54 / 117
2章「宝石が並ぶ村」
54話「信頼を得るために!」
しおりを挟む
窓付近まで歩くリーダー。窓際まで来た時、2人に手招きをした。
ちょっと不審がりながらもリーダーの元へと歩く。
「最近ここの周りで異変が起きている」
「異変?」
「本来あるはずのない人間の毛が落ちていたり、近くのところでクリスタリアンではない者の足跡があったりな」
「……他に人間がいるのか?」
「私はそう睨んでいる」
ため息。疲れているようだ。
「数ヶ月前から続いてる。……おそらく野盗だ。ここの場所がバレた。だからといって逃げるというのは難しい」
「子供がいるからですか……?」
「それもある。……ここの村には50以上のクリスタリアンが住んでいるんだ。そんな大人数が移動するには時間がかかる。そしてそんなことをすればすぐにバレるだろう」
おそるおそる聞いたヘキオンの問いに優しく答える。
「偵察しようにも、この体では目立つ。それに魔力がほとんどない以上単体ではどうしても弱くなる。大人数でいけば、すぐに逃げられてしまう。……もうお手上げだ」
言葉の通りに両手を軽くあげた。
「……私たちはいい。だが子供たちとパートルズエルブレアは守らなくてはならない。どちらも昔から受け継がれてきた物だからな」
ガラス越し。子供たちがワチャワチャと遊んでいる。近くで子供たちを優しそうな表情で眺めている女の人。お母さんだろうか。
「――私はこの景色を守りたい。この子たちには追いかけられる恐怖を味わって欲しくはない」
泣きそうな目で2人を見つめ直した。
「つまり野盗を殺してこいってことだな」
「そうだ。そうすればパートルズエルブレアを分けてやる。そしてここから出る方法も教えてやろう。……やってくれるか?」
「――はい!」
ヘキオンが強く答える。正義感の強いヘキオンなら、別に何も貰えなくてもするはずだ。
「お易い御用だ。暗殺者の名の通り、誰にもバレずに終わらせてやろう。クリスタリアンにもな」
「……ありがとう」
静かにスプリングの手を握るのだった。
机の上に敷かれた地図。石版に彫られている。まるで蛇のように複雑。洞窟なので仕方ないが、とても見にくい。
「今私たちがいるのはここだ」
指で刺したのは石版の中心。
「そして野盗が根城にしていると思われるのはここだ」
左上。細い道ばかりのところに少し広い場所があった。野盗がいるとされているのはその場所。
「この村からは結構離れているな」
「それに広いから根城にするにはもってこいの場所ですね」
ドラマに出てくるバディのように話が合う。
「ただあくまで推測だ。もしかしたら居ないかもしれない。それどころかこの行動すらも読まれて、待ち伏せされている可能性がある」
「その時はその時ですよ。真正面からなら私は負けません!」
「はは。……頼りにしてるよ」
その問い。言葉にして答えることは無かった。ただ一つ。ただ一つこくりと頷いた。
明るかった村から離れ、薄暗い洞窟へと入る。明るい雰囲気がガラッと変わり、2人はなんだか重い雰囲気を感じた。
「――ふぅ」
息を吐く。少しの緊張をその息から感じ取れる。
「……妹さんの種族を変えるって……どうするんですか?」
静かに話しかける。いつ野盗が襲ってくるかは分からない。声を出せばバレる可能性がある。
「――それは言えない。知る必要は無い」
「そう……ですか」
悲しそうに呟く。
「しいて言うなら……倫理的にいい方法ではない」
「倫理的に?」
「……まだ子供だろ。お前は知らなくてもいいさ」
「ちょっ!これでも16なんですよ!成人してます!」
プンスコ怒る。見た目だけ見るなら間違えるのも仕方ない。
「そうなのか?ウォーカーよりも小さいから12とか13かと……」
「ちゃんと見てくださいよ!」
「ちゃんと見た結果なんだが……あれか?お前のツレはロリコンなのか?」
「違いますよ!……多分……」
ちょっと自信なさげだ。
「そこは自信をもってやれよ」
「じゃあ違います!」
「どうだかな」
「どちらにしろ否定はするんですね……」
「少なくとも正常ではなさそうだからな」
「そうですかね?普通にいい人だと思うんですが……」
「あんなに強いやつの精神状態が普通なわけないだろ。どこかしらは絶対に壊れてるはずだ」
「カエデさんは普通だと思うんですがね~」
のほほんとした口調でヘキオンは答えるのであった。
続く
ちょっと不審がりながらもリーダーの元へと歩く。
「最近ここの周りで異変が起きている」
「異変?」
「本来あるはずのない人間の毛が落ちていたり、近くのところでクリスタリアンではない者の足跡があったりな」
「……他に人間がいるのか?」
「私はそう睨んでいる」
ため息。疲れているようだ。
「数ヶ月前から続いてる。……おそらく野盗だ。ここの場所がバレた。だからといって逃げるというのは難しい」
「子供がいるからですか……?」
「それもある。……ここの村には50以上のクリスタリアンが住んでいるんだ。そんな大人数が移動するには時間がかかる。そしてそんなことをすればすぐにバレるだろう」
おそるおそる聞いたヘキオンの問いに優しく答える。
「偵察しようにも、この体では目立つ。それに魔力がほとんどない以上単体ではどうしても弱くなる。大人数でいけば、すぐに逃げられてしまう。……もうお手上げだ」
言葉の通りに両手を軽くあげた。
「……私たちはいい。だが子供たちとパートルズエルブレアは守らなくてはならない。どちらも昔から受け継がれてきた物だからな」
ガラス越し。子供たちがワチャワチャと遊んでいる。近くで子供たちを優しそうな表情で眺めている女の人。お母さんだろうか。
「――私はこの景色を守りたい。この子たちには追いかけられる恐怖を味わって欲しくはない」
泣きそうな目で2人を見つめ直した。
「つまり野盗を殺してこいってことだな」
「そうだ。そうすればパートルズエルブレアを分けてやる。そしてここから出る方法も教えてやろう。……やってくれるか?」
「――はい!」
ヘキオンが強く答える。正義感の強いヘキオンなら、別に何も貰えなくてもするはずだ。
「お易い御用だ。暗殺者の名の通り、誰にもバレずに終わらせてやろう。クリスタリアンにもな」
「……ありがとう」
静かにスプリングの手を握るのだった。
机の上に敷かれた地図。石版に彫られている。まるで蛇のように複雑。洞窟なので仕方ないが、とても見にくい。
「今私たちがいるのはここだ」
指で刺したのは石版の中心。
「そして野盗が根城にしていると思われるのはここだ」
左上。細い道ばかりのところに少し広い場所があった。野盗がいるとされているのはその場所。
「この村からは結構離れているな」
「それに広いから根城にするにはもってこいの場所ですね」
ドラマに出てくるバディのように話が合う。
「ただあくまで推測だ。もしかしたら居ないかもしれない。それどころかこの行動すらも読まれて、待ち伏せされている可能性がある」
「その時はその時ですよ。真正面からなら私は負けません!」
「はは。……頼りにしてるよ」
その問い。言葉にして答えることは無かった。ただ一つ。ただ一つこくりと頷いた。
明るかった村から離れ、薄暗い洞窟へと入る。明るい雰囲気がガラッと変わり、2人はなんだか重い雰囲気を感じた。
「――ふぅ」
息を吐く。少しの緊張をその息から感じ取れる。
「……妹さんの種族を変えるって……どうするんですか?」
静かに話しかける。いつ野盗が襲ってくるかは分からない。声を出せばバレる可能性がある。
「――それは言えない。知る必要は無い」
「そう……ですか」
悲しそうに呟く。
「しいて言うなら……倫理的にいい方法ではない」
「倫理的に?」
「……まだ子供だろ。お前は知らなくてもいいさ」
「ちょっ!これでも16なんですよ!成人してます!」
プンスコ怒る。見た目だけ見るなら間違えるのも仕方ない。
「そうなのか?ウォーカーよりも小さいから12とか13かと……」
「ちゃんと見てくださいよ!」
「ちゃんと見た結果なんだが……あれか?お前のツレはロリコンなのか?」
「違いますよ!……多分……」
ちょっと自信なさげだ。
「そこは自信をもってやれよ」
「じゃあ違います!」
「どうだかな」
「どちらにしろ否定はするんですね……」
「少なくとも正常ではなさそうだからな」
「そうですかね?普通にいい人だと思うんですが……」
「あんなに強いやつの精神状態が普通なわけないだろ。どこかしらは絶対に壊れてるはずだ」
「カエデさんは普通だと思うんですがね~」
のほほんとした口調でヘキオンは答えるのであった。
続く
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
月の砂漠のかぐや姫
くにん
ファンタジー
月から地上に降りた人々が祖となったいう、謎の遊牧民族「月の民」。聖域である竹林で月の民の翁に拾われた赤子は、美しい少女へと成長し、皆から「月の巫女」として敬愛を受けるようになります。
竹姫と呼ばれる「月の巫女」。そして、羽と呼ばれるその乳兄弟の少年。
二人の周りでは「月の巫女」を巡って大きな力が動きます。否応なくそれに巻き込まれていく二人。
でも、竹姫には叶えたい想いがあり、羽にも夢があったのです!
ここではない場所、今ではない時間。人と精霊がまだ身近な存在であった時代。
中国の奥地、ゴビの荒地と河西回廊の草原を舞台に繰り広げられる、竹姫や羽たち少年少女が頑張るファンタジー物語です。
物語はゆっくりと進んでいきます。(週1、2回の更新) ご自分のペースで読み進められますし、追いつくことも簡単にできます。新聞連載小説のように、少しずつですが定期的に楽しめるものになればいいなと思っています。
是非、輝夜姫や羽たちと一緒に、月の民の世界を旅してみてください。
※日本最古の物語「竹取物語」をオマージュし、遊牧民族の世界、中国北西部から中央アジアの世界で再構築しました。
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。
美少女に転生して料理して生きてくことになりました。
ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。
飲めないお酒を飲んでぶったおれた。
気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。
その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった
オッドルーク
おしゅか
ファンタジー
世界の人口は約78億人、日本の人口は約1億人、その中のたった200人程度がオッドと呼ばれる異能力者。オッドになった人間は、国の隠された警察組織”ルークファクト”に保護されている。
──俺は今日から、この組織の一員になる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
*=挿絵有り
この作品はNolaノベルでも掲載しています。
幼女に転生したらイケメン冒険者パーティーに保護&溺愛されています
ひなた
ファンタジー
死んだと思ったら
目の前に神様がいて、
剣と魔法のファンタジー異世界に転生することに!
魔法のチート能力をもらったものの、
いざ転生したら10歳の幼女だし、草原にぼっちだし、いきなり魔物でるし、
魔力はあって魔法適正もあるのに肝心の使い方はわからないし で転生早々大ピンチ!
そんなピンチを救ってくれたのは
イケメン冒険者3人組。
その3人に保護されつつパーティーメンバーとして冒険者登録することに!
日々の疲労の癒しとしてイケメン3人に可愛いがられる毎日が、始まりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる