに決まってんだろ!」
「わわ!?」
ヘキオンの頭を後ろからワシャワシャと撫で回す。出てきたのはこれまたガチガチの女の人。クリントンよりかは小さいが、ヘキオンからしたらカエデと同じくらいには大きい。
「こらこらやめなさい。言ってることは間違いではないけどな――」
「いや!私が優勝します!」
「――言うじゃねぇか!!そういう子は大好きだぜぇ!!」
周りから担ぎあげられている。
「ふぁ!?えっあっ!?」
突然の出来事で焦っている。そんなものはお構い無し。
「明日が楽しみだな!!絶対あたしが勝ってやるからな!!」
ヘキオンの下で叫ぶクリントン。それどころではなさそうなヘキオンであったが、その声に反応した。
「――私が優勝するもん!!絶対買って100万を獲ってやる!!」
「うーん……」
「お兄ちゃん弱いなぁ!そんなんだからあのヘキオンって子の尻に敷かれるんだぜ!」
「敷かれてなぁい……」
ワインを飲まされまくったカエデは机に倒れているのだった。
続く
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」
婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。
もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。
……え? いまさら何ですか? 殿下。
そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね?
もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。
だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。
これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。
※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。
他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜
むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。
幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。
そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。
故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。
自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。
だが、エアルは知らない。
ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。
遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。
これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」

【完結】契約結婚は円満に終了しました ~勘違い令嬢はお花屋さんを始めたい~
九條葉月
ファンタジー
【ファンタジー1位獲得!】
【HOTランキング1位獲得!】
とある公爵との契約結婚を無事に終えたシャーロットは、夢だったお花屋さんを始めるための準備に取りかかる。
花を包むビニールがなければ似たような素材を求めてダンジョンに潜り、吸水スポンジ代わりにスライムを捕まえたり……。そうして準備を進めているのに、なぜか店の実態はお花屋さんからかけ離れていって――?
大好きなあなたを忘れる方法
山田ランチ
恋愛
あらすじ
王子と婚約関係にある侯爵令嬢のメリベルは、訳あってずっと秘密の婚約者のままにされていた。学園へ入学してすぐ、メリベルの魔廻が(魔術を使う為の魔素を貯めておく器官)が限界を向かえようとしている事に気が付いた大魔術師は、魔廻を小さくする事を提案する。その方法は、魔素が好むという悲しい記憶を失くしていくものだった。悲しい記憶を引っ張り出しては消していくという日々を過ごすうち、徐々に王子との記憶を失くしていくメリベル。そんな中、魔廻を奪う謎の者達に大魔術師とメリベルが襲われてしまう。
魔廻を奪おうとする者達は何者なのか。王子との婚約が隠されている訳と、重大な秘密を抱える大魔術師の正体が、メリベルの記憶に導かれ、やがて世界の始まりへと繋がっていく。
登場人物
・メリベル・アークトュラス 17歳、アークトゥラス侯爵の一人娘。ジャスパーの婚約者。
・ジャスパー・オリオン 17歳、第一王子。メリベルの婚約者。
・イーライ 学園の園芸員。
クレイシー・クレリック 17歳、クレリック侯爵の一人娘。
・リーヴァイ・ブルーマー 18歳、ブルーマー子爵家の嫡男でジャスパーの側近。
・アイザック・スチュアート 17歳、スチュアート侯爵の嫡男でジャスパーの側近。
・ノア・ワード 18歳、ワード騎士団長の息子でジャスパーの従騎士。
・シア・ガイザー 17歳、ガイザー男爵の娘でメリベルの友人。
・マイロ 17歳、メリベルの友人。
魔素→世界に漂っている物質。触れれば精神を侵され、生き物は主に凶暴化し魔獣となる。
魔廻→体内にある魔廻(まかい)と呼ばれる器官、魔素を取り込み貯める事が出来る。魔術師はこの器官がある事が必須。
ソル神とルナ神→太陽と月の男女神が魔素で満ちた混沌の大地に現れ、世界を二つに分けて浄化した。ソル神は昼間を、ルナ神は夜を受け持った。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる