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2章「宝石が並ぶ村」
57話「ホラーサバイバル!」
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「これからどうするの?」
恐怖が入り交じった声で聞いてくる。
「とりあえずは先に進むか。まだ何かあるかもしれん」
「えー怖いよぉ……」
「ならここにいていい――」
「1人は嫌だからついて行く!」
「じゃあ行くか」
暗い道。同じような景色が延々と続く。匂いも変わらずキツい。松明の炎は劣化して小さくなっている。
「明らかに人工物だから、少なくとも誰かが使ってたってことだよね?」
「そうだな。刑務所ってところかな。いやそれにしては物騒すぎる。拘束具があるのもおかしい。1部の部屋にあるならまだしも、全ての部屋にある」
「……極秘で使われてた施設とか。凶悪犯とかをここで拷問したり……」
「拷問器具がないからそれは無いだろう。……だが極秘で使われた施設っていうのはいい線いってるとおもう」
「人体実験とか?」
「おー!それだ!」
どこかのマッドサイエンティストが使っていた施設。二人の推測はそれだ。
「近くに住んでいる種族は居ないだろうし、極秘で人体実験するのに最適な場所じゃないか!」
「もしかしたらクリスタリアンが住んでるかもしれないのに。こんなところでよくやるね」
「まぁそうだな……ん?」
疑問が頭の中に食い込む。
「クリスタリアン?クリスタリアンが住んでるかも?」
「多分嘘だけどね。お兄ちゃんが噂を聞いたってだけだし」
「――それ本当か!?」
「え?……うん」
「ちょっと待てよ。なんか嫌な予感がしてきたぞ……」
焦りだすカエデ。何を焦っているのか分からないウォーカーはカエデを不思議そうに見つめていた。
「どうしたの?」
「その噂が本当ならここはかなりやばい場所だと思う……」
「なんで?」
ウォーカーの頭の上にハテナのマークが付く。
「クリスタリアンはその体を先祖代々狙われてきた。酷い扱いを受けていた。それは知ってるな?というか気持ちは分かるな?」
「そりゃあね。私はお兄ちゃんがいるから気にしてないけど」
「そういう問題でもないと思うが……まぁいい。そんな酷い扱いを受けてきた奴らが他種族を恨まないと思うか?」
「……恨むね」
答え合わせ。まるでそういうかのように話し続けるカエデ。
「つまりそういうことだ。恨みを持ったクリスタリアンが他種族を拉致。……ここで恨みを晴らすかのように拷問……ってところだな」
「ひっ……でも拷問器具ないから違うって言ってなかった?」
「――そういやそうだな。やっぱりこの話忘れて」
「えぇ……」
まだまだ続く道。風景が変わらなすぎてウォーカーの恐怖心が薄れていた。
「暇だししりとりしようよー」
「緊張感がないなお前」
「カエデにだけは言われたくない」
どちらも緊張感がない。入ってきた時の恐怖心もだいぶ薄れてきていた。
それでも不気味な雰囲気は変わらない。匂いも臭いままだ。それどころか段々と強くなってくる。穴が曲がるようだ。
「これって本当になんの匂いだろう……」
「腐乱死体……血の匂い……みたいな?」
「でも酸っぱいんだよね。不快な匂いだけどそういうのとは別ベクトルのやつ」
「んー。なんなんだろう……」
色々考える。だがどれもこれもあくまで予想。二人には何も分からない。
――だが、この匂いの理由を二人はすぐに知ることとなる。
「――うぐ!?」
顔の下半分を抑えるウォーカー。体内のものが逆流しようとするのを何とか抑えている。吐き気。嘔吐感。涙が出るほどの臭さ。
突然の匂いが強まった。気持ちの悪い匂いが辺りに留まる。
「……この先に何かあるな」
「ぐぶっ……ぐふっ」
辛そうに俯くウォーカー。カエデの服をキュッと掴んでいる。
「ここで待つか?」
横に顔を振る。慣れたとはいえ、それでも1人は怖いのだろう。
「ずっと下を見ていろ。この先は多分キツイぞ」
心無しか優しい声。まだ子供のウォーカーにこの先はきついと感じたようだ。カエデも人によっては子供というのだろうが。
「……」
「……ぐふっ」
ゆっくりと。ゆっくりと。ウォーカーの歩行スピードに合わせて歩く。静かに。静かに歩く。
横。牢屋の中。横目でそこを見る。
「――なるほど。……最悪だな」
牢屋の中。吊るされているのは……見ただけでは分からない。分からないほど腐敗が進んでいた。
ほとんど顔が溶けている。そうとう時間が経ったのだろう。下の地面には粘度の高い液体が垂れていた。垂れた液体は水溜まりのように溜まっている。
色。普通に生きていたら見る色ではないだろう。赤?黒?オレンジ?茶色?橙色?分からない。混ざった色を数えれば2桁はいくはずた。
ウォーカーの心臓が鳴る。その振動はカエデにも伝わってきた。
「……はは。地獄か、ここは」
唾すら飲み込む気になれない。気持ち悪さが喉の奥まで迫ってきている。ウォーカーが吐くのも近いだろう。泣きそうな声を出す。
「絶対に下を向いてろ。吐きたい時は言え。待っといてやる」
「……うん」
消え入りそうな声。静かな空間ですらも聞きとるのに苦労するほどの小さな声。ウォーカーもだいぶ限界に迫っている。
「――一体何が起こったんだよ」
