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3章「美しき水の世界」
70話「リスキル!」
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――――――。
「――グルル……ちゃん……」
目を覚ました。優しい陽光がヘキオンを暖める。窓の外はガヤガヤと人の声が重なり合っていた。
布団をのけて起き上がる。いつもの服ではなく、真っ白の病人が着る服に着替えさせられていた。
「……ここは?」
クリスタリアンの村から気絶していたので、突如変わった景色に動揺が隠せないでいた。
木の床、木の壁、木の天井。先程まで岩石だらけの場所だったのが、自然な人の家に変わっていたのだ。
「……?」
近く。毛布を被って眠っている男が1人。カエデだ。疲れているのか、スヤスヤと眠っている。
「……カエデさん」
その時、ヘキオンは理解した。クリスタリアンに捕まった自分を助けてくれたのはカエデだということに。
カエデは床。ベットにいるヘキオンでは手が届かない。
「……また……助けられちゃったなぁ」
悲しそうに、哀しむように。ヘキオンはそう呟いた。
ガチャりと開くドア。中に入ってくるのは20代後半くらいの女性だ。
「――あら、起きたの?」
女性にしては低い声。髪は紫で肩にかかるくらいの長さ。端正な顔立ちでモテそうだ。
近くにあった椅子をヘキオンのベットの近くへ置き、そこへ座った。
「調子は?痛いところはない?」
「は、はい」
「あなた危なかったのよ。あともう少しで死んでたかも」
「ははは……なんか前にも聞いた気がする」
気まずそうに外へと視線を移す。
「無茶をするのが冒険者の性なんでしょう。まったく馬鹿なヤツらよ」
「ごめんなさいぃ……」
「いいのよ。あなたみたいなのを何人治してきたと思ってんの」
面倒くさそうな話し方。でもどこか優しさが含まれている。
「そうそう。そこで寝ているヤツに感謝しときなさいよ。あなたをここまで運んできて、看病していてくれてたし」
「そうなんですか……」
「あなたのことを大事に思ってくれてるみたいよ。よかったわね」
寝息も立てずに眠っているカエデ。
「どういう関係なの?」
「一緒に旅をしてるんです。カエデさんは仲間であり、恩人であり、師匠でもあるんです!」
「……へぇ」
ニマニマしている。
「好きな人……とかではないの?」
「好きですよ!優しい人だし……強いし!」
「……その好きって言うのは……人として?恋愛面として?」
「うーん……人としてですね。私あんまり恋愛とか分かんないし」
ヘキオンの性格からしたら納得だ。あんまり恋愛に興味無さそうな感じはする。
「……こりゃ、落とすのも大変だろうね」
「何か言いました?」
「なにも」
ヘキオンの服をペロッとめくる。傷一つない綺麗なお腹。
「うん。傷もない。できていた青アザも全部消えてるね」
突然めくられたのが恥ずかしかったのか、顔を赤くしてモジモジしている。
「……それにしても綺麗な体してるわね」
「そうですか?なんか恥ずかしい……」
引き締まった腹筋。それでいて柔らかそうな感じも含んでいる。確かに綺麗だ。動きまくっているからだろうか。
「――ヘキオン!」
寝ていたカエデがバッと起きた。静かに眠っていたのが嘘のようにアクティビティだ。
そのままバッとヘキオンの方へと顔を向ける。スピーディに。ただひたすらヘキオンのことが心配だったから。できるだけ速くヘキオンの無事を確認したかったから。
カエデの目に映ったのはヘキオンのお腹。綺麗なお腹。あれだけ動き回っているヘキオンだが、お腹とかの隠れている肌は白い。ちょっと見えている鼠径部がとてもセクシーだ。
「ブッッ――」
倒れた。鼻血を出して地面にバタリと倒れた。入ってきた情報量は別に多くない。ただその内容が死ぬほど濃かった。
顔は安らかに。悔いなどないかのような顔で気絶している。流れる鼻血は下へと流れていった。
「――え?ちょ、ちょっと、カエデさん?カエデさん!?」
ビビり散らかすヘキオン。起きたと思ったら血を流して死んだ。普通はビビる。
「はぁ……まだまだ子供ね」
小馬鹿にするような笑みを浮かべるナース。これが大人の余裕というものだろう。
「ごめん。ちょっと暑かったから……」
「そ、そうですか?ここ割と涼しいと思うんですけど」
ヒールをかけてもらったカエデ。一応死にかけからは回復したようだ。
「馬鹿なことにヒール使わせないでね」
「……ごめんなさい」
