無職で何が悪い!

アタラクシア

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2章「宝石が並ぶ村」

54話「信頼を得るために!」

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窓付近まで歩くリーダー。窓際まで来た時、2人に手招きをした。

ちょっと不審がりながらもリーダーの元へと歩く。

「最近ここの周りで異変が起きている」
「異変?」
「本来あるはずのないが落ちていたり、近くのところでクリスタリアンではない者の足跡があったりな」
「……他に人間がいるのか?」
「私はそう睨んでいる」

ため息。疲れているようだ。

「数ヶ月前から続いてる。……おそらく野盗だ。ここの場所がバレた。だからといって逃げるというのは難しい」
「子供がいるからですか……?」
「それもある。……ここの村には50以上のクリスタリアンが住んでいるんだ。そんな大人数が移動するには時間がかかる。そしてそんなことをすればすぐにバレるだろう」

おそるおそる聞いたヘキオンの問いに優しく答える。

「偵察しようにも、この体では目立つ。それに魔力がほとんどない以上単体ではどうしても弱くなる。大人数でいけば、すぐに逃げられてしまう。……もうお手上げだ」

言葉の通りに両手を軽くあげた。

「……私たちはいい。だが子供たちとパートルズエルブレアは守らなくてはならない。どちらも昔から受け継がれてきた物だからな」

ガラス越し。子供たちがワチャワチャと遊んでいる。近くで子供たちを優しそうな表情で眺めている女の人。お母さんだろうか。


「――私はこの景色を守りたい。この子たちには追いかけられる恐怖を味わって欲しくはない」

泣きそうな目で2人を見つめ直した。


「つまり野盗を殺してこいってことだな」
「そうだ。そうすればパートルズエルブレアを分けてやる。そしてここから出る方法も教えてやろう。……やってくれるか?」
「――はい!」

ヘキオンが強く答える。正義感の強いヘキオンなら、別に何も貰えなくてもするはずだ。

「お易い御用だ。暗殺者の名の通り、誰にもバレずに終わらせてやろう。クリスタリアンにもな」
「……ありがとう」

静かにスプリングの手を握るのだった。




机の上に敷かれた地図。石版に彫られている。まるで蛇のように複雑。洞窟なので仕方ないが、とても見にくい。

「今私たちがいるのはここだ」

指で刺したのは石版の中心。

「そして野盗が根城にしていると思われるのはここだ」

左上。細い道ばかりのところに少し広い場所があった。野盗がいるとされているのはその場所。

「この村からは結構離れているな」
「それに広いから根城にするにはもってこいの場所ですね」

ドラマに出てくるバディのように話が合う。

「ただあくまで推測だ。もしかしたら居ないかもしれない。それどころかこの行動すらも読まれて、待ち伏せされている可能性がある」
「その時はその時ですよ。真正面からなら私は負けません!」
「はは。……頼りにしてるよ」

その問い。言葉にして答えることは無かった。ただ一つ。ただ一つこくりと頷いた。







明るかった村から離れ、薄暗い洞窟へと入る。明るい雰囲気がガラッと変わり、2人はなんだか重い雰囲気を感じた。

「――ふぅ」

息を吐く。少しの緊張をその息から感じ取れる。


「……妹さんの種族を変えるって……どうするんですか?」

静かに話しかける。いつ野盗が襲ってくるかは分からない。声を出せばバレる可能性がある。

「――それは言えない。知る必要は無い」
「そう……ですか」

悲しそうに呟く。


「しいて言うなら……倫理的にいい方法ではない」
「倫理的に?」
「……まだ子供だろ。お前は知らなくてもいいさ」
「ちょっ!これでも16なんですよ!成人してます!」

プンスコ怒る。見た目だけ見るなら間違えるのも仕方ない。

「そうなのか?ウォーカーよりも小さいから12とか13かと……」
「ちゃんと見てくださいよ!」
「ちゃんと見た結果なんだが……あれか?お前のツレはロリコンなのか?」
「違いますよ!……多分……」

ちょっと自信なさげだ。

「そこは自信をもってやれよ」
「じゃあ違います!」
「どうだかな」
「どちらにしろ否定はするんですね……」
「少なくとも正常ではなさそうだからな」
「そうですかね?普通にいい人だと思うんですが……」
「あんなに強いやつの精神状態が普通なわけないだろ。どこかしらは絶対に壊れてるはずだ」
「カエデさんは普通だと思うんですがね~」

のほほんとした口調でヘキオンは答えるのであった。












続く
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