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3章「美しき水の世界」
77話「食事時!」
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2人は外へ。ヘキオンがさっきまで行こうとしていた店へと行くことにした。
ロードの後ろに隠れるようにして歩く。
「もっと前に出て歩けばいいのに」
「だって恥ずかしいし……スカートとか履くの久しぶりなんだよ……」
「見られても恥ずかしくないためのドレスでしょ。汚いよりかはいいじゃない」
「……うん」
ロードの腕をキュッと抱きしめる。言われてもやっぱり恥ずかしいものは恥ずかしいよう。鬱陶しそうな顔になる。でも特に振りほどいたりはしていない。
「行こうとしていたお店ってどこ?」
指を指す。さっき来たあの店だ。お昼時だが特に混んではいない。ガラス越しから見える限りはまだ空いている。
「へぇ~。良い目してるね。あそこのイカ墨パスタがとっても美味しいんだよ」
「そうなの?……でも今は貝類の気分」
「じゃあイカ墨パスタと貝類のやつの二つ食べよ!」
「私そんなに食べられないよ~」
こう見るもカップルみたいだ。片方が男だったならカエデが黙っていないだろう。この映像を見せて反応を見てみたいものだ
開かれる扉。高級な店の扉は重いというのが相場だが、ここの扉はスっと開けることができた。
香るのは魚介類の美味しそうな匂い。デザートの甘い匂い。流れる歌が静かな店内をゆっくりと雰囲気で飲み込んでいる。
「いらっしゃいませ」
入った目の前にあるカウンター。タキシードを着たおじさんが頭を下げる。
「二名で。予約してないけど大丈夫ですか?」
「はい。では、こちらへ」
ブティックの店員と同じようなセリフ。高いところの店はだいたいこんなことを言うのか。
そんなことを考えながらヘキオンとロードは案内された机まで歩いていく。
「――」
ヘキオンがメニュー表を見つめている。開いた口が塞がらない。ポカーと口を開けてそのメニューを見ていた。
クァドラフェラット 10000円。
トマトとテネータのリゾット 17800円。
アシダのマリネ 14000円。
フェルマッチ 21000円。
レッドマーチのロック 30000円。
高い。その一言に尽きる。写真がないのが想像力を掻き立てる。が、高すぎで想像力が発揮されてない。
ヘキオンの残り所持金額は15000円。そりゃあ食べられないこともないが、それにしても高すぎる。
「ヘキオンちゃんどれにするの?」
窓際の丸いテーブル。その反対にいるロード。色々と驚いてるヘキオンを面白そうに見つめていた。
「……名前だけじゃわかんないよ。しかもすごく高い……」
「ヘキオンちゃんこんなところ来なさそうだしねー」
「くぁどらふぇらっと?とか聞いたこともないよ……」
「エスターとモッツァレラエッグを混ぜて一緒に揚げたベネッチアの伝統的な料理だよ」
「ごめん。知らない単語の作り方を知らない単語で話されてもわかんない」
クスッと笑う。
「まぁヘキオンちゃんが食べたがってたやつは……これだね。ムール貝とプレイ貝のクリームパスタ」
「12000円かぁ。じゃあこれにする」
「私もそうしようかな」
「じゃあ店員さん呼ぶね――」
「待って待って待って。こういう店にはマナーがあるんだよ。ちょっと見ててね」
近くにいるウェイターに目を合わせる。
ここで簡単なマナー講座。
高級料理店で店員を呼ぶ時はアイコンタクトをしよう。それで気が付かれなかったら人差し指を上げる。それでも気が付かれなかったら手を上げよう。声を出すのは最後の手段。
みんなも高級料理店に行った時はマナーに気おつけようね。
気がついたウェイターがテーブルの方へ。
「ご注文は」
「ムール貝とプレイ貝のクリームパスタを二つ」
「食後のデザートはいかがでしょうか」
「オーロラスープを。ヘキオンちゃんは?」
「えっ……じゃあ私も同じのを」
「かしこまりました」
「――ねぇ。ロードちゃん」
食事が運ばれてくるのには時間がかかる。暇な時間。気になることはたくさんある。聞きたいこともたくさんある。
深刻そうではない。ただ普通に。ヘキオンは気になったことを聞いた。
「なんでカエデはロードちゃんから逃げてるの?」
「……思い当たる節はあるけど、実際のところは知らない」
「思い当たる節って?」
「んー。結構あるんだけどね。まぁしいてあげるとしたら――」
「多分カエデ、私のこと見殺しにしたと思ってるから」
「――ふぇ?」
続く
ロードの後ろに隠れるようにして歩く。
「もっと前に出て歩けばいいのに」
「だって恥ずかしいし……スカートとか履くの久しぶりなんだよ……」
「見られても恥ずかしくないためのドレスでしょ。汚いよりかはいいじゃない」
「……うん」
ロードの腕をキュッと抱きしめる。言われてもやっぱり恥ずかしいものは恥ずかしいよう。鬱陶しそうな顔になる。でも特に振りほどいたりはしていない。
「行こうとしていたお店ってどこ?」
指を指す。さっき来たあの店だ。お昼時だが特に混んではいない。ガラス越しから見える限りはまだ空いている。
「へぇ~。良い目してるね。あそこのイカ墨パスタがとっても美味しいんだよ」
「そうなの?……でも今は貝類の気分」
「じゃあイカ墨パスタと貝類のやつの二つ食べよ!」
「私そんなに食べられないよ~」
こう見るもカップルみたいだ。片方が男だったならカエデが黙っていないだろう。この映像を見せて反応を見てみたいものだ
開かれる扉。高級な店の扉は重いというのが相場だが、ここの扉はスっと開けることができた。
香るのは魚介類の美味しそうな匂い。デザートの甘い匂い。流れる歌が静かな店内をゆっくりと雰囲気で飲み込んでいる。
「いらっしゃいませ」
入った目の前にあるカウンター。タキシードを着たおじさんが頭を下げる。
「二名で。予約してないけど大丈夫ですか?」
「はい。では、こちらへ」
ブティックの店員と同じようなセリフ。高いところの店はだいたいこんなことを言うのか。
そんなことを考えながらヘキオンとロードは案内された机まで歩いていく。
「――」
ヘキオンがメニュー表を見つめている。開いた口が塞がらない。ポカーと口を開けてそのメニューを見ていた。
クァドラフェラット 10000円。
トマトとテネータのリゾット 17800円。
アシダのマリネ 14000円。
フェルマッチ 21000円。
レッドマーチのロック 30000円。
高い。その一言に尽きる。写真がないのが想像力を掻き立てる。が、高すぎで想像力が発揮されてない。
ヘキオンの残り所持金額は15000円。そりゃあ食べられないこともないが、それにしても高すぎる。
「ヘキオンちゃんどれにするの?」
窓際の丸いテーブル。その反対にいるロード。色々と驚いてるヘキオンを面白そうに見つめていた。
「……名前だけじゃわかんないよ。しかもすごく高い……」
「ヘキオンちゃんこんなところ来なさそうだしねー」
「くぁどらふぇらっと?とか聞いたこともないよ……」
「エスターとモッツァレラエッグを混ぜて一緒に揚げたベネッチアの伝統的な料理だよ」
「ごめん。知らない単語の作り方を知らない単語で話されてもわかんない」
クスッと笑う。
「まぁヘキオンちゃんが食べたがってたやつは……これだね。ムール貝とプレイ貝のクリームパスタ」
「12000円かぁ。じゃあこれにする」
「私もそうしようかな」
「じゃあ店員さん呼ぶね――」
「待って待って待って。こういう店にはマナーがあるんだよ。ちょっと見ててね」
近くにいるウェイターに目を合わせる。
ここで簡単なマナー講座。
高級料理店で店員を呼ぶ時はアイコンタクトをしよう。それで気が付かれなかったら人差し指を上げる。それでも気が付かれなかったら手を上げよう。声を出すのは最後の手段。
みんなも高級料理店に行った時はマナーに気おつけようね。
気がついたウェイターがテーブルの方へ。
「ご注文は」
「ムール貝とプレイ貝のクリームパスタを二つ」
「食後のデザートはいかがでしょうか」
「オーロラスープを。ヘキオンちゃんは?」
「えっ……じゃあ私も同じのを」
「かしこまりました」
「――ねぇ。ロードちゃん」
食事が運ばれてくるのには時間がかかる。暇な時間。気になることはたくさんある。聞きたいこともたくさんある。
深刻そうではない。ただ普通に。ヘキオンは気になったことを聞いた。
「なんでカエデはロードちゃんから逃げてるの?」
「……思い当たる節はあるけど、実際のところは知らない」
「思い当たる節って?」
「んー。結構あるんだけどね。まぁしいてあげるとしたら――」
「多分カエデ、私のこと見殺しにしたと思ってるから」
「――ふぇ?」
続く
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