素直。どれだけ強くても素直さは大事だ。まぁカエデが全面的に悪いので仕方ないことではあるのだが。
続く
「――グルル……ちゃん……」
目を覚ました。優しい陽光がヘキオンを暖める。窓の外はガヤガヤと人の声が重なり合っていた。
布団をのけて起き上がる。いつもの服ではなく、真っ白の病人が着る服に着替えさせられていた。
「……ここは?」
クリスタリアンの村から気絶していたので、突如変わった景色に動揺が隠せないでいた。
木の床、木の壁、木の天井。先程まで岩石だらけの場所だったのが、自然な人の家に変わっていたのだ。
「……?」
近く。毛布を被って眠っている男が1人。カエデだ。疲れているのか、スヤスヤと眠っている。
「……カエデさん」
その時、ヘキオンは理解した。クリスタリアンに捕まった自分を助けてくれたのはカエデだということに。
カエデは床。ベットにいるヘキオンでは手が届かない。
「……また……助けられちゃったなぁ」
悲しそうに、哀しむように。ヘキオンはそう呟いた。
ガチャりと開くドア。中に入ってくるのは20代後半くらいの女性だ。
「――あら、起きたの?」
女性にしては低い声。髪は紫で肩にかかるくらいの長さ。端正な顔立ちでモテそうだ。
近くにあった椅子をヘキオンのベットの近くへ置き、そこへ座った。
「調子は?痛いところはない?」
「は、はい」
「あなた危なかったのよ。あともう少しで死んでたかも」
「ははは……なんか前にも聞いた気がする」
気まずそうに外へと視線を移す。
「無茶をするのが冒険者の性なんでしょう。まったく馬鹿なヤツらよ」
「ごめんなさいぃ……」
「いいのよ。あなたみたいなのを何人治してきたと思ってんの」
面倒くさそうな話し方。でもどこか優しさが含まれている。
「そうそう。そこで寝ているヤツに感謝しときなさいよ。あなたをここまで運んできて、看病していてくれてたし」
「そうなんですか……」
「あなたのことを大事に思ってくれてるみたいよ。よかったわね」
寝息も立てずに眠っているカエデ。
「どういう関係なの?」
「一緒に旅をしてるんです。カエデさんは仲間であり、恩人であり、師匠でもあるんです!」
「……へぇ」
ニマニマしている。
「好きな人……とかではないの?」
「好きですよ!優しい人だし……強いし!」
「……その好きって言うのは……人として?恋愛面として?」
「うーん……人としてですね。私あんまり恋愛とか分かんないし」
ヘキオンの性格からしたら納得だ。あんまり恋愛に興味無さそうな感じはする。
「……こりゃ、落とすのも大変だろうね」
「何か言いました?」
「なにも」
ヘキオンの服をペロッとめくる。傷一つない綺麗なお腹。
「うん。傷もない。できていた青アザも全部消えてるね」
突然めくられたのが恥ずかしかったのか、顔を赤くしてモジモジしている。
「……それにしても綺麗な体してるわね」
「そうですか?なんか恥ずかしい……」
引き締まった腹筋。それでいて柔らかそうな感じも含んでいる。確かに綺麗だ。動きまくっているからだろうか。
「――ヘキオン!」
寝ていたカエデがバッと起きた。静かに眠っていたのが嘘のようにアクティビティだ。
そのままバッとヘキオンの方へと顔を向ける。スピーディに。ただひたすらヘキオンのことが心配だったから。できるだけ速くヘキオンの無事を確認したかったから。
カエデの目に映ったのはヘキオンのお腹。綺麗なお腹。あれだけ動き回っているヘキオンだが、お腹とかの隠れている肌は白い。ちょっと見えている鼠径部がとてもセクシーだ。
「ブッッ――」
倒れた。鼻血を出して地面にバタリと倒れた。入ってきた情報量は別に多くない。ただその内容が死ぬほど濃かった。
顔は安らかに。悔いなどないかのような顔で気絶している。流れる鼻血は下へと流れていった。
「――え?ちょ、ちょっと、カエデさん?カエデさん!?」
ビビり散らかすヘキオン。起きたと思ったら血を流して死んだ。普通はビビる。
「はぁ……まだまだ子供ね」
小馬鹿にするような笑みを浮かべるナース。これが大人の余裕というものだろう。
「ごめん。ちょっと暑かったから……」
「そ、そうですか?ここ割と涼しいと思うんですけど」
ヒールをかけてもらったカエデ。一応死にかけからは回復したようだ。
「馬鹿なことにヒール使わせないでね」
「……ごめんなさい」
素直。どれだけ強くても素直さは大事だ。まぁカエデが全面的に悪いので仕方ないことではあるのだが。
続く
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