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2章「宝石が並ぶ村」
56話「死で包まれる神殿!」
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しばらく道なりに進んでいると空気が変わった。
「――?」
頭の中に疑問が浮かんだカエデ。その理由は風。というよりかは空気の流れか。気温がほのかに変わったのを感じ取った。
「近くに何かあるな」
「そうなの?」
二人の間に緊張が走る。広い空間ということは、魔物がいる可能性が高い。そうじゃないにしろ、何かはあるはずだ。二人は武器を取り出しながら歩いていった。
広い空間に着いた。結構広い空間。豪華な屋敷の敷地くらいの大きさはある。子供が走り回っても充分楽しめそうなほど広い。
形は綺麗めな長方形。3方向にそれぞれの穴がある。カエデたちが出てきたのは長い辺の方。その真ん中くらいから出てきたのだった。
上からは氷のような宝石がいくつも飛び出してきており、薄暗い洞窟を明るく照らしていた。とても美しい景色だ。
そして二人が洞窟から出てきたその向かい。明らかに怪しいものがあった。
それは階段。遺跡か神殿の入口のような階段。松明が飾られてはあるが、奥までは覗けない。真っ黒な深淵があるのみだ。
「――なんだろう。ここ」
妥当な疑問。頭の中に誰しもが浮かぶであろう疑問を言葉に発した。
「分からないな。だが面白そうなところだ」
階段の方へ近づくカエデ。男の子はこういうのが好きだ。好奇心をくすぐられたのだろう。
「え?行くの?」
「ヘキオンもお前の兄貴も弱いやつじゃない。多少遅れても大丈夫だろ」
「それはそうかもしれないけど……」
「別にここで待っててもいいぞ。ただし1人でだがな」
「――意地悪な人だなぁ」
むくれるウォーカー。ツカツカと階段を降りていカエデに素早くついて行くのであった。
内部。
とても生暖かい空間。松明の炎が二人の体温を一定にしてくれている。下から流れてるくのは異常な静寂。不安の塊。
単純な二人の足音が内部に反響する。ウォーカーの背筋は既に凍りついていた。
「……怖いなぁ」
「なんだかワクワクするな!」
「なんでぇ……?」
「こんなのロマンの塊だろ?壁に書かれた壁画とか上から吊るされた松明とか!」
「わ、わかんないなぁ……」
すごく楽しそうだ。やっぱり男の子なのだろう。
1番下に着いた。階段と同じ模様。空気も変わらない。違うのは広さと造形だけ。
松明があるおかげで中はかなり見える。
「地下にこんなところが……」
地下牢。表すならそれが1番適当だろう。アメリカの刑務所のように並べられた鉄格子。中は不規則な大きさの石を積み立てたような柄をしている。
そんな鉄格子の牢屋が左右に並ぶ。奥。数十メートル先まで規則的に奥まで敷き詰められていた。
「……なんか……臭い……」
鼻をつんざく刺激臭。酸っぱい匂いが吐き気を催す。嘔吐くウォーカー。それほど臭かった。
「遺跡とか神殿ってわけでもなさそうだな」
既に瀕死のウォーカーに対して、特に気にしていないカエデ。牢屋の中をズイッと覗く。
牢屋の中。上から吊るされたのはチェーン。付けられているのは拘束具。カエデの手元の鉄格子には赤黒い液体がべっとりと付いていた。
刺激臭はこの中からしてくる。匂いの元はここから。正確に言うなら牢屋全てからだ。
「ここで何が起こったの……?」
「さぁな。だが少なくともいいことは起こってないらしい」
牢屋を軽く叩く。空洞の軽い音がカエデの中に轟く。気持ちのいい音ではない。
「はやく出ようよ……」
「そうだな。俺も見ていて気分のいい場所じゃないさっさと出る――」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……。
地震の時のような音。何かがせり上がってくる音。同時にマッサージ機のように細かい振動が二人を襲う。
「な、なに――」
入ってきた入口。徐々に登ってくる壁。なんのスイッチを押したのか、それともトラップか。
気がついた時には遅かった。ウォーカーが走り出そうとした時にはもう登りきっていた。
「――嘘嘘嘘嘘!?」
階段にできた壁を叩くウォーカー。ペチペチと叩くが、もちろん壊れるわけはない。どうやら閉じ込められたようだ。
「なんでなんでなんで!?」
「閉じ込められた……ようだな」
「なんでそんなに冷静なの!?」
「どんなに嘆いても事実は変わらないからな」
辺りを見渡す。松明があるので真っ暗じゃない。それが不幸中の幸いってところだろう。
「この壁壊せないの!?」
「ダメだな。老朽化が激しい。俺が殴ればこの空間ごと壊してしまう。俺は別にそれでもいいが……お前は瓦礫に潰されても生きていられるのか?」
「う……うぅ……」
泣きそうな顔をするウォーカー。不安になるのも仕方ない。空気の流れを失った松明が静かに揺れていた。
続く
「――?」
頭の中に疑問が浮かんだカエデ。その理由は風。というよりかは空気の流れか。気温がほのかに変わったのを感じ取った。
「近くに何かあるな」
「そうなの?」
二人の間に緊張が走る。広い空間ということは、魔物がいる可能性が高い。そうじゃないにしろ、何かはあるはずだ。二人は武器を取り出しながら歩いていった。
広い空間に着いた。結構広い空間。豪華な屋敷の敷地くらいの大きさはある。子供が走り回っても充分楽しめそうなほど広い。
形は綺麗めな長方形。3方向にそれぞれの穴がある。カエデたちが出てきたのは長い辺の方。その真ん中くらいから出てきたのだった。
上からは氷のような宝石がいくつも飛び出してきており、薄暗い洞窟を明るく照らしていた。とても美しい景色だ。
そして二人が洞窟から出てきたその向かい。明らかに怪しいものがあった。
それは階段。遺跡か神殿の入口のような階段。松明が飾られてはあるが、奥までは覗けない。真っ黒な深淵があるのみだ。
「――なんだろう。ここ」
妥当な疑問。頭の中に誰しもが浮かぶであろう疑問を言葉に発した。
「分からないな。だが面白そうなところだ」
階段の方へ近づくカエデ。男の子はこういうのが好きだ。好奇心をくすぐられたのだろう。
「え?行くの?」
「ヘキオンもお前の兄貴も弱いやつじゃない。多少遅れても大丈夫だろ」
「それはそうかもしれないけど……」
「別にここで待っててもいいぞ。ただし1人でだがな」
「――意地悪な人だなぁ」
むくれるウォーカー。ツカツカと階段を降りていカエデに素早くついて行くのであった。
内部。
とても生暖かい空間。松明の炎が二人の体温を一定にしてくれている。下から流れてるくのは異常な静寂。不安の塊。
単純な二人の足音が内部に反響する。ウォーカーの背筋は既に凍りついていた。
「……怖いなぁ」
「なんだかワクワクするな!」
「なんでぇ……?」
「こんなのロマンの塊だろ?壁に書かれた壁画とか上から吊るされた松明とか!」
「わ、わかんないなぁ……」
すごく楽しそうだ。やっぱり男の子なのだろう。
1番下に着いた。階段と同じ模様。空気も変わらない。違うのは広さと造形だけ。
松明があるおかげで中はかなり見える。
「地下にこんなところが……」
地下牢。表すならそれが1番適当だろう。アメリカの刑務所のように並べられた鉄格子。中は不規則な大きさの石を積み立てたような柄をしている。
そんな鉄格子の牢屋が左右に並ぶ。奥。数十メートル先まで規則的に奥まで敷き詰められていた。
「……なんか……臭い……」
鼻をつんざく刺激臭。酸っぱい匂いが吐き気を催す。嘔吐くウォーカー。それほど臭かった。
「遺跡とか神殿ってわけでもなさそうだな」
既に瀕死のウォーカーに対して、特に気にしていないカエデ。牢屋の中をズイッと覗く。
牢屋の中。上から吊るされたのはチェーン。付けられているのは拘束具。カエデの手元の鉄格子には赤黒い液体がべっとりと付いていた。
刺激臭はこの中からしてくる。匂いの元はここから。正確に言うなら牢屋全てからだ。
「ここで何が起こったの……?」
「さぁな。だが少なくともいいことは起こってないらしい」
牢屋を軽く叩く。空洞の軽い音がカエデの中に轟く。気持ちのいい音ではない。
「はやく出ようよ……」
「そうだな。俺も見ていて気分のいい場所じゃないさっさと出る――」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……。
地震の時のような音。何かがせり上がってくる音。同時にマッサージ機のように細かい振動が二人を襲う。
「な、なに――」
入ってきた入口。徐々に登ってくる壁。なんのスイッチを押したのか、それともトラップか。
気がついた時には遅かった。ウォーカーが走り出そうとした時にはもう登りきっていた。
「――嘘嘘嘘嘘!?」
階段にできた壁を叩くウォーカー。ペチペチと叩くが、もちろん壊れるわけはない。どうやら閉じ込められたようだ。
「なんでなんでなんで!?」
「閉じ込められた……ようだな」
「なんでそんなに冷静なの!?」
「どんなに嘆いても事実は変わらないからな」
辺りを見渡す。松明があるので真っ暗じゃない。それが不幸中の幸いってところだろう。
「この壁壊せないの!?」
「ダメだな。老朽化が激しい。俺が殴ればこの空間ごと壊してしまう。俺は別にそれでもいいが……お前は瓦礫に潰されても生きていられるのか?」
「う……うぅ……」
泣きそうな顔をするウォーカー。不安になるのも仕方ない。空気の流れを失った松明が静かに揺れていた。
続く
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