最悪。そんな言葉が似合う。カエデは悪夢のような道にそう呟いたのだった。
続く
恐怖が入り交じった声で聞いてくる。
「とりあえずは先に進むか。まだ何かあるかもしれん」
「えー怖いよぉ……」
「ならここにいていい――」
「1人は嫌だからついて行く!」
「じゃあ行くか」
暗い道。同じような景色が延々と続く。匂いも変わらずキツい。松明の炎は劣化して小さくなっている。
「明らかに人工物だから、少なくとも誰かが使ってたってことだよね?」
「そうだな。刑務所ってところかな。いやそれにしては物騒すぎる。拘束具があるのもおかしい。1部の部屋にあるならまだしも、全ての部屋にある」
「……極秘で使われてた施設とか。凶悪犯とかをここで拷問したり……」
「拷問器具がないからそれは無いだろう。……だが極秘で使われた施設っていうのはいい線いってるとおもう」
「人体実験とか?」
「おー!それだ!」
どこかのマッドサイエンティストが使っていた施設。二人の推測はそれだ。
「近くに住んでいる種族は居ないだろうし、極秘で人体実験するのに最適な場所じゃないか!」
「もしかしたらクリスタリアンが住んでるかもしれないのに。こんなところでよくやるね」
「まぁそうだな……ん?」
疑問が頭の中に食い込む。
「クリスタリアン?クリスタリアンが住んでるかも?」
「多分嘘だけどね。お兄ちゃんが噂を聞いたってだけだし」
「――それ本当か!?」
「え?……うん」
「ちょっと待てよ。なんか嫌な予感がしてきたぞ……」
焦りだすカエデ。何を焦っているのか分からないウォーカーはカエデを不思議そうに見つめていた。
「どうしたの?」
「その噂が本当ならここはかなりやばい場所だと思う……」
「なんで?」
ウォーカーの頭の上にハテナのマークが付く。
「クリスタリアンはその体を先祖代々狙われてきた。酷い扱いを受けていた。それは知ってるな?というか気持ちは分かるな?」
「そりゃあね。私はお兄ちゃんがいるから気にしてないけど」
「そういう問題でもないと思うが……まぁいい。そんな酷い扱いを受けてきた奴らが他種族を恨まないと思うか?」
「……恨むね」
答え合わせ。まるでそういうかのように話し続けるカエデ。
「つまりそういうことだ。恨みを持ったクリスタリアンが他種族を拉致。……ここで恨みを晴らすかのように拷問……ってところだな」
「ひっ……でも拷問器具ないから違うって言ってなかった?」
「――そういやそうだな。やっぱりこの話忘れて」
「えぇ……」
まだまだ続く道。風景が変わらなすぎてウォーカーの恐怖心が薄れていた。
「暇だししりとりしようよー」
「緊張感がないなお前」
「カエデにだけは言われたくない」
どちらも緊張感がない。入ってきた時の恐怖心もだいぶ薄れてきていた。
それでも不気味な雰囲気は変わらない。匂いも臭いままだ。それどころか段々と強くなってくる。穴が曲がるようだ。
「これって本当になんの匂いだろう……」
「腐乱死体……血の匂い……みたいな?」
「でも酸っぱいんだよね。不快な匂いだけどそういうのとは別ベクトルのやつ」
「んー。なんなんだろう……」
色々考える。だがどれもこれもあくまで予想。二人には何も分からない。
――だが、この匂いの理由を二人はすぐに知ることとなる。
「――うぐ!?」
顔の下半分を抑えるウォーカー。体内のものが逆流しようとするのを何とか抑えている。吐き気。嘔吐感。涙が出るほどの臭さ。
突然の匂いが強まった。気持ちの悪い匂いが辺りに留まる。
「……この先に何かあるな」
「ぐぶっ……ぐふっ」
辛そうに俯くウォーカー。カエデの服をキュッと掴んでいる。
「ここで待つか?」
横に顔を振る。慣れたとはいえ、それでも1人は怖いのだろう。
「ずっと下を見ていろ。この先は多分キツイぞ」
心無しか優しい声。まだ子供のウォーカーにこの先はきついと感じたようだ。カエデも人によっては子供というのだろうが。
「……」
「……ぐふっ」
ゆっくりと。ゆっくりと。ウォーカーの歩行スピードに合わせて歩く。静かに。静かに歩く。
横。牢屋の中。横目でそこを見る。
「――なるほど。……最悪だな」
牢屋の中。吊るされているのは……見ただけでは分からない。分からないほど腐敗が進んでいた。
ほとんど顔が溶けている。そうとう時間が経ったのだろう。下の地面には粘度の高い液体が垂れていた。垂れた液体は水溜まりのように溜まっている。
色。普通に生きていたら見る色ではないだろう。赤?黒?オレンジ?茶色?橙色?分からない。混ざった色を数えれば2桁はいくはずた。
ウォーカーの心臓が鳴る。その振動はカエデにも伝わってきた。
「……はは。地獄か、ここは」
唾すら飲み込む気になれない。気持ち悪さが喉の奥まで迫ってきている。ウォーカーが吐くのも近いだろう。泣きそうな声を出す。
「絶対に下を向いてろ。吐きたい時は言え。待っといてやる」
「……うん」
消え入りそうな声。静かな空間ですらも聞きとるのに苦労するほどの小さな声。ウォーカーもだいぶ限界に迫っている。
「――一体何が起こったんだよ」
最悪。そんな言葉が似合う。カエデは悪夢のような道にそう呟いたのだった。
続く
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